鉛色から空色へ   作:雨が嫌い

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長くなってきたけどFragmentのルール。
⑦もう、竹中オリ主でいいんじゃね?




Little Hero's ⑦

ここはとある路地裏だ。今ここには俺と一人の少女いた。

あの不良共は俺が二人のした所で腰抜かして逃げて行った。

「…ったく、武偵相手にケンカ売るなっての」

確かに俺は才能はねえ。でも、だからってただのチンピラにやられるほど落ちぶれてはいねえはずだ。

……って、武偵やめるんだった。

「…あ、あ」

あー、そうだった。

「おい、大丈夫かよ」

襲われていた少女を心配してみるが……何故か、助けたはずの俺まで睨んでくる。

何か、こう、キッって感じに。

「…あ、あの程度の者たちなど、私一人でもなんとかできました」

いや、オマエ完全にビビってたじゃねえか。

まるで男と相対すんのが初めてなんじゃねーかってくらいに。

だが、少女は言外に俺の助けなどいらなかったと言ってくる。

「あなたの助けなどいりませんでした」

言内に言いやがった。

「おい、助けてやったのに何だよ、それ」

「頼んだ覚えはありません。それに、如何にも短絡的で武偵らしい解決法です」

「おう、俺は武偵だからな」

やめるけど。

「貶しているのです。野蛮で粗暴極まりないと」

「俺はともかく、武偵までバカにすんじゃねえ! 武偵ってのはな、ヒーローなんだよ!」

「はっ。金銭のために武力を振るう卑しい職業のどこがですか?」

何だよ、コイツ!

スッゲームカつく! もう、さっきの不良なんて目じゃねえくらいにだ!

「つーか、オマエもなんでこんなとこにいんだよ。こんなとこに女一人とかオマエこそバカじゃねえか?」

「そ、それは……」

気丈なふるまいを崩して狼狽える始める少女を見て『ココだ!』と俺は追撃を掛ける。

「迷子にでもなったのかよ?」

「──!」

どうやら、当りみてえだ。

何か知らんけど勝った気分だ。やーい。やーい。

「ハッ。この年で迷子かよ。ダセェ」

「~~~ッ!」

余程悔しい、そして恥ずかしいのか、顔を真っ赤にして、もう目からビームでも出んじゃねえかってくらいに睨んでくる。

まあ、からかうのはこんくらいでいいか。

「──で、どこ行きたいんだよ?」

「は?」

「案内してやるってんだよ。この心優しい『武偵』様がな」

馬鹿にされた嫌味も込めて言うと、更にキッと睨み付けてきて。

「あなたの助けなどいらないと言ったはずです」

「また同じ目に遭ってもいいならいいけどよ」

こいつ絶対ここら辺の人間じゃねえしな。

それになんか常識離れしてるっていうか、絶対また迷うな、多分。

そんな感想を俯いてワナワナと小刻みに震えている少女を見て抱く。

「………ました」

「あん?」

「わかりました!! いいでしょう。案内されてあげます!」

バンッと効果音が付くくらいに薄い胸張って了承する少女。

「お、おおう…」

俺は急に堂々とした態度をとる少女に若干引いた。

「私の心の優しさに感謝してください」

「え、あ、ありがと…?」

あれ、何かおかしくねえか?

思い通りになったはずなのに、なんか納得いかねえんだけど。

……まあ、いっか。

「で、どこに行きたいんだ?」

「──私のお姉様…星伽白雪お姉様のところです」

「え?」

えっと、星伽ってあの生徒会長のことか?

妹いたのか。……まあ、確かに似てるかもしんねえな。黒髪だし。

でも、俺あの人の部屋知らねえぞ…。

「あ」

「自分の顔の間抜けさにでも気が付いたのですか?」

「ちげーよ!! ただ、思いついただけだ」

そうか、いや、でも、まあ道案内だししょうがねえよな!

今まで、理由を何かとつけて行かなかった場所。

そして、星伽先輩もいそうな場所だ。

「よし、じゃあ行くぜ!」

「いきなり興奮してどうされたのですか? 正直気味が悪いです」

コイツはムカつくこと以外言えねえのか!!

 

 

 

7.「立ち上がるキッカケが転んだ原因より大きいとは限らない」

 

 

 

「いや、何でだよ」

時は戻って、夜。キンジ先輩部屋前。

下げた頭の上から聞こえるのは困惑した声だった。

なんだか、このまま場が膠着してしまいそうな気がしないでもないが、頼み込んでいるこちらとしては易々と頭はあげられない。

武偵をやめると決意して、そしてこの人と出会った。

運命だと思った。まあ、案内してきた時点で期待してなかったと言えば嘘になるけどな。

どうせ終わるのだったら、最後にこの人のサインを記念として貰いたかったから。

そしたら、綺麗に、思い出として終わることが出来る。──そう思ったんだ。

 

「…はぁ。どういうつもりか解らんが…。やらんぞ、そんなこと。というかおまえ誰だ?」

──!

やっぱり、覚えてもらえては無いのか…。

まあ、そうだよな…俺はヒナの奴とは違うんだ。

つーか、覚えてもらえたらどうだっていうんだ……俺は武偵をやめるんだぞ?

