鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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止められない1

「やべー・・・やべー・・・」

 

 冷や汗がたらたらと落ちる。理由は一つ、俺のいる場所だ。

 

「VAG、あと一分で目標群とかち合います!」

 

 上からウェルロッドの声、彼女は輸送ヘリ、Z-20のサイドドアから身を乗り出していた。

 もう分かっただろう。俺はヘリのホイストに吊るされてブランブランと揺れている。

 高さだけでなく速さが追加されるせいで、高所恐怖症じゃなくても漏らしそうになるレベルの視界情報に、ヘリが全力で進むせいで後ろにグイっと引っ張られるのが相まって世界で一番のアトラクション。全く楽しくない。

 

「あーもう!尻尾揺れんな!」

 

 第一報から出撃までは二十分ほど余裕があった。416が持ってきてくれた着替えと装備を身に着けている間に状況把握と簡単な作戦を教えられて、そのまま「訓練展示として発進するZ-20」と一緒に空へ飛び、五分前に吊るされた。

 ホイストの揺れによって不安定を確認した尻尾がアンチトルクを送り、その動作は一歩遅いのであらぬ方向へ力がかかる。つまり、俺は空中で一切コントロールの効かない状態だ。揺さ振られ過ぎて、体のあちこちが痛かった。

 ぐっと前方を睨む。

 後方地区からの舗装道路に被った砂埃を巻き上げて爆走してくる自律トラック、その数およそ二十。正確には輸送トラックが十台にガソリン満載のタンクローリーが十台、狙いは支社のある地区だ。

 自律トラックは要は自動運転。地区間の道路を通って決められた地点に停車する。障害物があれば避けたり停止するし、自己判断で車自体の不調なんかをデータに出力も出来るなんて、それが普通になった現代でさえもちょっとピンと来ない。

 

「見えました!作戦通りに!」

「了解っ!」

 

 先頭と交差する瞬間にヘリが回って追いかけるような姿勢に思いっきり振り回されつつ変わった。

 グリフィンが使っている自律トラックは、地区間ネットワークの中継アンテナで運用する範囲をカバーして、コントロールセンターで管理できる。暴走した時も停止命令を下すことができるはずだが、一両のトラックに搭載されていたECMが作動したせいでトラックの群れには一切の無線信号が効かないのだ。

 

「やってやる・・・けど、これきっつ・・・!」

 

 解決方法はただ一つ、トラックの天板にあるマニュアルパネルを鍵で開けて、緊急停止ボタンを押すだけ。

 一応トラックには人間が運転する部分があるので、そのついでに整備用のパネルにも緊急停止ボタンを押す機能が追加されていた。

 整備の時に天板に乗ることもあるから、という理由らしいが、一々運転席に入って停止させるなんて暇はないので助かった。

 

「ウェルロッド!」

「降ろしますよ!」

 

 だからと言って、こんな作戦正気の沙汰でもないんだけどな!

 数十キロで進んでくるトラックの数メートル上からヘリでアプローチするなんて、ヘリパイロットが大変だ。

 上下するヘリの動きを読んで、荷台の天板に着地、必死に張り付いて前まで進む。

 

「・・・手が滑る」

「急いで!」

「分かってるって!」

 

 渡されている鍵はかなり小さいから中々入らなかった。

 ウェルロッドに急かされるが、一番焦っているのは俺だ。

 最悪は祭りで人が集まっているところに、タンクローリーのガソリンがまき散らされて爆薬類も合わされば大爆発が起きる。

 そうでなくても、街の近くで爆発させれば多くの人がパニックとなって危険だ。

 

「リンヤオが時間を稼いでくれているんだ!ぜぇったいに止めてみせる!」

 

 地区のすぐ外ではタイヤをパンクさせる器具を用意したり、展示のために弾薬を搭載していない一六式に時間が許す限りの弾薬を載せている。

 そんな中で一番の問題は集まっている市民に状況が伝わってパニック状態になること。

 パニックを起こさせないためには明らかに警備の数が足りないのだ。

 妹は、それをなんとか解決するためステージでアカペラで歌って気を引くと提案した。他に方法が見つからないので、指揮官もお祭りの責任者の代行官様も許可が出してくれたので絶賛実行中。

 妹が頑張っているのに、悪い結果を出すわけにはいかない。俺がなんとかするんだ。彼女の行いを無駄にするわけにはぜぇったいにいけないのだ。サムとしても、そもそも仲間としても!

 ようやく一台が減速し始めた。合図して飛び上がり、すぐに二台目にとりかかる。

 

「ペースを上げて!」

「分かってる!」

 

 いくらか慣れたのか二代目は少し手こずらずに処理できた。それでもこのペースはギリギリだ。

 もし加速でもされてしまえば、ヘリパイロットがアプローチするのもきつくなる。

 空中に浮いている間には邪魔でしかなかった尻尾は、足を着けた瞬間に抜群の性能を見せて俺をフォローしてくれた。着地が危ないとかそういう状況でもあるが、ないよりかはマシだ。

 確実に順番を守って停止させる。トラック同士を追突させてしまえば、爆発につながるのはわかりきっていた。

 自分のやるべきことと、妹の頑張りが分かっているので自然と手の震えは起きない。

 

「あと十二両、あと二キロ!」

 

 地区が見え始めた。決められているラインで全車両止められなければパンクさせ、それでも止まらなければ最終手段として一六式がコンピューター部分を破壊する。そのさいの爆発は見ないものにする予定だ。

 だけど!リンヤオのためにも、なんとしてでも爆発させるわけにはいかない!




まぁた自律機械が暴走してるよ・・・


気付けば、作者自身の連載最大パート数を更新してました。ただ、あっちは104パートの基本3000文字。こちらは2000文字が基本なんで総文字数は及びませんね。
個人的にハーメルンで一番読まれやすいのは3000文字~程度だと思います。・・・多ければいいってわけでもなくて適度な多さの方がいいとも思います(1パート11000文字が全然読まれなかった)


ストーリーと関係ある人形が日本版に実装されてないしウィキにも情報が多くなくて大変。
サムの実家と話が繋がりそうなんだけど、そういう事情と話数的なものも含めてそのネタは回収できなさそうです。M〇2A1ちゃん・・・

いやまぁ、日本版に実装されてない要素は出てるんですけど(なんなら人形も出してるし次のパートにも出てくる
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