幕間の方はもう少しで次の話が投稿できるかな?程度です。
コラボ回はheroさんの伴装者と同時投稿になります。そして視点がそれぞれの世界で違うので是非とも両方見るのをオススメします!では、どうぞ!
邂逅、乙女と伴装者
平行世界。それは無数に分岐し広がっていく、
死んでしまった誰かが生きていたり、逆に生きているはずの誰かが死んでいたり。
起きたはずの事件が起きていなかったり、存在しないはずの何かが存在したり。
或いは、見知った誰かが平行世界では、全く別の性格をしていたり……。
これは、そんな平行世界と繋がる事で起きた不思議な出会いから始まる、ひと夏の物語だ。
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夏休みも終わりに近づいたこの日。外では暑い中、部活動に励む生徒が多々いるが、響は一足早く食堂での秋の新メニュー……秋が旬である秋刀魚や鯖、筍等を使った料理をどうするか、レシピを纏めたノートを見ながら考えていた。
「鯖はやはり味噌煮だな。筍は……」
自分の記憶にある「天道流筍づくし」をメニューに入れようかと一瞬考えたが、それは少しやり過ぎではないかと思い留まり、筍ご飯とお吸い物のセットにした。
その他にも、ある程度メニューの内容が決まった所で、試しに作ってみようと買い物で出ることに。新鮮な筍は季節の関係上あるかは怪しいが、少なくとも鯖は売っているだろうと。
だが、部屋を出ようとした時。どこからともなくハイパーゼクターが飛んできて響の前に現れる。
「……そうか。呼んでいるのか」
そう言うと、肯定するかのようにハイパーゼクターはその場で輪を書くように旋回し一回転した。カブトゼクターを呼び出し万全の準備を響が整えると、この前と同じようにハイパーゼクターが激しく発光。そして響の存在がこの世界から消えた。
「さて、ここは……いつものショッピングモールのようだが」
響が現れたのは市内にあるショッピングモール。響もよくここの食料品売り場を利用している為、すぐに気づいた。だが、わざわざハイパーゼクターが呼んだという事は『並行世界の』が頭に着くのだろう。前回(※幕間:風斬る戦神~貫くは『 』の道~)の経験からそう察した。
一先ず状況を確認しようとすると、悲鳴と共にショッピングモールから人が逃げ出してくる。いずれもその顔には恐怖の色が見えている。
「おい」
「うおっ!?何すんだこのガキ!」
「一つだけ聞かせてくれ。何があった?」
逃げ出してきたうちの一人を捕まえ、有無を言わさぬ声音で質問する。
「バケモノだよ!バケモノ!ノイズじゃない謎の虫みたいなバケモノが現れたんだ!」
「なるほどな。感謝する」
「あ、おい!どこに行くんだ!そっちは……」
虫みたいなバケモノ。そして自分がハイパーゼクターにより呼ばれた事。そこから推測できるのはワーム、ないしネイティブがこの世界で暴れているという事。彼らが人に害をなすのであれば、響が戦わない理由はない。先ほど質問した男が何かを叫ぶのを無視しながらショッピングモールの中へと駆けていった。
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『ヒーローになんて、なりたくない!想いを貫けッ!
