ロクでなし魔術講師と武装親衛隊   作:双剣使い

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 どうも皆さん、双剣使いです。
 ついに二作目を書き出してしまいました(忙しいのに何やってんだこいつ)。ありふれのほうでセラがヒロインになれなかったから書いたやつです。
 不定期なので、それでもいいという人は、読んでください。


プロローグ

「はぁっ……はぁっ……。クッソ、アイツら、まだ追ってきてやがる!」

 

「うるせぇぞ、グレン。黙って走り続けろ」

 

「もうっ、ヴィル君もそんなに怒っちゃダメ。グレン君も無駄口叩かないの。余計に体力消耗するよ!」

 

「ちっ……わぁったよ!」

 

「わ、悪い、白犬」

 

 

 裏路地を三人の男女が走っていた。彼らは皆この国の軍の礼服に身を包んでいた。この国を象徴する魔法を使って戦う部隊、帝国宮廷魔道師団の制服だ。

 現在の時刻はすでに深夜を回っている。周囲には夜のとばりが下りており、真っ暗だ。狭い裏路地なら、すぐに転んでしまいそうなものだが、彼らはそんなミスをしないで走り続ける。訓練を受けた彼らには造作もないことだ。ならばそんな彼らを追いかけるのは何かというと-----

 

 

「シャアアアアアアアアアアアアア—————ッ⁉」

 

 

 人だ。彼らが守る国の民だ。だが、今の彼らの表情は虚ろで、幽鬼のようだ。躊躇というものがないのか、手には鍬や包丁、鉈などの刃物を持っている。

 

 彼らは、とある麻薬の中毒患者だ。その薬は錬金術の応用で作れるのだが、それを作れるのは現在はただ一人。彼らと同じ、帝国宮廷魔道士団のメンバーだ。その同僚が薬を使って国の重鎮を大量に暗殺したのだ。しまいには、女王陛下まで手にかけようとしたのだ。ギリギリのところでそれを食い止めた帝国宮廷魔道士団は、彼を国家大罪人として暗殺司令を出す。

 そこで指名されたのが、この三人――――ヴィルヘルム=エーレンブルグ、グレン=レーダス、セラ=シルヴァースだ。三人は共に任務に掛かることが多かった。故に、首謀者は簡単に処分されると思われたのだが、そうはならなかった。

 彼は、麻薬を投与して傀儡と化した民を戦わせてきたのだ。一体一体はそれほど強くなかったとしても、数が数だ。上司に援軍を頼んだのだが、援軍が来ることは無かった。そのため、圧倒的に人数の足りない三人は撤退を始めたのだ。

 

 

「退け、邪魔だ」

 

 

 ヴィル君と呼ばれた長身の青年―――ヴィルヘルムが、正面から襲いかかってきた中毒患者を殴り飛ばす。

その薬を投与されると、中毒を引き起こし、定期的に薬を投与しなければ死に至る。かと言って、投与を繰り返しても肉体が崩壊して死ぬ。結局、患者は助からないのだ。

先がないからと言って、無害な人を殺す訳には行かない。やむを得ない場合を除き、最低限の人数を殺すにとどめているので、手加減している。

しかし、軍人である彼らが手加減をしたところで一般人には意味もないのだが、壁に叩きつけられた患者は手足が曲がっていても立ち上がる。

 

 

「チッ、相変わらずクソめんどくせぇな!」

 

「全くだ―――ぜッ!」

 

 

 ヴィルヘルムとグレンが拳や魔術を使って突破し、後ろから援護するのがセラの役割だ。

 ここまで順調に撤退をしていたが、ついにここで窮地に陥る。

 前方の十字路に大量の末期患者が集まっているのだ。しかも、後方からは、前方の倍はあろうかという人数が押し寄せてくる。足音から察するに左右からも近づいてきているようだ。

 誰かがここで時間を稼がなければならない。ヴィルヘルム達は、熟練の勘から分かってはいたが、誰も言い出すことが出来ずにここまで来てしまった。いよいよ覚悟を決める時か。そうグレンが考えた時だ。

 

 

「テメェらはここの角を左に曲がれ。そっち側は敵が少ないだろうから、残り少ない魔力でもどうにかなるだろ」

 

「「えっ!?」」

 

 

 ヴィルヘルムの言葉に驚愕を露わにするグレンとセラ。彼の発言は、自ら囮になることを宣言していたからだ。

 

 

「ダメだ、ヴィル!死んじまうだろ!」

 

「そうだよ!ヴィル君が囮になる必要なんて何処にもないじゃん!」

 

「確かに俺たち三人が全員生きて生還するのが最適解だ。けどなァ、テメェら二人とも魔力残ってねェだろ」

 

「それはまぁ……そうだけどよ……」

 

 

 その言葉を否定できなかったグレンは苦い顔になる。しかし、セラはそうはいかなかった。

 

 

「確かに、私ももう魔力はほとんど残ってないよ。でも、ヴィル君にはそんな危険なことして欲しくない!最善なのがそれだってわかってても、私はそんな方法を選びたくない!」

 

「ッ!」

 

「セラ…お前…」

 

 

 セラの言葉にヴィルヘルムとグレンは驚愕を露わにする。命の危機にあっても、誰もが笑える結末を選ぶ。そんなセラの考えが彼らには眩しかった。

 だからこそ、ヴィルヘルムはその輝きを失わせないために最善の方法を取る。

 

 

「……そうか。なら、テメェは生きてその信念を繋げていけ」

 

「え……?」

 

「あとは任せるぞ、グレン」

 

「あぁ…任された」

 

 

 グレンはヴィルヘルムの言葉に何かを決意した顔で頷くと、セラの元へ歩き始める。

 それに対して、ヴィルヘルムは二人に背を向ける。

 

