先輩からの命令であるストーカー行為から始まる物語。
主人公の朝霧ソラは、理不尽な先輩、リア充カップル(?)、ヤンデレ百合、アホな同級生、アホすぎる先輩などに悩まされながらも日々を生きていく。
「この中にアタシの紹介が無いことに喜ぶべきなのか…?」
「だ、誰がカップルよ! キンジとは別にそんなんじゃ…」
「あれれ、おかしいなぁ。別にキンちゃんの相手がアリアだなんて一言も出てないんだけど?」
「と、遠山キンジ……先輩。よくもアリア先輩を!」
「はぁはぁ…! あかりちゃん…!」
「こいつらは何を言ってんだ?」
「くふふ。ソラランも大変だねぇー」
「何他人事見たいに言ってんだアホ! とりあえず、みんな僕に一度土下座するべきだと思う」
「………」
「も、もちろんレキ先輩は除く!」
26.「ただいま」
──東京武偵高。
荒事を有償で解決する何でも屋──通称武偵を育てる学校機関。
人工浮島にそびえ立つそれは、この世の物騒なものを丸ごと詰め込み、見事に漏れています、と言った感じだ。
重要なのは、しっかりフタが出来ていないこと。
いや、フタなんてものがそもそもありはしないということだろう。
「…帰って来たんだよね…」
風に乗って運ばれる硝煙の香りをその身で感じながら、僕は進む。
そして、通りすぎるつもりだった休憩所に見慣れた顔を見て足を止めることとなる。
そこには
…あれ? 増えてる…?
「ん? あれって…もしかしてソラじゃねえか?」
「え…? あ、ホントだ。おーい、ソラくーん!」
ちっこい少女を筆頭に五人が僕に近づいてくる。
先頭はちょこちょこしていて大変可愛らしい。命が惜しいので言わないけど。
「久しぶり。ライカにあかり……と島に佐々木」
「何ですか。その明らかに嫌そうな態度。まったく失礼ですね」
「そうですのー!」
「──それより、その子は誰? 新入りだよね?」
「…話を逸らしましたね」
「………」
「はいっ!
礼儀正しい子だ…
この子良い子だ!
…でも、噂って何さ? さりげなく、僕のこと知ってるし。
何か最近、会う人全てが僕のことを知っているような感じがする……
気のせい…だよね…?
「え? 何? 佐々木、おまえ何か変なこと吹き込んでないよね?」
「失礼ですね。私はそんなことはしません」
「じゃあ、島か?」
「麒麟はそもそも殿方の話など、したくもありませんわ」
「……あかり。正直に言うんだ。今なら別に僕は怒ったりしないから」
「何であたし!? しかもあたしの時だけ決めつけてるよね!?」
「そうでもなきゃ、僕みたいな地味な生徒のことを下級生が知ってるわけないだろ!」
「おい、ソラ……おまえ、それ本気で言ってんのか?」
ライカこそ何を言ってるのやら。
僕みたいな友達も少ない(最近認めた)一学生が学年をまたいで噂になったりするわけないだろうに。
「朝霧先輩は、まだ一年生なのにLDスコア900以上のクエストをいくつも成功させている超凄腕武偵として一部では有名ですよ?」
「は?」
「「「はぁぁぁぁぁぁ!?」」」
乾の言葉を聞いた女子たち全員が驚きの声をあげる。
「え? 何? みんなどうしたの?」
……訂正、一人よくわかってない奴がいた。さすがアホの子。
「…しかし、よく知ってたな。そんなの結構調べないとわからないだろうに…」
逆を言えばよく調べれば確かに手に入れられる情報でもあるのだが……
態々調べるか? 依頼もなく、友人関係でもなく。
実際、ライカたちは知らなかったようだし。
「私の目標はSランクですから、そのランクの人やそれに届きそうな人たちを参考としてチェックしているんです」
「んー。でも僕のその任務ってほとんど
「それってSランクの先輩武偵に付き添いが許されるほど、認められているってことですよね?」
…そんなもんかぁ?
