裏稼業とカカシさん(旧題:裏稼業の何でも屋が出向く先には必ずカカシが待っている件)   作:chaosraven

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 コラボレーション回でございます。
 ようやっとお返し出来た…いつも感想下さったりして応援頂いてる方とのコラボです。本当にお待たせして申し訳ありませんでした!

 ※先に申し上げておきますが、今回も本編と直接の関係はありませんので、予めご承知おき下さい。
 ティナが既に加入済み、喫茶鉄血に複数回訪れた経験有りという前提のもと、お読み頂ければと思います。

 コラボ元は此方→https://syosetu.org/novel/158909/86.html


-OW-Tandoori Chicken(タンドリーチキン)

 

 

 

 

 レイ、依頼よ。

 目標はある中規模の非合法組織。依頼人が流通させている品物を掻っ攫った後初期化して、高値で売り捌く連中がいるらしいわ。

 

 それで? 依頼人の求める仕事は?

 

 敵組織の壊滅。なるだけ派手なドンパチは避けつつ、組織の主要メンバーを全員抹殺してちょうだい。これがそのリストよ。

 

 ・・・主要って言う割に人数多くないか? それに派手なドンパチ避けろって、少人数で忍び込んでヤれって?

 

 黒い光線(ブラックレイ)なら出来るでしょ? ティナは生憎定期メンテでいないけど、アンタの”今の”パートナーがサポートしてくれるわよ。

 

 それはそうだが・・・。

 

 頑張ってね。難易度の高いオーダーなのは分かってるから、報酬は前金からふんだくってやってるわ。成功したら弾むわよ?

 

 分かったよ。やるさ、やってやるさ。

 

 よろしく。

 

 

 

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「目標のポイントに着いたは良いが・・・」

 

「敵兵の数が思ったよりも多いですわね。何か察して警備を増やしたのでしょうか?」

 

「ざけんなよ・・・」

 

 

 暗視機能付きの双眼鏡で、敵が本拠点としている古びた小さな廃工場の辺りを探ってみる。

 依頼を受けた俺たちはいつもの様にオンボロに乗り、ある程度近づいたところからはオンボロを隠した上で歩きでやって来た。

 現在地は廃工場を望める少し離れた所に立つ廃ビルの屋上。そこから敵の規模がどのくらいなのか前もって出来るだけ調べているのだが・・・。

 

 

「二人だけでアレの中に紛れ込む? ほぼ特攻に等しいな」

 

「潜入するにしても、監視の目が強固ではそれも難しいですわ」

 

 

 どうしますの?と此方に振り向き、首を傾げるスケアクロウ。

 んなこと言ったって、受けた以上はやんなきゃならないわけで。

 

 

「・・・スケアクロウ。今回の仕事、まぁまぁな長期戦を覚悟しておこう。何となくの予感だが、1日で帰れる気がしない」

 

「同感ですわね。備えのためにちょっとお花摘んできますの」

 

「あ?? ・・・・・・あ、あぁ、気を付けてな」

 

 

 突然出てきた花摘みという単語に一瞬何を言ってるのか意味を図りかねたが、程なくしてその意味を察した俺は、内心気まずさを覚えつつ敵のいる方へと視線を戻した。

 

 

「付いてこないで下さいまし」

 

「良いからさっさと行ってこい」

 

「つーん」

 

「どうしろっつうのよ・・・」

 

 

 えぇ・・・用足してる時の音とか聞かれたいワケ??

 ・・・・・・ダメだ、ワケ分からん。仕事の集中しよう。

 

 

 

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「っだぁ、疲れた!! ・・・あの組織(ヤロウ)、あんなに戦力を整えやがって・・・俺だけだったら絶対に無理だったろ・・・」

 

「お疲れ様ですわ」

 

 

 ところ変わって俺のねぐら。扉を開き、リビングまでの距離すら歩くのも億劫に感じるほど、今の俺たちは疲れていた。

 

 依頼されていたある組織の壊滅。これはなんとか遂行する事ができた。アインスから事前に渡されていたリストの人物は全員ヌッコロしたし、そいつらに追従する小間使い共もできる範囲で始末した。

