二課本部、オペレータールーム。今、そこは慌ただしさの真っ只中だった。
「ノイズの反応を確認!」
「場所を特定しました!森林地帯です!」
「周辺の住民はどうなっている!」
「付近に住宅はありません。ですが、念のため避難警報は出しています」
「司令、どうしますか?装者二人は負傷中、奏ちゃんも連日の疲労やlinkerの薬害の除去が完璧とは言えません!」
「……三人には待機を伝えろ。俺は関係機関に連絡をしてくる」
そう告げた弦十郎は部屋を出て携帯を取り出し、ある番号に電話をかけた。数回のコール音の後、ガチャっと繋がる音がなる。
『はい、もしもし』
「急にすまない、俺だ。実は――」
――――――――――――――――――――――
カブトを呼び出す為、アタシはノイズを人のいない地域に召喚した。アタシ自身は少し離れた木の上に身を潜め、カブトを待つ。懸念はこれでカブトじゃなくて二課の装者たちが来るかもしれない事。 だけど、アタシの予想は違う方向に裏切られた。足音が聞こえたからそちらを見ると、以前恩が出来たアイツが歩いてきていた。
なんでアイツがここに!?まさか、迷いこんだのか!?
アイツに気付いたノイズが近づこうとする。関係ない奴を巻き込みたくなかったアタシはソロモンの杖でノイズに離れるように指示しようとした。 けど、焦っていたのか、ソロモンの杖を取り落としてしまった。急いで下を見るけど、落ちた杖はどこかの茂みに入ったのか見失ってしまった。
探してたらアイツがノイズにやられちまう! そう思ったアタシはネフシュタンの鎧を纏うと共に、即座に飛び出して、アイツを俵抱きにしてノイズから離れることに。
「……お前は」
「いいから逃げるぞ!ノイズに殺されたいのか!」
倒してもいいが、そうするとカブトが現れないかもしれない。どうすればいいか悩みながら走っていると目の前に何かがいきなり現れて殴られた。そのままアタシは倒れてしまう。顔をあげて殴ってきた奴を確認すると、この前デュランダルを盗ってきた
「てめぇ、何をしやがる!」
『カブトは俺の獲物だ。兄弟の仇は貴様には渡さん』
「あ゛?それは出来ない相談だな!」
ふざけるな、カブトはアタシが倒すんだ!それに、てめぇらネイティブも平和を乱す敵だ! ……でも、後ろには制御を離れたノイズ、正面には蜘蛛野郎。そして横には巻き込まれたアイツ……!そうだ、アイツは無事なのか!?
横を見ると、パンパンと服についた草を払って普通に立っていた。
「おい!ここはアタシが引き受ける。だからさっさと」
アタシの言葉はそこで止められた。蜘蛛野郎が襲い掛かって来たからだ。
「チッ!だったら先にてめぇから倒してやるよ!」
『やれるものならやってみろ』
ネフシュタンの鞭を振るい奴に向けて叩きつける。が、それは当たる直前に奴の姿が消えて地面を叩いただけだった。そしてその直後に何度もアタシの体に衝撃が奔る。 なんとか当てようと、必死になって衝撃を感じた方向に鞭を振るうが全く手応えがない。逆にアタシの傷が増えていくだけだ。その傷もネフシュタンの力ですぐに修復されていくけどな。
後ろを見るとノイズが近づいて来ていた。仕方ないが、ノイズはこの戦いの邪魔にしかならない。だから、
「吹き飛べ!」
大技でノイズを一掃、あわよくば蜘蛛野郎も吹き飛んでくれたらいいんだが……ないな。そういやアイツは……いないか。ちゃんと逃げてくれるといいんだが……。
『余所見していていいのか?』
「ッ!しまっ……ガハッ!?」
アタシの目の前に現れた蜘蛛野郎に蹴り飛ばされて、樹の幹に背中を強打した。ネフシュタンの修復の際に起きる侵食がかなり進んじまっている。 アタシはなんとか立ち上がろうとするけど、その前に蜘蛛野郎が放った糸で樹の幹に拘束されてしまった。
「この程度……とれねぇ!?」
なんだこれ!?ネバネバしててネフシュタンの力でも引きちぎれねぇ!
『ふん、俺の勝ちだ。そこで大人しくグホッ!?』
蜘蛛野郎が勝ち誇ろうとしたその瞬間、現れた誰かが蜘蛛野郎を蹴り飛ばした。いや、誰かなんて言うまでもない。カブトだ。カブトは
「クロックアップ」
【CLOCK UP】
姿の消えた蜘蛛野郎を追いかけるようにカブトも腰を叩いて姿を消す。どんな原理かは知らないが、高速で移動しているのは分かる。動けないアタシには何も、出来ない……。このままじゃフィーネにも失望されて、捨てられる? ……嫌だ。もう、一人ぼっちは嫌だ!
