鉛色から空色へ   作:雨が嫌い

4 / 47
戦姉妹。
武偵高の先輩が後輩がコンビを組み、二人一組で一年間指導する制度。
男子の場合は「戦兄弟(アミコ)」、女子の場合は「戦姉妹(アミカ)」と呼ばれる。
もちろん、異性間同士で組むこともできる。
ちなみにその状態でセクハラが起きると通常よりも重罪となる。

この作品で今の時点での戦姉妹、戦兄弟は──
レキ&朝霧ソラ
神崎・H・アリア&間宮あかり
遠山キンジ&風魔陽菜
星伽白雪&佐々木志乃の4組。


第4斬

「げ」

「人の顔を見るなり、失礼な反応ですね。朝霧君」

いや、だってなあ。僕おまえのことレキ先輩の次に苦手なんだよ。

「……佐々木、帰ってきてたのか」

綺麗な長い黒髪、大和撫子のようなその容姿。

佐々木志乃が帰ってきた。

 

 

 

4.「…あかりちゃん…はぁはぁ」

 

 

 

「あかりちゃん。お久しぶりです!」

「志乃ちゃん久しぶり。無事戦姉妹契約出来たんだね」

「はい! それよりもこの数日。あかりちゃんに会えなくて寂しかったです」

「うん、あたしもだよ」

「あかりちゃーん!!」

「きゃっ」

抑えきれないと言うように間宮に抱き付く佐々木。

佐々木なんて目が完全にハート形になってやがるし、ピンクな雰囲気は漂ってるしで。

──まったく今日も百合百合しいことですなぁ。

「あいつら、そのうち間違いとか起こさねえよな?」

「さあ? 昨今は『そういうもの』の理解も深まってきてるらしいし、本人たちが幸せならいいんじゃないか?」

「つめてえな」

「あっちが暑苦しい分こっちで調節してあげてるのだよ」

「そりゃ随分と親切なことで」

その二人を少し離れた位置で見てる僕と火野。

火野は心配そうにしているが、僕にとっては他人事なので正直どうでもいい。

「ん? アイツらってレズなのか?」

あ、アホが話に入ってきた。

「あかりはともかく、志乃のやつは色々と、な…」

「間宮も神崎先輩のことになると色々ヤバい感じになってると思うよ」

「ふーん。まあ、どうでもいいけどっ」

自分からふっておいて、さすがアホ。

ただ、この時迂闊だったのは僕が神崎先輩の名前を出してしまったことだろう。

「神崎……神崎・H・アリア…!」

「ヒッ!」

一瞬般若のように変わった顔に竹中がビビる。

抱き合っている間宮にはちょうど見えてないようだ。

しかし、すぐにニコニコの笑顔になると間宮と向き直る。この辺はスゴイ変わり身だと素直に感心する。

「とりあえず、あかりちゃん。これで私たちアミカ・グループを組めますね!」

「うん、よろしくね志乃ちゃん」

同じく、いやこちらは純粋にうれしそうな顔をする間宮を見て、知らぬが仏とはこのことだなとシミジミ思いました(まる)

 

 

 

 

次の休み時間のことだった。

突然僕の所に佐々木が来たのだ。

「それで、私のいなかったこの数日。あかりちゃんに変な虫がつくことはありませんでしたか?」

「なんで、僕に聞くんだ」

火野に聞けよ。因みに今、間宮はトイレでいない。

珍しく憑いて行かないな、と思って見てたらメンドウなことになってしまった。

「もちろんあとでライカさんにも聞きます。ただ、男子の方ならあなたの方が詳しいでしょう」

最初の方の言葉を聞いて火野が「ゲッ」と嫌そうな顔をした。

「知るか、大体僕はそんなに友好関係広くないし」

正確には広くないではなく、狭いが妥当だけど。

何々でない、という言葉の便利さには日々脱帽する。

しかし、その答えはお気に召さなかったようだ。佐々木の目がさらに尖がる。なまじ、美人な分怖い。

「わかっていないようですから、直接的に言います。あなた、あかりちゃんに手を出してないでしょうね!?」

……はぁ、これだ。前から佐々木の奴は誤解している節がある。

確かに、僕はクラスでも間宮とよく話すが、それは大抵向こうからしてくるもので、僕自体は火野以外に自分から進んで話しかけたりしないんだが。

どうにもコイツの目にはそう映らないらしい。変は盲目とはよく言ったものだ。

あ、間違えて…ないかな。

だがこの際だ、誤解はしっかり解こうじゃないか。はっきり解き、治そうじゃないか。

「それこそ知るか、だ。大体、どうせそういうことするんだったら、僕は間宮より火野みたいな奴の方が好みだ」

チビと高身長。対極を並べることで間宮に興味ないよと教える。なんて親切なんだろう。

「な、なあ!?」

なんか後ろにいる火野が騒がしいんだが。

ん? なんか佐々木の奴まで驚いてるし。おい、おまえらは揃いも揃って僕がロリコンだとでも思っていたのかよ! 立派な名誉棄損だぞ。

「驚きました。こんな場所でこうもはっきり……」

「おまえらいつまで驚いてんだよ。当たり前だよこんなこと」

「あ、当り前っておまえ…」

「火野もさっきからおかしいぞ。保健室でも言った方がいいんじゃないの?」

顔もなんか赤いし、熱でもあったら大変だ。

火野は数少ない僕の友達(・・)なんだから。……少ないって言っちゃった。

「ほ、保健室!?」

「いや、なんでそこに反応するし」

それにクラスの雰囲気もおかしい。ザワザワとしているような。

「おまたせーって、アレ? どうしたの?」

「あ、あかりちゃん」

よくわからんがナイスタイミングだ間宮。おかげで変な空気が少し溶けた。

「ただの世間話だ」

「え、でもなんか──」

「気にするな」

少し力を込めて言うと、間宮も引き下がった。これ以上メンドイのはごめんだからな。

 

「そ、そういえばあかりちゃんそのハンカチかわいいですね」

佐々木も空気を換えたかったのか違う話題を間宮にふる。

「えへへ、そう? これはこの前アリア先輩の部屋に泊まった時に貰ったんだ」

(ちょっと! 聞いてないですよ!)

