活動報告に書いた通り、風邪(たぶん)を引いて二週間ほど気力が無かったのですが、この度復活しました!
ずいぶんとお待たせしたと思いますが、続きをどうぞ!
純がこれまでの事、主に私について説明をした事で状況を理解した未来。先ほど立花が飛び出した理由は簡単。『仮面ライダーカブト』について私と翔が二人盛り上がっていた事に嫉妬したからだろう。……ダメだな。いくら『あの人』を久しぶりに見れたからと浮かれていたせいで、彼女を傷つけてしまった。反省した上で謝らなくてはいけないな。
「あんな響、初めて見た……」
「小日向でも初めてなのか」
「うん。だって、今まで響が誰かに嫉妬する事なんてなかったんだもの」
「そういえば、あの二人が喧嘩するところって見たことなかった気がするなぁ……」
なるほど、確かに『私』なら……いや、この表現はある意味正しくないか。彼女の性格なら他人に嫉妬など感じる事はなかったのだろう。それに純の言葉通りならこれが二人の初めての喧嘩らしい。
「なあ、あの二人何処まで行ったと思う?」
「本部の外じゃないかな?喧嘩した相手と同じ場所にいようなんて、怒ってる時には思えないもの」
クリスの質問に対し、未来がそう答える。……待て、
「ねぇ、あんまりこんな事、言いたくないんだけど……」
「どうした、ジュンくん?」
「ネイティブが既に二人の姿をコピーしている可能性って、有り得るんじゃないかな……って」
その言葉に辺りの雰囲気が凍りつく。現状、ネイティブと接触したのは翔と立花の二人だけ。二人に襲いかかっていたのを見るに擬態している可能性も高い。
「すぐに司令に報告してくる!小日向、お前は……」
「皆に連絡しなきゃ!」
「僕も恭一郎達に伝えておかないと!」
「あたしはどうすりゃいい!?」
「雪音は本部の出入口へ!万が一という事もある、見張っていろ!」
全員が即座に各人のやることを決め、動き出す。このメンバーなら私のやることは一つだな。そう思い、レクリエーションルームを出たところでクリスに呼び止められる。
「おいっ!何処へ行く気だ!?」
「翔と、それからもう一人の私を探してくる」
「なら、あたしも……」
「僕達が出れば、ネイティブの擬態先を増やし混乱を招く……。そうだね?」
流石だ。理解が早いというのはこちらとしてもとても助かる。それに、仮に擬態能力が無くてもクロックアップへの対策がない彼らでは少し荷が重い。頷いて肯定し思っている事を伝える。
「それに二人の喧嘩は、私が原因を作ったようなものだ。だから、私に行かせてほしい」
「翔の親友として、君に任せる。僕の親友と、彼の大事な人を……頼む」
真っ直ぐな目をして言ってきた純に、再び頷く事で返答を返す。そして、私は外へと走った。二人が無事ならいいんだが……。
――――――――――――――――――――――
ビル街を走り回っている人影がある。一足先に立花を追って飛び出した翔だ。どうやら追いかけている途中で立花を見失ってしまったらしい。
「響ッ!響、何処だッ!?」
「心配なのか?彼女の事が」
「えっ?……って、天道!?」
立花が見つからない事に焦りを覚える翔。そこに声をかけたのは響だった。
「こっちには居なかったぞ」
「探してくれてたのか?」
「責任の一端は私にもある。それくらいの責任は果たすさ」
「すまない……いや、ありがとう」
響へ頭を下げる翔。そして二人はまだ探していない場所へ向けて歩みを進める。そんな中で響は呟く。
「翔、ところでお前……よく気がついたな」
「え?」
唐突に放たれたその言葉に翔の足が止まる。
「私がただの、『並行世界の立花響』ではない存在である事だ」
「ああ……もしかして、言ったらまずかったか?」
翔はそれを聞いて気まずそうな顔をするが、響が首を横に振り否定する。
「いや、取り立てて吹聴するような事でもないからな。誰にも話した事はないし、話したところで何かがある訳でもない。その程度の事情だ」
