ここまできたけどFragmentのルール。
④朝霧ソラ? おお! 新キャラか!?
ねえ、知ってる?
強くなるには才能がいるんだよ?
遺伝、人工的、環境。強い者には理由があるの。
ねえ、知ってた?
キミは、『才能』が全くないんだよ?
遺伝子も人の手の介入も環境もまーったくダメ。
まだ、知らないの?
キミはヒーローになんかなれないんだよ?
4.「今日雨が降る。明日不吉が降りかかる」
ザーッ!
雨の音が聞こえる……
雨は嫌いだった。
濡れるし、傘持たなきゃいけねえし。
でも……
少しでもこの憂鬱な気持ちを流してくれるなら、この音で考える頭をごちゃごちゃにしてくれるなら。
火が出るほど熱くなった頭を冷やしてくれるなら──
どれだけ、ここにいたのかわからない。
もう自分も雨の一部なんじゃないかと錯覚しそうになった時だった。
──スッ
急に、静かになった…?
「何やってんだよ。竹中」
差し出された傘を見る。
ぼんやりと思考が働き始める。
本当に面倒くさそうに琥珀色の瞳を半目にしたソイツ。
「とりあえず、僕の家に来るか?」
◇
結局、家には連れてかれた。抗う気力も無かったから。
「見事に痛めつけられてるけど、傷自体は大したことないみたいだね。ほら、これに着替えて。…ちょっとぶかぶかかもしれないけど」
「ああ…」
「今、お風呂沸かしてるから、終わったら入れよ。体冷えてるだろうし」
「ああ…」
「はぁ…。でも何であんなところで傘も差さずにいたのさ。竹中の寮はこっちじゃないでしょ?」
「ああ…」
「…こりゃ、重症だ」
『お風呂が沸きました♪』
「……まあ、続きはあとで。とりあえずスッキリして来い」
そうして、促されるまま俺は風呂へ行かされた。
傷…しみそうだな。
──「さて僕は僕でやることをするか」
………
風呂と共に熱を頭から幾らか吐き出した俺は、正直に話した。
聞かれたから、話した。
それにしても、ここがソラの部屋か……
小奇麗な、しかし生活感がしっかりある。
端には本やお酒(?)のボトルがまとめてあるけど……
「ふーん。つまりは自分がなす術なくやられた相手を自分より弱いと思ってた奴が倒しちゃったと」
「別に、そういうわけじゃ……」
「じゃあ、どういうわけ?」
「……それは…」
「いやいやいや。おまえ本当に竹中かよ? しおらしくなっちゃってまあ」
「…ソラの方こそ…なんか優しいな」
「は?」
ソラはハトがベレッタを喰らったような顔になると、少し顔を赤くして睨み付けてきた。
スゥっと琥珀色の瞳が細まる。
「勘違いするなよ。僕はただ、メソメソしてる奴がいると気が滅入るからこうしてるだけだ」
「? じゃあ何で態々俺を連れてきたんだ?」
「雨に打たれた知り合いを放置できるほど、僕は冷血じゃないだけだ」
ふん、と顔を背けられてしまった。
…やべえ、怒らしちまったか?
「まあいいよ。僕には関係ないことだしね。──とりあえず、ホレっ」
「?」
いきなり放り投げられた何かをキャッチする。
何だこれ? …カロリーメイト?
「これでも食って、さっさと寝れば? 僕が言うのもなんだけど、疲れた時は寝るのが一番…かもよ?」
「そうだな…まあこんな状態じゃ、悪夢でも見るかもしれねえけど」
「……それでも、僕ら人類は眠るしかないんだ……」
な、なんだ?
ソラの奴、急に達観したような顔になったぞ?