レキ先輩がそんな風に僕を思っている所が想像できない。
「しかしLDスコア900か…やっぱ、ソラは規格外だな」
失礼な、誰が規格外だ。
そういうのは、指で挟んで大剣を止める人や空高くから飛び降りながらも髪をパラシュートにして助かる人や2キロ先の米粒を正確に狙撃できる人たちのようなことを言うんだ。
「ね、ねえ、LDスコアって何? みんな何の話してるの?」
「「「「………」」」」
あ、みんながあかりのことを残念な子を見るような目で……
佐々木の奴は一人うっとりしてるが。
大方、「オロオロしてるあかりちゃんかわいい」とでも思っているんだろうなぁ。
…まあ、気持ちはわかる。
「あかり、LDスコアっていうのはだな、簡単に言うと武偵の任務における難易度の目安のことだ」
「因みに、スコア300~400が学生向け、500~700がプロ武偵向け、そしてLDスコア900ともなると一流の武偵企業でもトップクラスのエリートでなければ達成が困難なレベルです」
僕と乾の説明でようやく理解できたのか、あかりは腕を組んで「なるほどー」と呟いている。
そして、やっとことの重大さに気が付いたのか、
「って、ソラ君そんなにすごい事やってたの!?」
「僕としてはLDスコアも知らないで武偵やってるあかりの方がすごいと思うんだけど…」
僕の言葉にさすがのライカたちも渇いた笑みを浮かべた。
「火野ライカァァ! 勝負しやがれー!」
そんな中。一気にこちらの雰囲気を壊して突っ込んできた金髪で小柄な男子。
こんな真夏で金髪ハッスルはなんとも暑苦しい。
出来れば離れてほしいものだ。1AUほど。
「うげ…またおまえかよ…」
「お姉さまには勝てないというのに、無駄ですわ」
「うっせー、チビすけ! 俺は火野にケンカ売ってんだ!」
そう言うこいつも男ではチビの部類に入ると思うのだけど…
島は「しつれいですの!」ってプンプンしてるし。
「お! ソラじゃねえか。久しぶりだなー」
僕を見つけた途端、何か人懐っこい笑みを浮かべてくるが……
「? すいません。どちら様でしょうか?」
「おいおい、冗談きついぜぇ、親友だろ?」
生憎、僕に親友と呼べるものがあるのなら、それはライカとカツェだけだ。
親友親友詐欺はよそでやってくれ。僕以外が出向いて捕まえに行くから。
「なあ、佐々木。こいつ誰だか知ってるか? 何か僕の知り合いらしいんだけど」
「さあ? 初めて見る顔ですね? …ナンパでしょうか?」
おい、その言い方だと、僕が男にナンパされてるみたいだぞ。
「アタシも知らねえぜ。誰だっけこいつ?」
「おいぃぃぃ!! つーか火野はさっき、またアイツかって言っただろうが!」
「そこに気づくとか成長したな田中」
「竹中だよ!! わざとか!? わざとなのか!?」
「だって、おまえいい加減しつけーし」
「しつこい男は嫌われますの」
「そうだよ。ライカに50回も負けておいてー」
あれ? 何か増えてる?
だが、その当の本人は気にした風もなく(ふてぶてしいすぎる)自信満々に言い放った。
「ハッ。オマエらはこんな諺も知らねえのかよ。『五十歩百歩』ってな!!」
「「「「「「……はい?」」」」」」
全然意味が解らないんだけどっ!?
……いや、五十歩百歩って諺は知ってるよ?
でも、一つ言いたいんだけどさ……だから何!?
しばし固まっている僕らの前でドヤ顔の竹中。
何かイラッと来たので蹴っ飛ばしておきました。
◇
女子寮のとある一室。
久しくして訪れたここは面白いくらいに変わり無い。
Sランク武偵ともなれば、もっと豪華絢爛な部屋を取ることもできただろうに。
まあ、レキ先輩ならどこに住んでも殺風景な部屋になりそうだけど。
「帰ってくるのが遅いですよ。ハイマキ2号」
「……へ…?」
………ヒュー………
「って、誰が2号ですか!!」
いやいやいや! そうじゃねーだろ、僕!
