天の道を往き、総てを司る撃槍   作:通りすがりの錬金術師

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コラボ最終話です!就活やらなんやで、遅くなりました。
ヒロさん側は先月の内に完成してたのに、こちらが終わらないから待たせてしまった……。


響き翔く天の道

「わたしの……わたしの翔くんはッ!」

 

 

 本物と偽物。瓜二つな二人を前に立花(もう一人の私)は、深く息を吸い込み、胸の歌を口ずさむ。

 

 

「――Balwisyall Nescell gungnir tron――」

 

 

 黄色の閃光と共に、その身にシンフォギア――奏と同じガングニール――が装着される。そして、拳を握りしめて、勢いよく突きだした。

 

 

「うぉりゃああああああああぁぁぁ!!!」

 

「ッ!?」

 

 

 立花の拳が向かう先。それは二人の翔のうち、左側の翔の顔だ。もし、間違えていれば大惨事間違いなし。

 彼女と私は別人だが、共に同じ(立花響)である。なんとなくだが、その狙いはわかる。

 

 そして、私の期待通りに彼女はやってくれた。

 

 拳が鼻先の寸前でピタリと停止。その勢いで生じた風が大きな音と共に翔の身体を突き抜ける。一方の拳を突きつけられた翔は微動だにもせず、響の瞳を真っ直ぐに見つめ、微笑んだ。

 

 

「やっぱり……。信じていたよ、翔くん」

 

「ああ。よく見つけてくれたな、響」

 

 

 その言葉と同時に、翔はその隣で余裕が崩れて別人だとバレバレの表情をしていたもう一人を蹴り飛ばした。

 

 

「ぬぎゃっ!?」

 

 

 もう一人の翔は地面を転がり、その中でネイティブとしての姿へと戻る。

 

 

「何故だ!?お前の姿は、記憶も含めて完全にコピーしたはず……俺の擬態は完璧だったはずだ!いったい、何を理由に俺の擬態を見破れたと言うのだ!?」

 

 

 その程度で人間という存在を完全に真似出来るわけはない。完全に動揺しているアキャリナに立花は答えを告げる。

 

 

「本物の翔くんなら、きっとわたしの事を信じてくれる……。わたしの拳に乗せた想いに気付いてくれると思ったんだ。だから、当たるギリギリの所を狙ったんだ」

 

「馬鹿な!?最愛の者に拳を向けられたのだぞ!?何故平然と立っていられるのだ!?」

 

「ネイティブは確かに、人間の外見や記憶を寸分違わずにコピーすることが出来る。だが、その人間が抱く信頼や想いまでは、決して真似することは出来ない!」

 

 

 まさにその通り。もし、仮に信頼や想いまでをも完全にコピーしたのならば、その瞬間に自分がネイティブである事など忘れてしまう。

 あの人の物語でもそれはあった。姉をワームに殺され、復讐を強く思っていた青年、神代剣をコピーしたが、彼の意識にワームとしての自我が塗り潰されたが為に、人間として生き、神代剣の意識を宿したままワームとして死んだスコルピオワームのように。

 

 太陽が空を覆っていた雲から顔を出し、光が差し込む。それはまるで、二人を祝福しているかのようだ。

 私はそんな天を指差し

 

 

「あの人が言っていた。絆とは――」

 

「絆とは決して断ち切る事の出来ない深い繋がり、例え離れていても心と心が繋がっている、と」

 

 

 おいこら、翔。それは、その言葉は……。

 

 

「……私のセリフを奪うな」

 

「すまない、一度言ってみたかったんだ、天道語録」

 

「あ、天の道のわたし……もしかして拗ねてる?」

 

「拗ねてなどいない。あの人はこの程度で臍を曲げたりなど……」

 

 

 そう、ジト目で翔を軽く睨んでいるだけで、私は決して拗ねてなんていない。

 

 

「ハハッ、まあまあ。ほら、とっととあいつ倒すぞ」

 

 

 元はと言えば誰のせいだと……。まあ、正論には違いないので、意識をアキャリナに向ける。

 

 