「そうか……。それにしても、まさか前世の記憶があるなんてね。しかも、産まれる前は並行世界の住人だったなんて」
「最初は戸惑ったさ。転生した世界にはあの人も、あの人の物語もしないなんて……。少し、いや、結構ショックだったかな……」
自分の秘密に感づいた翔だからか、いつもは見せない表情で響はそう語る。
「だから目指したのか……天の道を」
「そうだ。あの人がいないなら、私があの人のようになればいい。そう考えた私は、あの人を目標に生きる事を決めた」
「世界を隔てても、天道さんと繋がっていたい……という事か?」
「お前、中々のロマンチストだな。……でも、そうなのかも知れないな……」
響は真夏の太陽に向かって手を伸ばしながらそう言った。その胸に宿る気持ちは尊敬という名の『愛』なのだろう。
「そして、その手にカブトゼクターを掴んだ……か。凄いな、天道は。天の道を貫き続けて、本当にその手に未来を掴んだなんて」
「あの人にはまだまだ程遠い。でも、誉め言葉として受け取っておこう。……翔、そういうお前はどうなんだ?」
伸ばしていた手を戻し、翔の方へ振り向く響。
「男性のシンフォギア装者なんて、私の世界どころか少なくとも私の行った事のある世界でも聞いたことがない。しかも、自分の手で聖遺物をその身に取り込むなんて、常識的に考えれば無謀以外の何物でもないぞ。……何がお前をそこまで突き動かしたんだ?」
響にそう問われた翔は少し長くなると前置きするが、あまり時間を掛けていられないと理解しているので、出来るだけ手短に話していく。
ライブ会場の惨劇を始めとする翔と立花の関係。弱かった頃、後悔を胸に人助けに邁進していた日々。二人の再会と赦し。そして伴装者となり彼女を支えて、想いに気づくまでを。(※詳しくは伴装者本編をご覧あれ)
「あの人が言っていた。たとえ世界を敵にまわしても守るべきものがある、と……。お前にとっての立花はそういう存在なんだな」
「ああ、そうだ。響を泣かせる奴は俺が許さない。響には笑顔が一番なんだ……。ちゃんと謝らないと……」
「そうだな。今、二課の方で立花のGPSの反応を辿っている。そろそろ連絡が来るだろう」
響がそう語った時の事だった。翔の持つ通信機が鳴り始めたのは。
「はい!翔です!」
『翔くん!今送った座標に全速力で向かって!』
通信機から聞こえてきたのはどこか焦りを感じられる友里の声だった。二人はそれだけで状況を把握した。
「まさか、響とネイティブが!?」
『ええ、その通りよ!急いで!敵は翔くんの姿に化けているわ!』
それを聞くや否や、二人は指定された座標へと向け駆け出した。
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「響……!」
二課からの連絡を受け、翔が駆けていく。その速さは『天の道を往く』為に鍛えた私の速さを越えていて、徐々に間が開いていく。
いくら全速力で、と言われていても、ネイティブがいる=戦闘に入るということ。駆け付けるのに体力を使い果たしては本末転倒だというのに……!
「おい、翔!飛ばしすぎだ!」
そう声をかけるも、もう聞こえていないようで反応が無かった。こうなると素直に追い付くより、支援した方がいいな。
「カブトゼクター!頼む!」
そう決めた私は、カブトゼクターを呼び出すと翔と立花に、私が追い付く前に何か起きれば介入するように頼んだ。空間を飛び越えられるゼクターなら、仮にこちらに他のネイティブが来てもすぐに呼び戻せる。一番はやはり何も起きない事だが、警戒するに越したことはない。
そして私が追い付いた時、そこには睨み合う二人の翔とその間で困惑する立花がいた。
勿論、今回も伴装者の方と同日投稿です。暁の方はエラー吐いたりするらしいので、pixivにも投稿してるとの事です。最後の方で詳しく何があったか知りたいという人は是非そちらへ!