……でも、ここで名乗らないもの先輩に対して失礼だよな。

「い、1年A組、竹中彰っす!! 専攻は強襲科で、えっと、あの…キンジ先輩のファンやってるです!!」

「は?」

や、やべえ、何言ってんだ俺!

で、でもファンなんだし…違う、サイン欲しいって言ったくらいだし、ファンだと言うのは先に……

えーっと、とりあえずどうすれば…?

何かキンジ先輩もあっけにとられているし。

「俺のファン? 何かの間違いか? 俺はいたって普通の一高校生だぞ」

「そ、そんなことねーです! キンジ先輩はスゴイ人っす!」

中学の時だってそうだった。

大事な時こそ力を発揮するヒーロー。

だが、そんなヒーローは今、本当に面倒くさそうな顔をして言った。

「俺にどんな幻想抱いてるか知らないが。俺は力の無いただの高校生なんだよ」

嘘だ。

いくらなんでも、それは普通の高校生の敷居を高く上げすぎだ。

キンジ先輩が普通だったら、俺なんていろいろ終わりすぎてる。つーか、むしろ世界が終わる。

「…俺…武偵高やめるつもりなんです。だから最後の記念に……」

おい、何言ってんだ!

断られたんだぞ。俺はいつからこんな女々しい奴になったんだ。

だけど、キンジ先輩はその言葉にどこか思う所があったかのような反応をした。

「やめる…? ……もしかして、おまえ、朝霧のルームメイトか?」

「え? ソラを知ってるんすか?」

「ん、ああ。仲が良い後輩ではあるな」

な!?

そ、ソラー! だったら紹介くらいしてくれてもいいじゃねえか!

「……俺に関係なくは無いってそう言うことかよ……」

「どうしたんすか?」

「いや、こっちの話だ」

とにかく、と最後にキンジ先輩は言った。

「だったら尚更、俺のサイン何かに価値はねえよ」

 

 

 

 

……結局、サインは貰えなかった。

揺れに揺れる今日の一日を顧みて、俺も中途半端だよな…と考える。

キンジ先輩を見た瞬間、まだああなりたいって思ってるんだもんな…。

どこかスッキリしない、気落ちした状態でトボトボと帰る。

……ん?

「あれ? どこに帰ればいいんだ?」

思えば今日はソラに追い出されたからこそ、こうして外を出歩いてるんだった。

周りにある外灯だけが頼りに道なりにただ歩いてきた俺は、ようやく自分の状況を認識する。

自室に戻る…のは最終手段だ。

でも、他に候補があんのかって言われると……

「…はぁ」

何もかも決まってない現状に嫌気がさすぜ…。

いっそのこと『ワル』にでもなるか?

でも、ワルって何すりゃいいんだ? ……盗んだバイクで走り出すとかか?

犯罪じゃねーか!!

って、当たり前か、ワルだもんな。

バイクは……周りにねえな。つーか、人も全然いないし。

時間帯のせいか、この場所のせいか、とりあえず今俺がいる場所は俺以外に誰もいない。

少なくとも真っ暗な空間を照らす外灯によってできた視界の範囲の中では。

なら、手始めに……ポイ捨てでもやるか!

「ハッ!」

重大なことに気づいちまった。

俺、ゴミになるようなもん持ってねえ…!

なんてこった……ワルになるのがこんなに難しいなんて……

くそー、俺にはワルになる才能も無いのか!

躓きに躓き、頭を抱え込んでしまいそうになったとき、スッと俺の横を誰かが通り過ぎた。

綺麗な金髪の少女だった──

軽くパーマのかかっている長い金髪を両側頭部で結っている髪型。

俺みたいな染めもんじゃない。本当の、本物の。

──ポト

そして、何かを落としていった。

「お、おい…」

落としたぞ、そう声を掛けようとしてハッとする。

俺、今ワルになろうとしてたんじゃなかったか?

人が落とし物をしたのがわかっていて、声もかけないなんてすげえワルじゃねえか。

金髪の少女は落し物に気が付かず、闇に消えて行ってしまった。

俺はというと、少しの達成感と結構な罪悪感を感じながらそれを見送っていた。

ふと、気になった俺は、完全に少女がいなくなったのをもう一度確認して、その落とされた何かを拾い上げる。

「漫画…か?」

タイトルは何々…『史上最強の弟子──』。

気まぐれにパラパラと流し読みをする。

「!?」

こ、これは──!

 

 

 

 

「おおおおーーーー!!」

すげえ!

何だこれ!!

超感動した!!

そんな気持ちの高ぶりを抑えることもせず、走り続ける。

目的地はソラの部屋だ。

 

思わず続きが気になった俺は、大急ぎで本屋に向かいすぐさま全巻購入。

公園のベンチで一晩中、読み漁っていた。

コーフンをそのままに、いや、湧き上がり続けるこのコーフンを俺以外にも伝えるために、俺はソラの部屋に殴り込んだんだ。

「ソラー!! 聞いてくれよ!」

ドアを開けると同時に叫び部屋に突入する俺。

 

「………」

 

だけど、部屋にソラはいなかった。

かわりに──小柄な少女がいた。

青みがかったショートカットの髪とジトーっとした表情が特徴的な少女だ。

その少女はリビングにあるソファーにまるで置物のように座っている。

「……誰だ?」

「………」

答えないのかよ!