「貴様らァァァァァ!!!」

 

 

 面目を潰されて不満なのか、アキャリナは怒りに全身を震わせる。

 

 

「ビエラ!こいつら纏めて血祭りに上げてやるぞ!」

 

 

 アキャリナは公園の周囲の監視カメラや、二課のドローンを破壊して回っていたのだろうビエラを呼び戻す為に大声をあげる。……しかし、ビエラはこの場に来る事はなかった。その理由はなんとなくだがわかる。少し離れた所から戦闘の音と歌が聞こえてくるからだ。

 その状況をアキャリナも理解したのだろう。

 

 

「……こうなれば、貴様ら纏めて俺が始末してくれるわ!」

 

 

 右手の巨大な鉤爪を構え、こちらを仕留めようとしてくる。だが、その瞬間。

 

 

「ッ!?」

 

「あれは……」

 

 

 空間に緑色の波紋が浮かぶと同時に、そこから二機の昆虫型メカ――ガタックゼクターとハイパーゼクター――が現れる。二機は飛び出した勢いのまま、アキャリナに突進して、こちらへと戻ってくる。私にまた力を貸してくれるのか、と思ったがどうやら違うようで。

 

 

「ガタックゼクター!?」

 

「もう一人のわたし、これって……」

 

 

 ガタックゼクターは翔の周りをくるくると旋回している。なるほど、そういうことか。

 

 

「翔、ガタックゼクターはお前に力を貸すと言っている」

 

「本当か!?」

 

「ああ、翼と同じものを、お前からも感じたのだろう」

 

 

 それ以外に力を貸す理由が思い浮かばない。血縁は関係ないからな。

 自分の目線の高さに浮かぶガタックゼクターを見つめる翔。私の言葉を肯定するかのように、ガタックゼクターはその身を縦に揺らす。それで覚悟が決まったのか、翔は手を伸ばす。

 

 

「ガタックゼクター……俺に力を貸してくれ!」

 

 

 天高く伸ばした手にガタックゼクターは、くるりと一回りして収まる。それと呼応するかのように、翔の腰には銀色に輝くライダーベルトが現れた。

……ちょっと待て、なんだそれは。そんな機能、ライダーベルトにはないぞ。それに翼のライダーベルトはまだ壊れたままで修理も手付かずのはず。

 

 

「……えっ!?なっ、なにこれ!?」

 

「ッ!?これは……」

 

 

 翔の腰にベルトが出現すると同時に、カブトゼクターと立花の持つギアペンダントが共鳴するかのように光を放つ。……さっきと同じならば、これは。

 

 

「この光……もしかして、ガングニールの……?」

 

「まさか……立花、手を!」

 

「うん!」

 

 

 手を伸ばし声をかけると、一瞬の躊躇も無しに即座に握ってくる立花。私の手を伝って、何か……恐らく「カブトの力」が立花に流れ込む。

 

 

「これ……カブトゼクター!?」

 

 

 流れ込んだ力が物質化する。その形は、色こそ違うが間違いなくカブトゼクターだった。しかも、いつの間にか立花の腰にもライダーベルトが巻かれている。

 

 

「それはお前の掴んだ未来。お前自身のカブトゼクターだ」

 

「わたし自身の……。ってことは、これを使えば!」

 

「そうだ。……立花、翔、行けるな?」

 

 

 ゼクターとライダーベルト。揃ったのならやれない道理はない。

 

 

「ああ!散々好き勝手されたんだ、最早情けは不要ッ!」

 

「翔くんに化けたり、わたし達のデートを邪魔したり!絶対に許さないッ!」

 

「ほざけぇぇぇぇぇッ!!」

 

 

 不敵な笑みを浮かべる翔に、力強く答える立花。起き上がったアキャリナを私達は正面から見据える。

 

 

「行くよ、二人ともッ!」

 

「いざ、押して参るッ!」

 

「「変身ッ!」」

 

 

 二人は掴んだゼクターを腰のベルトへとスライドさせ、装着する。

 

 

【HENSIN】

 

 