 問題があったのは任務遂行までの過程だ。事前の下見で分かりきってたとはいえ、やはり敵の戦力は想定以上に多く配置されており、ぶっちゃけあの組織がどうやってここまで兵力を集めたのかと疑問に思う程。

 強固になった警備のおかげで、爆弾仕掛けて一斉起爆からの混乱に乗じてトンズラこくのも難しく、挙句集められた敵兵力の中には碌にメンタルが慣れてない新兵も混ざっていたようで。

 

 そいつは建屋内部の天井に掛かっていた作業用クレーンの丁度真下あたりで警戒中、他の兵士が放置して行った空き缶を蹴っ転がして思わず叫んだ。それだけならまだ良いが、元々極度の緊張状態にあった新兵は完全にパニックを起こし、何を思ったか銃をめちゃくちゃに乱射しまくったのである。

 新兵の銃声で一気に警戒レベルが跳ね上がったことが一つ。それと新兵の撃った弾の一発がたまたま天井のキャットウォークに跳弾し、たまたま跳弾した弾がクレーンの錆びて千切れかけてたワイヤーのウィークポイントに当たり、そしてたまたま最後の一線が千切れたクレーンのフックが新兵の直上に落下した事で、俺の全く意図しないタイミングで敵兵側に死者が出てしまったのである。

 

 銃声、そして鉄の塊が落ちた音ですぐさま駆けつけた敵の援軍たち。連中はその場の状況を見て、どうやらなにかしらの敵の行動にパニクって撃ちまくったルーキーを横目に、千切れ掛けのワイヤーを一発で撃ち抜いてフックを落っことしたと判断したらしく、そしてそんな真似が出来るのは噂の黒い光線(ブラックレイ)くらいじゃないのか?などと言う嬉しいんだか迷惑なのか分からない予想を打ち立てたかと思うと、俺が来てる可能性大と上司に報告した上で警戒レベルを最大まで引き上げてくれやがった。

 

 俺からすりゃ、わざわざんな真似せずとも一人でビクビク哨戒してる新兵の背後から忍び寄って、音も出さずに刈り取れば良いだけである。

 こんな音を立てて悪目立ちするメリットは何も無い事は少し考えれば分かる事だが・・・この現場が出来上がった大迷惑な原因(ミラクル)を信じる位なら、俺が自らのアピールのために敢えてこうしたと捉える方がまだ納得しようがあると言う事だろう。

 

 仕舞いにはココにまだいる筈だとなって全員その場から立ち去る素振りを見せず、しかし唯一逃げられる場所は敵兵が見張る建屋の入り口のみ。隠れながら行くにも、いつかは目の着く場所を通らなければならないため、止むを得ず俺は闇に紛れ静かに狩るという方針を諦め、堂々と忍び込みながら着実に始末していく方を選んだ、と言うワケだ。

 

 

 そこから敵の武器や食料(MRE)を掻っ払ったりして逃げ回りながら引っ掻き回す事丸48時間。逃走手段になりそうなものを潰し、ついでにボスの部屋の金庫から金塊パクッた上で敵を始末するというバリクソ面倒なことをやり切って帰ってきたが、正直もう動きたくない。

 ソファーに座り、体を優しく包み込んでくれるこの感触に触れた途端、はぁ意識が少しずつとろけてゆく。

 帰ってくるまでの間まともに食ってないので、空腹感も中々強く主張をしてるのだが、そんなことどうでも良い程の疲労感が微睡へと意識を持っていきかけて・・・

 

 

「レイ、疲れてるのは分かりますけど、食事を取りませんと」

 

 

 ガスマスクを着けたままのスケアクロウがジト目で腰に手を当てこう言った。

 確かに飯を食わないのはそれはそれで良くないと分かっちゃいるが。

 

 

「わぁってる、わぁってるけどな・・・作る気力が」

 

 

 ダメだ、体が動こうとしてくれない。もう一ミリも動きたくないと俺の全身が頭に向かってそう投げかけているんだ。

 飯よりもまずは寝たい。寝てから飯食っても良いだろ? 早く寝かせてくれよ。そう俺の体は訴えているんだ。

 

