鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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またこいつタイトル詐欺状態だよ・・・


疑心の視線2

「以上です。これは即応小隊の連絡先」

「ありがとうございます。いやー、指揮官始めて二年以上経ってるんですけど横のつながりが欲しかったんですよ」

「ウチの指揮官とは年齢も、入社時期も近いようですし、きっと話は合うと思いますよ」

 

 堅苦しい言葉遣いをしたのは久しぶりすぎて違和感が湧き出してきた。AAだったら「真面目な自分は気持ち悪い・・・」って自己嫌悪してるんだろうけど、気持ちもわかる。

 AEK達の指揮官は女性だが、ウチの指揮官とほとんど同じぐらいの年齢。あまり強気なイメージもないが、かつての支社防衛戦においてはしっかりと自分の意思を貫き通していたし、あの戦いの時にはサムが出ることを許してくれた。

 ・・・そして、サムを医療機関まで救急で運び、何度も見舞いに来て・・・病室の前で門前払いされていたらしい。

 本当にサムって男はヤな男だな。いろんな人に迷惑を掛けてるじゃないか。

 そう自覚すると憂鬱になった。

 

「そう言えば、タバタ指揮官は誓約したそうで」

「えぇ。416とWA2000、SAAです」

「すごいなぁ。こじれないんですか?」

 

 貴方の目の前に居るのが誓約第一候補だったんだぜ、とは言えない。指揮官の名誉のためにも、俺の精神のためにも。

 ウチの誓約組は特にいがみ合うこともない。416もWAも、お互い少し引くようになってきたので指揮官の胃も痛んでいなかった。

 ・・・仲良くなったのはいいけど、宿舎の廊下に聞こえるぐらいにやかましい四人の夜の声は抑えてほしいというのは、他の三部屋の総意。

 足が良くなくて夜中にトイレに一人で行かせるのが危ないリンヤオのトイレに付き添うたびに居心地が悪くのは嫌だ。新婚ほやほやの四人に水を差すのも悪い気がして、慣れたけど。

 

「私も形だけでも誓約するべきなのかなぁ」

 

 応接室の雰囲気が変わる。

 目の前の彼女と俺以外誰も居ないのに、視線が増えたような・・・いや、待てよ?天井に誰かいないか?

 ぐっと上目遣いにすると確かに視線を感じる。相手も俺に気が付いたようで一にらみするが、次の瞬間には指揮官の方を凝視し始めたのでなんとなく素性が分かった。

 この指揮官も大変だなぁ。

 

「義務感にかられる必要はないと思いますよ。しっかり向き合える相手を選んだ方が」

「・・・ちょっとウチの子重いんですよ。一人はいい子なんですけどショーツ丸見えだし」

 

 天井の方でたじろぐ音がする。正体見たり、って感じだな。

 盗み聞きしている人形が分かったところで、横に置いておいたベレーを天井にぶん投げて少し開いていたパネルを吹き飛ばした。

 

「盗み聞きは感心しねぇな。9A91」

「テンジョウ?天井・・・どうして?!」

「指揮官に見てもらえないなら少しでも近くに、って」

 

 ・・・重いなぁ。

 半身としてのつながりは、俺がソ連で彼女はロシア生まれ。36のものより色々と危うすぎるメイドスキンはデータベースで見た9A91に違いがなかった。

 天井からするりと降りてきた人形はナチュラルに指揮官に迫っていく。迫られる方は、天井に居たという現実が噛みしめられなくて、迫る顔と天井を交互に見て面白いぐらいに動揺していた。

 

「ちょ・・・ちょっと待って?どう、やって天井に?」

「指揮官の事を思ってすべてをささげることはいけないことでしょうか?」

 

 ・・・これは、面倒な精神状態に陥ったウチの416並みな厄介さだ。愛情ゆえの言動なのは分かっているが、受け入れるのも大変なその思いはまさにヘヴィ。

 

「気持ちは分かるよ!だけど、どうやって忍び込んで・・・」

「私を見てください」

「あの・・・待って、待って、AS Valー!AS Valー!君の友人がご乱心だー!助け、助けてー!」

 

 完全にペースが奪われた指揮官が内線を掴むなり素早くコール。エマージェンシーを伝えるのと、人形に押し倒されるのはほぼ同時だった。

 うっわ、あんなことまでするのか・・・すげぇな・・・いや、あれは先進的だわ。

 ・・・俺も自称姉と妹に似たようなことはされたけど。ここまでじゃない。他所から見てるとすっごいわ。

 語彙力を失いつつも、状況も変わりそうにないので天井の染みを数えることにした。ぽっかりと開いたパネル部分の奥に、小さなドローンのカメラのようなものが見えた気がするが俺は何も知らない。知らないったら知らない。

 

「指揮官、私を、よびまし・・・あぅ」

「AS Val、貴方は何も見ていないわ」

「FAL・・・俺はどうすればいい?」

 

 助けを求める声に応じた小さなクマのぬいぐるみを抱えた、9A91よりも肌色は多い金髪の人形が入ってくるなり顔を真っ赤にして、停止した。

 視線の先のソファではそれはもうすっごいことが起きてるからな。あれで誓約してないなんておかしい。

 心配だったのかついてきたらしいFALがAS Valをそっとフェードアウトさせて、俺の手を引いた。

 

「久しぶりねVAG-73」

「久しぶりってほどでもないけどなぁ。こっちの指揮官は年中あんな感じなのか?」

 

 食堂でおやつを出してもらえるというのでホイホイついていく途中で、聞きだしてみるとやけに疲れた顔が返ってくるので何とも言えない。

 

「察してちょうだい」




本当はこの回でタイトル回収しようと思ったのに・・・

ていうかサムはなんで某同人の竿役のセリフを知っているのか。
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