なんかロボゲーの世界に転生したんですけど……… 作:⚫︎物干竿⚫︎
「以上が報告となります」
タブレット端末を手にした部下からの報告を聞いて、紫煙を上げる葉巻をテーブル上の灰皿に押し付けて、
「存外、同盟のエースとやらも大した事が無いようだな。5年前の東シナ海一帯の占領に際した戦いで我が軍の一個艦隊を単騎で無力化して見せた実力に期待していたのだがとんだ期待外れだな………いや、件の傭兵『鉄槍』が異常なのか」
「恐らくは後者かと、あの傭兵の動きはモニターしていましたが異常と言う他にありませんでした」
「で、あろうな」
PCの画面に目を向けると、そこには海上をブースターによって駆ける異形の姿と化した我が皇華帝国軍が誇る第二世代型バトルフレームAT-098竜胆の戦う姿が映っていた。
最新鋭機であるAT-136甲武ですら凌駕するような圧倒的な強度の装甲によって降りしきるミサイルや弾丸の雨の中を駆け抜けて行く姿ははっきり言って敵には回したくないものがある。機体が破損しようとも撃墜されることも躊躇わずに前進してくる敵など想像もしたくない。
軍上層部も懇意である傭兵として、これからも継続的に依頼を送りゆくゆくは取り込むことを狙っているのだろうが………
「どこの馬の骨とも知れない傭兵なぞの戦力を当てにする?馬鹿な話も大概にしろ。我が軍の将兵達は皆精強だ。だと言うのに、何故上層部は傭兵ばかりを使うのだ」
「しかしながら閣下、あの傭兵は使えます。そこいらの有象無象の傭兵とは違って使い潰すには惜しいのでは?」
「ああ、それは認めるとも。こんなものを見せられてはな………で。例の計画はどうなっている?」
わざわざ自由資本同盟に潜入させている工作員達に無理を言って、あのエースの動向を探らせたら丁度良くアフリカへの異動があったのでそれにぶつけてみたが、よもや逃げおおせて見せるとは予想外だ。それだけの腕があるなら腹立たしいことではあるが、使うだけ使って潰すのがいいだろう。
「つつがなく。報告によれば、早ければ半年以内には仕上がると」
「よろしい。中央の権益にしがみつく事しか頭に無い老害どもに目にものを見せてやる」
そうとも、戦場の主役は傭兵などではない。我ら正当なる将兵達なのだ。
●●●●●●●●●
『すまない、傭兵を取り逃がしてしまった。あんなボロボロのバトルフレーム1機すら仕留めらないとはいよいよ俺も退役を考えるべきかもしれないなぁ』
「いいや、奴を仕留め切れなかった俺達にこそ責任がある」
ノイマン中佐からの通信にモニターに映る補給艦と護衛の駆逐艦の片割れの残骸を見下ろしながら答える。
何人が死んだ?少なくとも3桁単位で人が死んでいる。俺達が、俺がしくじった結果がこれだ。あそこで外さずちゃんと胴体中央部に当てていれば補給艦は沈まなかっただろうし、もっと言えば最初から進行の妨害などではなく撃墜を選んでいれば駆逐艦だって守れた筈だ。
何がエースだ。周りからちやほやとおだてられてのぼせ上がったか、アイザック・フローライト。
『こちらAWACSロングホーン、各機無事か?』
『ピンピンしてるよクソッタレ!守るはずの補給艦沈められて俺らは無傷ってなんだよこりゃ⁈補給待ってる連中になんて言い訳すりゃ良いんだよこれ!エース送り届けたって食うもんも弾薬も何も無かったら戦えないじゃねえか!』
レッカー少尉が怒鳴るような声でロングホーンに返答する。
彼が言ったように、俺達の機体はいずれもかすり傷ひとつ付いていない。味方の盾になって傷付くならまだしも味方はやられて自分は無傷など皮肉にもなりやしない。
『レッカー少尉、それは艦隊の全員が同じ気持ちだ。とにかく一旦帰投するんだ』
『了解………』
『他の皆もだ。帰投してくれ』
『承服出来ません。まだ燃料も弾薬も十分にあります。今ならまだ』
『司令部からの命令だ。そのまま本来の任務に戻り、積荷を届けろとのことだ。フローライト大尉とオーエン中尉もだ。積荷である君達が戻らなければそれも成せない』
『ふざけんな!ここまでコケにされて黙ってられっか!行くぞアイザック。味方の敵討ちだ!』
『いいから戻って来い!お前たちの仕事はなんだ⁈アフリカの連中を助けることだろうが!』
「戻ろう、ロニー。そしてここで散った人達のためにも1人でも多くの味方をアフリカで助けよう」
『ちくしょう!』
あの傭兵とはまた戦場で会う気がする。その時は必ず奴を墜とす。絶対にだ。
●●●●●●●●●
眼が覚めると古ぼけてはいるが清潔感のある天井がそこにあった。
なんで俺こんな所に居るんだ?えーっと?確か………