 ゼクターを中心にして、シンフォギアの上から重厚な鎧が展開されていく。それはやがて、全身を覆いバイザー状のフルフェイスマスクが口元のみを開けて二人の顔を包んだ。

……翼の時とは違うな。翼は普通のガタックだったが、これは最早別物だな。

 

 

「「キャストオフ!」」

 

【CAST OFF】

 

 

 二人は息の揃った掛け声で、共にゼクターホーンを動かす。弾けた鎧の下にはライダーフォームの鎧ではなく、シンフォギア。しかし、その姿はこれまでとは一変している。

 立花は胴体と肩に、カブトとほぼ同じ形状のオレンジ色のアーマー。二の腕や腿は露出していて、仮面に覆われていない頭部のヘッドギアにはカブトの角を模したパーツが追加されている。

 翔も胴体と肩に、ガタックとほぼ同じ形状の青いアーマー。両肩にはガタックカリバーも装着されていて、ヘッドギアにはクワガタの角を模したパーツが追加されている。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「祝え!天道響との絆がもたらした、マスクドライダーの力を宿したシンフォギア。その名も、『カブトギア』及び『ガタックギア』!今、誕生の瞬間である!」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

……なんだ、今のは。ストールにコートと言う胡散臭い格好のやつが何か言っているのが、唐突に脳に浮かんだのだが。だけど、すぐにそれは気にしても仕方のない事だと割り切る。

 

 

『馬鹿な!?カブトが二人!?それにガタックゼクターだと!?』

 

 

 これ以上無いほどに狼狽えるアキャリナ。次の瞬間、なんとアキャリナは逃走の一手を選んだ。

 

 

『クソッ!こうなりゃ逃げるが勝ちだ!』

 

 

 クロックアップにより姿の掻き消えるアキャリナ。逃走にはこれ以上ない一手だが、今回は相手が悪かったな。

 

 

「クロックアップ」

 

「「クロックアップ!」」

 

【CLOCK UP】

 

 

 カブトにガタックの力を得た二人と共にクロックアップを行い、アキャリナを追う。

 

 

「逃がすか!」

 

 

 翔が両肩にセットされていたガタックカリバー・残月を抜き、柄部分のジョイントで合体させる。弓となったそれで、タキオン粒子を圧縮して出来た矢を用いて逃げるアキャリナの背中を撃ち抜く。

 

 

『ぐっ!?』

 

 

 続いて、天高く飛び上がった立花が頭上から拳を叩き込む。その後、間髪入れずに地面に向けてアキャリナを蹴り飛ばした。

 

 

「フッ!」

 

 

 落ちてくるアキャリナに対し、待ち構えていた私はクナイモードのカブトクナイガンで何度も切り裂く。後ろから駆けてくる音を感じ、身を横に動かし道を作ると、すぐそこまで来ていた翔がガタックカリバー・残月を振り下ろした。

 

 

「成敗!」

 

『ぐおおおおおッ!?』

 

【CLOCK OVER】

 

 

 その一撃でクロックアップが解除され、地面を転がるアキャリナ。

 

 

『図に乗るなよ、人間如きがァァァ!!』

 

 

 逃走を諦めたのか、もしくは何か光明を見たのか、立ち上がったアキャリナは身体中に生えた棘をミサイルのように飛ばしてくる。

 

 

「どりゃあああああああッ!」

 

 

 私たちに向けて雨のように降り注ぐ棘。しかし、立花が足元を踏みしめ、それにより捲れた地面が壁となり棘を防いだ。……あれは、震脚か。弦十郎さんがよく使う技だな。

 

 

『何ィ!?くっ、クソッ!』

 

 

 防がれた事に驚きながらもアキャリナは、鉤爪にエネルギーを纏わせ突進してくる。それを迎え撃とうとした私の耳に聞こえたのはさっきも聞いたあの歌だった。

 

 

「君が望む事なら――」

 

 

 この歌は間違いない。『NEXT LEVEL』だ。

 歌いながら飛び出した立花は、腕部のパワージャッキを展開しながら拳を鉤爪に向けて突きだした。その拮抗は一瞬。勢いよく伸縮したジャッキは力を拳に伝え、アキャリナを弾き飛ばす。

