クッキー状の携帯食糧。
タンパク質、脂質、糖、ビタミン、ミネラルなど体に必要な栄養が一通り入っている。
その手軽さから、忙しい人、軽食、夜食などに向いている。
水分が少ない固形で少しパサパサした食感。
栄養をバランスよく取れるのでダイエットにも向いている。
でも、レキ先輩。さすがに朝昼晩これで通すのはマズいと思います。
「ハッ!」
唐突に目が覚めた。というか、僕は眠っていたんだっけ?
まあ、とりあえず言うことは決まっているか。
「…知らない天井だ」
8.「カロリーメイト…おいしそうでござる」
「………」
「………」
…き、気まずい。
お見舞いに来て一言もしゃべらないってどういうことなんだよ。
──とある国の武偵には、負けた部下を粛清と言う名のリンチに処す風習があるらしい。
いやいやいや!
何で今そんなこと思い出すんだよ!
え? マジで? 何? 僕これからリンチ!?
「朝霧ソラ」
レキ先輩が来てから十分が過ぎようとした時だった。
「は、はい!」
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!
「調子はどうですか」
「へ?」
まともな質問…だと?
「あ、ああ…解毒は済んだんで後に三日もあれば元に戻ると思います。…後遺症も無いようですし」
「そうですか」
「あ、はい…」
あれ? おかしいぞ?
なんだか、肩透かしを食らった気分だ。
「それでは、お大事に」
お大死に? おだいじに……お大事に!? レキ先輩が!?
…いや、何かがおかしい。それじゃあ、ただの後輩のお見舞いに来た普通の先輩じゃないか!
ま、まさか…!
「レキ先輩。あなた偽物ですね!」
「………」
◇
ガッシャーン!!
「ちょっとどうしたの!?」
レキ先輩と入れ替わり誰かが入ってきた。音に驚いて様子を見に来たんだろう。ののかちゃんの病室隣だし。
「あ、ああ間宮か…」
「え? 朝霧君? なんでここにいるの!?」
「あー。ちょっと仕事でケガしてね」
まさか、僕も夾竹桃とかいう奴にやられてねとは言えない。
「た、確かにボロボロだね…」
今の僕は、服は乱れ、ガラスの破片をかぶって床に倒れている状態だ。
「これはちょっと違うんだけど……いや、もうそれでいいか」
──そういえば、僕って今回コイツらに助けられたんだよなぁ。
あの雨の日、間宮たちは夾竹桃に戦いを挑み、見事勝利した。
捕まった夾竹桃は結構あっさり、解毒法を吐いたらしい。尋問科の綴教員が拍子抜けしたと言っていた。
僕のは符丁毒と違い、決して解けない毒じゃなかったけど、
というか、なんで奴も殺意満々の即効性のある致死性の猛毒の解毒法を知ってんだよ。
まあ、それは素人考えなのかもしれんが、どこで使うんだ?それ。
僕だからよかったものの、解毒する前に死ぬだろ普通。
予防接種見たく、事前に取るようなものでもないらしいし。
まあ、とりあえず僕が目覚めた頃にはすべて終わっていたというわけでした。
それにしても今だに信じられない。こんなアホそうな奴があんなヤバそうな奴を倒したなんて。
…まあ、あの場には火野や風魔がいたんだ。そう考えるとほとんどそいつらの手柄だろうことは想像つくけど。
「おーい! あかりどうした?」
「あかりちゃん、大丈夫ですかー?」
「げ」
火野に佐々木まで来た。
「あれ? なんで朝霧がいるんだ?」
「あー、まあいろいろと…」
「うわ、花瓶落としたのか? いや、むしろおまえ花瓶に頭でも突っ込んだのか?」
…それは聞かないでくれ。新しいトラウマだから。
まあ、そのおかげで先輩が偽物じゃないと分かったわけだが。むしろ偽物の方がよかったなとか思ったわけだが…。
「少し出てい行ってくれないか? というか隣の病室に行ってていいぞ。僕もここ片付けたらそっちに行って説明するから」
「え? でも…」
「はい、出ていった、出ていった。ほら間宮も!」
「う、うん」