突拍子もない予想外の事態にさっきまでの興奮も一気に冷め、ひたすらこの場をどうしようかを考え始める。が、大した知恵は出てこない。

このポンコツヘッドめ! って、誰がポンコツだ!

「あ、あのー、誰だ…っすか?」

ここに来て先輩である可能性に気づき敬語を使ってみるが……

「………」

やっぱり答えない。

そりゃあもう、三月の頃の初期ソラみてえに、無視無視超無視キング状態。

どうすりゃいんだよ、この状況!

…えっと、ソラの時はどうしたんだっけ………あ、とにかく話しまくったんだよな。

そしたら、いつの日か──「うるさい!」って蹴りと返事をくれたんだっけ。

だが、どうだろう?

この人は何となくだけど、ソラよりレベルが上な気がするぜ…。

「………(ジー)」

「うっ…」

何だよ、今度は何なんだよ!?

お願いだから喋ってくれよー!

「あ、これっすか? えっと、見ます?」

視線の先に俺の持ってきた漫画があることに気づいた俺は、恐る恐るその一つを渡してみる。

あ、手に取った。

「………」

パラパラと本が捲れる音だけの時間がこの部屋に訪れる。

気まずさにやられながらも、対面に正座する。何かドキドキする。

数分後、本が閉じられる。

そして、スぅっと手のひらを上にした状態の手が伸ばされる。

あ、次の巻か…。

また、恐る恐る漫画を渡す。

「………」

パラパラと本が捲れる音だけがこの場を支配する。

読み終わる。次巻を渡す。読み終わる。次巻を渡す。

それをこのあと、何度も何度も繰り返すことになった。

ただひたすらに……

 

………

 

………

 

………

 

………

 

………

 

──パタン

ついに最新刊を読み終えたようだ。

既にこの部屋に来てから数時間が経っている。青かった空は赤に染まり始めている。

「……えと、どうでした?」

期待を込めて感想を求めてみると──

「ユニーク」

変わり映えの無い無表情を崩さずに、ジッとこっちを見ながら、そう一言だけ返してきた。

ソラは帰ってこなかったが、この人の返事は返って来たようだ。

正直、この人自身の方がユニークすぎるんだけどよ……

「そ、そりゃあ、よかったっす」

「躾けの参考として大いに役に立ちました」

躾け……? 犬でも飼ってんのか?

いや、でもこの漫画、犬なんか出たっけ?

「ソラは少なくとも昨日の午前10時から帰ってきていませんよ」

「え、そうなんすか?」

何か、今になって知りたかった情報がサラって出てきた。

あ、俺のあとにソラも外に出たのか。

って、あれ? もしかして…今の言い方からして、この人昨日の朝、俺がこの部屋を出てからずっとここにいたんだろうか?

「それで、あのー……ソラとどういう関係なんすか?」

もしかして、彼女とかか?

いや、でもアイツって火野と付き合ってたんじゃなかったのかよ?

ハッ。

まさか、これが俗にいう二股ってやつか!!

すげえ、ドラマの中とかでしか見たことないから本当に存在する現象なのか今この時まで疑ってたぜ。

「私はソラの戦姉(アミカ)です」

「! ああ、それで…」

それで、部屋に入れたのか。勘違いしてた。

今考えれば、ソラがいないってことはドアに鍵がかかっていたはずだもんな。

アミカ、アミコの契約はルームキーの共有から始める。って、異性同士でもやってる奴はあんまりいねえだろうけど。

「………」

「あ、俺は竹中彰っす。えっと、少し前からソラの居候やってて」

ソラの戦姉(アネ)なんだったら、しっかり事情は説明した方がいいよな。

でも、そうかー。この人があの(・・)『レキ』先輩なのか…。

「竹中……竹中治奈の縁者ですか?」

「あいつとは関係ねえ!!」

言ってしまってから後悔する。

「………」

「す、すんません…。でも、本当にあいつとは関係ないんです」

いたたまれねえ……

そう感じた俺は謝ると同時にその場を逃げていた。

その時、背後から突き刺すような視線を感じたのはきっと俺の錯覚だったのだ。

 

『兄さん、あなたのような無能が外で生きていけると本気で思っているのですか?』

 

──切りたい縁だけが切れるなんて、いつから思っていたんだろう。

だからこそ、俺に帰る場所は無い。

 






──その数十分後。
「あれ? レキ先輩なんで……って、この本何!?」
「…そのようなことより、どこに行っていたのですか?」
「え? 野暮用というか…」
「一日中ですか?」
「まさか…朝から待ってたんですか!?」
「はい」
「あれ、カロリーメイト結構減ってますね。いや、別に食べてもらって構わないんですけど」
「二日分でしたので」
「えっ?」
「………」
「なにそれこわい」

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