 

 

『ぐっ!?』

 

「暴走を始めてる 世界を元に戻すにはもう――」

 

 

 立花は更に追撃で拳を腹部へと放つ。それを受け、後退したアキャリナは再び棘を放ってくる。しかし、それが当たる事はなかった。何故なら翔が撃ち落としたからだ。いくらか撃ち漏らしも出たが、それは私が射撃で撃ち落とす。

 

 

「Moving fast 心の」

 

「時計走らせ」

 

「明日のその先へ……」

 

 

 そして、私は動き出す。自分でも気づかない内に、そこまで上手でもない歌を口ずさみながら。

 

 

「君のとなり 戦うたび 生まれ変わるッ!」

 

「目に見えるスピード 越えてくモーションッ!」

 

「いったい自分以外 誰の強さ信じられる?」

 

 

 翔の矢がアキャリナの攻撃を撃ち落とし、立花の拳が外骨格を砕き、私の斬撃がダメージを重ねていく。

 

 

「「「高速のヴィジョン 見逃すなッ!」」」

 

「ついて来れるならッ!翔!」

 

 

 アキャリナの振り下ろした鉤爪を受け止め、翔を呼ぶ。即座に反応した翔はガタックカリバーを交差させ、アキャリナの腕を挟み込む。

 

 

「ライダーカッティング!」

 

【RIDER CUTTING】

 

 

 蒼い雷と共に放たれたその一撃は、見事にアキャリナの右腕を刈り取った。

 

 

『うぎゃああああああああ!!』

 

 

 火花を散らしながら絶叫するアキャリナ。苦しみながらも口を開く。

 

 

『何故だ……何故だ……何故だァァァァァァッ!!貴様ら人間如きが何故、我々に勝てると言うのだ!?貴様ら虫ケラの……何処にそんな力がある!?』

 

 

 なんだ、そんな事も分からないのか。だったら最期に教えてやろう。

 

 

「あの人が言っていた。人は人を愛すると弱くなる。けど、恥ずかしがる事は無い。それは本当の弱さじゃないから。弱さを知ってる人間だけが強くなれるんだ、と。お前の言う弱さこそが、人間の強さだ」

 

「お前が絶対に真似る事の出来ない、人間の心に宿る炎。人はそれを愛と呼ぶッ!愛を持たないお前に、俺が屈する道理はないッ!」

 

「あなた達は自分の都合で、わたしの大切な人を傷付けた。だから私はこの拳を握るッ!わたしを立ち上がらせるのは、いつだってわたし自身が信じて握った正義だッ!」

 

 

 私たちはそれぞれゼクターのスイッチを押し、ゼクターホーンを元の位置に戻す。

 

 

【ONE】 【TWO】 【THREE】

 

『愛に、正義……だと!?』

 

「そうだ。愛する人を守る為、自らの愛を貫く為に戦う。それが俺の、『男の道』!」

 

「正義を信じて握りしめる。これが『わたしの道』!」

 

「そして私の『天の道』」

 

「俺達は」

 

「わたし達は」

 

「「自分の道を突き進むッ!」」

 

 

 三人同時に再びゼクターホーンを展開。エネルギーが角を伝って足へと収束する。

 

 

【RIDER KICK】

 

「「「ライダーキック!!!」」」

 

我流・ライダーキック

 

雷抱吾蹴撃・戦神の型

 

 

『ぐあああああああああああッ!!!』

 

 

 三人同時の三方向からのライダーキック。アキャリナにはそれを防ぐ事も、避ける事も出来ない。断末魔の叫びを上げ、ライダーキックを受けたアキャリナは爆散した。

 

 

 無事に倒した事を確認すると、私たちはそれぞれゼクターを取り外す。私のカブトゼクターとガタックゼクターは辺りを漂っていて、立花のゼクターは空気に溶けるように消滅した。

 

 

「終わったな……」

 

「ああ。そのようだ」

 

「疲れた~……っと、そうだ」

 

 