とりあえず有無言わせず追い出した。
さすがにいつまでもガラスの欠片を纏っていたいとは思わない。
──数分後。
「ヤッホー、ののかちゃん!」
「ヤッホーです。ソラさん」
「「「!?」」」
ののかちゃんも治ってよかった。因みに僕の入院理由については口止めしてある。
「あ、これこの前の言ってたお菓子ね。ちょっと取り寄せたんだー」
「ありがとうございます。これ前から食べてみたかったんです」
「じゃあ、あとでお茶でも入れよっか?」
うん、やっぱ美少女だよ。アホそうな姉と違って落ち着きあるし。
「待て待て待てー!!」
「何さ火野、ここ病院だよ?」
静かにしなさいよ、まったく。
「え? 何? ののかと朝霧君って知り合いなの!? というか仲良くない!?」
「うるさいぞ、間宮姉」
言ったそばから。おまえは人の話を聞くこともできないのか? それだからアホそうだって言われてんだよ。
「いや、実際おまえらどんな関係だよ。朝霧と名前で呼び合うなんて」
「何を勘違いしてるか分からないけど、僕は別に名前を呼ぶことにそこまで特別性を見出してないぞ。アリア先輩とだって呼び合ってるだろ?」
「あ、そうだった。ってじゃあなんでアタシたちは違うんだよ! 付き合いの長さはこっちの方が上だろ!?」
「いや、親しくなった頃には、なんか火野って呼び方に慣れちゃってたからさ、別に変えなくていいかなって」
ただ単にメンドウだったというのもあるが。
だってさぁ、知り合いの男子がある日突然、名前で呼んでもいい? なんていうと変な意味にとられるかもしれないじゃん。
「じゃ、じゃあ、今からでも呼べよっ。あ、アタシもさ…そ、ソラって呼ぶから」
「ん、わかったよ。ライカ」
「お、おう。そ、ソラ…」
なんだ、そんなのがうれしいのか?
まあ、確かに人によっては、苗字呼びは他人行儀に感じる場合もあるからな。
「ライカやののかばっかずるいー! あたしもあかりって呼んで! 間宮姉なんて呼びかた嫌だー!」
「え? さすがに全然親しくない人を名前呼びはちょっと…。すみません間宮さん」
「ひどっ!」
涙目になる間宮。だって、ちょっとなあ……
「えっと、ソラさん。お姉ちゃんをあんまりイジメないであげてください」
「ごめんね、ののかちゃん。あかり、ほら、これでいいだろ?」
「なんで、ののかの言うことはあっさり聞くの!?」
まあ、別にそこまでいじわるするつもりは無いんだが、あんまりあかりと仲良くなると命の危険があるんだよなぁ。
今だってほら──
「……あかりちゃんを男が名前呼び捨て……朝霧ソラ…抹殺…」
………
ふう、さすが武偵高。危険がいっぱいだぜ。
◇
三日後──。
僕は無事に退院した。
結局、間宮たちにはクエストでケガをしたとウソの報告で誤魔化した。
アリア先輩やののかちゃんにはいろいろとカッコつけて言ったけど、実際の所、間宮たちに本当のことを言わない理由は別にある。
「風魔、一々気配消してくるな」
男子寮に帰る途中の道端で一瞬だけ感じた気配に声をかける。
「済まぬ。こればかりは忍としての習性でござって」
「…まあ、いいけど」
ホレッ
風魔に向かって僕は小さな箱をいくつか投げる。
その全てを風魔はしっかりとキャッチする。
「?」
「口止め料だ。気づいてんだろ? 僕の入院理由」
「カロリーメイト…でござるか」
なんか、たくさん置いていった人がいたからな。誰かとは言わないけど。
「もしかして、嫌いか?」
「いえ、ありがたい。これで三日は凌げるでござる」
「………」
普段どんな食生活してんだよ…。
今度ちゃんとしたものをおごろう。
「で、何しに来たんだ?」
「朝霧殿の退院を祝おうとしたしだいで。入院中は見舞いに行けなかったでござるからな」
「そっか。そういえばありがとな。風魔も夾竹桃と戦ったんだろ?」
結果的にこいつも僕を助けた一人になるからな。間宮たちに言わない分こいつには感謝を伝えておこう。
