鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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疑心の視線4

「あ、ちょっとVAG!」

 

 サブリナの声を背中に聞きつつ、俺は応接室から飛び出した。ドアの前には案の定人形たちが居る。

 FALにAEK、FGに、さっきの報告書が正しければ彼女たちはOTs-14とJS 9・・・だ。

 記憶は消されていても、トラウマを抱えたままの、欠陥の烙印を押された人形達。

 彼女たちの指揮官はより大きな基地に異動することになった。基地の指揮官と付近の地区との癒着が根付くのを防ぐために、グリフィンの指揮官は交代していくと決まったのはつい最近。

 その異動には人形も着いて行くはずなんだけど、上層部からはトラウマを抱えている人形達が良い状態になっていることの証明、つまり転属して上手く行かなければ分解回収すると宣告したらしい。

 9A91だけは指揮官の副官を長い間務めていることを考慮されていて転属がない。同じ境遇の五体もそれには納得している。

 そして、その五体の転属先としてウチが選ばれた理由としてペルシカの勧めもあったそうだ。

 そこまでの話は理解した。

 

「・・・じゃあ、なんであの五体はサムに怯えていない?」

 

 疑問はそれに尽きる。

 トラウマのトリガーが男なのは想像がつくことだし、事実報告書には男性とのコミュニケーションに難ありと記述があった。

 だというのにだ。指揮官は「サムが居るから大丈夫」と言った。五体も盗み聞きしていた。

 五体とサムのつながりと言えばあの戦いしかない。

 

「どう、いうことだ?」

 

 加えて言えば、どうしてバレた?

 分からない。思考にエラーが走って、冷や汗がダラダラと零れた。

 

「知りたい?」

 

 悪の力が囁きかけてくるような、甘ったるい声が耳に届く。

 

「教えてあげようかー?」

「うん?」

 

 俺は誰と喋っている?

 恐る恐る振り返った。

 

「家族が困ってるなら助けないとね!」

「45に9・・・え?」

 

 ナチュラルに俺ということがバレているようだけど、それはひとまず置いておこう。

 いつのまにか後ろに這い寄っていたのは、一緒に戦ったことのあるUMP姉妹だった。

 

「まず、一つ忠告よ」

「あの五体は、サムの事をスーハイしてるよ!」

「崇拝・・・?」

 

 謎が深まる。俺が崇拝される覚えはない。いや、実家のカルト宗教ではあわや祀り上げられる寸前だったが、そういうのはお断りなんだ。

 

「そうは言っても大げさなものじゃないわ。単純な興味が大きくなっただけ」

「弱きものが、強きものに抗う。そんな姿を見て何も感じない人形は居ないよね!」

 

 崇拝って言ったのは、向けている思いが一方的かつ何かを期待するような、決して友情とか愛情とかそれどころか親しくなりたいとすら思っていないものだかららしい。言ってしまえば、過剰な尊敬だ。

 結局はサムのせいじゃないか。マジでろくでもないな。

 自分で自分を責めて憂鬱になりながらも、なんとか常識で押し戻す。

 

「・・・疑似感情モジュールでも不要なやつじゃないか?」

「あの子たちはバグを抱えている、理由はそれだけじゃ不満?」

「それ以外にもあるよ!サムはあの子にも優しかったよね!」

 

 要は、男という存在自体に偏見を抱えていたところに、サムという存在が強く印象付けられてしまった・・・ということらしい。

 気持ちは分かるが、それはまがい物だと言いたくなった。

 俺にとってサブリナは特別なんだから。

 そもそも、八方美人で生きるなんて無理だ。事実、サムは人形にトラウマを植え付けて分解に追い込んだことだってある。

 

「なんでバレたか知りたいでしょう?」

「知りたい。知りたいけど、過去の自分を憎しむ気持ちでいっぱいいっぱいだ」

 

 理解はできるけど、サムという人間の与えていた影響がここまであるなんて思いもしなかった。

 

「頭をかいて、ため息をつく。変わらないよね!」

「お前ら姉妹と居た時間なんて少なかったような気がするんだけど」

「その少ない時間に何回もやっていたんだから、印象づくのも仕方ないわ」

 

 ・・・確かに。俺のクセと、サムの持っていたVAG-73という拳銃の希少さ。戦術人形VAG-73が存在するとしても、ここまでの証拠が揃っていれば怪しまれるだろうし、バレても仕方なかった。

 重たくなる思考と頭痛のような錯覚に頭を抱えていると、気配が無くなる。

 

「・・・あれ、居ない」

 

 階段の踊り場に座っていたが、気づけば45も9も居ない。寂しく吹いた風でオーバーヒートしていた思考が冷やされていた。

 

 

 

 

「どうするのさ、サム」

「バレちまったのは仕方ないだろ・・・それにあっちの指揮官は言いふらさない事と、ペルシカには伝えるって事を確約してくれたし」

 

 それなら、ペルシカの方からさっさとネタ晴らししてくれたっていいのに。あの五体のバグについては関知しているはずだ。

 

「ずっと、言ってなかったんだけどね」

「さっき分かった。サブリナの私用ってのは、あれ以来親交のある五体との交流だったんだろ」

「うん。隠し通そうとしたつもりなんだけど」

「責めてないさ。いつかはバレてたし」

 

 倒した背もたれに背を預け、頭をガシガシと撫でつけた後にため息をついた。・・・やっぱりこれクセだったんだな。

 

「時々自分が嫌になるぜ・・・」

「サム?」

「んだよ」

 

 揺れる車内、ぐちゃぐちゃの感情を抑えるために、顔を抑えて深呼吸。

 

「サムはいつも自分が悪いってことにするけどさ。サムのおかげで今の・・・サブリナ・フランキが居るってことは忘れないでね」




JS 9ちゃんは24日に日本版実装!キャラがどうなるか分からないけど、使うマガジンが都合がいいとか見た目が好みとか諸々で選ばれました。


次回予告
・・・お祭りに出し物?
俺とサブリナと、ホーワM1500を使って?
・・・ごめん、なに言ってるかよく分かんないんだけど。
次回「もっと派手にね」



3-2のネタがなさ過ぎてヤバイ。最終章のネタは揃って展開も決まっているのに・・・

サムくん、やっぱり主人公なのか正規軍の頃にも似たようなことやらかしてるんで、色々と感情を向けられてるんだけど知る由も無いんですよね。
大変だぁ(すっとぼけ

それでも彼はサブリナちゃんと妹一筋(一…?)
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