「この歌……そしてこの声は……」
ショッピングモールの中に入ると戦闘音と共に歌が聴こえてきた。初めて聞く歌だったが、その声から誰が歌ってるのかは即座に理解出来た。この世界の響(以後、立花と表記)が交戦しているのだと。その声と戦闘音のする方向を把握した響はカブトゼクターを呼び出した。そしてゼクターを掴むと腰のベルトへとセットし、あの言葉を口にする。
「変身」
【HENSIN】
銀とオレンジの鎧に包まれた姿。『仮面ライダーカブト・マスクドフォーム』へと変身した響は他にワーム・ネイティブがいないか警戒しつつ、奥へと進んでゆく。
戦場に近づいた時、耳にはもう歌は聴こえてこなかった。まさか、と最悪の事態が頭によぎるが、ここで慌ててもどうにもならない。気配を隠し、足音を立てないようにして近づいていく。そこで響は見た。倒れる二人のシンフォギア装者。そしてその前に立つ三体の成虫態ネイティブを。まだ生きてる事を内心で安堵しつつも響は即座に記憶を漁り、ネイティブの名前と姿を一致させる。
赤い身体の個体は、右腕が巨大な鉤爪になっており、全身に棘を生やしたダニの怪人……アキャリナワーム。
赤褐色の身体に、右腕が触手鞭となったバイオリンムシのような姿の怪人……ビエラワーム。
しかし、最後の一体。黄色い身体に褐色の斑紋を持つ、ミイデラゴミムシのような特徴を持つ怪人…… 。こいつだけは響の記憶にあるどのワーム、ネイティブとも一致しなかった。
アキャリナワームが左手で灰色のシンフォギア装者を掴んで持ち上げ、右手に赤色の電撃を走らせる。
「ダメッ!翔くん!」
それを見て、倒れているオレンジのシンフォギア装者――恐らく立花――が助けようと立ち上がるが、ミイデラゴミムシ型のネイティブが吐き出したガスで動きを止められる。そしてアキャリナワームの腕が振り下ろされ灰色のシンフォギア装者に当たる
……のを、響が見逃す訳がなかった。
『ぐうぅっ!?』
灰色のシンフォギア装者を掴んだ瞬間に取り出したカブトクナイガンをガンモードにして、装者に当たらないように狙いをつけ撃ったのだ。その衝撃で装者がアキャリナワームの手から解放されたのを見て、足音を立てつつ近づいていく。
『貴様は……このタイミングで現れるかァァァッ!』
「あの人が言っていた。私は世界の中心、ならば世界は私が救ってやる」
響の登場に驚いたネイティブたち。しかし、驚いたのは彼らだけではなかった。
「
「それに、その声って……わたし?」
その声に響はネイティブの動きを警戒しつつも二人を見る。一人がこの世界の自分なのはわかっていたが、もう一人の装者が
硬直する場。そこで最初に動いたのは響。アキャリナワームの手から解放されたとは言え、二人の装者は未だネイティブの近くにいる。ネイティブを彼らから引き離す為に手のカブトクナイガンの引き金を引き成虫態の三体を撃ち抜く。銃撃から解放されるためにネイティブが離れると響は二人の下に近づき、伏せろ、と一言告げてゼクターホーンへと手を伸ばした。
「キャストオフ」
【CAST OFF】
その言葉と共にゼクターホーンを反対側へと持っていき、マスクドフォームの鎧がパージされる。二人は伏せて、アキャリナワームとミイデラゴミムシ型はそれぞれ避けたり、弾いたりしてやり過ごしたが、ビエラワームだけは突っ込んで来ていた為、パージした鎧の直撃を受けて吹き飛んでいった。
【CHANGE BEETLE】
鎧の下から現れたのは銀朱色をしたカブトムシを模したライダー……『仮面ライダーカブト・ライダーフォーム』。
「クロックアップ」
【CLOCK UP】
クロックアップを起動させ、響たちは余人の介入を許さない時間の流れの異なる世界へと突入する。
まずは数の不利を減らす為に、唯一隙をさらしているビエラワームを狙う。しかし、すぐに後退を余儀なくさせられた。何故ならば、アキャリナワームが体についている棘をミサイルのように飛ばして妨害してきたからだ。そこに体勢を整えたビエラワームが右腕の触手鞭での乱舞を放つ。響は躱す事も考えたが、さっき後退した時に二人の近くまで戻ってきてしまっていた。彼らがこれ以上の攻撃を受けると危険だというのは先ほどの状況を見て理解している。故に、響はカブトクナイガンをクナイモードに変えての迎撃を選択した。自身もゆっくり動きながら、後ろの二人に当たらないように、右に左に鞭を受け流していく。