 そんな俺の様子を見て大きなため息を溢すスケアクロウ。いよいよ自分が調理するかと考えてそうな顔を浮かべつつ、プライベートモードに入りガスマスクを取り外した彼女は、チラと横に目を向け、そして固まった。

 

 

「レイ・・・」

 

「んお・・・どうし・・・なんだあれ?」

 

 

 呟く様に名前を呼ばれ、つられて彼女の見る方へ視線を向けると。

 そこには何故か猫の彫刻が彫られた黒いドアがあった。俺の寝ぐらに、出る前までは無かった人工物が確かにそこに存在している。

 

 

「ドア、ですわね・・・」

 

「見たまんまな・・・アーキテクトのイタズラか?」

 

 

 現状、こうしたモノを作る可能性の一番高い存在を思い浮かべてみる・・・が。

 ちょっと下ネタ振っただけで顔を赤くする様なアーキテクトが、俺たちのいない間にわざわざ()の部屋に入ってこんな手の込んだ悪戯をするだろうか? 何のために?

 顎に手を当て考えるも、答えが出るわけもなく。

 

 疲れた体に鞭打って身を起こし、警戒しつつ扉に近づく俺たち。するとスケアクロウがあることに気付いた。

 

 

「あの、ここに彫られてる文字・・・日本語では?」

 

「・・・え、マジ?」

 

「マジですの」

 

 

 猫の彫り物、それがぶら下げているプラ板をよく見てみる。

 確かに何かの文字で書かれちゃいるが、少なくともヨーロッパにはこういう字体の文字は存在しない。つまり、俺には読み書き出来ない言葉である。

 

 まあこれが日本語だとして、今も言葉の文化として残ってるのは地球上の数少ないエリアに限られるだろうけどな。

 

 昔のコーラップス大拡散によって、拡散元にほど近い場所にあった日本はそのほぼ全てのエリアが人の住めない世界へと変貌してしまったわけで。今はホッカイドウとかいう一番北側の島くらいしか日系人は住んでないらしく、日本語が通じるのもそのエリア近辺位しかないはず。

 即ち、日本語という言語そのものがある種絶滅の危機に瀕してるといっても過言じゃない・・・かも?

 

 ともかく、俺には何て書いてあるのか読めないのでスケアクロウに聞いてみたが。

 

 

「・・・のねこや、と書いてありますの。その左二文字?については、多分漢字という物じゃないでしょうか。私にも読めませんわ」

 

「ねこや? ・・・一体何を指してるんだか・・・てかこれ、まさか、開くのか?」

 

 

 恐る恐るドアノブを握り、下に押し込むと、ガチャリという音が確かに鳴った。

 

 

「・・・・・・これで見えたのが部屋の壁だったら一体どうしてくれようか」

 

 

 ただでさえ疲れてる中、突然部屋に現れた謎の扉。可能性は低いとは思うが、もし仮にアーキテクトあたりの悪戯だった場合は説教だな。

 そう思いつつドアノブを押し込むと、カランカランという澄んだベルの音とともに扉が開く。

 そしてーー

 

 

「いらっしゃいませ・・・・・・洋食のねこやにようこそ」

 

 

 ウェイトレス姿の少女が、どこか緊張した風の引き攣った顔でそう言った。

 

 俺は扉の先に広がる空間を見渡し、寝ぐらとは似ても似つかぬ光景に目を奪われる。

 

 

「・・・何処だ、ここ」

 

 

 思わず呟く。その時、隣にいたスケアクロウが袖を引き、耳元で衝撃的な報せを呟いた。

 

 

「レイ・・・その、信じられないかもしれませんが・・・・・・ここ、過去みたいですわ」

 

「は? you何言っちゃってんの? ・・・・・・え、マジなの?」

 

 

 考えず口から出たツッコミにも彼女は表情を変えず、その後眉を顰めて過去と言い切る根拠を話し始めた。

 

 

「えっと、今しがたネットに繋げたんですが・・・私が知るものより大分技術的に古いんですの。西暦で言うと大体、2020年代辺りかと・・・・・・」

 

「・・・・・・え」

 

 

 2020年代あたりだって? まだオンボロが誕生してすらねえ頃じゃねえか。

 知り合いで言やぁクルーガーやウラカンだってまだまだ人生これからって歳で、そんでもってコーラップスも起こってない平和な時代・・・。

 俺たちはタイムスリップしたってか? 扉一つ潜っただけで?

