鉛色から空色へ   作:雨が嫌い

5 / 47
特殊捜査研究科 (CVR)。
所謂、ハニートラップの専門技術を学ぶ学科。
その特性ゆえ、美少女しか入ることができない。
武偵としての最低限度の戦闘技術の他にも、美容関係──特に日焼けや寝不足、傷などにも気を遣わなくてはならない、ある意味最も大変な学科。
諜報科でも困難な状況に投入されるため、危険度も高い。

というか、こんな職業が平然とあるから女が信用できなくなるんだよ…。


第5斬

朝、いつもの教室。

ここ数日はレキ先輩の命令が無くしっかり休めて非常に心地良い。

どのくらいかというと、普段邪険にしている竹中とも、普通に会話するくらいだ。

「それでな、地面に倒れ伏したアイツに言ってやったんだ。ケンカはガタいじゃねえってな」

「おまえ、チビだもんな」

「チビじゃねえよ!」

男子で160cmそこそこは十分チビだろ。まあ、僕も背が高い方じゃないけどコイツよりはマシだ。

「で、自分より背の高い火野にはいまだに勝ったことが無い、と」

「ち、ちげえし。あれだし、俺は女には優しいだけだし!」

「負け惜しみねぇ。こんなのを憧れの遠山先輩が聞いたらどうなるのかなぁ」

いや、実際どうにもならんだろうけど。

あの人こそ女に優しい(・・・)わけだし。

しかし、コイツの中の先輩はそうじゃ無いようで。

「つ、次は勝つし!」

「女に優しいんじゃなかったのか?」

「いいんだよ! 大体アイツは男おん──」

 

ガラッ

教室のドアが開く。入ってきたのは火野だった。

だが、どういうわけか小柄な少女をおんぶしている。

「何やってんだ、アイツ」

うん、僕も同意見だ。

もしかして、アイツまで百合に目覚めたのだろうか。

まあ、確かにその手の女子にはモテるだろうと思ってはいたが。

モテる方とモテない方ならモテる方に走るのが道理…なのか?

 

 

 

5.「アタシだってわかってんだよ。こんなの似合わないってことくらい」

 

 

 

間宮たちの話に耳を傾けて聞いたあたり。(人はそれを盗み聞きと言う)

どうやら、あの子は中学生(インターン)で火野に戦姉妹を申し込みたいらしい。

さらに専攻はよりによってCVR。しかもちょっと調べた感じソッチ系専門っぽい。このままだとあいつ、マジでそっちに走るようになりそうだな。

火野も満更でもなさそうだったし。

「…島麒麟ね…」

「どうしたでござるか、朝霧殿」

「考え事なりや?」

時代錯誤な口調で話しかけてくる少女二人。

風魔陽菜と真田百合だ。

この二人とは、実力が近いこともあり、良く組まされているうちに仲良くなった。

「ん? ちょっとね」

ここは諜報科(レザド)。武偵高の中でもあらゆる情報が集まる場所の一つだ。

情報科(インフォルマ)と違う所は真偽問わず、でたらめな情報も集まるという所か。

「ああ、近々友人が戦姉になりそうで」

「友人…ライカ殿でござるか?」

──僕の友人という一言で特定できたという事実に泣くべきか。

いや、風魔が鋭いだけだ。うん、そうに決まってる。

それに僕だって友達は結構いるし。火野に風魔に真田だろ。……まあお情けで竹中と間宮も入れておくか。

あれ? それでも5人? しかも男子は竹中だけだし……

……もしかして、僕ってハブられてる?