(知るか。大体なんで逐一お前に報告しなきゃならんのだ)

仲が良くなくてもアイコンタクトはできるみたいだ。

この場合僕と佐々木が特殊なのか。

「…初めて男に…、いや…でも…」

そして、火野。おまえはそろそろ本気で保健室に行くべきだと思うぞ。

 

 

 

 

放課後。書類を教務科(マスターズ)に提出した後に、偶々強襲科の近くを通った時だった。

「あれ? レキ先輩。珍しいですね、予定もなくバッタリ会うのは」

向こうもそう思ったのか、コクン、と頷かれる。

誤解しないでほしいのが僕は別にレキ先輩のことは嫌いではない。苦手ではあるが。

だから、こういう風に会ったら普通に挨拶したりはする。

「じゃ、そういうことで」

もちろん、そのまま話し込んだりすることは無い。と言うか先輩相手にそれは無理というものだ。

だから大抵はすぐ別れるのだが。

「? えっとレキ先輩?」

何故か服の裾をつかまれた。どうやら向こうは何か用があるらしい。

「………」

「いや、何か言ってくださいよ。用があるんじゃないんですか?」

「?」

「何でそこで不思議そうな顔するんですか!?」

意味が分からない。みたいな顔されてもこっちの方がもっと意味が分かりませんから。

レキ先輩の真意を読み解こうと必死に考えをめぐらしている時だった。

「ちょっとレキー! ここにいたのね」

アニメに出てくるような甲高い声と共に一人の少女がこちらに向かってきた。

「ん? あんた誰よ」

そしてレキ先輩の横にいる僕に気が付くと不躾に聞いてきた。

「初めまして神崎先輩、僕はレキ先輩の戦弟の朝霧ソラと言います」

僕が言った言葉がよっぽど意外だったのかその綺麗なカメリアの瞳を見開いて僕とレキ先輩を交互に比べる。

「レキ、あんた戦弟がいたの!?」

それに対してレキ先輩は、コクン、と頷き肯定の意を示す。

「えーっと、神崎先輩のことは間宮からもよく聞いてます。あいつはいつも嬉しそうに先輩のことを語ってますよ。自慢の先輩だって」

軽く微笑みながら、さりげなく褒める。自分でなく、近しい誰かが言っていたというのがポイントだ。

まあ、相手は強襲科Sランクだし、多少おべっか使った方がいいだろうとの判断だ。

だからレキ先輩も珍しく目を見開いて、誰だおまえ、みたいな顔しないでください。

自分でもキャラじゃないのは分かってるんで。

「あら、ありがとう」

神崎先輩もこういう風に褒められるのは慣れているのか、クールに受ける。

というか神崎先輩も遠山先輩といる時と随分キャラ違いますね。

…ああ、後輩()の前だからか。

 

「──それでね。このタダ券でその遊園地に三人まで入場できるんだって!」

「ん?」

聞き覚えのある声がしたので窓の外を見てみると、そこには火野、間宮、佐々木の仲良し三人組がいた。

「ちょっと、あかり」

神崎先輩も気づいたのか、彼女らに声をかける。

「あっ!! アリア先輩! いつからそこに?」

何とも嬉しそうにしちゃってまあ。

でもな間宮。そろそろ後ろで殺気放っている奴に気が付くべきだと僕は思うぞ。

「町に出ても武偵としての自覚を持つのよ?」

「はい!」

「あんたもよ。アサルトライフルは銃検厳しいのは分かっているけど、いつまでも整備中じゃ通らないわよ」

「だってさ、火野」

「はーい、って朝霧!?」

はぁ。何で過剰に反応するのさ。やっぱり今日の火野は変だし。

「じゃ、あかりちゃんいきましょう」

ぐいぐいと間宮の手を引っ張る佐々木。

おまえはどんだけ神崎先輩が嫌いなんだよ。

「アリア先輩、また明日~!」

間宮は最後までのんきだな。

そのまま三人は帰って行った後、神崎先輩は少し不安そうな顔をする。

「はぁ、大丈夫かなぁ…」

「…へぇ、意外と心配性なんですね神崎先輩は」

「あの子達ったら、なんか危なっかしくてね。あとアリアでいいわよ」

「じゃあ、アリア先輩。レキ先輩に用があったんじゃなかったのですか?」

「あ、そういえばちょうどいいかもしれないわね」

なんか一人で納得しているし。意味が分からない。

 

──そしてレキ先輩、あなた最後まで何もしゃべりませんでしたね。

 




◆◇◆◇◆


佐々木志乃

性別 女
学年 1年
学科 探偵科
武偵ランク A

ソラのクラスメートその2。長い黒髪に一見おしとやかな性格でまさに大和撫子のような外見をしているが、その実はあかりを溺愛するあまり行き過ぎた行動をとってしまうような残念美人。所謂ヤンデレ。
武偵ランクからわかるように優秀な生徒で、更に実家も金持ちだが、それが原因で中学時代は孤立していた。
武器はサーベルのような形をした刀と長物の太刀「物干し竿」。
身長155cm。ボン・キュ・ボンのナイスバディ。

男で唯一あかりと親しい?ソラのことを警戒している。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。