 セラから見たらそれはまるで自分たちとの別れを意味しているようで。そんな彼を止めようとして一歩踏み出そうとして————

 

 

「待っ————!?うっ!」

 

「……悪い……セラ」

 

 

 一瞬で背後に回ったグレンが、セラの首筋に手刀を落とし、強制的に意識を刈り取る。

 

 グレンの顔は、セラを気絶させることに苦痛を感じているようで、歪んでいた。

 

 気を失ったセラを抱え、背中に背負うとグレンはヴィルヘルムに背を向ける。

 

 

「絶対に…生きて帰って来いよ」

 

「ハッ!最初っからそのつもりだ!」

 

 

 ヴィルヘルムの返事を聞くと、セラを背負ったグレンは走り始めた。

 

 

「さて……」

 

 

 セラを背負ったグレンが路地の先に消え、姿が見えなくなったタイミングで、追手の中毒患者が姿を見せる。

 

 

「キシャアァァァァ————!?」

 

 

 ヴィルヘルムの姿を視界に捉えた彼らは、奇声を発しながら路地裏を駆ける。およそ人には不可能な動きで狭い路地裏の壁を蹴る。

 右に左にとこちらの視界を狂わしたところで、無防備なうなじに向かって手にした鉈を振り上げ————ズシャッと音を立てて地面に落ちた。

 首から上を失っており、首の断面からは鮮血が吹き出し、辺りを真っ赤に染め上げる。

 その場には、右手の手刀を真後ろに振りぬいたヴィルヘルムがいる。その右手は鮮血に彩られ、顔には狂気的な笑みが浮かんでいる。

 

 しかし、中毒患者たちはその光景に怯えることなく、次々とヴィルヘルムに襲い掛かっていく。既に人としての理性を失っている彼らは、この程度ではひるまないのだ。グレンたちが撤退せざるを得なかった理由もこれだ。

 

 

「キシャアァァァァ————!?」

 

「うるせぇよ、黙って死ね」

 

 

 迫りくる中毒患者たちを次々と殺していく。首を跳ね、心臓を貫き、頭を掴んで地面に叩きつけていく。しかし、どれだけ殺しても無限と思える数の中毒患者が徐々にヴィルヘルムの周りを囲んでいく。

 

 しかし、それを見たヴィルヘルムはさらに笑みを深める。

 

 

「ハッ、ウジャウジャ出てきやがるなァ!いいぜェ、掛かって来いよォ!!」

 

 

 ヴィルヘルムの全身から鮮血のように真っ赤な杭が生え、ヴィルヘルムと中毒患者の集団が同時に地を蹴った。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 数日後。

 

 あれからヴィルヘルムは一度として職場に姿を現さなかった。

 

 セラとグレンの心配はつのるばかりだった。彼らが事件の顛末を知ったのは数日後。事件の後処理にあたった彼らの同僚から聞いたのだ。

 

 現場となった路地裏には、中毒患者のものと思われるおぞましい量の血と肉片が壁や地面全体に飛び散り、その中に、ヴィルヘルムのものと思われる左腕と、無造作に千切られた血のしみ込んだ帝国宮廷魔導師団の制服が落ちていた。

 故に、結論として、ヴィルヘルムは殉職。制服の血痕がヴィルヘルムの血液型と一致したことから、グレンたちを逃がした後に中毒患者らに食い殺されたと思われる。

 

 それを聞いた瞬間、セラの目から涙があふれる。当然だ、ヴィルヘルムが気づいていたかどうかは定かでないが、自身の想い人が死んだら、その喪失感はかなりのものだ。そのまま、立っていることもできず、地面に膝をつき、顔を覆って涙を流す。つい先日の誕生日に彼から貰ったペンダントを胸に搔き抱いて。

 任務で何度もペアを組んできたグレンも驚きを隠せず、呆然と突っ立っているだけだった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 見晴らしのいい丘の上に、一人の少女が立っていた。

 

 腰まで伸びる鮮やかな銀髪と、所々に赤い紋様が走る綺麗な肌が美しさを引き立てている。年齢は十代半ばかそれより少し上。しかし、彼女が見せる悲しげな表情が、まるで薄幸の未亡人のように見せている。

 

 彼女————セラが見つめているのは墓標。眠るのは、一年ほど前、彼女を追手から逃がして死んだ想い人。しかし、彼女はまだ彼が生きていることを信じている。

 彼が死んだと聞かされた時は一週間ほど泣いたが、彼の遺体が確認されていないことと、最近、彼が目の敵にしていた敵組織の構成員が死体となって見つかっているのだ。

 もしかしたら彼が生きて戦っているのかと冷静になってから考え、後を追っているが未だに見つからない。

 

 

「久しぶり、ヴィル君。ちょっと長期任務に出てたから来れなかったけど、何とか終わったよ。……あの日からもうすぐで一年だね。私はまだ続けてるけど、あの後すぐにグレン君も居なくなっちゃったんだ。ヴィル君のことで責任感じてたみたいだし。仕方ないかもね。それとね————」

 

 

 一通り言いたいことを言ったのか、膝をついて話していたセラが立ち上がる。

 

 

「……それじゃ、もう行くね。これからまた新しい任務なんだ。終わったらまた来るね」

 

 

 そう言い、踵を返す。一瞬顔を歪めるも、すぐに笑顔になって「またね」と言って丘を降りていく。

 

 決然と、美しい銀髪をそよ風に揺らしながら。

 

 そして、彼女を見送るように、墓標に置かれた花束が風に吹かれて揺れていた。

 

 

 

 

 

 




 読了ありがとうございます。
 感想などをもらえたらモチベーションが上がってありふれも投稿すると思います。二話目はいつか分からないので、気長に待ってください。
 それでは、次話でお会いしましょう!
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