裏稼業とカカシさん(旧題:裏稼業の何でも屋が出向く先には必ずカカシが待っている件)   作:chaosraven

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 元になる尋問シーンがあったおかげで、ココ最近では本当に珍しく4日で書き上げられた()
 が、それはそれとして諸事情により一週間ほど間を開けさせて頂きました。

 並行視点はコチラ→『https://syosetu.org/novel/186365/88.html

 それではどうぞ、お楽しみ下され・・・


-86-"Two-up"/06 Questioning

 

 

 

「よしウジ虫、ハキハキ喋れよ」

 

 

 尋問の準備が整うと、ブリッツは拘束された男に目線を合わせてそう切り出した。

 ウジ虫と呼ばれた教徒の男は現在、身に付けていた白装束を剥ぎ取られTシャツにトランクス姿となっていた。

 半裸にされた男は、クッションが燃えて鉄板だけ焼け残ったサビだらけのパイプ椅子に座らされ、椅子の脚に両足を括り付ける様に、手は身体の前でそれぞれ拘束されている。

 

 男の正面にはブリッツ、背後にはUMP45、右隣にはFive seveNを持った俺とスケアクロウ、その対面にはHK45Tを持ったLWMMGが控える。

 何かしようものなら即座に何処かから弾が飛んでくる。それもこの距離なら確実に外さず、急所だって簡単に狙える。男に残された選択肢は二つに一つ。話さず殺されるか、話して生きるか。

 

 

 ちなみに尋問中、ブリッツが連れてきた他のメンバーらは別の仕事をしている。一〇〇式とVectorは十字架に磔になっている人形の回収を、FAL、向こうのわーちゃん、RFBは敵の接近に備えて警戒へ。

 上空からスケアクロウのビットが常に監視し、得た情報を俺のバイザー、ブリッツのスマートグラス、そして戦術人形たちに逐次リンクする形だ。

 

 ブリッツ陣営には『ナビゲーター』という優れたオペレーターがおり、彼女の手腕によって、OSからそもそも構造の異なるI.O.P.人形と鉄血人形(スケアクロウ)、果ては俺のバイザーから彼のグラスまで、ほぼタイムラグの無い完璧なデータリンクを実現している。

 ・・・これは即ち、鉄血の通信形式も把握しているのと同時に、俺の仕事道具で使ってる暗号通信のフォーマットも即バレしたという事である。現状必要な措置であり、ブリッツらが此方にコンタクト出来る様になるのは効率的に仕事を進める上で欠かせない訳だが、この件が終わったらもう一度1からコード組み直さないとならねえな。

 彼女からのコンタクトも、俺とスケアクロウとティナにしか通じないはずの暗号回線に割り込み、挙句ブリッツらにも共有してくれたおかげで見事に俺たちのそれがメイン回線扱いになってしまっている。

 

 ・・・・・・っていうかよくよく考えて、こんな短時間でこのクオリティのオペレートが一人の人間に出来る筈がない。百歩譲って複数人の最高クラスのオペレーターがいたとして、根本からフォーマットの違う人形(システム)同士でスムーズなデータリンクを実現するには大雑把に考えるだけでも膨大なタスクがある。しかもリアルタイムで大量のデータが逐次更新されるわけで、どう考えても短時間に人間が物理的に指で処理し切れるデータ量を遥かに超えている。

 仮に前もって鉄血とのデータリンクを前提にしたリンクスペースをサーバーに設けてあったのなら話は別だが、俺たちとの会話に割り込んできたナビゲーターの言葉を信じるなら、このコネクションは今この場で即興で形成された事になる。

 ・・・・・・結論、少なくともナビゲーターは人間じゃない。筋の通る説明としては、幾つも並列接続したスパコンを運用する超高性能(ハイスペック)AIってとこか。あまりこの辺を勘繰ると要らん不信感を起こしかねないため、ツッコミはしないでおくが。

 

 

 それはともかく。

 四方を敵に囲まれてまさしく四面楚歌な様相に、男は全身から冷たい汗を吹き出し、今にも過呼吸になりかねないほど息が荒い。殺されるかもという恐怖と緊張がありありと見て取れる。