「いえ、某は夾竹桃に手も足も出なかったでござる。実際に夾竹桃を倒したのはあかり殿でござる」
「はぁ!?」
いやいやいや! なんで風魔が手も足も出ない奴をあのヘッポコが倒せんだよ。
「朝霧殿は間宮一族について聞いていたはずでござろう?」
「それって、ののかちゃんの病室にみんなが集まってた時? あー、あの時なんか意識が朦朧としてて、何言ってたかあんまりよく覚えてないんだよな」
間宮ってただのアホじゃなかったんだ…。
いや、あのアリア先輩が戦妹にしたくらいだから何かあって当たり前なのかもしれない。
……今度からは、少し態度も改めないとな。
「朝霧殿には珍しく、気配も消し切れてなかったでござるからなぁ」
「ん。アリア先輩にもバレてて、ののかちゃんとなんか話していたのは覚えてんだけどねー」
ふぅ。そこで僕は一息つくと、今度は風魔が質問してきた。
「何故、朝霧殿はあかり殿たちに本当のことを言わないでござるか? 某への態度からして貸しになるのが嫌というわけではないのでござろう?」
「まあ、恩はしっかり返すけどね。同じようにコッソリと。……もちろん夾竹桃にもね」
「では、何故?」
…はぁ、これ言わなきゃだめかなぁ。…風魔にも恩もあるし、しょうがないか。
口止めはさっきしたしね。
「……だって、カッコ悪いじゃん。不意くらって一瞬でやられましたって言うの!」
「朝霧殿も男子でござるからな…」
「呆れるなよ! 武偵では大事なことだぞ」
「まさか朝霧殿に、武偵のなんたるかを言われるとは思ってもみなかったでござる」
「風魔って実は僕のことバカにしてるだろ?」
…まあ、確かに? 普段そんなに武偵らしい態度しているとは言いづらいけどさ。
◇
風魔とも別れ、部屋に戻って。僕は考えた。
夾竹桃は捕まった。では、あの時夾竹桃と話していた人間は?
それにアリア先輩のこともある。
事件はまだ終わっていない。少なくてもあの共犯者らしき人物を捕まえるまでは──
……ただ、まあそれを僕がやるかは別問題だけど。僕は基本的に人任せだ。
とにかく、しばらくメンドイことは勘弁だな──
PLUUUU!
──と、思っていたのに。
誰だよ。レキ先輩か? 病み上がりくらいほっといてくれてもいいのに。
でも、出ないと後が怖いしな。
ピッ
『──やあ、初めましてと言うべきかな。朝霧ソラ君』
「え? 誰?」
驚いて携帯の画面を見る。
──非通知。レキ先輩からじゃなかったんだ…。出て損した。
マジ誰だよ。なんで僕の電話番号知ってんの?
『突然の電話で済まない。驚いていることだろう? 僕は
「よくわかんないんですけど、とりあえず基本勧誘とかはお断りしてるんで」
てか、イ・ウーってなんだよ。宗教かなんかか?
『──夾竹桃』
ピクッ!
電話を切ろうとした矢先に出された名前に体が硬直する。
『キミが敗退した彼女もイ・ウーの構成員だ』
「それって、つまり犯罪者の集団ってことか? そんなことを聞いて入るバカがいるとでも?」
大体負けてねーし。ちょっと油断しただけだし。言い訳じゃないからね!
『それならば
「!?」
『何、驚くことは無い。少し推理しただけさ。キミの体質──』
ブツ!
………
……だから、メンドイのは嫌いなんだよ。
◆◇◆◇◆
風魔陽菜
性別 女
学年 1年
学科 諜報科
武偵ランク B
風魔小太郎の末裔。「某」「ござる」など明らかな忍者口調で話す。
長い黒髪をポニーテールにした髪型。
貧乏で武偵の仕事以外にもバイトなどをしている。そのためかよく腹をすかしている。でもカロリーメイトだけで三日過ごすのはやめた方がいいと思うよ(byソラ)。
遠山キンジの戦妹であり、彼のことを師匠と呼ぶ。
ややスレンダーな体格で、スタイルはそれなりに良い。
(諜報科としての)実力がそれほど離れていないソラとランクが違う理由は、常識知らずで単純な性格や実技などでの失敗のため。