 

 頭の痛くなってくる現実にこめかみを抑えてると、事態を把握しきれてない俺たちと、恐らく接客に慣れてないウェイトレスとでやり取りが上手く進んでない事を察知したらしく、奥の厨房からもう一人ウェイトレスが現れた。

 

 

「霊夢さん、どうしました?」

 

 

 と問い掛けた。

 その時、俺は奥から出てきたウェイトレスの頭にツノが生えてるのに気付いた。

 

 

(なっ、頭にツノ!? コイツもE.L.I.Dか何かか!?)

 

 

 本来の人には存在しない器官を見るや否や、反射的に体は動く。

 拳銃を引き抜き、ツノを生やしたウェイトレスへと向けた次の瞬間ーー

 

 

「そこまでにしておけ、お主。ここは食事処・・・武器を抜くのは、些か礼儀知らずなのでは?」

 

 

 奥のカウンターに座っていた筈の和装の男がウェイトレスを庇う様に立ち、いつの間に抜かれた刀の刃が俺の首筋数ミリの所で寸止めされていた。

 目で捉える事の出来ない早業。俺がもしさらに抵抗の意を示せば、瞬きする間に俺の首は宙を舞う。一瞬の時に当てられた濃密な殺気に、俺の首筋を冷や汗が伝った。

 

 

「えぇっとお客様・・・何か失礼でもありましたか?」

 

 

 その時だった。

 奥から白い調理服を纏った中年の男が現れた。

 男は今まさに首チョンパされそうな状況をみた途端血相を変え、「おいおいタツゴロウさん! やり過ぎですぜ・・・」と言いながら俺たちの手を引き、店の奥まで招き入れる。

 そして奥の調理場で仕事をしていた若い青年に俺たちの対応を任せると、スタスタと店に戻っていった。

 

 とりあえず死ぬ危険は回避できたとなるや、先の仕事の疲れも合わさりどっと疲れが出てきた。

 ちなみに店の方では料理人らしき男と、俺に刀を向けた『タツゴロウ』なる人物のやり取りが聞こえているが、どうやら料理人はタツゴロウとやらを追い込める立場にあるらしい。俺にあれだけの殺気を浴びせたのが嘘みたいにタジタジになってるのが聞き取れる。

 

 俺たちのそんな顔を見て、青年は言いにくそうに口を開く。

 

 

「えっと・・・すいません、何か此方の不手際でもありましたか?」

 

 

 ・・・申し訳ない。不手際があったのは俺たちの方である。

 出会い頭に拳銃引っこ抜くという、前にもやらかしたのに同じ事を繰り返したという事実が余計にメンタルにのし掛かって来る。

 

 

「ああ、いや・・・傭兵としての性(仕事柄のクセ)というか・・・」

 

「予想外の事態になると、咄嗟に銃を抜くのが癖みたいなものなん(体に染みついてるん)ですの」

 

 

 青年の問いに対し、なんとも気不味さを覚えつつも答える。

 銃、という単語で何が起こったのか大凡察したらしく、ホルスターに入ってる物をチラチラ見つつ顔を引き攣らせる青年。

 しかしあまり視線を動かすのも失礼と思ったのか、こちらをまっすぐ見据え、それからスケアクロウの顔を見て首を傾げた後もしかして・・・と言いたげな顔になる。

 

 

「・・・失礼ですけど、貴女・・・」

 

「はい、なんですの?」

 

「もしかしてですが・・・代理人という戦術人形のお知り合いですか?」

 

 

 マジかよ。

 よりによって代理人(エージェント)の名を、そして戦術人形という単語まで聞くことになるとは。

 無論それはスケアクロウにとっても大きな驚きだったようで、思わず口に手を当ててしまっている。

 

 

代理人(エージェント)は私の姉ですが、なんで・・・」

 

「姉妹でしたか、なるほど・・・。いや、似た印象だったもので。ということはお二人って、喫茶鉄血と関係あります?」

 

 

