島や峰先輩が好んでいる服装。
いやに目立つフリフリやヒラヒラがいっぱいついている。
なんか、一応歴史はあるらしい。
過剰に華やか、というかもはや鬱陶しい。
あとはもう…説明とかどうでもいいや。
「ソララン、やる気無さすぎだよ!?」
…こんな所にまで来るなよ。
「話…ですか?」
「そうだ、おまえに話がある」
先ほどとは打って変わって、男のような口調で話す峰先輩。
「僕には無いです。じゃ──」
そう言って、帰ろうとした時だった。
バン!
「ぐっ」
撃たれた。
…ああ、こんな理不尽に撃たれるのレキ先輩以来だな。
たとえ防弾制服を着ていて体に銃弾が届かなくても、鉄の塊が亜音速でぶつかってくることに変わりはない。
その衝撃で僕は足を止められた。
「悪いが、聞いてもらう。おまえにも関係あることだ」
僕にも…? 峰先輩と今日の今まで接点すらなかったというのに。
「そう、『イ・ウー』のな」
……また、それか。
どうやら彼女も熱心な信者らしい。
しかし柄の悪い宗教だな、勧誘に鉛玉を用いるなんて。
せめて、洗剤とかトイレットペーパーにしてもらいたいものだ。それもなんか違うけど。
だが、まあ、どうあっても答えることは変わらない。
「あ、僕無神論者なんで」
「は?」
「いえ、そちらが信じる神をバカにするわけではないんですよ? でも、ほら、この国にも信仰の自由ってあるじゃないですか。だから──」
「おまえは何を言ってるんだ! イ・ウーは宗教じゃない!」
え? 違うの?
15.「りっこりこにしてやんよ」
そして、始まる峰先輩からのイ・ウー講義。
「りっこりんのぉーこれで安心イ・ウー対策ぅぅぅ!!」
「…帰っていいですか?」
怠くてそんなん聞いてる余裕ないんだけど。しかも無駄にこの人テンション高いし。
アホなのかなぁ?
「くふふっ、却下でぇす」
却下された。だけど力ずくって手は使えない。
そもそも、この空き教室には彼女に力ずくで連れてこられたからだ。
体調が悪いのもこの状況に一役買っていた。普段なら力ずく已然にすぐに逃げてる。
強者の前では弱者逆らえない。
言うことを聞くかは別だけど。
……もういいや、ここで寝よう。
ヒュン!
ひょい。
いきなり投げられたチョークを躱す。
「理子の話を聞かないとぉ、次に放つのが銃弾になっちゃうよぉー?」
プンプンだぞ!
っておい。そのアホキャラで説明するのかよ。
それにこの理不尽さはレキ先輩並みだ。何で先輩方はこうも簡単に銃を抜くのだろう。
「はぁー。わかったんでさっさと説明してください」
「うんうん。物わかりのいい生徒をもって、りこりんはうれしいぞよ」
ウザッ!
最強先輩論議している最中のあかりと竹中並みにウザい。
「じゃあ、ソラランにも解りやすく説明するねぇー」
ソラランって誰だよ。
「イ・ウーっていうのは簡単に言うと学校みたいなものなの。才能のある者たちが集まって互いに技術を教え合う。ま、実際は無法者の集団なんだけどねー。規模は国際的だけど」
要するに超人的な犯罪者集団ってことか。立ち悪い。
「でも、そんな組織最近まで聞いたことないですよ」
「くふっ、知らなくて当然だよ? だって、イ・ウーはその名前を知っているだけで危険が及ぶ超国家機密だもん」
へー、そうなんだ。そりゃあ知らないわけだ。納得。
……って!
「いやいやいや! そんなもん人に教えんなよ!」
何この人!? さっきから僕に害しか与えてないんだけど!
