鉛色から空色へ   作:雨が嫌い

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強襲科。
拳銃、刀剣、その他を用いた近接戦による強襲逮捕術を学ぶ学科。
火野や間宮、竹中、神崎先輩、それに過去には遠山先輩も所属していた学科である。
武偵高の中でも特に戦闘能力が高いものが集まっており、東京武偵高三大危険地域の一つである。

卒業時に約三パーセントの生徒が死亡することから『明日無き学科』とも呼ばれている。
……まあ、他の学科が安全かと言われるとそうでもないのだが。


第3斬

3.「ぱんちゅーが何だっていうの!?」

 

 

 

「アリア先輩とあんなに近く…」

ギリギリと音が出そうなほどネクタイを噛みしめる間宮。

だが間宮、ネクタイはエサじゃないぞ。

さて、今日も今日とて遠山キンジ及び神崎・H・アリアの監視をしているのだが、少々妙なことになっている。

まず、先輩方。そしてそれを尾行?している間宮。それを尾行している風魔。その更に後方にいるのが僕だ。

多重尾行と言うやつだろうか。

今日の先輩方は仲良く強襲科から出てくると、かけっこした後そのままデート。全くもってうらやましい。

二人で仲良くハイタッチなんてしてた時には、軽い殺意を覚えた。

間宮はまあ、神崎先輩のストーカーだろう。教室でも好き好きうるさいし。

で、風魔は遠山先輩の戦妹だからね。遠山先輩も間宮には気づいているみたいだし、自分で呼んだ可能性の方が高いかな?

 

しばらくすると先輩二人に新たな動きがみられた。

「レキ先輩、遠山先輩と神崎先輩は別行動に移る様子。どちらを追いますか?」

『キンジさんを』

「了解しました。ところで間宮──うちのクラスメイトも二人を尾行しているみたいなんですが、これはどうします?」

『間宮あかりは先日アリアさんの戦妹になった者です。警戒は要りません。ただ、悟られないように』

間宮が神崎先輩の戦妹!? 何その冗談。あいつ強襲科Eランクだぞ?

賄賂でも渡したのか? いや、あいつは貧乏だったっけ?

それを言うなら僕も何でレキ先輩の戦弟なんだってことになるのだけど。

 

間宮もどうやら遠山先輩を追うようだ。神崎先輩につく悪い虫とでも思っているのだろうか。どちらかと言えばついてるのは神崎先輩の方なんだけどねぇ。

それにしても尾行下手だなぁ。まあ、間宮が目立つ分こっちは逆に楽だけど。

風魔はバカで貧乏なのを除けばかなりのやり手だからね。普段ならもっと神経使うところだったよ。

「間宮殿そこまでにされよ」

「!?」

間宮の前に外灯に逆さ吊りで現れた風魔。

我慢できなくなった遠山先輩が間宮を追いはるように命じたのだろう。

ただ、この時の僕は思ったんだ。

──逆さになってんのに、何でスカート落ちてこないんだろう、と。

スゴイ気になるけど、ものがものだし聞くわけにもいかないしなぁ。

って、これじゃ僕が女子高生のスカートを凝視している変態じゃないか。

 

風魔はわざと間宮に姿を晒し逃げる。遠山先輩がいる場所とは逆方向に(・・・・・・・・・・・・・・・)

この時点で僕は間宮たちから離れ一人遠山先輩の監視に移っていた。

しかし、間宮のことは撒けなかったようだ。

しばらくして、間宮が遠山先輩に追い付いた。

「なんだ風魔の奴。撒けてねえじゃねーかよ」

「!? …遠山キンジ……先輩」

今の微妙な間から間宮は遠山先輩のことを頭の中では呼び捨てにしてることがうかがえる。

 

その後の言い合いで遠山先輩的に間宮は無害認定されたようだ。

まあ、少なくとも間宮はノーマルな男が欲情するタイプじゃないし、直接的な被害としても一般中学出身というのが効いたのだろう。

このままお流れになるだろうと僕は思ったのだ。

ただ、笑いの神はこのまま終わるのを良しとしなかった。

「ぱ、一般中学(パンチュー)がどうだっていうんですか!?」

ブオン!