 

 

「しゃ、喋ったら殺すんだろ・・・!?」

 

 

 緊張で声帯や顔の筋肉が強張り、少しばかし呂律も回ってない声で此方を睨む男。

 確かに、映画や小説では吐かせるだけ吐かせて用済みになった途端始末する、なんてのも定番と言えば定番なシーンだ。

 言われてみればこの場この絵はそっくり。男も話せば殺されるんだと、半ばヤケになってる様に見える。

 

 だが、男は一つ勘違いしている。

 

 

「逆だ。喋らなきゃ殺す。・・・ただ、快く協力してくれるなら危害は加えない。後ろのヤツにもこれ以上手を出させない。約束しよう」

 

 

 そう、男が素直に証言を吐いてくれれば、ブリッツに男を始末する理由は無いのである。

 創作にありがちな『吐かせるだけ吐かせて始末』なんてのは、大概の場合尋問側が自分達の存在を公にしたくないからだ。される側も何かやってたかもしれないが、する側も真っ黒な人間、故に自分の秘密を守る為に口封じってパターンが主だろう。勿論、ストーリー次第では別の理由でって事もあるだろうが。

 

 そういう意味ではブリッツは立場目的とも明らか。管轄地域内での不穏な動きを調査するために派遣されてきた調査員であり、男が正しく真実を証言すれば、ブリッツは男を始末するどころか参考人として基地に護送しなきゃならない位だろう。

 例外としては俺の正体をここの基地の連中に吐くかどうか。それによっちゃこっちで改めて男を始末する必要はあるものの、俺がブリッツに身元を明かした時には既に男は逃げ果せてたので多分バレる事は無い。念のためマークしとくべき対象にはなるが。

 

 ブリッツの言葉に自分が生き残る希望を見出したのか、男の表情にわずかに明るさが戻る。

 

 

「ほ、本当か・・・?」

 

「もちろんだ」

 

 

 優しい、実に優しく慈悲を込めた口調で語りかけるブリッツ。一切の容赦慈悲無く教徒達を皆殺しにしたヤツと同一人物とは思えないその口ぶり。もちろん男の心を開かせるためなのは分かるが、彼の激しいオンオフのギャップに俺は若干口元が引き攣るのを感じた。

 結果としては効果覿面。体こそ震えや強張りは抜けきってないものの、荒ぶってた呼吸は徐々に落ち着いていく。

 しばしまともに話せる状態まで待つこと数分、男は大きく息を吐くとブリッツを見据え、口を開いた。

 

 

「わかった、話す」

 

「よし。じゃあまず、武器の入手方法だ。どこで、誰からもらった?」

 

「で、出所は知らない」

 

 

 途端、ブリッツの視線が鋭さを帯びる。この期に及んでまだ抵抗する気かと。

 一気に殺気がぶり返したのを感じた男は必死な形相になり、息を引き攣らせながら慌てて釈明した。

 

 

「本当に知らないんだ! 我々は使徒様のお告げに従い、指定された場所に行っただけだ!」

 

「その場所はどこだ」

 

 

 ブリッツは携行型の端末を取り出し、この地区の地図を表示させた。この男を含めたスラムの住人に居住区への入場権限が無いため、そこを除いたスラム全域を示したマップだ。

 端末を男の手の側に持っていくと、考えたのち自由に動かせる指で画面をスワイプさせていき、地図のある一点を示した。

 

 場所は地区のほぼ外端部。居住区とスラム全てをグルリと囲う外周壁のすぐそばで、壁の内と外を繋ぐゲートもほど近い。

 しかし教会からは距離があり、歩いて移動するには少々時間が掛かる。

 

 

 場所がわかったところで、次は誰から武器を提供されたのか。

 指定された地点にポン置きされていた可能性もあるが、ブリッツは鋭い視線のまま次の問いを投げた。

 

 

「誰がいた」

 

「お、女が一人。あと男が何人か。アンタみたいな恰好をしてた」

 

「女の特徴は?」

 

「金髪のポニーテール。ダークグレーのスーツを着てた」

 

 

 スーツの女に戦闘服を着た男が複数人。上司の女とその部下でここに来たってことか?

