なんかロボゲーの世界に転生したんですけど………   作:⚫︎物干竿⚫︎

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9話

病院から退院して、リハビリだとか体の鍛え直しだとか色々やってたら夏は過ぎて秋になっていた。時間の流れって早いって思った今日この頃。

 

ちなみに今日はアブレヒトでも上の連中が住む場所に旦那と共に来てます。雑多でいつでもわいわいぎゃあぎゃあと喧騒絶えない一般区と違ってすごく静かです。

 

「同じアブレヒトの上とは思えん場所だなぁここ」

 

アブレヒトは元々は東西に10km、南北に4km程の大きさのメガフロートひとつだったそうだが、月日が経ち人が増えるのに合わせて増築が繰り返された結果、東西に50km南北には20kmと劇的ビフォーアフターを遂げて今の形になったらしい。もう大都市が一つまるごと海に浮かんでるようなもんだな。

 

西部は商業区として発展し、北部は数多のバトルフレーム技師達の工房が軒を連ねる工業区。東部にはアブレヒトの食糧事情を一手に担う農業プラントがあり、南部は一般民向けのアパートや借家と傭兵達が住居兼オフィスに使う倉庫などが建ち並ぶ一般居住区。そしてここ、アブレヒトのほぼ中央、権力者達が住まう上居住区だ。

 

 

「まあ、普通は傭兵には縁の無い場所だからな。傭兵でここに来るのは凄腕も凄腕の連中くらいのものだ」

 

「じゃあ、なんで俺らは居るんですかね」

 

「お呼びがかかったのさ」

 

「誰に?」

 

「行けば分かる」

 

そう言って歩き出した旦那の後を追いかける。と言うかあんまり長居したくないなぁここ。

 

人一人すら歩いていない不気味なくらいに静かで小綺麗な道を歩いて行くと、洋館じみた高そうな屋敷が建ち並ぶ中に武家屋敷を思わせる木造瓦屋根の大邸宅が建っていた。

 

「ここだ」

 

「え?ここ大丈夫?ヤクザの組長かなんかの家だったりしない?」

 

「安心しろ。周りの家も似たようなものだ、ヤクザかギャングか呼び名は変わるがな。大体がこのアブレヒトに居るのはそう言ったアウトローな連中ばかりだろう?俺達然り」

 

「そういやそうだった」

 

男は度胸。傭兵は命を投げ捨てるもの。南無三。

心の中でそう唱えて旦那な後に続いて開け放たれた門をくぐり、丸石が敷かれた道を歩いて屋敷の中に入る。

 

「お待ちしておりました」

 

リアルメイドさんなんて初めて見た。てか、和風なお屋敷なのにメイドさんでいいのか。中々イイ趣味してそうだなここの主人………

 

靴を脱いで上がって、メイドさんの後に続いて板張りの廊下を歩いて行く。にしても怖いくらい姿勢いいなこのメイドさん。

 

「こちらでお待ちください」

 

そう言ってメイドさんが開けた襖をくぐって畳が敷かれた部屋に入ると、先客らしい連中がこっちを見ていた。纏った雰囲気で大体分かるが、全員が一級品クラスの傭兵達だ。超こええ。

 

「よおヨルド、お前さんも呼ばれたのか」

 

ニィっと笑みを浮かべて旦那並にガタイの良い左目に眼帯を付けた黒人の男の傭兵が話しかけて来た。

 

「カークスか。まだ生きていたのか」

 

「カハハハ!!そうそうくたばるものかよ。で?そっちのボウズが噂の2代目か?」

 

そんな値踏みするような目を向けないでくれませんかねえ?