丁度、パンチューと言った時だった。

風が吹き間宮のスカートをまくりあげた。

どこかの需要に応えたかのように、見た目通りのお子様パンツ。いや、ぱんちゅ。

思わず吹いてしまった僕に罪は無いだろう。

遠山先輩は目を手で覆って逃げかえって行った。…先輩。その反応は色々マズイと思います。

 

──今日の記録。遠山先輩はロリもイケる。

 

 

 

 

「はぁ……」

まさか、初めてのパンモロがお子様パンツとは……

さすがの僕もショックを禁じ得ない。

「いつにもまして怠そうだな」

声の先には火野ライカが立っていた。

金髪長身スタイル抜群。顔も美人なのだがそこらの男よりも男らしい性格も相まって、男にモテない残念美人である。一部の女にはモテそうだが。

「おい、今失礼なこと考えなかったか?」

「気のせいじゃないか?」

まあ、それでも僕の周りの人間の中では比較的まともな部類に入るので、僕自体としてはわりと好印象なんだけど。

クラスで唯一の友達と言ってもいい。間宮に竹中? 知らん。

──せめて見るんだったら、コイツクラスのパンツがよかったな……って変態か!

危ない思考に陥るところだった。間宮のぱんちゅは思ったよりも僕を蝕んでいたようだ。

「そんなことより、何か用?」

「ああ、いや、お前ならもう知ってるかもしれないんだけどさ──「ソラー!! 大ニュースだぞ!!!」……騒がしいのが来やがった」

火野の言葉を遮って現れたのは案の定竹中(バカ)だった。

ウザいくらいの大音量だ。よほど興奮しているらしい。

「お、そこにいたか! おーい! ソラ聞いてくれよ!!」

「うるさい」

「ゲフッ!!」

蹴られた腹を抱えて蹲る竹中。

まったく、あまりの騒がしさについ足が出てしまったじゃないか。

「おまえも容赦ねーな」

いや、火野こいつはこれくらいしないと黙らん。強襲科の奴らはウザいくらいに打たれ強いからね。

「で? 火野さっきの話の続き」

「うん。知ってるかもしれないけどさ、あの遠山キンジ先輩が強襲科に帰ってきたんだよ」

ああ、それか。うん知ってる。尾けてたし。

「ああ、それ──「そうなんだよ!! キンジ先輩が戻ってきたんだ!!!」うるさい」

「ゲフッ!!」

再び蹲る竹中。こいつは学習という言葉を知らないのだろうか。

「その話なら知ってるよ。昨日、軽い騒ぎになったらしいね」

「なんだ、やっぱり知ってたか。人気者だからなぁ、あの先輩。いろんな意味で」

「当り前だぜ! なんたって二年最強の人だかんなっ!」

──こいつ、どんどんリカバリーが早くなっていくな。

そして、この流れは少しまずい。

「ちょっと待ったー!」

やっぱり来た。

「あかりか、おはよう。今朝は遅刻しなくて済んだんだな」

「おはようライカ、朝霧君。昨日はアリア先輩の家に泊まったからね」

えへへ、起こしてもらっちゃった、か。

佐々木が戦姉妹契約のため遠出していてよかった。今の発言は色々とヤバすぎる。

「って、そんなことより! さっきのセリフは聞き捨てならないよ! 二年最強はアリア先輩だって何度言ったらわかるの!!」

「ほらね、メンドクサイことになったよ……」

「朝霧君も聞いてる!? 大体遠山キンジなんてただの変人じゃん!!」

なんで、いつも僕にフるんだろ。

何、おまえ僕のこと好きなの? だが残念だったな、僕は健全な男子高校生だから見た目もパンツも小学生なおまえは恋愛対象にならないんだ。

「それこそ、聞き捨てならねえな! キンジ先輩のどこが変人なんだよ!!」

いや、どう見ても変人だろあの人。

「…まあ、確かに仮にも女子のパンツ見て本気で、目が腐るー、みたいなポーズ取る人は健全ではないよねー」

「…え? 何で知ってるの?」

やべっ。うっかり口が滑った。

「え、あ、何のこと? いや、実際見たとかではなくてだね。結構日常的にそうらしいからさあの人、女嫌いで有名だし」

