なんかロボゲーの世界に転生したんですけど………   作:⚫︎物干竿⚫︎

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10話

ゲンドウ氏のお屋敷を出て、ランスターが預けられている工房がある北部に向かう。クレーンやドリルに発電機やらと種々雑多な機械達の奏でるオーケストラを聴きながら、作業用重機としてカスタムされ平和な目的で運用されるバトルフレーム達を見ながら歩いて行くと目的の工房に着いた。

 

開け放たれたバトルフレーム用の進入口からはハンガーに固定されたバトルフレーム達が並んでいるのが良く見える。

 

旦那に続いて中に入ると、耳をつんざくようなけたたましい機械音が所狭しと響き渡っていて、たまらず耳を塞ぐ。

 

「うひゃあ、いつ聞いてもやかましいことっ」

 

旦那が何か言っているが機械の音にかき消されて聞こえない。

そうして待っていると、俺達に気付いた工房の人間が近付いて来た。頭にバンダナのようにタオルを巻いたツナギを着た男で、

 

「どうも!親方は今ちょっと出かけてるんで、事務室の方で待っててもらえませんか!」

 

機械音に負けないくらいの大声で叫んでそう言った。

彼の言葉に従って、工房の端の方にちょんと設置されたプレハブ小屋に入る。壁に防音素材が使われてるのか普通に会話出来る程度にまで外からの音が抑えられていて、良く冷房も効いていた。

 

「珍しいですね。連絡も無く急にやって来るなんて」

 

俺達の少し後にミネラルウォーターの入ったボトルを持ってミリアがプレハブ小屋に入って来た。そういや、ミリアが修行してる工房ってここだったっけか。

 

「急に依頼が入ってな。ランスターは仕上がってるな?」

 

「ええ。親方が不眠不休でハイテンションで改造して、仕上げの調整をほっつけて来ました」

 

「待て。お前がやったのか?」

 

「まだですよ。どうせカズキが乗るんでしょう?なら、カズキが居なきゃ調整も何も出来ません」

 

おっそうだな。

 

「いや、お前はやらなくて良い。マオが帰って来てから奴にやらせろ」

 

「卒業試験だとか言って、私にやれって言って聞かないんですが」

 

「状況が状況だ。腕も不確かな半人前に調整は任せられん」

 

「一体今度はどんな依頼を受けたんですか?」

 

「ゲンドウ・ミツハラからの依頼でアフリカに行く事になった」

 

「アフリカって絶賛戦争真っ只中じゃないですか。なんでまたそんなところに」

 

「さぁな。呼びつけられて半ば強制的に依頼を押し付けられた」

 

拒否権の無い依頼って依頼って言えるんだろうか。え?報酬は出るんだから無問題?せやな。

 

「あと2時間もすれば親方も戻ると思いますから、このまま待っててください。私は自分の仕事に戻りますので」

 

そう言い残してミリアがプレハブ小屋を出て行った。

 

「カズキ」

 

「なんすか」

 

「いや、なんでもない」

 

過去に何があったか知らんが、今日の旦那ちょっとナイーブ過ぎない?まあ誰にだって触れて欲しくない傷ってもんはあるか。俺には特に無いけどな!

 

そのまま微妙な雰囲気を漂わせながら、水をちびちび飲みつつ待っていると。

 

「やあ!待たせたようですまないね!」

 

そんな元気いっぱいな声と共に胡服姿の黒髪の男がプレハブ小屋に入って来た。

 

マオ・フーシェン。旦那の古い知り合いのバトルフレーム技師で、この工房の主人だ。

 

「それで、今日はなんの用事だい?ランスターなら後はミリアちゃんが仕上げをするだけだよ⁈いやあ、久しぶりのフルチューン楽しかったなぁ」

 

「アレにも言ったが、仕上げまでお前がやれ。急遽失敗が許されない仕事を受ける事になった」

 

「ああ、例のアフリカの話だね⁈技師連中の間じゃあ、ちょっとしたお祭り騒ぎさ!」

 