間違ってはいないけれど! 確かに間違ってはいないけれども!!
「1号さんなのですか?」
「…えーっと…じゃなくて違います! 1号じゃありません!」
「ではやはり……」
「2号でも3号でも、そもそもハイマキでもありませんから!!」
はぁはぁ…
何で僕は帰って来て、そうそうこんな意味の解らないやり取りをしなければならないんだ?
「冗談ですよ、ソラ」
「……ウソ…だろ…?」
魂の抜かれたようなおぼろげな足取りで僕はレキ先輩にフラフラと近づく。
「?」
レキ先輩は僕の行動の意味を計りかねているのか動くことは無い。
そんな若干不思議な顔をしているレキ先輩の首元へ手を伸ばし──
──無造作にヘッドホンを取り上げた。
「………」
「………」
「………」
「………」ガチャ
──パァン!
「ゴフッ!」
「一体何がしたいのですか?」
蹲る僕からヘッドホンを取り戻し、僕を蔑む先輩。
…間違いない…本物だ…!
だ、だが…ど、どどどどどどどどどどういうことだよ…?
大事件だ!!
人類史に残るであろう大事件だ!!
ブラド? イ・ウー? そんなちゃちなもんと比べるな!!!
そ、そうだ、探偵を呼ばなきゃ…
「教授ぅぅぅ!! ヘルプミィィィィィィ!!!」
「ソラ…」
その…ついにおかしくなっちゃたの、この子──みたいな目で見るなっ!
おかしいのはあなたですからね!?
「おかしいですね……理子さんに言われた通りにやったのですが…」
──
あの
僕がいない間にレキ先輩に何さらしとんじゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!
頭に一気に血が上るのがわかる。
血…そう血だ。
血って赤いよね……
つまり頭に血が上っている僕は必然的に視界が赤くなるわけで……
「どんな理屈ですか。落ち着きなさい。
──スゥ
「………はい」
僕ってわかりやすいのだろうか?
そんなことないよな…? 仮にも
やはりレキ先輩は超能力者でFA?
しかし、そうか…僕に赤い目は似合わないのかぁ……
結構カッコイイと思ったんだけどなぁ。
「私は普段の琥珀色の瞳の方が好きですよ」
「はい?」
す、す、す、す、──すぅ!?
いやいやいや、モチつけ! ……じゃなくて落ち着け!!
あくまで色の好みだ!
そう、たまたま僕の目の色がレキ先輩の好きな色だっただけだ!
「ソラ?」
「何でもないですよー? 僕を焦らせたら大したものですよ」
「お帰りなさい」
…また、脈絡のない。
でも、そうだ。確かに言ってなかった。
味気ない…だけど大事な約束であり挨拶。
帰るべき、納まるべき場所に戻った時、最初に言うべき言葉──
「ただいま」、と
◇
「──それで、今日はどんなご予定で?」
「そうですね……」
帰って来たいつも通りの毎日。
メンドイとは思っている、だけどどこかこのスパイスを楽しんでいる自分もいる。
そして、どこか胡散臭い、けれど信頼できる先輩と共に進んでいく。
今日の仕事は監視か、調査か、狙撃補助か──
「とりあえず、カロリーメイトを買ってきてください」
………
………
はい。これで第一部は終了です。
何も解決してないような、何がしたかったのかよくわからないような終わり方ですみません。
ただ、第一章は主人公とその周りの人物の関係を中心に登場人物紹介的に書いていったので、第二章以降、物語は進み始める感じです。
まあ、ここまでを序章としたのは原作と同じですね。
第二部 璃璃姫の新たなる日ノ出
お楽しみに。
P.S その間に閑話を挟みますけど。