 加えて出てきた単語に、俺たちは顔を見合わせる。

 俺たちの生きる世界とはまた別の世界・・・即ち並行世界で代理人(エージェント)が営む喫茶店。

 喫茶鉄血と繋がりのある飲食店?となれば、間違いなくこの世界も俺たちにとっては並行世界・・・いや、時代が俺たちの生きる頃よりずっと前なのを鑑みれば、並行世界より異世界と言った方がまだ分かりやすいか。

 

 

「・・・まーた異世界に渡ったのか、俺達は」

 

「最早何でもアリですわね・・・」

 

「あ、なんか結論に至りました?」

 

 

 ちなみに喫茶鉄血の世界に行った時もそうだが、今回も俺たちが何故この世界に来ることが出来たのかというメカニズムは一切分からん。

 自分の部屋にある日突然妙に作りの良いドアが現れ、開けたらそこは異世界の飲食店でしたーなんて、一体どこのファンタジーなのだと声を大にして突っ込みたい。

 まあ考えた所で理解できるとも思えず、とりあえず自分たちは珍妙な現象で異世界に渡ったという事実を飲み込み、二人揃って空を仰ぐ。調理場と店舗スペースの境目になってる天井しか見えねえが。

 

 ・・・てかそう言えば。

 

 

「それで、洋食のねこやって言ってたよな?」

 

「ということは、ここはレストランですか?」

 

 

 と、目の前の青年に問いかける。

 すると彼は待ってましたとばかりに笑顔を見せ、どこからか取り出したメニュー表を片手に言った。

 

 

「はい。色々とありますよ。こちらがそのメニューです」

 

 

 手渡された物を開き、パラパラとページをめくってみる。

 この店には英語圏の人間も来ることがあるのか、日本語らしき文字の隣に英語も表記されており、分かりやすく料理のことを説明して()()()()()()()()()()思った。

 というのは、俺たちの生きる世界はコーラップスや三次大戦で食料事情が()()()()()ため、写真に文章で示されてもイマイチイメージがピンと来なかったのだ。

 

 

「参ったな・・・今日ほど己の世界の食料事情を恨んだ事はない。おかげでメニューに書いてる料理の大半がどういうモノなのかサッパリ分からん」

 

「ですわね・・・」

 

 

 それを聞いて、コイツらどんな世界に生きてるんだと思ったのだろう。

 またぴくりと顔を引き攣らせつつメニューを受け取った彼は、柔和な笑顔(営業スマイル)を浮かべ直してこう提案してくれた。

 

 

「でしたら、こちらにお任せにしますか?」

 

 

 

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 青年に連れられ店内へと戻った俺たちは、二人がけの対面式のテーブルにつくよう案内される。

 異世界の洋食屋というこの店は、ぼんやりと照らす照明と内装の見せるシックな雰囲気が、訪れた客の心を落ち着かせてくれる空間に思える。

 

 コーラップスが起こる前の世界となると、恐らく平日にはスーツを着たビジネスマンやら常連客やらが腹を満たしに訪れるのだろう。

 テーブルやメニュー表はよく手入れがされている様だが、表面に残る細かな傷や紙を束ねる紐のホツレなどが、流れた長い時間をこの店と共に使い込まれてきたのが見て取れた。

 

 確かに、パッと見た印象は個人的にかなり評価は高い。料理さえ美味ければまた来たいと思うだろうな。

 もっとも・・・。

 

 

(さっきはそこまで意識が向かなかったが、俺を首チョンパ仕掛けた男に、妙に長い杖を持ってる爺さんは分かるけどな・・・)

 

 

 そこから少し離れた所に座るのは、アホみたいな量のカツ丼を次々平らげていく、頭が・・・というか二足歩行してるライオン。身体中に傷があるのと、大事な所以外のほとんどを露出した格好なのを見るに、多分剣闘士か何かかもしれない。

 さらに隣には、こちらも舌をチロチロさせながら至福の表情でオムライスを頬張る二足歩行するトカゲ。え? トカゲの顔が分かんのかって? あんな嬉しそうな顔してりゃ誰が見ても分かるさ。閑話休題。

 

 

「ハァ・・・異世界にも色んなパターンがあるんだなぁ・・・」

 

「まるで一昔前のアニメの世界ですわね・・・」

 