 肩の力を抜いた立花と翔だったが、ふと何かを思い出したかのように立花が翔の手を握る。

 二人は喧嘩の原因となった事を互いに謝り、なんかとても甘い雰囲気を醸し出す。カブトゼクターとガタックゼクターが冷やかすように飛び回っている。やめてやれ、と思いながら軽く手を振って二機を追い払う。

 

 

「天の道のわたし!その……ありがとう。何回も助けられちゃって」

 

「私の方こそ、すまない。……あの人の事となると、我を忘れてしまうんだ」

 

「じゃあ……お互い様、かな?」

 

「そういう事にしておこう」

 

 

 立花は手を伸ばしてきたので、答えるように私も手を出し、握手を交わす。その後、翔も含め三人でハイタッチを交わす。

 

 

「おーい、翔!立花さん!」

 

「お前らー!」

 

 

 こちらを呼ぶ声が聞こえたので振り向くと、純にクリス、翼が駆けてきた。立花と翔はクリスに翼と言葉を交わし、騒動の終わりを確かめている。

 

 

「ありがとう。二人が無事なのは、君のお陰だ」

 

 

 そして純は一人、私へと礼を告げてきた。

 

 

「礼ならいい。それより、ビエラはどうしたんだ?まさか……」

 

 

 戦闘音が聞こえたという事は彼らが戦ったのだろう。その結果は。

 

 

「倒したよ。なんとかね」

 

「倒した……!?クロックアップは!?」

 

「それは、後で本部に戻ってからね。今は皆、疲れてるだろうから」

 

「む、それはそうだな」

 

 

 と、なると……そうだな。

 

 

「翼、弦十郎さんに許可を貰えないだろうか」

 

「許可?なんのだ?」

 

「厨房を使わせて貰いたい。疲れているんだろ?ちょうど良い時間だ。夕食は私が作る」

 

 

 私のその言葉に激しく反応したのは立花と翔。目を光らせて寄ってくる。

 

 

「え!?ご飯作ってくれるの!?」

 

「まさか、天道料理まで完コピ出来たりするのか!?」

 

「味まではあの人に遠く及ばないが……この世界で一番の味だと自負している」

 

「じゃあ、さば味噌!さば味噌食べたい!」

 

「必要な材料は言ってくれ!今すぐ買ってくる!」

 

「お前らなぁ……がっつき過ぎだろッ!」

 

 

 なるほど、さば味噌か。ちょうど良い。秋の新メニューの試作を食べて貰おうか。

 

 

「いいだろう。今夜の献立はさば味噌と……」

 

「マジで作る気かよ!?」

 

「へぇ、さば味噌か。最近食べてなかったし、楽しみだね」

 

「司令から許可が降りたぞ。自由に使って構わないそうだ」

 

「よし、翔、立花。買い出しを任せる」

 

「「了解!」」

 

 

 元気よく返事をした二人は必要な食材を聞くと、すぐさま走り出した。その動からきは戦闘の疲れを感じないが。食欲というのは中々の力を持っているな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その夕食の席で、私たちは語り明かした。それはもう、私の世界でもここまで話したのは無いほどに。こちらからはこの世界との詳しい違いを。あちらからは、『仮面ライダーカブト』や、ビエラワームとの戦闘について。

 

 まさか、13年の時間が経ち、ライダーの歴史を継承するライダー……ジオウの物語でガタック――加賀美新――がカブトに変身するとはな。驚きもあったが、それよりも感慨深かった。

 それに、純たちがビエラを倒した方法を聞いた時も驚いた。まさか、『仮面ライダーカブト』一話であの人がやった事を三人がかりとは言え、再現するとは。

 

 夕食の後は、翔たちの提案で『仮面ライダーカブト』を観賞した。もちろん、全て見るには余りにも時間がなかったので、一部をピックアップして、だが。ついでとばかりに『仮面ライダーディケイド』のカブトの世界も見たのだが……。ふむ………ふむ。

 

 

 

(語彙力崩壊中)

 

 

 

 まさかおばあちゃんがでてくるなんておもいもしませんでしたまる

 

