ベル・クラネルの日記帳   作:重言 白

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チラ裏……そういうのもあるのか。


ベル・クラネルの日記:1

 █月█日

 

 あの村を出発してから1週間、ようやく迷宮都市オラリオに着いた。

 馬車の御者さんが日記帳をくれたので、今日から日記を書くことにした。

 とりあえず冒険者になる気は無いので、アルバイトの求人を探した。

 おじいちゃん(クソジジイ)が女性に対して借金してまでつぎ込んでいたせいで、家やら何やら全財産を売り払って残ったのはたった1000ヴァリス。

 まともな仕事に就職して稼ごうにも、先立つお金がなければならないというこの世の理不尽。

 今日は幸運にもデメテルファミリアというオラリオ随一の生産系ファミリアの収穫の手伝いという求人を見つけることが出来たので、応募だけしてきた。

 今あるお金は全て食費に費やすと決め、本日は野宿だ。

 今日の晩御飯は無し。

 ……星がよく見えるなあ。

 

 

 

 █月█日

 

 今日からしばらく、デメテルファミリアにお世話になることになった。

 賃金は他の仕事に比べると安いけど、三食に加えて屋根と水を借りられるという好条件。

 そもそもこのアルバイト自体、僕のような都市の外から来た人や孤児などの日々の生活に困窮している人を対象にしていているのだとか。

 デメテルファミリアの方から、冒険者になる気がないなら、早めに転職先を探しといた方が良いというアドバイスもいただいた。

 農作業はとても重労働で大変だったけれど、なんというか生きているという実感が得られる素晴らしい体験だった。

 ファミリアじゃなければ、農家として永久就職していたかもしれない。

 今日の晩御飯は歓迎会という事で、豊饒の女主人というお店に行った。

 綺麗な女性達がウェイトレスをしていたが、綺麗と思うだけだった。

 なんというか……普通は美味しそうな食事を見ると食べたいと感じるのに、美味しそうと思うだけで完結してしまうような違和感を感じた。

 見るだけで強いとわかる人ばかりだったからかもしれない。

 ……シルさん以外は。

 

 

 

 █月█日

 

 最近、街に出るたび冒険者に絡まれるようになった。

 僕が普段から持ち歩いているお金なんて、ダンジョンに潜れば直ぐに貯まる程度なのにね。

 今はデメテルファミリアの仮宿から出ないという対策でどうにかなっているが、そろそろ雇用期間が終わるのでどうにかしなければ。

 それとは別の話だけれど、よく誰かの視線を感じる気がする。

 視線は摩天楼の方向からが1つ、物陰や屋根の上などからが2つだと思う。

 流石に部屋の中まで付いてくることはないけど、どちらも視線を辿っても誰もいないので、もしかしたら居るかもしれないという恐怖が常にある。

 今日の晩御飯はパンと野菜とくず肉のスープだった。

 労働の後のご飯は美味しかったです。

 

 

 

 █月█日

 

 もうすぐデメテルファミリアでの雇用期間が終わるのだが、転職先が見つからない。

 外に出ると冒険者に絡まれるせいでなかなか行動できないというのもあるが、何故か殆ど門前払いされたからだ。

 門前払いされなかったお店も、名前を伝えたら追い出された。

 そこまで問題行動をした覚えもないので、おそらく僕を普通のお店に就職させないようにしている誰かが居るのだろう。

 ……ヘルメスファミリアとギルドだろうなぁ。多分。

 おじいちゃん(クソジジイ)の協力神筆頭だし、能力的にも他の仕事に圧力を与える事が出来るのはそれくらいだろう。

 へファイストスファミリアも可能性としてはあるけど、彼女には動機がない。

 主神の指示とか天界での貸しなんて可能性を考慮しても、自らの悪評を覚悟してまですることでもないし、それとなく実行するには適性がないと思う。

 なのでこの件はヘルメスとウラヌスのどちらか、あるいは両方が起こしたものと仮定する。

 もちろん僕自身に問題がある可能性もあるので、先輩にも明日確認してみよう。

 今日の晩御飯は極東のコメとミソ=スープ、ヤキトリ。

 フォークとナイフを兼ねるハシはとても便利。

 

 

 

 █月█日

 幸運にも宿付きのアルバイトを見つけることができた! 

 デメテルファミリアの先輩に事情を話すと、安全かつまともに面接してもらえるという職場を紹介してもらえた。

 そのお店の名前は豊饒の女主人、歓迎会で来た綺麗な女性のウェイトレスが沢山居る酒場だ。

 僕は男ですよ!? と先輩に言ったところ、女顔の童顔だから大丈夫と言われた。

 いやいや、無理でしょ……というダメ元の心境だったのだが、まさかの合格。

 1番の理由が、ウェイトレスの格好をしても違和感がないからというのが……就職できたんだから喜ぶべきなんだけど、若干悲しい。

 僕は! そんなに! 男らしくないのか!? 

 といっても、僕は基本裏方で仕込み作業やミアさんの調理補助などの雑用を担当することになるらしい。

 ウェイトレスとしてホールで働けと言われなくて、本当に良かったと心の底から思う。

 それと今日は就職先が決まったのもあり、少し奮発して魔石灯と燃料の魔石、ポーションを買ってみた。

 魔石の中に含まれる燃料とは一体なんなのか、ポーションで傷が治るのは一体どういう理屈なのか。

 正直にいうと魔剣や魔道書も欲しいが、あまりにも高すぎて手が出せなかった。

 魔剣には精神力が込められているから魔法が発動するのか、発動する魔法はどのように決められるのか。

 魔道書は強制的に魔法を発現させるが、その時人体にはどんな影響が出ているのか。

 僕の目的の1つを達成するためにそういった事を知りたいのだが、設備も人員も資金も、何もかもが足りないのが現状だ。

 ところでエルフの森には魔法を学ぶ学校があるというが、神の恩恵を受けなければ魔法を使えないのに、何を学ぶのだろうか? 

 仮に恩恵を受けずとも精神力を知覚する術があるなら、是非とも知りたい。

 その学校に通っていた知り合いが欲しいと思うが、エルフは基本的に他種族を見下す傾向があるので、無理だと思われるので、いつかエルフの森に侵入してみるしかないかもしれない。

 今日の晩御飯は山盛りのナポリタン。

 もうすぐデメテルファミリアでの食事も食い納めと思うと、普段より良く味わって食べようという気持ちになる。




今作のベル君は若干女性恐怖症気味です。
普段はお淑やかな女性が、マウントをとって祖父をボコボコにする場面みたいなのをよく見ていたのが原因。
浮気とか絶対しない。ハーレムとか以ての外。
そんな感じのベル・クラネルです。
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