 

 俺たちにとっちゃファンタジーから出てきたと思える様な姿をした者たちが、皆揃って美味そうに出された料理を食べている。

 生まれや育ちは違えども、飯はあらゆる人を幸せにする力があるんだと、なんだか変な感心を覚えてしまったちょうどその時。

 

 

「お待たせしました、タンドリーチキンです」

 

 

 今日会った二人とはまた別のウェイトレスが、俺たちの前に料理の乗った皿を置いてくれた。

 

 

「これは・・・?」

 

「タンドリーチキンと言いまして、鶏の胸肉、手羽先、モモ肉をオリジナルブレンドのスパイスに一晩漬けた後に焼いた料理です」

 

 

 ウェイトレスは説明しながら、ライスの乗った皿とコンソメスープの器、最後にフォークとナイフを置き、

 

 

「ライスとスープはお代わり自由ですので、何時でも申し付けてください。それでは」

 

 

 と言って、奥に下がっていった。彼女を見送った俺たちは揃って料理に視線を向ける。皿の上には茶色いペーストのような物が付き、見事な焼き色の鶏肉と野菜が盛られている。

 そして何より、この物体から薫り続ける香ばしい匂いが、エネルギーを燃やし尽くし空ききった腹をこれでもかと刺激する。口の中に涎が溢れる。期待に鼓動が早まっていく。

 俺はフォークとナイフを持った。

 

 

「んじゃあまずは・・・」

 

 

 鶏肉を一口サイズに切って口に運ぶ。直後、今まで味わったことのない味が口の中に広がった。ピリリとしつつも濃厚な肉の味、それを際立たせるスパイス。その味わいに行儀も何も忘れて堪らずライスを口に掻き込む。

 

 

「・・・旨すぎるっ!」

 

 

 意識せず口を吐いて出た心からの喜び。更に鶏肉を一口食べる。身を噛むと中の脂がより溢れ、口の中に広がる。どうやら違う部位を食べたらしく、一口目のとは異なる新たな味わいが口を満たす。肉を一口食べる度に違った味わいが口の中に広がるという、まるでマジックを披露されているかの様な感動。

 食べるのが止まらない。旨い、美味しい、脳髄を駆け巡る感動。そしてこの感動を覚えた脳は俺たちの体にこう命令するのだ。『もっと食わせろ』と。

 気付けばライスを二杯お代わりし、合わせのコンソメスープまでお代わりしたという有様。だが、これだけ美味い料理を食った事に対し、今更行儀作法がみっともないだのなんだとツッコムのは無粋というものだ。

 なにせ、テーブルマナーには一言ありそうなスケアクロウだって、鶏肉の辛味に汗を浮かべながらも一心不乱に食べ進めてたからな。辛い、けど癖になるからもっと食いたい。この店の料理人はいい仕事をする・・・ほぅっ。

 

 

「美味しかったですね・・・」

 

「あぁ、だな・・・あ」

 

 

 その時、支払いをどうしようかという問題点が浮かび上がった。

 喫茶鉄血に行った際はこっちの通貨が使えず、皿洗いなどの雑用と店主のご厚意で支払いはチャラにしてもらった。だが、俺たちの生きる時代から40年近く過去にあるこの店では、尚のこと俺たちの世界の通貨は使えないだろうし、こんだけスタッフがいるのなら雑用を申し出ても殊更迷惑になってしまう。

 さてどうしたものかと思ったとき、あることを思い出した。

 

 

(あ、アレが有った)

 

 

 とそこへ、中年の男と先程の青年がビニール袋を持ってこちらのテーブルへと歩み寄ってきた。

 どちらの顔にもどうだ?旨かっただろう?という自信に満ちた笑みが浮かんでおり、事実男は食事を終えた俺たちにそう問い掛けた。

 

 

「どうでしたお客さん。うちの料理は」

 

「とても美味しゅうございましたわ」

 

 

 紙ナプキンで口元を拭きながら間髪入れず答えるスケアクロウ。

 どうやら彼女にとってとてもお気に入りの店になったらしい。

 

 

「同じく。料理を掻き込む手が止まらなかった」

 

