なんかロボゲーの世界に転生したんですけど……… 作:⚫︎物干竿⚫︎
模擬戦の依頼を終えてアブレヒトに帰って来ました。
ランスターは旦那の知り合いの人がやってる工房で格安で修理して貰うことになり、依頼の報酬やらと合わせて出来た金で竜胆が戻って来た。新品同然の仕上がりにはなってるが、かかった費用が高過ぎる。
ちなみにぼったくられるって分かってたとこになぜ預けたのかと旦那に聞いたところ、
「仕方ないだろう。あのスモークはあそこの工房でしか仕込めないんだ。それに追加装甲だってそこらのヤブ職人に仕立てられる物じゃないんだ」
とのことです。まあ、実際に乗って戦う俺からすれば機体性能が良いバトルフレームに乗れるのはありがたいことなんだが。
今日は旦那は外出中で俺1人である。だからなんだって話だがな。自分の金も無いから出かけてもなんも出来ないし上に独立傭兵でもない身分で出歩くとか日が暮れる頃にはサンドバッグにされて路地裏あたりに転がってるよ。ていうか、この世界で目覚めた日に実際サンドバッグされたし。
「掃除はやったし、竜胆の日常点検も終わった………やる事ねえな」
やや遅めの昼飯に缶詰(なんか肉っぽいナニカ)を食いながらぼやく。
旦那も今日は丸一日戻らないって言ってたし本当にやることがない。
ゴンゴンと居住スペースにある通用口の方の防弾鋼製のドアが叩かれたので、ベッド代わりであるソファーから降りてそちらへ向かい、確認用の小窓を覗き込むと、油で汚れたツナギを着た仏頂面の肩にかかる程度の金髪の女の子が居た。
「旦那なら出かけてるよ。今日は丸一日戻らないってよ」
「知ってます。その旦那さんに貴方の様子を見てこいと頼まれたんですよ」
「旦那に?そこまで信用ないかね俺」
「知りませんよ。とにかく入れてください。暑いですから」
「あいよ」
ドアの鍵を外して開ける。ギイと年代物のドアが軋む音を立てて開き、外からの熱気が一気に吹き込む。暑さには慣れたもんだが、中々キツい。腕で閉まろうとするドアを押さえながら道を開けると女の子が入って来た。
「お茶くらい無いんですか?」
冷蔵庫からミネラルウォーターが入ったボトルを渡すとそう言われた。
「探せば茶葉くらいあるだろうけど、生憎と俺はどこにあるのか知らないんだ。ていうか、俺はそこの冷蔵庫か缶詰入れてあるダンボールしか開ける許可貰ってねえし。飲みたいなら自分で探せ」
「使えませんね」
「俺は旦那のしもべではあるが、誰にでも従うわけじゃないからな」
女の子が居住スペースの奥にある炊事場に行くのを見送りソファーに寝転がる。
あの女の子の名前はミリア・ホークマン。旦那が別れた嫁さんとの間に作っちゃった娘らしい。旦那曰く若かりし時代の過ちだそうな。とは言え、嫁さんと別れたのは不仲になったからとかって理由ではないらしい。
まあそんなことはどうでも良い。重要なのはなぜこの子を寄越したのかだ。
「仮にも客が居ると言うのに随分とダラけてますね。これは伝えておかなければいけません」
「客っていうかただの監視だろうが。特におかしなこともしなけりゃそれでいいだろ」
接待用の小洒落たティーセットを持って炊事場からミリアが戻って来て机を挟んで向かい側のソファーに座りながらそう言ってきたのにひらひらと手を振って答える。
「で。メカマンとしての修行はどんな感じよ」
「そこそこですね。まあ、プレーンのバトルフレームくらいなら一人で面倒見れるようにはなりましたよ。旦那さんからはさっさと竜胆の面倒を見れるようになれと言われましたが、アレの面倒見れる職人なんてこのアブレヒトにだってそう数多くないんですよ」
「そりゃご愁傷様で。さっさと旦那もあのぼったくり工房と縁切りたいんだろうさ」
「なら、あんなフルチューンマシンなんて捨ててそこらのプレーンでも使えばいいんですよ」
「竜胆無くなったら俺が死ぬわ⁈」
「傭兵なんて命切り売りしてなんぼでしょう?何をためらってるんですか」
「やっぱお前は旦那の娘だよ」
そう言うと露骨に表情を変えて持っていたティーカップを置いて、
「あの人はあの人です」
「旦那もお前も頑固だねえ………って、アッツ⁈」
ティーカップに残っていた茶を浴びせかけられた。
火傷はしなかったがクッソ熱い。そんな露骨な反応するって絶対旦那のこと好きだろお前。
「まったく………丁度良いです。竜胆見せてもらいますよ」
「おう、好きにしろ。俺はちょっとシャワー浴びてくるから」
居住スペースを出てバトルフレームの格納スペースに向かって行くのを見ながらソファーの脇のカゴから着替えのシャツと下着、それとタオルを持って居住スペースの奥の炊事場の入り口の隣の扉を開けて中に入る。その先はシャワー室になっている。
野郎のシャワーシーンなんぞ誰得なのでカットォ!
