あのときはそう思っていた。
…目を開くと、目の前には見知った天井が広がっている。
ここは…軍の駐屯地の、俺の部屋だ。
そこまで認識した瞬間、俺はベッドから跳ね起きようとして…。
「…目が覚めたか」
ベッドの横に、誰かが座っていた。
長い金の髪を惜しげもなく降ろし、人間離れした美貌を持つ女だ。
「…AN-94。勝手に部屋入るなって言わなかったか」
「承諾が取れない状況だった。許してくれ」
「そうかよ。じゃあ悪いけど
AN-94の後ろにある一組の手足を顎で指してそう言った。
…俺には手足が無い。
物心付いた時にキ○ガイの集団に拉致られて切り落とされた。
それ以来ずっと義手義足のお世話って訳だ。
「…駄目だ」
「何でだ」
「お前を自由にしたら、すぐに出て行ってしまう」
「当たり前だ!早く迎えに行ってやらねぇと…」
窓の外は曇天。
雨は止んでいる。
行くならば今しかない。
幸い地盤は緩くはなっていなかったはず…。
そもそも、今はあれから何日経った?
「駄目だ。お前は療養が必要だ」
「うるせぇ!さっさと寄越せ!」
ベッドから床に落下した。
手足が無いから何も出来ないのがみっともなくて泣きたくなる。
「………」
「AN-94!」
…迷い、俺のパーツに手をかけようとして、
横から伸ばされた手に阻まれた。
「…AK-12」
「だめよ、AN-94」
白銀の長い髪を翻し、目を閉じた柔和な雰囲気の女性はいつの間にかそこに居た。
「…隊長」
「おはよう、パトリック。まずは体を休めなさい。処分はそれからよ」
「隊長!行かせてくれ!」
「黙りなさい」
AK-12の瞳が見開かれた。
…そこには、強化された義眼が煌めいていた。
…間違いない、彼女は
誰に?
そんなの決まっている。
俺にだ。
「独断で出撃した上に救助対象を処分して、瀕死の人間を殺したのはあなたよ」
「そんなのは、分かってる…!」
「それに、あのエリアにはまだ感染者たちがたむろしてる…そんな中に負傷した部下一人送り出す隊長が居ると思って?」
正論だ。
けれど、俺は人間だから、正論では納得出来ないし…止まれない。
「AK-12!頼む…処分も処罰も、必ず受ける…!」
「………」
理解出来ない物を見る様な目で、俺を静かに見下ろしている。
永遠に続くかと思われた静寂。
…それを破ったのは、出撃命令を知らせるアラームだった。
「…パトリック。準備しなさい」
「AK-12…」
「帰ってきたら、たっぷりお仕置きしてあげるわ。…行くわよ」
「恩に着る!!」
…AN-94に装着を手伝ってもらってしまった。
最後に格好つかないな。
借金前線終わらせたら書くと言ったな?
アレは嘘だ。
…というのは冗談で、ちょっと思うところがありまして。
しばらくはこちらを書くかも。