「そいつは良かった。ところでお客さん達、他の方とは違うとこから来たみたいですけど、差し支えなければ伺っても?」

 

 

 そう言って男・・・店主は理由を話し始めた。

 

 なんでもこの店の扉は7日に1度、正面の入り口が異世界に通ずる様になっているらしい。

 俺を殺そうとしたタツゴロウとやらやその側でジョッキでビールを煽る爺さん、それにライオンにトカゲも皆、その別世界に幾つも現れる扉の一つからここへ訪れるのだそう。

 当然喋る言葉も何もかも違うんじゃと思ったが、そこは異世界に繋がるついでに言葉の翻訳魔法(ローカライズ)が作用してるらしく、今のところやり取りに困ってはないとのこと。

 

 ちなみに店主には俺たちが英語でペラペラ喋ってるのが聞こえるのと同時に、翻訳魔法のおかげでちゃんと店主の母語である日本語でも理解出来ているとのこと。そしてこの魔法は平日には作用しないため、時々訪れる外国人客用にメニューを英語で併記してるんだそうだ。

 

 つまるところ、俺たちがこの店の常連とはまた違った世界から来たと言う事は、喋ってる言葉の違いですぐに分かっていたというわけ。

 ところで俺たちには普通に英語で喋りかけてきてる様にしか聞こえてないんだが・・・意思疎通さえ取れれば問題ないということなのだろう。深く突っ込まないでおこう。

 

 

「どこ・・・と言われてもな」

 

「・・・」

 

 

 ふむ、せっかく美味い飯を食わせてもらったのだから、その礼の一部として話しても良いとは思うのだが。

 果たして目の前の客が『前代未聞の大災害を経て国家間の関係が修復不能なまで悪化し、遂には世界大戦になって核戦争をおっ始めちゃった後の未来の地球』から来ました、なんて言われてどんな顔をすれば良いか普通分からないだろう。

 そんなクソみたいな未来の話をするってのもな・・・あるいはもしかしたら、ここはコーラップスが起こりようの無い新たな世界の地球かもしれない。

 

 

「店主、知らない方が良いこともあるぜ。・・・本当にな」

 

「えぇ・・・」

 

「・・・? まあそう仰るんなら、無理に聞きませんが」

 

 

 首を傾げるも、元々ちょっとした興味からくる話題作りだったのだろう。

 答えをボカされたことに特に言及することも無かった。

 

 さて、そろそろお暇させて頂こうと思うわけだが、受けたサービスには対価を支払わなきゃいけない。

 

 

「店主。支払いなんだが・・・これでいいか?」

 

 

 先ほどの仕事でパクってきた金塊をテーブルに置く。

 それを見た店主はギョッとした顔を浮かべ、

 

 

「金塊!?」

 

 

 と、目を見開いて驚いていた。

 ちなみにちゃんと噛んで、コイツが本物である事は確認済みだ。

 

 

「・・・その金塊、どうしたんですの?」

 

「んぁ? いやな、あの組織の部屋を一つずつ調べてたらな、何かボスのらしい部屋の金庫の中から見つけたのさ。元々相場より多かったとはいえ、依頼料金の割にかなり敵の数が多かったからな。追加料金の代わりに貰っておいた」

 

 

 と答えると、こめかみに手を当て大きくため息を溢すスケアクロウ。

 どさくさ紛れに何をしてるんだと言いたげなジト目。

 

 

「ま、まあ・・・・・・とりあえず、お代として受け取っておきます・・・」

 

 

 目の前に現れた金の塊に顔を引き攣らせながらも、一応代金としてカウント出来るものと認めてくれたようで、おっかなびっくりに持ち上げて奥へと引っ込んで行った。

 とりあえずこれで食い逃げというこっ恥ずかしい真似にはならずに済んだ。

 

 そんな店主を苦笑いを浮かべて見送った青年は、持っていたビニール袋を俺に手渡すと、俺たちにとってとてもありがたいアフターサービスの説明をしてくれた。

 

 

「あ、こちらサービスです。お仕事柄結構体力使うと思うので、サンドイッチの詰め合わせになります。良かったら」

 

 

 それはそれは・・・ここを出ても美味い飯が食える訳だな。

 と、店内に戻ってきた店主が続けてこう言った。

 

