今回、人体実験があります。
苦手な人は読み飛ばして、どうぞ。
追記
話数間違えていたので修正しました。
█月█日
今日は椿さんに武器の手入れを教わってきた。
手土産に選んだのは極東の簪。
椿さんは長い髪を、サラシで縛っていた。
なので簡単そうな手順で、髪を一箇所に纏められる簪を選んだ。
喜んでくれたので、悪くない選択だったと思う。
それと先日のロキファミリアとの戦闘……といってもあまり使っていなかった。ヴァ、ヴァ……ヴァレン某に斬りかかったときくらいかな?
あの一件を話すと、顔を伏せながら嗤い始めた。
ちょっと怖かった。
それと、彼女が連れてきたのはヴェルフ・クロッゾという青年だった。
どうやら魔剣を作る能力があるのだが、それを毛嫌いしていて作ろうとしないそう。
冗談半分で僕は冒険者ではなく、ただただ研究のために1つ作ってくれないかと頼んでみたが、けんもほろろに断られた。
武器は相棒のようなものであり、自分だけ壊れる魔剣は武器じゃない。俺は装備を作るために鍛治師になったんだから、魔剣は作らないというのが彼の持論。
せっかく能力があるのに使わないなんて、勿体なさすぎる。ただでさえ短い人の一生の中で主神殿を超えたいと望むなら、あるもの全て使うべき。だから作れというのが椿さんの持論。
僕にも説得を手伝って欲しかったみたいだけど、僕の意見はどちらかといえばヴェルフさん寄り。
能力があるなら、意思関係なくしなければならないというのは暴論すぎる。
嫌っていることを無理矢理させるより、本人が望むことをさせた方が上達は早いと思う。
その選択権は僕や椿さんではなく、ヴェルフさん本人にしかないものだというのが僕の回答だった。
それに才能で職種を選ぶというのなら、僕はとうの昔に冒険者になっている。
自分で書くのもなんだが、それなりくらいになれるくらいの才能はあると自負している。
けれど僕は冒険者になる気は無いのだから、彼の意思を否定することはできなかった。
まあ? 安価で魔剣を作って欲しくはあるけど、それを強要する気はない程度ではあるんだけど。
椿さんは信頼していた腹心の部下に、後ろから刺されたような顔をしていた。
メンテナンスの指導自体はちゃんと教えて貰えた。
必要な道具はお下がりを貰った。
安価で高品質らしいので、無くなったら同じ商品を買うことにしよう。
今日の晩御飯はオムライス。
どうすればこんな風なフワトロ感を出せるのか、不思議でならない。
特別な材料を入れてはいなかったので、腕前なんだろうな。
█月█日
苦節14年、ついに魔法の謎の一端を解き明かした!
魔石の中身=精神力ならば、魔石の使用前と後を比較し、その前後で消えた何かを抽出出来れば良い。
水に浸けてみたり、炙ってみたり、実験用のネズミに食べさせてみたり……色々試してきたが、遂に抽出方法を確立できた。
凄い勢いで振り回すのだ。
試験管に溶液を用いて溶かした魔石を入れて蓋をし、紐でくくってなるべく早く振り回すことで、不純物が下に沈殿していく。
そして残った無色無臭の液体が、精神力を抽出した物体になる。
名前はそのままだけど、魔液とすることにした。
魔液を固めて魔石灯に入れると激しく稼働したので、間違いないはず。
問題は、抽出するには大きな苦労が伴う上に、少量しか作れないこと。
それでも既存の魔石よりも高濃度な燃料であり、瞬間最大出力が大きく違う。
……魔石を内蔵したオモチャから、対象物を回転させるようなパーツを抜き取り、この魔液で動かせば良いんじゃないか?
魔石灯での使用結果を見る限り、通常よりも過剰な挙動をするというのは予想できる。
今後の実験が楽しみだ。
今日の晩御飯はパン。
実験成功で感激のあまり奇声をあげてしまい、晩御飯抜きになってしまったのだが、リューさんが自分の分のパンをこっそり分けてくれた。
美味しかったです。今度何か奢らせていただきます。
█月█日
梃子の原理という現象がある。
棒を使って力を入れるとき、端に力を加えた方が簡単に動くっていうものなんだけど、その機能を応用する事で簡略化を計ってみた。
具体的には、滑車と紐を組み合わせる事で、手元の大きい滑車を1周する間に、試験管を括り付けた小さな滑車が20周くらいするような装置を作った。
1週間分の給料が丸々消えた。
しかし……しかし! コレは必要経費なのだ……!
魔石製品の解析も少しずつだけど進んではいるし、ポーションの実験はナァーザさんという協力者が出来てから飛躍的に進んだ。
研究の一環で最近、こっそりダンジョンに潜っているのも研究の進みに関係があるかもしれない。
といっても、休日に暇なら行く程度なので儲けはほとんどないんだけど。
ちょーっとパープル・モスの鱗粉を採取したり?
ちょーっとゴブリンに魔石を食わせて強化種を作ってみたり?
ちょーっとミノタウルスに殺されかけたくらいだ。
いやー、大剣じゃないとまともに刃が通らなかった。
びっくりした隙にマトモに一発食らっただけで、腕がバキバキになるとは思わなかった。
それと、魔液はモンスターにとってはポーションのような効果を発揮することがわかった。
何度か動物実験をした結果、おそらく人体にも無害だと思われる。
この後、少し服用するつもりだ。
今日の夜食はメット。
豚の挽肉に塩胡椒を練りこんだお手軽な料理だ。
添え物の玉ねぎと合わせてパンに乗せると、とても美味しい。
█月█日
世界が物理的に輝いて見える。
え、何これ?
メットはドイツに実在する、豚の挽肉を生のまま食すお手軽な軽食の一種。
作る時は安全性を考慮し、必ず加熱すること。
必ず、加熱すること!
社会主義の料理の同人誌に載ってた。
加熱して食べましたが、美味しかったです。
豚饅が味として近いかもしれない。
もし火が通るまで加熱せずに食って体調を崩したとしても、責任は取りません。
試すなら自己責任で、どうぞ。