──いや、考えるのはよそう。きっと気のせいだ。

「一年で戦姉とは立派なりや」

「まあ、それ自体は良いんだけどねー」

火野はあれで結構優秀だし。

問題は──

「なんか百合百合しいんだよなぁ」

「自分がどうかしたなりや?」

「いやいや、真田じゃねえよ。レズっぽいって言ってんの」

「?」

風魔の方は分かってるみたいだが、真田はよくわかっていないようだ。小首をかしげてる。

「うんうん。真田はかわいいなぁ」

「な、何をいきなり申す!」

真田、おまえはそのまま純粋でいてくれ。この学校、変な奴ばっかりなんだもん。

真田はまあ、口調格好は忍者してるけど、性格はまともだしね。

「それで朝霧殿はライカ殿のことが気になっているのでござるか?」

「気になるっていうか…。知り合いの女子がほとんど百合なのはちょっとアレだろ」

なんだアレは。感染でもしてるのかと疑いたくなる。

男に感染はしないよね? 竹中とか大丈夫だよね?

「と、それは今良いんだった。いや、良くは無いんだけど…。今日は違う話があるんだ」

「何でござるか?」

「数日後にさ、カルテットあるだろう? それで二人さえ良ければ組まないかと思ってね」

一年は強制参加とかまたメンドイ行事なものだ。

「自分は構わないなりや」

「済まぬ。某は既に決まってしまったでござる」

なんだ、風魔はもう誰かと組んでたのか。それは残念だ。ただでさえ僕は友人が少ないのに。

あ、自分でも認めてしまった。……今のなしで!

どうしよ。火野はあいつらと組むだろうしな。

「いや、先に決まっていたのだったらしょうがないよ。後二人はどうしようか」

 

結局、ギリギリになって同じ課の余った奴と組むことになったのだが、それはまた別の話。

 

 

 

 

──数日後。

放課後の強襲科、僕はたまに訓練としてこっちに来ることもある。

で、なんか火野が一人でいるのを見かけたから捕まえてみたのだけど……。

「で、結局なったんだね、戦姉妹」

「ああ、まあな」

「カルテットも一緒に出たんだって?」

「ああ、まあな」

「聞いてる?」

「ああ、まあな」

「1+1は?」

「ああ、まあな」

「………」

おまえはロープレの村人か!

「で? 結局なったんだレズに」

「ああ…ってなってねーよ!!」

「あ、やっと反応した」

「……うっ」

と思ったらこっちを見て言葉に詰まるし、佐々木が帰ってきた日から火野の様子がおかしい。

まさか、僕を嫌っている佐々木からなんか言われたとか?

いや、それは無いな。今更すぎる。それならもっと早くそうなってるはずだし。

戦妹の影響? いや、それも無いな。そもそも順番が違うし。

うーん。他になんかあったかなぁ?

「…おまえさぁ…」

「ん? 何かな?」

「あ、あのときアタシが…こ、好みって…」

…ああ。

「それか…。いやそれは間宮とおまえだったらという意味だからね?」

文脈からわかるだろ。

なんだ。そんなことで悩んでたのか。

「そ、そうだよな…。やっぱ、アタシみたいな男女──」

「いいんじゃん? 火野はそのままでも。そういうのが好きな奴だっていると思うよ」

「そ、そうか?」

「でも、そんなに考えてくれてたってことはさ。何、もしかして僕脈あり?」

「な! ち、ちげえよ! そ、そう! どう振るか悩んでたんだ!」

「そう、なんだ…。僕は火野のこと好きなのに…」

「え? お、おまえ本当に…」

暗い表情の僕を見て、火野が何だか後悔したような顔で見てくる。

ああ、そうだよ。火野のことが好きなのに──

「友達としてね♪」

ガタンッ!