 

「たまたま拾ったのが当たりだっただけだ。それに自分であんな呼び名を名乗れるものか」

 

「パイルを主兵装にして散々暴れておいてそれを言うかね。ええ?鉄槍さんよぉ」

 

「やめろ。他人から聞くだけでも気色悪い」

 

「相変わらず、恥ずかしがり屋だなぁお前さん。さて、噂は聞いてんぜボウズ」

 

いきなり話振って来たな。そして、他の連中もこっち見ないでくれませんかねえ⁈俺、あんたらに目ェつけられるような凄腕でもなんでもない木っ端傭兵なんですが⁈

 

「噂?」

 

動揺を悟られないよう気を張りながら聞き返す。

 

「なんでも、アイザック・フローライトも居る艦隊に1発かましてやったそうじゃねえか」

 

「ぶちかましたって、駆逐艦と補給艦1隻沈めるのに、フルチューンの竜胆1機は割に合わないだろ」

 

「バトルフレームなんざ所詮は消耗品よぉ、やる事やって生きて帰ってこれるなら勝ちってなもんさ。それに、あの青二才だって仮にも自由資本同盟軍のエースなんだぜ?」

 

アレを青二才扱い………この人、一体何者なんだ。

 

「大体が、ここにこうして『呼ばれている』。それだけで、傭兵ならお前さんに興味を持つのは当たり前の話さ」

 

「そんなもんか」

 

「ああ、何せここの主人は………と、来たみたいだな」

 

音も無く襖が開いて、老人と言えるくらいの年齢に見える黒い和服に紺色の羽織を着た男がメイドさんを引き連れて部屋に入って来た。ここに居る中の誰よりも一番ヤバいと直観的に分かるくらい凄まじい空気を纏っている。なんだこの爺さん。

 

 

「まずは皆、忙しいだろうに良く集まってくれた」

 

「あんたの声を無視出来るようなヤツはこのアブレヒトはおろか、世界中探したって居やしないよ」

 

タンクトップにホットパンツと言う露出過多な赤毛のショートヘアの女がそう言うと、旦那も含めてそれに同意を示した。

 

「カズキ。お前もこのアブレヒトは扱いや維持に困った自由資本同盟から売りに出されてそれを買い取った者が居るのは知っているな?」

 

「それくらいは」

 

「その買い取ったのがあの男、ゲンドウ・ミツハラだ」

 

「はぁ⁈」

 

いや待て。個人でメガフロート買い取るってどんな財力してんだ⁈国レベルで金持ってんのかあの爺さん⁈開いた口が塞がらないってこう言うことなのか。

 

「さて、皆にこうして集まって貰った理由だが、私から依頼をしたいからだ」

 

その言葉に集まった傭兵連中が息を飲むのが分かった。

 

「依頼の内容はアフリカで我が物顔で暴れ回る傭兵達の排除だ。アフリカの情勢は皆も知っての通り、群雄割拠の戦国時代状態だ。その隙を突くように好き勝手に振る舞う傭兵である事すら捨てた獣をどうにかしろ、とそれぞれに現地政府を支援する自由資本同盟と皇華帝国双方からの要望だ。ご丁寧にこの依頼が成されない場合、それ相応の対応を取らせて貰うとの脅し付きだ」

 

傭兵は傭兵が片付けろ。お前らの身内だろうが、って事だろう。

 

「すまないが、ウチは降りさせて貰う」

 

「だなぁ。傭兵は命投げ捨てるものかもしれないけど、後ろから味方のはずの軍隊に撃たれたくない」

 

「ウチは自由資本同盟からの覚えも悪ければ、皇華帝国にはこの前の依頼でハメられたばかりなんでな。おかげで竜胆がスクラップの大損だ」

 

自由資本同盟はともかく皇華帝国からハメられる意味が分からないんだよなぁ。問題無く依頼された通りにやって来たのに、なぜに罠にハメられなきゃならんのか。

 

周りからお前ら正気か?と言いたげな視線が集まるが仕方ないね。確かに傭兵は命を投げ捨てるものだけど、その命の切りどころくらいは考える。

 

 

「ウチの傭兵も言ったように、いつ撃ってくるか分からないような連中を背にするような依頼は御免だ。そもそも、しばらくは襲撃依頼自体やめて護衛依頼に専念するつもりだった」

 

「あれ?でも、護衛依頼は割が安いって言ってなかったっけ?」

 

「黙っていろ。目的地はアフリカだったか?アフリカなら故意的なフレンドリーファイアも許されるだろうな。これだけお膳立てされていて、後ろから撃たれる事を考えるな、と言うのが無理な話だ」

 

旦那すげえ、あの爺さんに真正面から見られて平気ってどんな胆力してんだ………

 

