鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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砂漠の一六式1

 

 

 後ろから銃弾が飛んでくるので砲塔を後ろに向けている。時折跳弾する音が聞こえてきて肝が冷えた。

 砂漠という環境、地面が砂なのでタイヤが沈みスピードが出ない。それでもじわじわと距離を開けているが、何かで躓いてしまえば一貫の終わりだ。

 

「マイク、速度上げられないか?!」

「馬鹿言うな!街道を離れたたんだから速度は出ないって!」

「ジョージ、牽制は!」

「こんな揺れじゃ当たらないわよ!」

 

 バルンバルンと揺れ、キューポラに頭をぶつけた。おでこから血が出るが、無視して敵を睨んだ。

 感染者は動きの速度の違いでどっかへ消えたが、鉄血は増えている。ダイナゲートに跨るヴェスピドの姿は、映画に出てくるアラビア系の盗賊か馬賊みたいに見えた。

 

「やべぇな・・・45、くたばってねぇよな!」

「乗り心地は最悪だけど!無事よ!」

 

 銃弾が一方的に飛んでくる。この状況はどう好意的に解釈してもピンチだ。

 キューポラを開けて身を乗り出し、相手を確かめる。車内じゃ危なくてまともに見れやしない。

 この状況を抜け出す策はないのか・・・?

 こんな追いかけっこ状態じゃ対抗策すら練れやしない。

 遅延信管の榴弾を車内から投げて落とせば進路で爆発して足並みを止められるか?無理だ。砲弾の信管は二重で安全装置がかかっていて、発射しない限りそんな戦法取るには準備に時間がかかる。現状、無理。

 機関銃をぶっ放す?ダメだ。そんなにブローニングの弾数に余裕はない。

 砲塔の後ろ、進行方向に振り返ると、遠くに小さな町が見えた。

 

「・・・あれだ」

「どうしたの、サム?」

「SPAS、薬莢受けのやつ持ち上げて俺に渡せ!ジョージ、砲塔を前に向けろ!マイク、そのまま町に入れ!」

 

 砲塔がゆっくりと前を向き、車内からSPASが使った薬莢を渡してくる。それを受け取り、更に45にバケツリレー。

 

「なるほど、そういうことね」

「足を止めるだけでいい!薬莢だってそんなにないからな!」

 

 45が相手の進路に置くように薬莢を捨てていく。時速三十キロの一六式から落ちた薬莢はほぼ同じ速度で迫る鉄血に向かって無慈悲に跳ね転がっていく。

 両手で数えるほどしか薬莢はなかったが、先頭のダイナゲートの足に命中したことでヴェスピドが落ち、がけ崩れ式に敵が止まった。

 これで時間稼ぎは成功だ。

 

「旦那、ヤバいぜ・・・」

「どうした?って、オイオイマジかよ」

 

 町の中まで逃げ切ったのはよかった。だが町の奥、帰る方向に絶望が待っていたのだ。

 

「うはー、これはヤバいね」

「・・・どうするの、サム?」

 

 45とSPASも状況を掴んだのか絶句している。

 唯一直ぐに車外の状況を調べることのできないジョージだけが首を傾げていたが、照準を覗いて倍率を下げて、口笛を吹いた。

 町の奥の砂漠、そこには鉄条網が重ね積まれ延々続いている。看板には「この先、地雷原」とだけご丁寧に書いてあった。一応の忠告なんだろうが、これを設置したのは撤退した時であるのは明らかで、誰かに向けたものではない。そもそもこっちに来るなんてことは予定されていなかったのだろう。感染者達の群れが越えないように、地雷原を設置したのだ。

 使われているであろう対人地雷は、人間の体をやすやすと吹き飛ばし、軽車両であれば破壊してしまう。正規軍に配備されていた装甲車は地面に向かって変わった形をしていて対人地雷の爆発程度ならば乗員は死なないと保証していたが、果たして一六式は大量の地雷の爆発や、もし紛れ込んでいる対車両地雷を踏みぬいた時無事で居られるだろうか。

 車内の空気が絶望的になり、皆が俺の方を見ている。

 

「一応、策はある。ただ、これは賭けになるからやりたくないんだ」

「でも、それ以外に手段はないんでしょう?」

「あぁなにより、遊撃役が45以外居ないから、負担がな」

「私は気にしない」

 

 覚悟を決めるしかない。

 

 

 

 

 町の一番中心、広場に停車した一六式の車内は静かだ。

 双眼鏡を覗けば、鉄血人形が砂煙を立てて突っ込んでくる。一度引き離してからかなり走ったので、三十分ぐらいは時間を稼げていただろうか。

 誰かの荒れた呼吸が車内に響いた。

 

「総員状況知らせ」

「こちら45、配置についたよ」

「旦那、いつでも動けるぜ」

「装填は大丈夫!」

「この距離なら外さない」

 

 頼もしい返事が返ってくる。こんな状況でも、闘志は消えていなかった。

 

「いいか、乗員は『家族』だ。俺たちは言うなりゃ運命共同体。誰かがダメになっちまえば、この状況から抜け出せない」

「俺の賭けに、お前らの命をベットしてもらった」

「帰ったら美味い酒を飲もうぜ。大宴会だ」

 

 敵が段々と大きくなってきた。キルゾーンまであと少し。

 

「弾種、瞬発、装填。目標、即席地雷原。用意」

 

 淡々と命令を下せば、それに応えるように発砲に向かって手順が進んでいく。

 汗が滴り、目をしばたたかせる。手は震え、心臓の動きは過去最大に早いし音はうるさかった。

 

「まだ、まだ、引き付けろ・・・根性を見せろ(ショーユアガッツ)撃つな(ステイ)堪えろ(ステイ)

 

 相手が町に入り、こちらを確認して狙いを定める。

 

「撃っ!」

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