「あー思い出した思い出した。旦那に回収してもらった後に意識がぶっ飛んだんだ」
と言う事はここはアブレヒトの病院か。あれ?治療費ヤバくね?あらやだまた赤字が積み重なっちゃう。
まあ、生きてるだけめっけもんなんだろうけどさ。
左腕には点滴の管が付いていて右腕はガーゼやらなんやらで真っ白になっているし体も軋むように痛い。けど、それは生きている証だ。
「まあうん。生きてて良かった」
実際、あの時の銃撃が竜胆の右腕の方に逸れていなかったらきたねえ鉄くずとして太平洋の藻屑になっていた。どうにもこうにも俺は悪運ってのが強いらしい。
最初の日にゴロツキにサンドバッグにされて放り出されても冬の真夜中凍死する前に旦那にも拾って貰えたし。ま、幸運には程遠いけど。
ぼんやりと天井を見ながらそんな事を考えているとカーテンが開いて誰かが入って来た。旦那か?そう思ってそっちに目を向けると見慣れた機械油に汚れたツナギではない私服らしい白いブラウスに黒のやや長めのスカートと言う服装のミリアだった。
しばらく互いに無言で見合っていると、
「目が覚めたのか」
「ども旦那。俺どんくらい寝てた?」
「4日と言ったところだな」
「4日も寝た切りとかここ出た後が恐ろしいわ」
「安心しろしっかりとリハビリメニューは組んでやる」
「オーナーの心遣いが身に染みるねえ」
「道具のメンテナンスは大事だからな」
「ああ、メンテナンスは大事っすね」
「「はっはっは」」
なんかコントみたいなやり取りを旦那としていると、
「随分と気楽ですね?ん?」
「いや、なんでお前が怒ってんだ」
ミリアのすっごくイイ笑顔にそう返す。笑顔とは本来(以下略
なぜにこんな怒ってんだコイツ。俺なんか地雷踏んだか?
「心配してたんですよ?3日前帰って来た父さんに呼び出されたと思ったら、竜胆は半分スクラップ状態。貴方はと言えば父さんが応急処置を済ませてましたが意識は戻らず、病院に連れて来て医者に見せても血を流し過ぎで治療を施しても目を覚ますか分からないって言われて………」
「あー失血死寸前だったかぁ。まあ、腕に破片やら刺さったのもそのままで傷の手当てとかもしてなったから、当たり前か」
ぼやくようにそう言うとビンタをされた。結構痛い。
「自分のことなんですよ⁈なんでそんな他人事みたいなんですか⁈」
「生きてるならセーフセーフ。後遺症とか残ったらヤバイけど」
「安心しろ。医者の見立てでは奇跡的に特に後遺症なども残らないそうだ。もっとも傷痕は残るらしいが特に問題はないな。まあ、竜胆を潰す事になったからその分、お前にはコレからもしっかりと働いて貰わなければならないがな」
やったね。これまで通りにお仕事できるよ!目頭がなんか熱いけど気のせいだ!うん!と言うかマジで後遺症でバトルフレーム乗れないとか言われたらその時点で俺の人生ガメオベラだから運が良いわ。折角生き延びたのに路上死亡エンドは勘弁だ。
「と言う訳で特に問題はない。竜胆?知らない子と言い張りたかったです」
「馬鹿ッ!!!」
そう怒鳴ってミリアは出て行ってしまった。一体今の返事の何が悪かったんだろうか?
「気にするな。アレはいつもの事だ」
「自分の娘の事だろうに気にするなって、この父親マジパネェ」
「傭兵が行くのは戦場なんだ。引き金を引けば誰かが死ぬし、生きて帰って来られるだけでも十分に幸運だ。それをいちいち多少の大怪我をした程度で喚き立てるようならこの業界に関わるべきじゃない」
「なら、無理矢理にでもアブレヒトから放り出しゃ良いじゃん。皇華帝国でも自由資本同盟でもどこでもいいから、そこで普通の女の子として生きさせてやれば良いだろ」
「したとも。俺だってその程度の親の努めは果たすさ。だが、それでもここに残ってバトルフレームの技師になる事を選んだのはアレだ。なら、そんな甘えは許されない」
「戦場に出て行ったヤツが無事に生きて帰って来られるように、だっけか?お優しいことで」
「さて、ここでの治療費は必要経費としておくが、さっきも言ったように竜胆がダメになったからな。急遽ランスターをカスタムする事になった分はお前の赤字に加算するから覚悟しておけ」
「いきなりそれぶっ込んで来る⁈」
俺、自分の金を手にする以前に赤字生活から脱却できるんだろうか?
後日談っぽいもの。
順番は依頼人の皇華帝国の軍人さん→ライバル→カズキくんの順になってます。
カズキくんの人生葉っぱ隊ぶりが酷い?書いてる自分も書き終わってこやつの死生観にちょっと引いてる(何
キャラ紹介他はどのあたりに入れた方がいいか
-
最初
-
節毎
-
最後