──女たらしでも有名だが。

「そ、そうなんだ…。日常的なんだ…」

やっぱり変人だ…。引きつった顔でそう呟く間宮。

遠山先輩の名誉と引き換えに何とか誤魔化せた。ごめんね先輩、心の中で謝っておくよ。

「女なんて軟弱なものに目を向けない先輩カッケー!!」

そして、おまえは随分と都合のいい解釈するな。さすがアホ。

「やっぱり、おかしいよ! あんな変人がアリア先輩と一緒に……」

その神崎先輩も変人だから安心しとけ。もちろんおまえもだ。よかったな、みんなお揃いだぞ。

だがまあ、その二人がつるんでいるのは別に変人同士だからでもましては恋人同士だからでもないだろう。…デートはしてたけど。

「──『何か』、起こるのかもね」

「何かって何? 朝霧君」

「何かは何かだよ。だってその変人たt──ゴホンッ。遠山先輩と神崎先輩ってまあ、どっちが強いかは置いといてさ」

「アリア先輩だって!」

「キンジ先輩に決まってる!」

「置いとけって言っただろうが。──まあ、とにかく強襲科Sランク相当なら二年どころか学園全体でも屈指の実力者ってことでしょ? そんな二人が組もうとしているってことはさ、それだけ大きなヤマがある、のかもよ?」

「なんだよ、大きなヤマって」

「さあね、あくまでも推測だし」

そこんとこレキ先輩も教えてくれないしね。あの人も関わってる気がするんだよなぁ、ピンポイントあの二人をで監視するくらいだもん。

「うー。そういえばアリア先輩も捜査のためとかなんとか……」

「まあ、どちらにしても我々一年には関係ないことでしょ」

というか、関係したくないことだな。Sランク相当の仕事なんてどう考えてもヤバすぎる。

「……関係、ないって……」

「どうした、あかり?」

「関係ないってなんてことないもん! だってあたしは──」

「たとえ、戦姉妹でもお互い関わるべきでないところは存在する。当たり前だろ」

「──ッ!」

睨むなよ。しかも涙目だし、僕が泣かしたみたいじゃんか。

これだから子供は苦手なんだよ。(同い年です)

「あーほらアレだ」

「?」

「間宮が話すに足ると思われるまで成長したところを見せれば、神崎先輩も自然に話してくれるんじゃないかな」

「! そ、そうだねっ! よし、アリア先輩の期待に応えるためにも今日も頑張るぞー!」

ふう、なんとかフォローできたみたいだ。

やる気なのはいいことだ。あとは精々空回りしないようにな。

「なんだかんだで、朝霧も甘いよな」

「火野、おまえが飼い犬の手綱をしっかり握っておかないせいだからな」

「飼い犬って……」

「似たようなもんでしょ?」

「いや、それならおまえも飼ってんじゃねえか、(竹中)

「キモイこと言うなよ。だからモテないんだ」

「モテ…!」

ガーン! その一言は余程応えたのか床に手をついてショックを受けてる。

なんだ、気にしてたのか。それは悪いことを言った。

因みに自分のことは棚上げである。

「──えへへ、それでアリア先輩に褒めてもらって……ああ、アリア先輩……ブツブツ」

間宮はなんかトリップしちゃてるし。

とにかくまあ、

「今日は佐々木がいなくて本当によかったな…」

 




◆◇◆◇◆


間宮あかり

性別 女
学年 1年
学科 強襲科
武偵ランク E

ソラのクラスメート。先輩であるアリアに心酔している。
Eランクと最低レベルの成績だが、根性は人一倍あり、その根性でアリアと戦姉妹契約を結ぶことができた。
中学の終わりごろに一般の中学校から転入してきた。何やら訳ありの少女。
ソラからはただのアホな子だと思われている。
身長139cm。小学生並みのチビ。

友達の火野ライカと佐々木志乃とは大体一緒にいる。

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