ズッコケる火野。

なんだ。リアクションが古いね。

「って、やっぱそういうオチかよ!! 一瞬でも心配したアタシがバカ見てえじゃねえか…」

「心配してくれたってことは…」

「もう引っかからねえよ!」

「ちぇ」

「たくっ。おまえは普段めんどくさがりのくせに、変な時に冗談いうよな」

「えー? でも友達として好きなのは本当だぜ?」

「あー、はいはい。ありがとな」

冷たいなぁ。さっきまでの初々しい火野はどこに行ったんだ。

「それに、火野は自分でも男女って卑下してるけどさ。そんなことないと思うよ。可愛い趣味してるし。お人形とか」

「な、な、なんで知ってんだ!!」

僕の肩をつかみ思いっきり揺さぶってくる。動揺しすぎだろ。

「秋、葉原、に、行く、用事があって、そのと、き、にたまたま、おまえを、見つけて…」

「うわー! くそ! 見られてたのかよ!!」

火野はそれを聞くと、僕から手を離し、頭を抱える。

「気にすることないんじゃない? うん、そんな変な趣味でもないでしょ」

それに根本的に気になってたのだけどさ。

「大体、火野ってレズになったんじゃないの?」

それなら、男からの評価なんて関係なくない? 純粋にそう思った僕だったのだけれど。

「何でそうなんだよ!?」

「え、だって──「おねーさまー!!」ほらきた」

お人形みたいな容姿の少女が、これまたお人形みたいなフリフリとした服を着て走ってきた。所謂ゴスロリと言うやつだろうか。知らんけど。

そういや、一つ上の先輩であーゆーの好きな人がいたなぁ。

「麒麟!?」

今話題(どこかは言わん)の少女。島麒麟だった。

走ってきたそのままの勢いで火野に飛びつく。

火野の方も驚きながらそれを正面から受け止める。

「おまえ、なんで強襲科に来てんだよ!」

「お姉様の勇姿を近くで見たくてつい…」

「ほらー、やっぱり百合百合してるし」

「してねぇって!」

すると島もこっちに気づいたのか。

「あら、こちらの殿方は誰ですの?」

「朝霧ソラ。火野の彼氏だよ」

………

………

「はぁ!? ちょ、おまっ、何言ってんだよ!?」

「嘘ですわね」

「なんだ、分かっちゃったか。つまらん」

アホな子かと思ったら、存外冷静だな。からかいがいが無い。

「では改めて自己紹介しようか。朝霧ソラだ。所属は諜報科。火野とはそうだな…()()ただの友達とでも言っておこうか」

『今は』をあえて強調して言うと、島は思いっきり睨んでくる。この子マジもんだ。

「島麒麟ですの。所属はCVRですが、女性専門ですので男性には興味ありません。因みにお姉様は渡しません」

「ふ、先輩相手にいい度胸だな。だけどそれを決めるのは火野の方だよ?」

「ちょっと、おまえら! 何勝手に言い合ってんだよ!!」

「なんか今日の火野は叫んでばっかりだね」

「おまえのせいだろうが!!」

人のせい良くない。

 

ガチャン。ダダダッ!

射撃訓練室の扉が開き誰かがそのまま走って出て行った。

「今のって、間宮様…?」

「ああ、でも……」

「──泣いてたな」

何があったんだろうか? 射撃がうまくいかなかったのか?

……それはいつものことか。

ガチャン

もう一人射撃訓練室から出てきた。今度はアリア先輩だ。

「アリア先輩! 今、あかりの奴が」

「…ライカに麒麟、ソラもいたのね」

「ちわーす」

なんだろう、間宮の奴はアリア先輩に的にでもされたのか?

……いや、そんなことする戦姉はレキ先輩だけだと思いたい。

「何かあったんですか?」

「ちょっとね…」

アリア先輩はそれ以上言わなかった。

それが誰のためなのか。

 

とにかく、この時の僕はこの先に嵐が来る気がしてならなかった。

 




◆◇◆◇◆


火野ライカ

性別 女
学年 1年
学科 強襲科
武偵ランク B

ソラのクラスメートその3。金髪の髪をポニーテールにしているのが特徴的。顔は美人なのだが、男勝りな性格のせいでまったくモテない。残念美人その2。
自他ともに認める『男女』。
CQCでは同学年の男子相手に負けることが無いほどの腕前。
身長165cm。長身でスタイルは抜群。ほんと何でモテないんだろ…。

口では否定しているが、麒麟のことは結構いいかなって思っている。そしてソラにも反応する辺りバ──(自重)。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。