「それにしても、カロリーメイトか…」
「チーズ味が気に入らないなら、チョコ、メープル、フルーツがあるけど? それに僕の家はキットカットもソイジョイも常備してあるから、選り取り見取りだよ。因みにカップ麺はダメだ。今あるのはお気に入りだけだから」
「普通のご飯は?」
「サトウさん家のなら」
「…炊飯器は?」
「オブジェと化してある」
「……一応聞くけどさ、自炊できんのか?」
「愚問だね。この前ゆで卵作ったよ」
「………切ったり、焼いたりは?」
「それは犯罪者相手で十分だろ?」
いや、犯罪者でも焼いちゃダメだろ…。
意外だ…ソラでも苦手なことってあるんだな。もっと、完璧超人な奴だと思ってた。
「何だよ。気に入らないのか? 僕の先輩なんてカロリーメイトを至上の食糧のようにコンビニで箱買いしては毎日朝昼晩食しているのに」
「…それはありえねえだろ」
こんな場しのぎの携帯食糧を好んで食う奴がいるわけねえじゃん……
「…ふう、そういう時代も僕にはありました。──とにかく、さっさと寝る! いつもの竹中もメンドイけど、今の竹中はもっとウザメンドイから」
「ソラ…」
「あ、寝るのはそこのソファー使ってね。もちろん僕はベッドだ」
後半態々言う必要あったのか知らねえけど……
今、寮に帰るのも億劫だしな。
暗くなったリビング。
ソラは既に寝室へ行ったようだ。
ごちゃごちゃして眠れないと思ってた俺の頭は溜まっていた疲れには逆らえなかったのかあっさり休息を許した。
◆
『ああ、そういうことで竹中は僕の家だ。傷は大したことなかったし、僕も医療技術をちょっとかじってるから大丈夫』
「そうなんだ…。よかった」
あんなことがあった今じゃ、竹中のことも心配だったから。
ひかちゃんは赤ちゃん状態だったし、一度家に帰ったけど、やっぱり竹中が心配になってののかを家に送りに来たソラ君に聞いてみたところ……
「え? 何で竹中? もしかして4P? ハーレムだったの?」
…4P? 何というか…よくわからない大変な誤解を与えていたんだけど。
桜ちゃんにも言われた通り、誤解は解きゃなきゃって、事情をしっかり話すと……
「──そう、なら僕も竹中を見かけたら連絡する。まあ、家に帰ってるだけだろうけどね」
と返してきてくれた。
そして、しばらくしてから。
PLUUUU!
ピッ
『もしもし、僕…ソラだけど』
「えっと…名前出てるから名乗らなくて平気だよ?」
『え、でも、こうして日常的に名乗って出ないと、あかり詐欺とかに引っかかりそうだし…』
「むぅー。あたしそんな間抜けじゃないもん!」
『あはは。冗談だよ。えっと、そうだった。竹中見つけたよ。その報告をしようと思って』
と、連絡が来たのだった。
………
そのあと、ソラ君と少し話して携帯を切ると、目の前にひかちゃんがいた。こっちを鋭い目つきで覗き込んでいる。
「わっ!」
な、なんで、こんな近くにいるの!?
「あかり、今誰と電話していたんだい?」
あ、ひかちゃんの様子がさっきまでと変わってる。
「ひかちゃん、元に戻ったんだね」
「…うん。見苦しいところを見せたね…」
ひかちゃんは顔が若干暗くなる。
やっぱり、恥ずかしかったのだろう。赤ちゃんみたいになった記憶があるのは。
「で、でもひかちゃん可愛かったよ?」
「か、可愛いって…!」
今度はビックリするくらい早く顔を上げてワタワタと手を振る。
「そ、それより! 今誰と連絡してたの」
何でそんなに電話の相手が気になるのかなぁ?
別に、隠すことじゃないけど。
「誰って、ソラ君だけど…」
というか、ひかちゃんってソラ君と面識ないよね。
名前は知ってるだろうけど。
「ソラ…朝霧ソラか!」
また顔を伏せてワナワナと震え始めたひかちゃん。
そして、唐突に──
「あかりは…朝霧ソラと付き合ってるのか?」
「ええ!?」
な、なんでそうなるの!?
「ソラ君とはただのお友達だから!」
確かに、ソラ君はちょっとかっこいいけど、そういう風に見たことないし、何かそういう風に見れないし。
どちらかというと、おにい──ううん。ち、違うよ!?