どこから漏れたとか気にしたら負けなんだろうなぁ。なんでか、アブレヒトの職人ネットワークって、下手な情報屋より色んな情報が流れ回ってるし。誰某の趣味嗜好みたいなどうでも良いのから今回みたいな重要度の高い情報だろうとどこかしかから拾ってくるからね………

 

「ふーむ。調整まで請け負うのは構わないけど、アフリカに行くってことは長期依頼だろう?その間、ランスターの面倒を見てくれるアテはあるのかい?ワタシは無理だよ。なんたって忙しいからね!大口依頼でドーラス12機を使えるようにして納品しろとの無茶振りを受けていてね!」

 

「そうか………気は進まないが、あそこに依頼するか」

 

金繰りの算盤を頭の中で弾く旦那が顔をしかめる。竜胆ダメにしたのは謝るけどアレは不可抗力だ。エース2機とか無理無理かたつむり。

 

「そこでだ!ランスターのカスタム費用を値引きする代わりにミリアちゃんを連れて行ってあげてほしい!」

 

「論外だな」

 

「まあまあまあ、落ち着いて話を聞いてくれないか?友よ。はっきり言うが、ミリアちゃんがバトルフレーム技師としてやって行くには技術云々よりも心構えの方が大事だ。て言うか技術だけなら現時点で既に合格レベルだし10年もしないうちにワタシなんて余裕で超える技師になるよ」

 

「マオ、それは過大評価し過ぎじゃないのか?」

 

「そんなことはないさ。あの子がウチに来てから3年が経つが、バトルフレームの分解から組み立て調整までをこれだけの短い時間で全てを1人で出来るようになる技師なんてそうは居ない。天才ってやつだね⁈とは言え、だ。あの子には決定的に覚悟が足りない」

 

「だからアレは甘いんだ」

 

「そう。だからこそあの子には目で見て肌で現実を感じて理解して貰わなければならない。それでダメならあの子はダメさ。ダメならダメと引導を渡してやるのも親の務めだろう?」

 

はい。それでくたばることになる俺の命は所謂コラテラルダメージってやつですね、わかります。傭兵の命は下手すりゃバトルフレーム用の弾丸より安いからね仕方ないね。泣きたい。

 

「それで、バトルフレームと傭兵を使い潰せと言うのか?冗談もいい加減にしろ」

 

「実らない作物を育てても意味が無いだろう?ダメな芽はさっさと抜いて新しい芽を育てた方が建設的だからね!」

 

シレっとくそ辛辣な事言ってんなこの人。

 

「大体がね。たかが傭兵の命と自分の娘を同じ秤にかける事自体が筋違いと言うものじゃないかな?その子の境遇にはワタシも同情はするけどそれだけさ。その子とミリアちゃんならワタシはミリアちゃんの方が大事だよ」

 

たかが傭兵の命だってさwハハッワロス………分かりきった事だけど、直接目の前で言われると泣きたくなる。

 

「カズキ」

 

「なんすか旦那」

 

「お前が決めろ」

 

「マジで言ってんの?」

 

「究極的にはお前が生きるか死ぬかだからな」

 

「んじゃミリアで」

 

「そうか………」

 

なんでかって?気心知れた相手だし、腕自体は工房の主人である親方さんが合格レベルって認めてるんだから特に問題は無いからだ。どうせ、誰がやってもきたねえ鉄くずになる時はなるんだしな。

 

うん、自分でもこんだけ軽く命扱ってりゃたかが傭兵の命って言われてもしゃーないわ。

 

「傭兵の方が話がわかるじゃないか。キミ、名前はなんて言うんだい⁈」

 

急にハイテンションやめてくれませんかねえ………

 

「カズキ・クジョウ」

 

「カズキだね⁈覚えておこう!もし、キミがヨルドの下から独立出来たなら色々融通してあげるよ⁈」

 

「独立出来る気しないけどな。赤字ばっか溜まりまくりだし」

 