 

 

「男たちが車から武器を下して、それを俺たちにくれたんだ。取り扱いもそこで教わった」

 

「それがこれか」

 

 

 そう言ってブリッツは傍らに置いておいた、教徒達が持っていたアサルトライフル・・・AK-74Mを手に取る。

 ブリッツは一通り銃を観察すると、俺の意見を聞きたいのかそのまま此方に寄越した。

 

 ふむ・・・外装に使い込まれた形跡はまるで無い、つまりほぼ新品も同然。構えてみてもバレルやストックがガタつくといった症状は無く、コイツがテキトーな作りをした劣化コピー品じゃない事は直ぐ分かった。

 まさか、正規の製造ラインで作ったモノか? そう思って製造番号(シリアルナンバー)の刻印部を見るも、見事に丁寧なお仕事で削り取られていた。何が何でも特定させねえぞと言わんばかりの手の込み様で、これでは何処の工場で出したモノなのか調べるのはほぼ不可能だろう。

 優れたガンスミスの元に運んで部品単位でバラせば何か分かる可能性も無くは無いだろうが、AK-47ほどじゃないとは言えコレも共産圏では中々に売れた銃器である。調べるのは現実的じゃないな。

 

 俺はブリッツに向け軽く首を横に振って見せる。

 彼はそうかと一つ頷き、質問を続ける。

 

 

「女たちの使っていた車種はわかるか」

 

「小さいジープとしか」

 

 

 小さいジープねぇ。小回りが聞いてオフロードも走れる。複数人で密かに武器を運ぶなら妥当なチョイスと言える。

 

 

「ところでその神の使徒様とやら。どんなヤツなんだ?」

 

 

 いよいよブリッツが核心に迫る。

 部隊を取り囲んだ時と言い今と言い、度々男が口にするフレーズ。教徒達にお告げと称して無償で武器を与え、その為の手段も恙無く整えてあった。

 

 このご時世、心が疲れてカルトに嵌った者達を、自称神の声が聞こえるだのなんだのって奴が言葉巧みに扇動するのはよく聞く話だ。

 が、この場合は単なる扇動者が男達をどうこうってのとは異なる。何らかの狙い、恐らくG&Kに対しての行動を目論んで武装化させたと見える。・・・まともに統治されてないスラム街の住人らに武装蜂起させてG&Kの評判を落とすとか、今ある情報で思いつくのはこんなトコだが、ともかく黒幕がテロリストの可能性も十分考えられるな。

 

 しかし、男が語り出した神の使徒とやらは、大凡誰もが思い浮かぶ様な姿ではなかった。

 

 

「・・・暗かったからよくはわからない。ただ、上半身は女性で、下半身がタコの足のようになっていた」

 

 

 息が、思考が止まった。

 スケアクロウが息を呑み、やがて仇敵への強い殺意をその顔に滲ませる、当てられたティナが引き攣った悲鳴を上げる。

 

 数瞬の後、回り始めた思考が導き出したのは、第三兵器産業廠で出会したあのタコ女。

 上半身は人間の女、下半身はタコ足・・・その時、十字架の人形がなんであんな壊れ方をしていたのか繋がった。

 

 元々磔にしてた人形を教徒達がどう扱ってたのかは知らないが、場の様子を見るに恒常的に儀式的な事をやってたんだろう。そこにタコ女が現れて人形を締め潰したのなら、教徒連中の動きも説明出来る。

 

 ただの人間がその場に現れて神の使徒を名乗った所で、恐らく連中は歓迎しない。何なら問答無用で迎撃するかもしれない。

 

 だがタコ女はどうだ? どうまかり間違っても人間同士の繋がりでは決してああはならない、ヒトの枠の根本から外れた生物。それこそ創作や神話に出てくる様なヤツが目の前に現れ、神の使徒を名乗ったら? 例えまともな思考を持ってたとしても、目の前で起こった現実に本当に降臨したのかと思う者もいるだろう。コイツらなら尚の事だ。

 

 

 タコ女が教徒達の信仰対象に成り代わり、武器を持たせた。

 

 

 いや待て。なんの為に?