レキ先輩だってたまにカロリーメイトくらいは与えてくれると言うのに…。
「んー? でもぉー、ソラランは知らないと逆にまずいと思うよ?」
「何故…ですか?」
「だって、もう狙われてるし」
………
「……はぁ!? 僕はそんな大業なことしてねえぞ!!」
「そこは理子にもよく解らないんだけど。なんかソラランが特殊な体質してるってのは聞いたことあるよー?」
「そんなヤバい組織に狙われるような希少性はありません! 精々薬が効きにくくてケガが常人より少しばかり早く治るくらいです!」
「確かに変なんだよねぇ。こうして見てもソラランがそこまですごい武偵に見えないし」
「そうですよ! 峰先輩からも誤解を解いておいてください」
「それは無理かなー、理子はそんな発言権ないし。今はむしろ理子も狙われている立場だから」
「はぁ!? 察するに峰先輩もその組織の一員なんでしょ? じゃあ誰に狙われてるっていうんですか」
アホなこの先輩が武偵高に堂々といる時点で犯罪者側として狙われているわけじゃないだろうし。
「さっきも言ったでしょ? イ・ウーは無法者の集団だって。メンバー同士の私闘を禁じてないんだよ。それに理子、この前退学になっちゃったし」
「…じゃあ、返り討ちにでもすればいいじゃないですか。峰先輩強いでしょ?」
これは予想だけど、峰先輩がアリア先輩に傷を負わせた人物だ。
この人が武偵高にいなかった時期やイ・ウーのことからもそのことを裏付けている。
戦闘力と言う意味ならばSランクに近い力は最低限持っていることになるだろう。
「……無理。そいつはあたしなんかじゃ相手にもならない」
先ほどまでのおバカなノリはどうしたのか、彼女は苦虫をつぶしたような顔でうつむいた。
「先輩が相手にならないって、どんな人なんですか?」
「
「は?」
「…ねえ、ソラランは吸血鬼って知ってる?」
──吸血鬼。
人の血を吸う西洋の妖怪。
血を吸われた人間は吸血鬼になってしまう。
日の光や聖水、十字架、ニンニクが苦手。
しかし、それ以外のものに対してはほとんど不死身な体を持つ。
あとは、確か、招かれていない家には入れないとかだっけ?
「──と、まあこんなことくらいですけど」
「うん、大体あってる。でも、血を吸われたとしても吸血鬼にはならないし、招かれなくても人の家に押し入ってくるけど」
へー、中々オリジナリティに凝ってるなー。
まあ、伝承通りよりなんか一捻り入れたいもんね。
「……で、まさか実在するとか言いませんよね…?」
「ソラランって鋭いよねぇー。探偵科とか向いてるかもよー?」
いるのかよ。
「…Aランクの先輩に言われると説得感ありますね」
「くふふ、本当にこっちくる? キーくんだっているし」
「キーくん? …ああ、遠山先輩ですか」
あの人も今は探偵科だっけ。中々どうしてあの人は気に入っている。普段まともだし。
それに一応恩人でもある。
「それも、面白いかもしれないですね」
「じゃあユー来ちゃいなよ」
「あはは。──でもアホ…峰先輩がいるのでお断りします」
「え!? アホって何? 理子もしかして嫌われてる?」
「え? 嫌いですけど」
「素で拒絶された!?」
ガーンとか言われても、嫌いなものは嫌いだし。
いきなり、撃ってくる人をどう好きになれと?
出会って数十分で僕に嫌われるなんて大したものですよ? 僕はこれでも嫌いって言葉はあまり使いませんから。
ある意味誇っていいと思うくらいです。
「…そんな…レキュからソラランは銃で撃たれるのが好きって聞いてたのに…」
おい、ちょっと待て。
今、聞き流せないこと言わなかったかこのアホ。
元凶はあの人かよ! しかも何? あの人僕がそんな性癖だとでも思っていたの!?
「……言っておきますけど、僕は撃たれて喜ぶような変態ではありませんので」
「理子も変だと思ってた。でもレキュも冗談言うんだねー」
冗談じゃねえよ! 二重の意味で。
まさか、今までの仕打ちは僕のことドMだと思っていたからなのか!?
しかし、これはチャンスだ。この誤解を解けば待遇が改善されるかもしれない!