ビエラワームの攻撃が通用しないと悟ったネイティブたち。今度はアキャリナワームとミイデラゴミムシ型が前に出てきて、格闘戦を挑んできた。アキャリナワームは右腕の巨大な鉤爪で、ミイデラゴミムシ型は両手の鉤爪で響を激しく攻め立てる。ミイデラゴミムシ型のネイティブは兎も角、アキャリナワームの巨大な鉤爪は一撃でも喰らうと危険なのは見てわかる。なので、アキャリナワームの鉤爪による攻撃だけは必ず避けていた。しかし、そこにビエラワームの触手鞭による攻撃まで加わった。二体の鉤爪による攻撃の隙間を埋めるように放たれるそれに、響の被弾が徐々に増えていく。ビエラワームの攻撃が加わるまでは反撃も出来ていたのだが、今となっては防戦一方である。
響が中々攻勢に出れない理由としては、初めて見るミイデラゴミムシ型の存在が大きい。これまでのネイティブは知識としてどのような生態か、どのような攻撃をするかを知っていた為に対策は容易だった。敵が一体ならば強気に出ることも考えられた。しかし敵が複数、それも高い攻撃力を持つ敵がいる事からそれは躊躇せざるを得なかった。
そこで響は防御に集中しつつも、反撃の時を狙う事にした。幸いにもミイデラゴミムシ型の攻撃力はそこまで高くないようで、被弾は多いがそこまでのダメージは受けていない。響はじっとその時を待った。そしてそれはすぐに訪れた。
変わらない状況に焦ったのだろうか、ネイティブたちの連携がほんの少しズレた事で僅かな隙が発生した。そこに響は手首のスナップだけでクナイモードのカブトクナイガンを投擲。アキャリナワームの顔にクリーンヒットした。
『グオォッ!?』
そして完全に崩れた連携。力を込めてアキャリナワームを蹴り飛ばした響はミイデラゴミムシ型に対し、拳、拳、蹴り、拳、とラッシュを加えていく。そのままライダーキックまで繋げようとするが、その直前に口部から強い勢いのガスを噴射。それにより後ろに少し下げられた上、視界が隠される。すぐにガスは晴れるが、その時にはもうネイティブたちは何処かに消えていた。残ったのは鼻にくる刺激臭だけだ。
【CLOCK OVER】
クロックアップが解除され、元の時間に戻ってきた響。先にネイティブと戦っていた二人は男の方が立花に肩を借りて立ち上がっていた所だった。そして彼らは響に声をかけてきた。
「ありがとう。お陰で助かった」
「翔くんを助けてくれてありがとう。カブトさんっ!」
その声に響は振り替える。じっと翔くんと呼ばれた男の顔を見ると、どこか既視感を覚える。どこだったかと思っていると翔くんと呼ばれた男が再び声をかけてきた。
「ところで、君はカブト……なんだよな?その体格と声、天道さんではないみたいだけど……」
「ああ、そうだ!ねぇ、どうしてわたしと同じ声なのッ!?」
立花も思い出したように問いかけてくるが、響としてはそれどころではなかった。
「ッ!?天道……だと!?」
今、彼はなんて言った?聞き間違いでなければ
「まさか、この世界には『あの人』がいるのか!?お前はそれを知っているのか!?教えてくれ!!」
「えっ!?あっ、あの人……?」
「『天道総司』だ!天の道を往き、総てを司る男の名だ!さっきお前が口にしていただろう!?この世界にはあの人の物語があるんだな!?」
「あ、ああ……。丁度昨日、全話鑑賞し終えた所だぞ?」
「なにッ!?それは本当か!?」
「ちょ~っとストップ!二人とも、距離が近いよッ!」
我を忘れて詰め寄るもう一人の自分に耐えかねたのか、立花が二人を引き離す。
「ッ……す、すまない……。なにぶん、かれこれ10年以上はあの人の居ない世界で生きて来たものだから、つい……」
自分のやらかした事に気づいたのか、気恥ずかしそうにそう告げる響。そして立花は響の言った言葉について言及する。
「この世界って言ったよね?って事はあなたは、もしかして違う世界の……」
それを聞いた響は一旦目を閉じ、人差し指を立てて天を指し示した。
「あ……」
「そのポーズは……」
この動きだけで二人は気づいたらしい。これから響が何を口にするかを。
「あの人が言っていた。私は天の道を往き、総てを司る女、立花響」
ここに天の道を往く女と、伴装者の愛する人。二つの太陽が出会ったのであった。
「別の世界の響……」
「仮面ライダーのわたし……」
そして、誰も知らない物語が動き出した。
次回、響き翔く天の道は──デッデデデッ
翔「平行世界?」
弦十郎「そうだ。ギャラルホルンは、この世界と平行世界を繋げる事が出来る、謎多き完全聖遺物だ」
クリス「ホントにあたしらが知ってる響とは全然違うな……」
響「もうっ!翔くんなんか知らないッ!」
未来「あんな響、初めて見た……」
純「ネイティブが既に二人の姿をコピーしている可能性って、有り得るんじゃないかな……って」
天道響「絆とは決して断ち切る事の出来ない深いつながり。例え離れていても心と心が繋がっている……」
『天の道を往く女』
天の道を往き、総てを司る!
(※サブタイは変わる可能性があります)