「そうだな。6億くらい自分で用意出来たなら考えてやるが」

 

6億とかマジ無理ゲーじゃないですかヤダー。

 

「さて、それじゃちゃっちゃと調整終わらせようか⁈カズキを借りるよヨルド⁈」

 

「ああ、さっさと終わらせろ」

 

「なぁにすぐに片付くさ⁈」

 

頭の中でドナドナを流しながら親方さんに俵担ぎされてプレハブ小屋を出る。そして、そのまま連行された先にはハンガーに固定されたランスターが有った。

 

竜胆のようなそのまま無理矢理戦艦の装甲を盛りました〜みたいな外見ではなく、追加装甲は施されているがちゃんとしたジャケットアーマーの様な感じで、脛の外側には追加ブースターが備わっていた。

 

「で。両腕のあのゲテモノ武装はなんなんだコレっ⁈」

 

特に目を引いたのはランスターの両腕のハードポイントに接続された複合兵装だ。シールドの内側に単装砲と竜胆にも備わっていた炸裂杭を更に太く強力にしましたと言わんばかりのモノが引っ付いたトンチキ兵装である。

 

「この機体はね⁈かつてヨルドが傭兵時代に乗っていた機体を再現アップデートしたものなんだ!ジャケットアーマーにはツテを使って手に入れたコルベットの装甲を加工したものを使ってるから、軽くて頑丈だ!あの竜胆には負けるけどね⁈どうやったら旧来の技術だけで作られた装甲があれだけの強度を持つのか興味が尽きないよ⁈現物は無くなっちゃったけどね!」

 

「旦那こんな変態マシン乗ってたのか………」

 

「説明を続けるよ⁈バックパックのメインブースターは左右それぞれを単発から双発に変更して脚部にサブブースターの追加したから、かなり自由に動き回れるよ⁈まあ、その分推進剤の消費とかは増えたからバックパックに追加タンクを付ける事なったから機体重量は増えちゃったんだけどまあ誤差だよね⁈ちなみにバックパックのマウントユニットは右がM4グレネードランチャー、左がガルム速射機関砲!そしてぇ!大目玉はコレ!コルベットのシールドをベースに48口径アサルトカノン・ストリクスに68口径パイルバンカー・ストークを組み合わせた複合兵装ヘルファイア!守ってよし撃ってよし突いてよしの便利兵装さ!使いこなせるかは知らないけどね!まあ、ヨルドは使いこなしてたし、ヨルドが手放すのを惜しむくらいの傭兵のキミなら大丈夫さ!」

 

なんでこの爆音の中はっきりと声が聞こえるのかとか一呼吸で全部言い切ってるのが怖いとか色々あるけど、それより何よりもこんな機体を仕上げてくる狂気が怖い。そして、コレを乗りこなしてたって言う旦那も旦那で突き抜けてて怖い。え?あんなゲテモノ竜胆乗ってたお前が言うな?せやな(

 

「さあ、コックピットに乗り込んでくれたまえ!」

 

なんかギラついた目が怖いから言われたままにランスターに乗り込むとコックピットブロックが見慣れた竜胆のものにすげ変わっていた。竜胆とランスターって操作系統も何もかも違うはずなのに動くのかコレと思いながら、メインコンソールの画面を操作して起動させる。

 

「お、動いた」

 

『当たり前さ⁈まあ、繋げるのはちょっと苦労したけど、竜胆と同じ感覚で動かせると思うよ⁈』

 

職人の技ってスゲー。しかもこの親方さんよりも腕の良い職人(例:竜胆を仕上げた職人とか)も居るんだから、アブレヒトって割りかし技術者の魔窟だわ。

 

そんな事を思いながら言われた様にランスターを動かして調整を進めて行く。




機体更新回みたいなの
量産汎用機をワンオフカスタムチューンしたロボって不思議とカッコいいよね。

まあ、オリジナルのワンオフロボもカッコいいけどね!(数々のロボアニメの主役機見ながら)

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