「…まあ、とりあえずこのことは置いといて。その吸血鬼なんだけど、ソラランのことも狙ってるみたいなんだよねぇー」
「だから何で僕が……。吸血鬼に恨みを買うようなことした覚え無いんですけど。それとも何ですか? 僕の体質って『
「そんなヒロインいなかった!」
「やめてぇ!! きっといつかくるよ! 吸血鬼編!」
………
「…で、どういうやつなんですかアホ先輩。実際は」
「ソララン理子に容赦ないねぇー。ソラランの体質については理子は知らないけどー、狙ってるやつのことならわかってる。──無限罪のブラド。イ・ウーのナンバー2だよ」
いきなりナンバー2かよ!
もっと段階踏もうぜ? 序盤にこんな強敵とか、負け決定のイベント戦闘の予感しかしないんだけど…。
いや、むしろ救いが無い分、もうバッドエンドのルートに突入しているのかもしれない。
どこで、選択肢を間違えたんだろう。やばい、セーブして無いやぁ…
……はぁ…。
「……もうやだ。なんで僕ばっかこんな目に遭うのさ……」
「…うわぁ…、一気にネガティブになったねー…」
「この前死にかけたばかりだし、レキ先輩は理不尽だし、初恋の人はレズだったし…」
「…れ、レズだったんだ…」
峰先輩の顔が引きつってるけど、今の僕はそんなことを気にしていられない。
「で、でも、今は安心していいよ! ブラドは国内にいないはずだから」
それは僕だけでなく自分にも言い聞かせているような感じがした。
今大丈夫でも、僕が狙われてることに変わらないんだけどなぁ…。
「…もういいです。諦めました。それで、こんな話をしてきたということは何か目的があるんですよね」
「くふっ、ソラランは話が早いねー。ちょっとソラランに頼みがあるんだぁ」
「頼み?」
「うん、ソラランにもメリットはあると思うよ? もしかしたら助かるかもー?」
──助かる。
今の僕にそれ以上に興味を引く言葉があっただろうか。いや、無い。
だから僕はすぐにこう言った。
「わかりました。聞きましょう」
あとで思うと、この時はやっぱり冷静じゃなかったのかもしれない。
こんなアホの言うことを聞いてしまっただなんて……
◇
話してる間にある程度楽になったけれど、まだ怠い。
…仕方ない、レキ先輩の所には明日に行くか。
「おや、朝霧君じゃありませんか」
峰先輩と別れたあとの帰り道、またしても誰かに声をかけられた。
「あ、小夜鳴先生…」
「どうしたんですか? 体調が優れないようですが」
「いえ、大丈夫です。ちょっと怠いだけですから」
「少し、見せてもらえませんか? 大事な生徒にもしものことがあったら困ります」
そういえばこの人救護科だっけ? 非常勤だけど。
「…大袈裟じゃないですか?」
少し呆れたように言った僕だったけれど。
「些細なことから大事になることもあるのですよ?」
どこかで女を泣かせてそうな綺麗な笑顔でそう返されてしまった。
──結局、そのまま押し切られてしまった。
「ふむ、どうやら異常はないようですね」
保健室まで連れてこられ、熱や心拍、はては血液まで調べられてしまった。
でも血液検査ってやっぱり大袈裟だろう。
それともこの人にとってこれが当たり前なのか? 教務科の人間は常識がズレてるし。
「しかし、何かあるかもわかりません。しばらく、休んでいった方がいい」
「いえ、そこまでしてもらわなくても結構です。貧血かなんかだったんですよ」
僕はそう断ると、いつもより重い身体を起こし寮へ帰ることにした。
しかし、僕が体調を崩すなんてな。いつ以来だっけ?
とりあえず、今日の夕食はカロリーメイトだな。
◆◇◆◇◆
峰理子
性別 女
学年 2年
学科 探偵科
武偵ランク A
所属 イ・ウー
緩いパーマの金髪をツーサイドアップに結った童顔美少女。
実はあの大泥棒リュパンの子孫である。しかし、4世と呼ばれることを激しく嫌う。
その血筋が原因か、アリアに強いライバル意識を持つ。
制服をロリータに改造している。
身長147cm。ロリ巨乳。
一時期、出張と言う名目で東京武偵高を離れていたが、最近復学した。
「──そしてこのお話のメインヒロインでもあるー!」
「堂々とウソつくんじゃねえよ! アホ先輩!」