シャワー室を出ると格納スペースの方から機材を動かす音が聞こえたので竜胆をいじくってるらしい。それをBGMにしながらソファーに寝転んで目を閉じる。機械の音?普段仕事で輸送機内で寝起きとか当たり前だから子守唄みたいなもんだわ。
「起きなさい」
ぺしっと額を叩かれて強制的に目覚ましがかかった。
「竜胆見せてもらいましたが、よくまあ、あんな機体で生きて帰って来れますね貴方。と言うか、アレなんで動くんです?追加装甲分の超過重量だけでも機体のパワーモーターが悲鳴あげますよ普通」
「装甲で耐えて撃ってれば大体敵は片付いてるからな。どんな改造を施してんのかは知らん。俺にわかるのは精々が超重装から追加装甲パージで高速でかっ飛ぶとっつきマシンってことくらいなもんよ」
答えながら起き上がって、ソファーに座りなおす。時計を見ると俺が寝てから2時間くらいが過ぎていた。2時間もメンテするでもないのに竜胆いじってたんか。
「昔から何も変わってないんですね。父さん」
「人なんてそう変わらんて。てか、あの人も現役時代にあんな感じのバトルフレーム転がしてたのか」
現役時代のことあんま語らないからなぁ旦那。どんな風に戦ってたかとか、どんな機体に乗ってたかとか黙して語らない。精々が脚切って傭兵引退せざるを得なくなった時の事くらいだ。
「貴方の前の傭兵は4回目の襲撃依頼で死にました。結構良い人だったんですよ?なんで傭兵なんてやってるのか不思議なくらいに」
「ま、傭兵やってる連中なんて全員何がしか問題抱えてるからなぁ。どんなに人柄が良くたって傭兵に身をやつすっことはそう言う事さ。俺だって、自分の名前以外がアレだろ?」
俺はこことは違う似たような世界の人間だとか言っても信じられるわけが無いからテキトーにごまかした。まあ、そのせいでサンドバッグにされたり命切り売りしてなんぼな傭兵なんて言う仕事に就いちゃってるんだが、そこは仕方ない。
拾ってくれた人も割と良い人?だし、これ以上は高望みだろう。増長はロクなことにならないからなイカロスの物語とかが良い例だ。
「貴方は死にませんよね?」
「さあな。俺だって死にたかないし、やれるだけはやるけど、きたねえ鉄くずの仲間入りする時はするだろうしな」
「………あの人もですけど、なんで傭兵ってそんな自分の命を軽く扱うんですか」
「いや、お前も言ったじゃん。傭兵なんざ命切り売りしてなんぼだって、事実そうだ。死はいつでもすぐそこにあるんだから、恐れる意味がない」
「だから、傭兵は嫌いなんです。あの人も貴方も」
「知らんがな。お前の好き嫌いなんて知るかよ」
恨みがましい目で見ながらそう言うミリアにそう返す。
まあ、自分でも変だとは思う。自分の命を木っ端みたいに軽く扱うことなんて出来なかった筈だ。俺ってそんな人生刹那系だったか?とか疑問は尽きないが、生きてるんだから問題ないだろう。
その後は特に会話を交わすことも無く時間が過ぎ、日が暮れて旦那が帰って来た。
「面倒をかけたな。特に何も無かったな?」
「ええ。何をするでもなくそこで惰眠を貪ってただけですよ」
「そうか。まあ、やる事をやっていたなら問題ない。丁度良い、礼も兼ねて飯でも行くか」
「そうですね。ここには味気ない缶詰しかないですし」
父親と娘のやり取りには見えねえのはなんでだろうか。なんか飯食いに行くっぽいが俺には関係ないな。味気なかろうとなんだろうとこの缶詰が俺の飯なのだ。
「カズキ。お前も来い」
「ひょ?」
「不満か?」
「まさか、喜んで着いて行きますとも」
特になんかがあった訳でもないが、妙に疲れた休日の締めに降って湧いた幸運である。やったぜ。
特に意味も無いカズキくんの休日
キャラ紹介他はどのあたりに入れた方がいいか
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