鉄騎兵と戦術人形 作:ケジメ次郎
手元にある缶のラベルを確かめる。俺が大好きな冷たい微糖のコーヒー、あの時に渡されたような覚えがあった。正規軍時代も好んで飲んでいたから。
「覚えているの」
「それが何か俺は分からないんだけど」
「サム伍長の好きな飲み物も、癖も性格も」
たった数週間の、それも訓練をしていただけという関係性だけでナニが分かるんだ?
ガシガシと頭を撫でつけため息をついた。
普通の相手だったら戯言と切り捨てられる。だが俺に彼女の面倒を見ることを命じた隊長は「苦労するだろう」と言って肩を叩いてきたし、先任はただ一言「狂っている」とだけ言っていた。それが何かはよく分からなかったけど、こういうことを示していたのだろうか。
「んな、あれだけの繋がりで分かったつもりになるのは」
「それだけで充分なの」
自信満々の声で断言されてもこっちはピンと来ていない。確かにお節介は焼いた、なんか約束した覚えもあるけど、それは俺が任務に召集されるときに交わした言葉だから考えがほとんど切り替わっていたせいで朧気だ。
二度目のため息とともに、少しどんよりとした曇り空を見上げる。路地のコンクリート壁の感触は面白みもない堅さ。
二人には俺が普通のつもりで接したとしても相手がどう受け取るのかはわかるわけもないと諭してきた。今までははっきりとは分かっていなかったけど、これで確信する。
やはりサムという男は無意識に人の意識を動かしていたんだ。
「なんでだ?」
「全て」
「そういう話じゃない」
全く話が進まないし、こちらのペースが乱される。
「しいて言うのなら、直感かしら。イイヒトだと思ったの」
「言っておくが、今はともかくあの頃はお人好しじゃないぞ」
サムは元々家族のためならどんな手段でもする。全てを救うヒーローになんてならない、表だけの偽善者だった。無害な人形を分解に追い込んだし、前線に居た頃は味方を見殺しのようにしてしまったこともある。
結局のところ、大切な相手を除いた他人はいくらでも見捨てられたし、優先順位は自分の事の方が上だった。
今は・・・よくわかんないけど。
サムに魅力を感じるとしたら別のアプローチだと思う。
それでも俺はそれを問い詰めた。それ以外を聞いたら、もっとヤバい展開になる気がしたから。
「えぇ。サム伍長はお人好しではないわ」
「分かってんなら!」
一歩、パンツスタイルで俺より高い百六十半ばほどの人形が迫ってくる。
「でも大切な相手ならすべてをささげられる、そうでしょう?」
「・・・それは間違ってねぇけど、俺は一度もリンヤオの事なんて!」
隊長以外に実の家族の事なんて話したことがない。俺は休暇に誰かもわからぬ相手と同じアパートで暮らしているという、同僚からは「風俗にもいかずに誰かに貢いでいる」とまで思われたほどの男だぞ?
ものすごく不本意だ。俺だって付き合いでそういう店に行ったことはあるし、貢いでいたわけじゃなくて家族と暮らすための生活日だ。仕事と家庭だけの、真面目人間でもない。
彼女が知りえる情報では、サムの本質を掴めるはずもなく同僚と同じものになるはずだ。同僚と彼女が話しているところは一度も見たことがないし、なんなら仲は良くなかったと思うから、より不可解だ。
唯一事情を知っている隊長から聞けばわかるだろうが、漏洩するわけもないだろうし、あのおっさんは部隊の中で俺の次に強かった。彼女は人形だから膂力でも戦闘力でも勝ち目はないが、力を見せられてゲロった可能性も考えられない。
自ずと恐ろしい答えが見えてくる。多くの機械をハッキングできるだけの能力を持つ電子戦に強いことを活かして、視たのではないだろうか。考えたくねー・・・
俺の思考を知ってか知らずか、あちらは意味深に言葉を紡いでくる。
「何も私もそうなりたいわけじゃない」
「じゃあナニが目的なんだ」
不敵に少しだけ吊り上がる唇に一瞬だけ目が行った。違う、大股で一歩近づかれたので視線が自然と下に降りたんだ。
こいつ、気配がほとんど感じられない。
「責任を、取ってもらうの」
「責任?」
俺やらかしてたか?
そんな覚えは全くない。たかが数週間、徒手格闘とかに付き合っていただけの関係なのに。責任を取る必要があることをしたなんて覚えていなかった。
頭を抱え、何度も考えるが全く思い出せない。
「行動は自由だが、行使するならば責任が伴う」
その言葉は、隊長の口癖だ。
他の部隊ではトップに入るような強さを持つ隊員たちの自惚れを収めるためのスローガンでもあった。
どんなに強大な力があってもそれを使うかどうかは、個人や力を持つ側の自由。しかし、使うのならばそれに応じた責任を取らなければいけない。それが出来ないのならば力は使うべきではない、と。
最後のやり取りの時のお節介で俺が引用した言葉でもある。
「間違ってたら、悪いんだけど・・・俺は君に影響を与えてしまったか?」
「えぇ。興味深い人間のサンプリングとして。だけどそれ以上に」
「それ以上に?」
あっという間もなく、人形のセンサー能力でさえ反応がきついほどの洗練された動きでコンクリートの壁とサンドされた。
両腕が頭の左右にあって、羽織っているような布がすぐそこの道路に居る人たちからの視界を完全に切る。右の脇腹はあまり痛くはないから危害はないのだと思う。それでも、少し恐怖感が芽生えた。
「約束を守ってもらいたいの」
ヤベー奴の正体はもうお判りでしょう(あとクルーガー社長が来た時に一緒に居たのも分かるでしょう)(どちらも日本版未実装)
ロジックとしては
「自己よりも優先すべきものがあり、自身を捨てることが出来る」本来ならば人間に従うことが義務の人形として親近感
「周りからは狂っているとまで思われていたのに気にも留めない」気になる
「開発中とはいえ人形の自分ともそれなりに徒手格闘で張り合えてしまう」バリ気になる
「あまつさえ、既にやっかみモノになっている自分に近づいてくる」バリバリ気になる
「何かの約束をした。ただしそれを叶えてくれなかった」(ここ)
サムは何もしてないって思っちゃうけど、何かはしてるんだよな。
やっぱり主人公だわこいつ。
ヤベーの度合いは
普通の相手
五体(無害だけど関わりづらい)
サブリナ・リンヤオ(好きだけど時々ヤバイ)
NEWチャレンジャー
パーサ(ころし愛したい)
って感じ。
感想返し
「あんすとっぱぶる!(爆
止まらない&止まれない。
そしてハーレム(w
またヤバそうなのが出て来たな~」
これをハーレムと言っていいのだろうか・・・一方的な思いが多すぎる