 仮にスラムの人間に暴動を起こさせるとして、あんな武器の扱いすらもままならないド素人にやらせるか?

 それはそれで効果はあるだろうが、どうせ起こすなら鎮圧に時間が掛かる程度には最低限鍛えても良さそうじゃないか?

 

 ・・・チッ、狙いが分からねえ。何の為にこんなトコに本性晒してまで出張ってきてやがんだ。

 まだ男が吐いてない情報があるかもしれない。一先ずは冷静になれ。

 

 周りに悟られない程度に息を吸い気持ちを落ち着けると、俺達の様子を見ていたブリッツが訝しげに声を掛けてきた。

 

 

「心当たりが?」

 

「・・・ああ、まあな」

 

 

 工場で奴にやられた、最早痛いを通り越し、まともに呼吸出来なくなるほどの苦しかった記憶が脳裏に過ぎる。

 女医曰く内臓をシェイクした様な衝撃のダメージ。体がそれを覚えていたのか、知らぬ間に身が強張っていたのに気付く。

 

 チラリ、今も回収作業が続く十字架の人形を見る。

 ・・・やはり、あの惨状はタコ足が生み出したと捉えるのが一番無理の無い筋書きだろう。あれが人間だったならもっと酷い事に・・・下手すりゃあの時俺がああなってた可能性もあったわけだ。

 ハッ、我ながらあのおっそろしいのと出会してよく命があるぜ。今更ながら、悪寒と共に冷や汗が背筋を伝う。

 

 此方の反応や態度を見たブリッツは、俄かには信じがたいと無意識に呟いていた。

 それが当然の反応だが、一方で彼の顔はタコ女などいるわけない、そう断ずる者のそれではなかった。

 

 たとえ信じがたい現象や仮定があるとして、100%明確な根拠を以て否定出来ないのなら、それが実際に存在すると仮定した上での考えうる最悪を想定して動かなくてはならない。

 過去多くの戦場を戦い抜いてきた兵士として、戦場で部隊を率いる指揮官として、ブリッツのそれは一切の油断なく構える者の顔だった。

 

 ・・・頼もしいヤツだね。そりゃ一緒に戦ってきた人形達からもモテるワケだ。

 

 此方の内心を他所に、ブリッツは尋問を再開する。

 

 

「なら、その神の使徒様は何でお前達に武器を渡した」

 

 

 問い掛けに、男はきょとんとしてブリッツを見る。

 まるで、何を分かりきったことを聞くのかと言いたげに。

 

 

「決まっているだろう。この世界の為だ」

 

 

 その時、男の目にあった怯えや恐怖といった感情は綺麗さっぱり拭われた。

 代わりに灯るのは強く燃え盛る使命感の炎。回答を間違えれば殺されるかもしれないという状況は全く変わっていないにも拘らず、男は実に堂々とハキハキした口調で言葉を連ねた。

 

 

「神を崇める全ての者へ救いを齎す世を作る為に()()()()()()()が必要だと、使徒様はそう仰ってくれた。

 我々は誓ったのだ! 神と共に神の目指す世界を作ると! それを成し遂げた時っ、神は我々を救ってくれるのだ!」

 

 

 熱量の籠もった言葉、それは此方にとっては到底共感しようのないおかしな内容でしかない。

 己の語ることを素晴らしい事だと信じて疑わず、まるで民衆に訴えかける様な力強い演説を思い起こさせる男の言いぶりに、この場に立つ男以外の誰もが唖然としてしまった。

 

 

「我々の役割は神の目指す世界の実現! その障害っ、利益ばかりを求める偽善者どもの力を削ぐ事! つまり、お前たちグリフィンの力を削ぐ事にある!」

 

 

 利益ばかりを求める偽善者ども、のあたりでブリッツの顔が僅かに歪み、やがて額を押さえて俯いてしまう。

 タコ女の目的が分かると同時に、キナ臭い動きに利用されたスラムの住人に対してのやり切れない気持ちを覚えたのだろう。

 

