オールマイトが雄英に就任して数日後、連日のようにマスコミが押しかけてきた。
僕はねじれ先輩と一緒に学校の門の前でマスコミによる足止めをくらっている。
時間を止めてもいいのだが……個性無断使用にはなりたくない。ていうことで
「きゃっ!物間くん!?」
「すまない、ねじれ先輩」
僕はねじれ先輩の手を引いてマスコミの中に突っ込んで強引に抜ける。
雄英敷地内ではセキリティがあるからもう大丈夫だ。
「ねじれ先輩大丈夫ですか?」
「うん、あっ……手……」
よく見てみると僕はねじれ先輩の手を繋ぎっぱなしだった。
僕はドキドキを抑えながら手を離す。
そして逃げるように教室に向かう。
あとに残されたねじれちゃんは
「もう少し握ってくれても良かったのに…………」
顔を赤くして握られた手を見ていた。
・・・・
「えー急にで悪いんだがお前たちに学級委員長を決めてもらう!」
ブラド先生の言葉で教室のムードが上がる。
「静かに!皆を導く重大な役目だぞ!立候補している奴は……うん、いっぱいいるな。じゃあ他を推薦する者はいるか?」
ブラド先生がそう言うと拳藤が僕を指差した。
「物間がいいと思うんだけどなあ〜?」
「え?僕?」
僕は予想もしてなかったので適当に机に突っ伏せていた。
そこに一佳が指名してきたのだ。
「確かに……判断力もいいし……」
「なにより強いからな!」
「物間なら文句ねえな!」
泡瀬くんと鎌切くんに鉄哲くんがそう言ってくる。
え?これもう決定事項?
皆からの期待の視線が僕に突き刺さる。
はぁ……こりゃもう逃げられないな。
「………わかりました。引き受けます」
「うむ!引き受けてくれるか!よし!次は副委員長だ!」
そして副委員長は物間に意見できることから拳藤に決まった。
こうして委員長が決まり午前の授業は終了した。
食堂で麗日と合流して注文したサバ味噌定食を手に持ち席を探していると
「お〜い!物間く〜ん!ここが空いてるよ〜!」
ねじれ先輩が手を振ってこちらに呼びかける。
拳藤と麗日はなにやら気が進まないようだったが……なんでだ?
ねじれ先輩が用意してくれた席に座るとねじれ先輩が一つしかない横に来た。
それを見た拳藤と麗日は光のない目でねじれ先輩を見ていたのを物間は知らない。
そして昼食にありついていると
「それじゃあ物間くんが委員長になったの?」
「うん、まあね。本当は気が進まないんだけどさあ……」
「まあいいじゃん。これもトップヒーローになるための第一歩だと思うぞ?」
「トップヒーローって……僕は別に人を救えれば何番だっていいんだけどさ……」
「なーに言ってるの。アンタはトップヒーローになれる"力"を持ってるんだよ?」
「まあ、トップにはなりたいけどさ……」
そんな話をしていると
「物間くん!久しぶりだね!」
「あ、通形先輩」
「物間…この人誰?」
「通形ミリオ先輩。ねじれ先輩もそうだけど雄英の三年生で最強といわれているビッグ3の一人さ」
「雄英最強!?」
「この人が!?」
僕が質問に答えると拳藤と麗日が驚く。
通形先輩とはねじれ先輩との特訓の際に知り合った。彼の個性は透過。あらゆる物をすり抜ける。一見すると強個性に見えるが実は扱いが非常に困難な個性だ。僕も使ってみたがとんでもなく難しかった。そんなピーキーな車を乗りこなすように先輩はその個性でトップに立っている。
「物間くんどうだい!?雄英での生活は?」
「まあ悪くないですね。個性の使い方や使う際の心がけなんかも学べてとても有意義です」
「そうかい!それは良かった!そういえばそろそろ雄英体育祭だよね!」
と皆でワイワイと話していると
(……なんだ?)
突然僕のサーチが校内に現れたなにかを感知した。その直後けたたましいサイレンが鳴り響いて食堂はパニックとなった。
僕は至急ブラド先生に連絡をとる。
『先生!この騒ぎは一体……?』
『大丈夫だ!安心しろ。ただのマスコミだ!』
マスコミ……?ならさっき感じた二つの反応はなんだ?そう思った僕は
『いや……先生、既にこの校舎に侵入している何者かがいる』
『!!?なんだと!?それは本当か!?』
僕の報告にブラド先生はおろかねじれ先輩たちもビックリしている。
『確かです。職員室前に二人……急に現れたところをみると転移系の個性かと……それでどうしようかと……』
『ぐっ!俺たちは動けん!いいだろう!個性使用を許可する!』
『ブラド先生、いいんですか?』
通形先輩が電話を代わってそう言う。
『通形か……構わん!おまえも一緒についていってやってくれ!なあに……物間はおまえら以上に強い!遅れはとらないはずだ!』
『わかりました』
それだけ言うと通形先輩は電話を切る。
「行くよ!物間くん!」
「ああ、行きましょう!ねじれ先輩は避難誘導を!」
僕が転移しようとするとねじれ先輩は僕の手を握り
「帰ってきてね……」
「ねじれ先輩……」
こんな状況なのになぜか落ち着く。そしてその答えは一つだけだ
「ええ……必ず帰ってきます!」
そして僕は通形先輩と一緒にテレポートした。
転移した僕たちは侵入者と思われる二人を睨む。
「おいおい……なんでガキが急に現れるんだあ?黒霧」
「おそらく察知されたのでしょう……厄介ですね……消えてもらいましょう!」
そう言った霧のような敵はそのモヤから脳みそ剥き出しの怪物を出した。
「行きなさい!脳無!」
僕はアナライズで脳無とやらを分析すると個性が複数あることがわかった。それにDNAがぐちゃぐちゃだ。コイツ……本当に人間か……?
そう考えている脳無が向かってきたので僕は重力場を発生させて地面に貼り付けにさせる。
「なっ!?脳無!?」
そして抹消でモヤの敵の個性を消すとレーザービームで致命傷にならないように攻撃した。
「ぐわあっ……!」
「黒霧!てめえ……!」
僕は氷結で地面を伝って最後の一人を足元から凍らせる。
「なっ!?ぐっ!?クソがああ!?」
「さてと……終わりましたよ」
と通形先輩が呼んだ先生方が駆けつけると
「ぐっ……!」
「巫山戯るなよ……巫山戯るなよ……!」
忌々しそうにこちらをみる敵。だけどモヤの個性は抹消で消してある。問題ない
先生方が敵を拘束しようとした時その敵たちの口から黒いものが吹き出して敵たちを飲み込みそのまま姿を消した。
なっ!?どういうことだ!?確かに全員の個性は消していたはず……まさか……この場にいない協力者の個性か!?
敵がいた場所を見つめる先生たち。僕は自分の甘さを痛感していた。
「相澤先生……すみません」
「いや、よくやってくれた。これは俺たちのミスだ。気にするな」
この後相澤先生たち教師陣に事の顛末を伝えて僕は教室に帰った。