「………まだ過去を引きずっているのか。まあ、その危惧は最もだ。しかし、この依頼は我がアブレヒトの価値にも関わるのだ。誰にでも任せられる訳ではない。それは分かってもらえるな?」

 

「依頼を選ぶ権利はこちらにもある。ハイリスクローリターンの可能性が高い依頼を受ける者が居るか?」

 

過去?旦那は昔何があったんだ………

 

「まあまあ、ヨルドよ。そのボウズが大事なのは分かるがそこまでにしとけや。下手に翁の機嫌でも損ねたら、そもそも仕事が出来なくなるぜ?」

 

「カークス」

 

「お前さんが自由資本同盟を憎んでるのは知ってる。あんなことされりゃあどんな愛国者だって反国家主義者に鞍替えするだろうが、それとこれとじゃ話は別だろ?」

 

説得を受けて旦那はため息を吐くと、

 

「今回だけだ」

 

短く絞り出すように一言そう言って、腕を組んで黙り込んだ。

どんだけ自由資本同盟嫌いなんだ旦那。

 

「そこのおじさまと自由資本同盟の確執はどうでも良いですけど、報酬はどれくらいなんですかぁ?まさか、自由資本同盟と皇華帝国が出し渋るなんて外面の悪いことはしませんよねぇ?」

 

黙って話を聞いていた西洋人形か何かかのようにフリルやらリボンだらけのゴシックロリータってやつ?そんな感じの高そうな服を着た色素の薄い白に近い薄い金髪を腰のあたりまで伸ばした女が笑っていない笑顔でそう言う。

 

ああ、報酬は大事だな。うん。やるならやるで報酬はきっちり貰わないと、積み重なり続けてる赤字が減らないからね!

 

「依頼主から提示されたのは1人あたり4億。そこに私からの個人的な謝礼として追加で1億を報酬として支払う」

 

「長期契約ですよねぇ?少し安くないですかぁ?」

 

5億で安いって、一級品の傭兵って動かすのにどんだけ金いるのか知りたいやら知りたくないやら、

 

「ボクは別にそれで構わないけどね。ドンパチ楽しいカーニバルならなお良しだ」

 

妙にイイ笑顔で貴族か何かみたいな小綺麗な服を着た金髪のイケメンがそう言う。トリハピ野郎かな?

 

「それが依頼であるなら、何であれ誰であれ撃つ。それだけだ」

 

トリハピ野郎(暫定)に続いて頭から爪先まで黒一色な男が抑揚のない声でそう言い着ているくたびれたロングコートの中に右手を突っ込むとなんか細長いものを取り出して口に咥えた。たぶん知らない方が身のためなアブナイおクスリかなんかだよなアレ。

 

「これだからドンパチやりたいだけのトリガーハッピーにワーカーホリックは嫌なんですよねぇ………」

 

「なんで誰も分かってくれないんだ。ミサイルと機関砲に泣き叫ぶ人の叫び声、最高のオーケストラじゃないか」

 

あ、トリハピでサイコパスだこいつ。

 

「報酬に関しては目を瞑って貰いたい。代わりに皆の機体の整備費、弾薬費ならびに諸々の費用をこちらで受け持とう」

 

「純粋に報酬で5億………それならまあ」

 

「他人の金でミサイルカーニバル!なんて素敵な響きなんだ!」

 

「翁には色々と世話になってるしアタシはロハでもいいけどね」

 

「カハハハ!これは仕事終わりに良い酒が飲めそうだな!」

 

「依頼受領。必ずこなしてみせるとも」

 

なんでもうやりきった気になってんだこいつら………一級品の傭兵って怖い。旦那はランスター改造したって言ってたが、どんな機体に仕上がってるのか俺まだ知らないから不安だらけなんだが。

 

「出立は明後日正午とする。それまでに各自準備を整えて、東部港湾区に集合だ」




アフリカってドンパチ混乱の戦国時代にするのに便利な気がするのはなんでだろう。

カズキくん、はじめての他傭兵との共同仕事。
なお、友軍のはずの片っぽ(自由資本同盟)はいつ背中から「1発なら誤射かもしれない」してくるからわからない模様(何

キャラ紹介他はどのあたりに入れた方がいいか

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