高速での戦闘が終わったのか、蜘蛛野郎とカブトの姿がちょうど見えるようになった。
「ふっ、とべ!アーマーパージだ!」
侵食してくるネフシュタンの鎧をパージして糸ごと吹き飛ばす。そしてアタシは、アイツらを倒す為、自分の身を守る為とは言え、大嫌いな歌を歌うことにした。
「 Killter Ichaival tron 」
――――――――――――――――――――――
「鎧の戦士が戦闘していたポイントで新たな反応を感知!」
「これは……アウフヴァッヘン波形!?」
同時刻、二課のオペレータールーム。じっとしていたノイズがネフシュタンの反応と共に急に動きだし、奏を呼び出すか判断を決めかねていた時、突如ノイズの反応が消えたのだ。 ノイズを操るネフシュタンが倒すのは考えにくく、自壊するには速すぎると困惑していた直後現れたガングニールの反応。それにより
「照合結果でます!」
「イチイバル、だとぉ!?」
――――――――――――――――――――――
「歌わせたな……。この雪音クリスに、大嫌いな歌を歌わせたな!!強大な力を振るう奴は全部敵だ、そんな力があるから、世界は平和にならないんだぁぁぁ!!!」
イチイバルのシンフォギアを纏ったクリスはその両手に上下二門ずつの三連装ガトリングを持ち、響とアラクネアに向け連射する。
さらにクリスは背中に巨大なミサイルを二つ背負い、それぞれに狙いを定めて一発ずつ放った。
激しい弾丸の雨とミサイルに襲われる響とアラクネア。その攻撃密度に回避は難しく防御するしかない。
「はぁ……はぁ……」
しばらくの間撃ちっぱなしだったクリス。疲れて息切れしたのか、両手のガトリングを降ろして息を整える。
「やったか……?」
そう呟くクリス。だが、それはフラグだったのだろう。爆煙が晴れ、そこにいたのは
「キャストオフ」
【CAST OFF】
【CHANGE BEETLE】
そして再びキャストオフしてライダーフォームへとなる。それを見たクリスはガトリングをしまい、クロスボウに変形させて構える。が、ここで気付いた。あの蜘蛛野郎はどこに行った?と。
『いい攻撃だ。だが、無意味だ』
そんな声がクリスの後ろから聞こえた。カブトとの戦いを邪魔されては敵わないと思ったのだろう。アラクネアはクロックアップでクリスの攻撃を避け、後ろへと回り込んでいたのだ。 そして腕を無防備なクリスに突き立てようとする。 だが、それはガキンッ!という音と共に止められる。クロックアップした響がクナイモードのカブトクナイガンを手に割り込み、クリスをその凶刃から守ったのだ。
『な!?』
敵を庇うとは思ってなかったアラクネアは動揺し、そこに響の連撃を受け後退する。
「……お前。なんで、アタシを庇った?」
それは守られたクリスにも予想外の事で、倒すことを忘れつい聞く。
「あの人が言っていた。子供は宝物。この世で最も罪深いのはその宝物を傷付ける者だ。守る理由はそれで十分だ。それにお前は決して悪人ではない、やってることは悪に分類されるかもしれないがな」
「ア、アタシを子供扱いするな!」
顔を赤くして反論するクリスを無視して響はアラクネアの方へと歩みを進める。……この前、敵対していたとは言え、ライダーキックを叩き込んだことを棚にあげているのは突っ込んではいけないのだろうか。
響とアラクネアの距離がほとんどなくなった時、互いに拳を握り顔に当てる。そしてその場でお互いに拳や脚を出し超近接戦闘を行う。響の拳が入ると、それのお返しとばかりにアラクネアの蹴りが入る。クリスはその戦いに入る隙もなくただ見守っているだけしか出来ない。
「くッ!?」
『もらった!』
その途中、急に響の動きが鈍った。防御の高いマスクドフォームで防いだとは言え、大火力のミサイルをその身で受けたのだ。体に見えないダメージが入っていたのだろう。そしてそれを逃すアラクネアではない。勝ちを確信した攻撃を放つ。
『グホッ!?』
「今だ、やれ!カブト!」
だが、それはクリスが手に持つクロスボウから放った狙いすまされた一撃で止められて仰け反り、逆に大きな隙を晒してしまう。 クリス自身、何故カブトを守ったのかよくわかっていないが、一先ずは守られた借りを返す為だと思い込んだ。
【ONE TWO THREE】
それに応えるように響はゼクター上部のボタンを順に押しゼクターの角を一度戻す。
「ライダー……キック」
【RIDER KICK】
そして再び動かすとゼクターからエネルギーがカブトの角へ集まり、脚へと収束。アラクネアが体勢を整えるより速くライダーキックを叩き込んだ。直撃を受けたアラクネアはそこで爆散。 響は右手を天に突きだし勝利の証とする。
『全く、やると言ったことも出来ないなんてね』
「……誰だ」
「フィーネ……」
『もう貴女は要らないわ。じゃあね、クリス』
その直後、どこからか女の声が聞こえ警戒する響。クリスには誰かわかったらしく、声が震えている。 そして告げられた言葉。同時にクリスのパージしたネフシュタンの鎧が光りだし、どこかへ消えた。さらにノイズが響とクリスへと向かって飛んでくる。それらはクリスが即座に撃ち落とした。
「待ってくれ、フィーネ!」
フィーネと呼ばれた女を追いかけてクリスはどこかへ走っていった。響も追おうか迷ったが、敵の狙いや力量が分からない今は撤退を決めた。そして変身を解除すると未来の待つ寮の部屋へと帰っていくのだった。
暑い……少し頭痛いけど、なんとか完成。疲れた……。