映画『プロメア』を見た丸焼きどらごんさんが面白かったので、彼女にプロメア分を補給するつもりで書きました。

映画一度しか見てないから色々間違ってたらごめんなさい(笑)
あと映画見てないと意味わからない作りになっているので、わけわかんねえよ!って人はプロメア見よう(笑)

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丸焼きさんが面白かったので書きました。
プロメア面白いから観よう!
キルラキルとグレンラガンが好きな人は絶対損しないから!


燻り続けたその果てに……

火とは、何か。

 

火とは、人類が進化の結果会得した、文化の魁である。

 

だが男にとっては違う。

 

男にとって、火とは忌み嫌うべき存在。

 

自らの嫌悪する概念そのもの。

 

それらが集まり炎となった時など、もはや憎悪を向ける以外の感情を彼は知らない……。

 

 


 

 

「ぜひゅ……! ぜひゅ……!」

 

抑えても抑えても。

 

無限に沸き上がり、なおも燃え盛ろうとする衝動。

 

(左腕が……! 熱い……!!)

 

息を荒げ、左腕を抑えながらさ迷っていると、気づけば見知らぬ住宅街に辿り着いていた。

 

(ダメだ駄目だダメだ駄目だダメだ駄目だダメだ駄目だダメだ駄目だダメだ駄目だダメだ駄目だダメだ駄目だダメだ駄目だダメだ駄目だダメだ駄目だダメだ駄目だダメだ駄目だダメだ駄目だ……!!!!)

 

()()()()()()()()()()()()()

 

()()()()()()()()()()()()()()()

 

()()()()()()()()()()()()()()()

 

繰り返し繰り返し、沸き上がる情動。

 

これまでも何度もあった。

 

解放を望み、それを嫌悪し、欲望に負けんとする自分を唾棄し、無理やりに抑えてきた。

 

そうして抑制されたそれは左腕に蓄積、集中され──。

 

「もう、駄目だ……!! 抑え、られない……!!」

 

止めどない火炎が、その先にあった家を焼いていく。

 

「あ、ああ……!!」

 

男の名前はクレイ・フォーサイト。

 

後に人類をバーニッシュによる災害から救済し、やがて人類を破滅へと導かんとする男である。

 


 

クレイ・フォーサイトにとって、火とは避けて通れない存在だった。

 

最初の出会いは彼が5歳のときだった。

 

彼の父親が行った寝タバコによる不審火で、家が焼けたのだ。

 

責任を取ろうとでもしたのか、父は燃える家に取り残された母を助けに向かって、二人ともに帰ってはこなかった。

 

クレイ・フォーサイトにとって、火とは嫌悪すべき存在だった。

 

次にクレイが火と出会ったのは、彼が10歳の時だった。

 

キャンプファイヤーが飛び火し、同級生が全身の三分の一を焼かれる大火傷を負ったのだ。

 

近くにいたクレイは、自らの身に振りかかる火の粉を払い、燃える同級生を冷たく見下ろしていた。

 

次にクレイが火と出会ったのは、彼が15歳の時だった。

 

彼が昼食を取っていたカフェにて、突如バーニッシュが発生。厨房で発生したバーニッシュ災害は、不運なシェフと近場にいた客を火に飲みこんだが、幸いにもオープンテラスにいたクレイは左腕に大火傷を負うだけで済んだ。

 

クレイ・フォーサイトにとって、火とは逃れなければならない宿命だった。

 

そして今。

 

クレイは己がバーニッシュであることに気づいてより2年。ひたすらにそれを隠し生きてきた。

 

それは筆舌に尽くしがたい苦痛の日々だった。

 

絶えず繰り返される内なる衝動は、ともすれば寝る間も惜しんで燃え盛ろうとする。

 

20歳を迎えたクレイは、自身を不審に思いバーニッシュではないかと疑う祖父母から逃れるようにして家を飛び出し、野宿をして日々を過ごした。

 

外ならば。あるいは周りに人がいなければ。

 

クレイはことあるごとに体の奥底から求める()()()()という衝動に駆られながら、これまでの人生で火を避けてきたことにより生じた、理性という名の忌避感によって、その衝動に今一歩の部分で従えなかった。

 

だがそれにも限界は来る。

 

家出をしてから半月後。クレイにとって予想以上に、その限界は早くやってきた。

 