 ヤツは敢えて自分の化け物としての姿を晒し、人外としての言葉で教徒達を扇り武器を取らせた。

 電気も何もかも死んでいるエリア。巡回だって一日一回やってりゃ良いくらいだろう。そもそもG&Kのメンツの目が届きにくいし、仮に教徒連中がとっ捕まってタコ女のことを言ったところで信じてもらえる訳も無い。

 オマケにあの女は脚も体も全体の表面温度を変化させて、目視どころか赤外線すら欺くとんでもない擬態能力を持ってる。周りの風景に完璧に同化して動けるのだから、仮に監視ドローンが飛んでたとしてまず感知出来るとは思えない。

 

 やってくれる。この世にあり得ない、証言してもただの妄言にしか取られない自分の形を利用し、この状況を作り上げたのだ。

 タコ女がその先に何を見てるのかは分からないが、どうせロクでもない事だろう。

 

 

 そして、戦闘前に放たれた『利益を独占し、富める者をどんどん富ませ、貧しい者を貧しい者をままにさせる偽善者どもめ!』という男の言葉。教徒達が何故カルト宗教に身も心も囚われたのかはこの一言が表している。

 ここは他の地区、他社の管理区と比較しても特に貧富の差がデカい。何故今まで暴動が起こらなかったのか不思議な位に。

 

 実際は起こさなかったのではなく起こせなかった。

 復興が進み発展した居住区と、火事の後そのまま野晒しにされたスラム街。その境界線にはスラムの住人を一人も入れぬと有刺鉄線付きの柵が続き、ゲートの警戒も固くなっている。しかも銃を持った()()()()が大半の警備を受け持ってるのだから、そこに人情なんて期待出来る筈も無い。

 スラムの人間はその日毎を死に物狂いになって、必死で生き抜かなきゃならないのだ。そんなザマを嘲笑うかのように、救わなければならない為政者である筈のG&Kは何もしない。

 

 クソったれな利己的思想だ。スラムに金を割かず、居住区のさらなる発展へドバドバ金を注ぐ。

 そんな奴の統治下にあって、割を食わされてる側が怒りや憎悪を覚えて生きるのは当然。何年もこんな死に物狂いの生活を続けてりゃ、どっかが壊れるのも頷ける。

 

 そうした事情を考慮した上で男の言葉を借りるなら、クソみたいな圧政を敷くG&Kに鉄槌を下すために神から与えられた正義の戦い、謂わば聖戦(ジハード)だったのかもしれない。

 決して助けてくれない統治者よりも、例え自称であろうが救いという道標を示した者に着いて行きたくなるのもある意味道理だ。

 

 であれば、教徒達を殺し拘束した俺達は正しく敵であり、悪である。

 

 しかし、例え正義を貫く為だとしても、超えてはならないラインがある。

 一度武器を持って立ち上がり、武力を行使してしまえば、どんな理由があろうとも統治者にとっては鎮圧すべき対象になってしまうのだ。

 手段が平和的か、それともまとめて始末する様な暴力的なものかはともかくな。

 

 

「・・・そうか、分かった。なら次だ。お前らの仲間は? 他にいるのか?」

 

 

 感傷に浸るのを止め、質問を再開したブリッツ。

 リストにあった武器の数からして、まだ他に何人も仲間はいるはずだ。出なきゃ、ヘンブリーの持ち込もうとしていた武器の中身も量も釣り合いが取れない。

 だが。

 

 

「・・・いや、もう俺だけだ」

 

「何?」

 

「あ?」

 

 

 気落ちした様で語る男の返答は、考えられる中でも悪い未来が見えるモノ。言葉の意味を理解した全員が険しい顔つきになる。

 男を含むこのカルト教徒は今夜ここに集まった奴らで全員だと? そんな馬鹿な。

 もっと仲間がいなきゃいけない。じゃなきゃ、あれたけの武器の山をどうするというのか。

 