「そ、そうだよね! うん。よかった……
「?」
な、何だろう…? 聞こえなかったけど、それでよかったような気がするよ。
「そういえば、こだまちゃんとのぞみちゃんは?」
「さっき連絡した。今、部屋に帰ったみたいだよ」
「そうなんだ。あ、ひかちゃんは泊まっていく? もう遅いし」
「いいの?」
「うん。ひかちゃんなら大歓迎だよ!」
お泊り会ってなんだかウキウキするよねっ。
それに、ひかちゃんと会えたのは久しぶりだから、もう少し一緒にいたいしね。
「…あかり…」
ひかちゃんも喜んでくれてるみたいでよかった。
「お姉ちゃん。少しいい?」
「ののか? 何?」
「ひかちゃんの様子はどうかなって」
ののかがあたしの部屋に入ってきた。
「久しぶり、ののか。可愛くなったね」
「ひかちゃんもお久しぶりです。か、可愛いなんてそんな…」
ひかちゃんの言葉にののかが少し照れた風になる。
「そういえば、ののかはソラ君と夜ご飯食べたんでしょ? 何食べたの?」
誤解があったから、しょうがないことだけど、いいなーと思ってしまう。
ソラ君お金持ちだし。毎日おいしいもの食べられるよねー。
……こんなところにもランクの差が…!
で、でも、この前Dランクにはなったんだし、いつかあたしも……
「あのね、近くのレストラン──「ちょっと待って!」…えっと何? ひかちゃん」
ひかちゃん、いきなりどうしたんだろう?
またまた焦った顔になって、ののかを見てるよ。
「の、ののかは朝霧ソラと夜ご飯を食べたの…?」
「え、そうだけど…」
「……ま、まさかそっちに手を回していたとは……!」
「あ、あの…ひかちゃん…?」
何か怖いよ…?
ブツブツって何言ってるの?
「何か変なことはされなかったかい!?」
「へ、変なことって…ソラさんはそんなことしませんよ? それに、ソラさんなら……」
ポッ
ののかの顔がうっすらと朱に染まる。
「既に、遅かったのか…!?」
ガクン
ひかちゃんが膝と手を床につけてうなだれる。
ほ、ホントに何!?
ひかちゃんすごく変だよ!?
ど、どうしよう…あたしが鷲抂を跳ね返しちゃったからこんなことに?
鷲抂ってやっぱ危険な技だ……
ののかは部屋を出ていった。
ひかちゃんの様子を確認しにきただけみたいだ。もう夜も遅いしね。
…あ、そういえば──
「ひかちゃん。竹中にも謝ってね。竹中にも酷いことしたんだから」
「………」
今度はムスッとしてしまった。
ほっぺがリスみたいで可愛いけど……
「あかり。ボクがいるのに男の話ばかりとは酷いじゃないか」
えーーー!!?
な、何で拗ねてるの?
「大体、あかりたちはともかく、あの男子は勝手に首突っ込んできただけだ。謝る必要なんてないね」
「ひかちゃん! ダメだよ。悪い事したら謝らなきゃ」
メッだよ。
「…うっ…(そんな顔で言うのは卑怯だ)。──わかったよ。ただ一つ条件がある」
「条件…?」
「朝霧ソラはそいつの友達なんだろ? だったら、朝霧ソラと戦ってボクが負けたら謝る」
「その理屈はとてつもなく変だよ!?」
勝手にソラ君が巻き込まれてるんだけど。
「あかり、考えてみるんだ。このままだと、ボクは謝らないぞ。だったら少しでも謝る可能性がある方法を取らせるべきなんじゃないか?」
た、確かにその通りだ!
「そ、そっか。うん。ソラ君に頼んでみるよ! ……あれ?」
やっぱり、何かおかしいような……
「言質は取ったからね。……朝霧ソラ、覚悟しろ……!」
あれ? あれ? あれぇー???
本人のあずかり知れぬところで、ソラに危険が迫ってた。
「出番が来たと思ったら……」
三話ぶりにちゃんとした台詞が出てきたソラ君。
彼に明日は来るのか!?