 

 

………ハッ!?私は何を。

 まあ、いい。あの人と似て非なる存在のソウジやそのおばあちゃんの語録も外伝的な感じで脳内に保存は完了した。

 

 そして、今。

 

 

「今回は本当に助けられた。共に戦えた事に感謝している」

 

「私は私の役割を果たしただけ。でも……その気持ちは受け取っておく」

 

 

 一晩の休みを貰い、疲れを取ったので自分の世界へ帰ろうとしていた。

 ハイパーゼクターの力なら、場所を問わずに帰還のゲートを開いてくれると思うのだが、並行世界の話をしたときにギャラルホルンの名前を出した事で、その前でお別れをすることに。

 

 

「そっちのあたしによろしくな。お前の居場所は目の前にある。手放すんじゃねえぞ、って言っといてやってくれ」

 

「ああ」

 

「僕からは、そうだね……。そっちの世界のクリスちゃんと、これからも仲良くしてくれると嬉しいな。知っての通り、クリスちゃんは寂しがり屋だから――」

 

「それは言わなくても良いっての!」

 

 

 慌てて純の口を塞ぐクリス。やはり、仲がいいな。これは祝福しておくべきだろう。

 

 

「もちろんだ。爽々波、お前こそ、クリスと末永くな」

 

「約束するとも。クリスちゃんと、世界で一番幸せになるって」

 

「なっ……純くん……!?」

 

 

 一気に沸騰したかのように顔を赤くするクリスに周りが笑いで包まれる。

 そして、最後に翔たちだ。

 

 

「本当にありがとう、天道。君に出会えて良かった」

 

「わたしも、色々あったけど、あなたに会えて良かった!また、会えるかな?」

 

 

 全く、何を言っているんだ。こっちの私は……。

 

 

「言ったでしょ。たとえ離れていても、心と心が繋がっている。たとえもう会えなくても、私が消える訳じゃない」

 

 

……ん?あ、少し口調が崩れてしまった。ん゛ん゛っ。やっぱりまだ興奮が収まり切っていない……か。私もまだまだかな。

 すると、翔と立花が袋を取り出して渡してきた。

 

 

「はいこれ、俺たちからのプレゼント。お土産だと思って持っていくといい」

 

「……これは?」

 

「大きい方が翔くんからで、こっちの薄い方がわたしからだよっ」

 

 

 ふむ……。この大きさと感触は……。

 

 

「立花のは、大きさからしてCDか?翔のは……なんだ? 菓子か何かか?」

 

 

 何かが入った、箱……だな。

 

 

「中身は開けてからのお楽しみだ」

 

「帰るまで開けちゃダメだよっ!」

 

 

 気になるが、そう言われてはここで開ける訳にはいかないな。

……そうだな。貰ってばかりではなんだし、こちらからも一つ。

 

 

「翔、この言葉をよく胸に刻んでおけ。あの人が言っていた……男がやってはいけない事が二つある。女の子を泣かせる事と――」

 

「「食べ物(ごはん)を粗末にする事」だ!!」

 

「……分かっているならそれでいい」

 

 

 また取られたが、あれほど観ていたからな。途中まで言えば分かるだろうとは思っていた。それだけ告げた私は待っていたハイパーゼクターへと触れた。

 

 

「またいつか!」

 

「今度はわたしたちの方から行くからね!」

 

 

 そんな二人の声を聞きながら私は、世界の壁を越えた。

 

 

 

 

 

 元の世界に戻って来て、部屋に誰もいないのを確認して貰った袋を開けた。その中に入っていた物は………。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 翌日、親衛隊の中では、表情や口調が少し……いや、かなり崩れている響が確認されたと噂になったらしい。数日で元に戻ったそうだが、何があったのかは本人しか知らない……。




お土産として貰った物は伴装者で確認を!(21:45分修正、見た人は秘密にしててね?)

あ、ビエラとの戦闘はpixivと暁に投稿されている伴装者の方をご覧いただけたら、と思います。
これでコラボは終わりです。ヒロさんありがとうございました。

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