 ・・・違う。そもそもヘンブリーが武器を渡そうとしたのはコイツらじゃない。ハッキリ断言は出来ないものの、恐らく別に受取人がいる可能性が非常に高い。

 そうだ。ド素人に大量の武器を持たせたところで使いこなせなきゃ意味が無えんだ。あのザマじゃ地区の人形相手に戦うなんてまず不可能、確実に全滅する。

 そんな奴らに敢えて武器を渡す必要性はなんだ? ・・・今の時点じゃそれが見えてこない。じゃあ何の為に武器を運ばせた? 大して有名でもない武器商を雇ってまで。

 

 ・・・・・・ちっくしょう、何だこの気持ち悪い胸騒ぎは。掌で転がされてる嫌な感覚がする。

 その時、険しい顔のブリッツが俺に問うた。

 

 

「レイ、一つ聞きたい。ヘンブリー・ステインという男は裏社会では有名なのか?」

 

「いいや? 俺もこの依頼が来るまで名前すらうろ覚えだった」

 

 

 それを聞いて、ブリッツは得心した顔になる。

 彼の中でピースが何か繋がったらしい。

 

 

 ・・・整理しよう。発端は新顔の武器商が、身の丈に合わない取引をしようとする動きを察知したこと。

 ヘンブリーが過去にG&Kと一悶着した者だった為、念のためクルーガーに情報を流し、結果ブリッツの部隊が奴の集団を襲撃、取引を防ぎ武器を回収した。

 その後ヤツを尋問した結果、このR20地区の教会に辿り着いた。

 そこで男達カルト教徒に出会わし、今に至る。

 ・・・まるで()()()()()()()()()()()()分かりやすいポイントが示され続けている。ヒントが途切れない様に、ゴールまで辿り着ける様に。俺達がゴールに着くことが目的みただ。

 

 

「嫌な予感がするな」

 

 

 頷きを返す。

 今の状況・・・もしかして俺達はまんまと釣り出されてここにいるんじゃ、そんな感覚まで過ぎる。

 下手すればもう既に後手後手に回りきってると、考えたくない最悪に近い展開が起こってるんじゃないかとも。

 

 何とかして状況打破したいところだが、手元にあるのはその切掛になり得ない僅かな情報の集まり。

 確信を持って次の行動が出来ないのだ。ミスリードに引っ掛かれば最後、取り返しのつかない事態を招くかもしれないから。

 

 クッソ、目的が見えてこねえ・・・。

 思考がどん詰まりになっていったその時、ドスンという腹に響く様な音と衝撃が教会に広がった。

 

 考えるのを一旦止めてそちらを見ると、巻き上がった埃や煤の中で根本から綺麗に切断された十字架が倒れている。その側には胸を張る一〇〇式と、さっきからどうにも仏頂面なVector。

 結局あの高さまで登って義体を回収するのは現実的じゃないと判断したようで、一〇〇式が右手に持ってる刃物で根本からぶった斬る事にしたらしい。

 

 一見ただの短刀・・・いや、腰に掛けた銃の先にあった銃剣が無えな。ともかく、銃剣を使ってなんとか切って折ったと。

 見た感じ、十字架の厚みと銃剣の長さの兼ね合いでのこぎりの様に波打った箇所はあるものの、真っ直ぐ刃が進んだ部分自体の断面は綺麗だ。

 察するに、あの銃剣も高周波ブレードの類なのだろうと当たりを付ける。

 

 

「指揮官! 一〇〇式はやりました!」

 

 

 一瞬、彼女の姿がブンブン尻尾振りまくる犬と重なった。

 トテテーとブリッツに駆け寄った一〇〇式はぴょこんと頭を差し、完全に撫でられ待ちに入った。ブリッツは求められてる行為にやや困惑しながらも、労いの言葉と共に彼女の頭を撫でてやった。

 一方Vectorはというと、彼の手が頭に乗った瞬間刹那的に頬を膨らませたのが見えた。しかし即座に私は付き合ってられないとばかりにクールに十字架へ振り返ると、磔になったままの義体のうなじに、あろうことか手持ちのナイフを思いっきりぶっ刺した。

 

 ・・・・・・うわぁ、ジェラシーって怖え。

 