これまでの経験で、体の一部に衝動を移せば耐えることが出来ることに気づいたクレイは忠実に内からの衝動を左腕へと流してきた。

 

だがそこに限界があるとは、あるいは考えようとしなかったクレイは、最も悪いタイミングで()()を迎えようとしていた。

 


 

燃え盛る家の中から、子供がひとり歩いてきた。

 

クレイは失われた左腕を庇いながら、己のしでかしたことに呆然としつつ、泣きじゃくる子供を思わずといった風情で抱き留めた。

 

火の勢いは止まることを知らず、クレイは思わず残った右腕で子供を抱えながら、家から離れていった。

 

火の粉が体に当たるが、それによって感じるのは熱さではない。むしろ、涼風を身に受けたかのような爽快感だった。

 

「あ……」

 

泣く子供を無意識に抱き寄せたのは、その温もりを感じたいが故か。

 

やがて集まった人々が、口々に()()()()()()()()()()と囃し立てるのを見て、その歓喜の声に包まれて。

 

気が付けば、クレイはその後の自分の行くべき道が、見えた気がした。

 

 

 


 

 

火から逃れようと、火という恐怖から逃走しようと、クレイ・フォーサイトはいつからか体を鍛えることが日課となっていた。

 

だが、あの日。

 

観衆から叩きつけるように浴びせられた称賛の声に応えるには、肉体だけを鍛えるのでは足りないと気づかされた。

 

ゆえに、至極単純ながらクレイは知識を、知恵を求めた。

 

それまでも品行方正とは言わないまでも、最低限学問に身を傾けていたクレイだが、あの日バーニッシュとしての衝動と向き合う方法を身に着けて以来、何かに耐えることはクレイにとって苦ではなくなっていた。

 

眠らずとも、休まずとも、よほどの無茶をしなければバーニッシュとして新生した自身の肉体は耐えることが出来る。

 

反面内なる衝動はその勢いを増したが、それも()()()()()を得たことでクレイは上手にそれをやりくりしていった。

 

やがてクレイはその優秀さを認められ、デウス・プロメス博士という国連調査団の一員でもあったバーニッシュ研究の一人者である人物の助手となる。

 

そこで知ったバーニッシュの真実。

 

それらの源となる、プロメアの存在。

 

そして、博士の見つけたある真実を、博士と自分だけが知っているという()()

 

引き金を握る指に、力は要らなかった。

 

 


 

 

……拘留され、再び失った腕をふと見つめる。

 

彼にとって、火とは嫌悪すべき対象だった。

 

彼にとって、火とは唾棄すべき存在だった。

 

彼にとって、火とは逃れなければならない宿命だった。

 

そう、()()()

 

彼がかつて助けたと、そう思っている青年に彼は(たす)けられた。

 

クレイは彼が嫌いだった。彼、ガロ・ティモスが。

 

なぜ嫌いなのか、クレイはずっと理解していなかった。

 

今となってみれば、それも理解できる。

 

ガロは、あの男は、クレイが嫌う火そのものだったのだ。

 

本人は“火消し”を自認し、バーニッシュ災害の最前線に立つ高機動救命消防隊バーニングレスキューに所属する男であるが、彼自身の性質は火そのものである。

 

それも、周囲を照らし、熱く奮い立たせる、火が持つ陽の性質そのものだ。

 

ガロは言った。

 

「俺があんたも救ってみせる!」

 

そう言われ、これまでの所業を自認していたクレイは、思わず呆けてしまったほどだ。

 

そしてその言葉通りに、クレイは救われた。いや、とっくの昔に救われていた。

 

あの日、偶然目の前に現れたガロを抱いた時に、クレイはとっくに負けていたのだ。

 

群衆の向ける偽りの英雄に向ける視線ではなく、ただ純粋に自身を英雄だと慕ってくれるガロの眼に。

 

……死を選ぶことも、できた。

 

だがそれをガロが許さないだろうことも理解できた。だからクレイは、クレイ・フォーサイトはまだ生きている。

 

きっとこれからも、彼が求め続ける限りクレイは生き続けるだろう。

 

クレイ・フォーサイトは、ガロ・ティモスにとっての英雄なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




クレイ・フォーサイト視点という、どこに需要があるかわからない本編でした。
いやね、映画見てて彼ってどういう心情だったのかなというのを自分なりに解釈して楽しく書かせてもらいました。
もう一度言うけど、プロメア観よう!(笑)


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