 

「お客さん。当店は()()()()()()()()7日に1度来れますんで、またの来店をお待ちしてます」

 

「・・・ほーん?」

 

「それはそれは・・・いいコトを聞きましたの」

 

 

 多分この瞬間、俺たちの目はギラリと光った事だろう。何故なら二人の顔が一瞬また引き攣ったから。だって週に一度、元の世界じゃ大枚叩かないと食えない天然モノの飯にまた出会えるのだ。

 しかもこの店に通ずる扉は、他でもない俺の寝ぐらに現れている。つまり、週1で最高の料理を食うフリーパスを手に入れたも同然なワケである。じゅるじゅる・・・。

 

 

「そうか。ではまた一週間後に来るとしよう。まずはメニューを制覇して・・・」

 

「どの料理が私たちにとって一番美味しいのか確かめなくてはなりませんわね」

 

「お、おぉ、そんなに気に入って頂けたんなら、此方としても料理人冥利に尽きます」

 

 

 そんなやり取りを経て店を出る。

 すると扉は光の粒子となって音もなく消えていく。

 

 腹が満たされ、幸せな気持ちで帰ってきたことにホッと一息吐くと、ふと横から訝しむ視線を感じた。

 

 

「ところで、先ほどの金塊ですけれど」

 

「ん?」

 

「何故見つけた時に教えてくれなかったんですの?」

 

「いやな、見つけた側から敵に見つかってあれやこれやと逃げ回ってるうちに頭からすっぽ抜けてた」

 

「つーんですの」

 

「なぜ拗ねる」

 

「大事な事ですわ。その場でとは言わずとも、帰りの道中とかで言えるチャンスはあったのに伝えてくれないなんて、信用されてないんですのね」

 

「おいおいおい待て待て待て」ンナ リフジンナ!?

 

「つーーーん」プイッ

 

「マジかよ・・・・・・」

 

 

 んなこと言ったって、頭から抜け落ちてたんじゃどうしようもないでしょうが。

 意地悪で伝えなかったんじゃないんだから、そこは勘弁して欲しい所である。

 それにあの場で思い出してアレを出したからこそ、食い逃げという死にたくなる様な真似をせずに済んだのだ。

 ちゃんと対価を払って美味い飯食えたんだから、お願いですんで機嫌直して下さいなスケアクロウさんや。

 

 が、言葉でいくら言っても機嫌は治ってくれず。

 最終的に頭撫でたり下顎から喉のあたりを撫でたり添い寝したり、といったスキンシップを行う事によって彼女の機嫌は元の状態に戻った。

 

 

 

 ・・・・・・実はこの子がただ俺に甘えたいがために理不尽な理由で(イチャモン付けて)拗ねたフリしてたのだと気付いたのは、先に寝入ったスケアクロウの寝顔を見つめてた時であった。

 こんにゃろう、人の気も知らないで揶揄いやがって・・・。

 

 俺は彼女の無防備な寝顔を覗き込む。スゥスゥと寝息を立てる様は、俺の側にいる事で安心しきっているのか。

 ・・・・・・んにゃろう。俺も”男”だってのは、他ならぬキミが一番強く意識してる事だろ? 無防備に寝顔晒して・・・覚悟は出来てるんだな? いーや、もう遅いぞ。出来てようが出来てなかろうが・・・・・・

 

 彼女の寝顔に覆い被さる様に俺は顔を一気に近付けーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

CHU♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・やっべ、今までで女抱いてきた時の非じゃないレベルで顔が火照ってきた。

 ちょっと風に当たってくるか・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・え? ふぇ?」




 


 ※何度も申し上げますが、本編とは直接関係ありません。


 えー(・_・)
 やりました(迫真)

 やってやりました。いい加減くっつけたくなった気持ちが抑えられませんでした()。

 ・・・またお気に入り登録者数減りそう。

P90に名前を付けるとしたら?

  • そのまま『P90』でいんじゃね?
  • 『ナインティ』でいんじゃない?
  • ナインとティを逆さにして『ティナ』とか?
  • いやいや変化球で『きゅーまる』はどうよ?
  • 良いアイデアがあるから感想に書くぜ
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