 無表情で、力強く義体の人工皮膚やら骨格(フレーム)やらを切り裂いていくVector。少しして、人体に置き換えると脊髄にあたる部分から長方形のガラスブロックを取り出した。

 

 

『ご主人は実物見るの初めてだよね? アレはホログラフィックメモリって言って、基本的にI.O.P.製の人形に例外なく全部に入ってる記憶媒体だよ』

 

 

 同じI.O.P.製のティナからまたしても解説が入った。ってことは、アレを調べりゃあの人形がどういう末路を辿ったのかもよーく分かるって訳だ。重要証拠品だな。

 

 そう納得していたところへVector、ブリッツへ向けて少しだけ手加減抜きで(振りかぶって)投げつけた。

 油断なくブリッツはキャッチするが・・・手掛かりになりそうなモノをなんて扱いだ。ティナの言い分から察するにA-Doll(民生人形)だけじゃなくT-Doll(戦術人形)にも積まれるみたいだし、見た目通りの脆い素材じゃないんだろうが、にしてもキズでも付くかとヒヤッとしたわ。

 ・・・まあいい。これで更なる手掛かりになりそうなものが手に入った。どうせこの男をこれ以上問い詰めても、有益な情報が出るとも思えない。

 

 あのホログラフィックメモリとやら、間違いなく専用の機材が無きゃ中身の解析は不可能。基地に持ってかないと中を検めるのは無理。

 一旦別れて動く方が効率的だな。

 

 ブリッツもこれ以上教会にいる理由は無いと判断したのだろう。立ち上がり、土埃を払い落として指示を出した。

 

 

「ライト、コイツをR20基地に移送する。ジープに放り込め」

 

「了解」

 

 

 LWMMGは淡々とした無駄のない手つきで、男の脚と椅子を繋ぎ留める拘束を取り外す。手を縛ったままの男を担ぎ上げると外に止めたジープへ歩いていく。

 ブリッツはそれを見送り、グラスの位置を直すと俺を見た。

 

 

「アンタはどうする」

 

「俺たちは武器の取引に使われた場所に行ってみる。何かあるかもしれないし、ここは二手に分かれた方が効率的だろ?」

 

「確かにな。何か分かったら連絡をくれ。こちらもメモリーを解析出来たら情報を送る」

 

「了解」

 

 

 俺は踵を返し、スケアクロウ達を呼ぶ。

 こっからは別行動だ。

 

 

「・・・というわけだ。目的地はこっからちょい遠い。さっき仕舞ったバイクでパッパと現場に行こうか」

 

「・・・って言う事は? サーちゃんはフライアウェイで付いてくるの?」

 

「なんっ・・・!?」

 

 

 その瞬間、スケアクロウがガビーんというリアクションを取るのと同時に背景に雷鳴が轟いた。

 当たり前だがあのバイクに三人は乗れない。となると誰があぶれ役になるかと言ったら、乗り物に乗らなくともスピード出して動けるスケアクロウになってしまう。

 俺もティナも、いくらなんでもバイク相手に競走出来るほど枠を外れてない。申し訳無いが、そこはご納得頂きたい。

 

 

「アレに3人乗れねえのは乗ってきたキミらもよく分かってんだろ。ティナは俺の後ろ、スケアクロウは飛んで付いてきてくれ」

 

「ありゃま。サーちゃんより先にご主人と密着ツーリングになっちゃった。でも大丈夫だよサーちゃん。終わったら埋め合わせしてくれるよ」

 

「んっ・・・・・・そ、それはそれとしてでもつーんですわ!!

 

「理不尽な・・・」

 

 

 

 -----

 

 

 

45「あら? またレイが相方拗ねさせたみたいよ? 彼女を何度も拗ねさせるなんて、本当罪作りでワルい男よねぇ」ヒソヒソ

 

レイ「聞こえてんぞ

 

 

 

 




 アーキテクトさんが来るんやで。
 人形之歌5巻も1月後半に来るんやで。
 アニメ第2話も今夜遅くに来るんやで。
 イベントも始まっちゃったんやで。

 ドルフロフィーバータイムが来てるよ今。
(ショーパンじゃなくてレオタードのM4に慣れねえ)

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