鉄騎兵と戦術人形 作:ケジメ次郎
幕間は明日の夕方
最終章のスタートは明後日の夕方を予定しています。
いつも応援いただいていることがここまで一日二パートとかいうハイペースを継続できた理由です。
更新頻度が下がるからある程度応援が減るのは分かっていますが、それでも話の内容に苦しむよりかは、しっかりと展開を書いていくことにしました。
宜しくお願い致します。
「あれとかどうだ?」
人波をAK-12と肩を並べて歩いている中、彼女の希望の「ご褒美」のためにあれこれ提案してみる。
街と小隊の仲間たちを救ってもらい、妹の頑張りを繋げてくれたことに対してのお礼にはどんなものでも釣り合わないと思う。
どうやって「ご褒美」になるのかを考えても、妹すらお祭りに連れて行った経験もない俺には見当もついていなかった。
「もっといいものがあるわ」
「じゃあ、あれとか!」
これで十個目ぐらいの提案だけど、AK-12は首を横に振る。
手づまりな状態で頭を抱えてくなるが、そんな様子を見せられては楽しめていたはずが気分が悪くなるだろうし、楽しめていなかったらより辛くなるに決まっているのでこらえた。
「と、とりあえずなんか買ってくるよ!ソフトクリームとか好きだよな!」
気まずくなって、逃げるようにソフトクリームの屋台に歩き出した俺はすぐに止まった。
「待って」
引き留められた左手首は少しだけ強く、握りしめられている。
「えーと・・・ごめん、どうすりゃいいのか分かんないんだ・・・」
「いいの。サム伍長が私のために頑張っている姿を見ているだけで」
完全に気を遣わせてしまっている。なんとかしようと考えていると彼女はぐっと別の方向に引っ張ってきた。
「全然・・・ご褒美になってねぇよな」
「無理しなくてもいいの。頑張っていることは分かっているわ」
「それじゃあそっちは!」
これっぽちとも満たされないじゃないか・・・
「それじゃあ、あそこに行きたい」
「・・・占い?」
進む先は胡散臭いカーテンのかかった占いの屋台。許可が出ているということは変なところではないだろうし、別の基地の出し物でこの辺りに占い屋が出てくるって事前計画書にあったような記憶はあった。
▽
苦しいことから、自身の欲しい結果が訪れる。しかし、その後に不幸が待っている。それは俺が直接痛い目を見ているわけではない。
占いの結果はそうだった。
所詮は占いだということは分かっている。それでも、あまりいい思いが出来ないのは仕方のないことだと思う。
もし、俺自身には悪い予兆がないのに不幸が訪れるとするのなら・・・止そう。たかが占いだ。そんなものに左右されては両親と変わらない。
人間の脳をデータ化した電脳を搭載する戦術人形なんていう科学技術の粋を集めた結晶なんだから、冷静に事態を対処していくしかないのだ。
重たい思考を振り払いながら、大通りとは反対方向で人気の少ない道をAK-12と肩を並べて歩く。
「それじゃあ、また」
「ここまででいいのか?」
「もうお邪魔虫よ?」
サブリナ達が待っている裏手に入る通用門の前でAK-12は振り向いてきた。すっと少しだけ糸目になったのが不安を誘うが、あちらはそれに気づいていない。
手元には占いの後に出店で買ったものを入れた紙袋が二つ。
「気を遣ってもらいっぱなしだな・・・ありがとう」
片方と比べてかなり小さい袋を渡す。
「・・・これは?」
「俺の買い物に付き合ってくれたお礼というかなんというか」
ベレーを外して髪を撫でつけ、スカーフで首を覆って顔を逸らす。プレゼントなんて妹以外に渡したことがなかった。
「ボタン・・・じゃなくてSASコンパス?」
AK-12が街灯の明かりに照らした小さな物体は直径十三ミリほどの銀色のボタンの中に小さなコンパスが仕込まれているものだ。
ずっと昔、星が見えないせいで天測できない状況になっても・・・というおまじないのようにイギリスの兵士なんかが使っていたのがこれと似たようなもの。
少しだけアンティーク調ではあるものの、素材なんかは三次大戦辺りのモノに近い。
「これからも、AK-12が上手く行くように・・・ってな」
「貴方との約束からもはぐれないように、ってことね」
「今日は・・・本当に助かった。ありがとう。本当に、ありがとう」
ようやく感謝の言葉を言えた。昼間からずっと胸に突っかかっていたものが外れると、ダムを決壊させたみたいに礼の言葉が溢れてくる。
行き場を失いそうなそれを彼女は受け止めてくれた。
試射のためのたった一発の小さな花火が打ちあがる音がする。
▽
「サム」
「はぁー。姉貴?」
「「正座」」
「・・・はい」
空には次々と大輪の花火が咲いている。ウチの指揮官経由で、こんな花火が大量に打ち上げていたヤーパン系の花火師を呼んだのは間違いじゃなかっただろう。予算の都合上、花火の間は多いし、一回もせいぜい三発ほどだが・・・それでもほとんどが空に釘付けだった。
俺は正座だけど。
「五分、花火が始まってからサムが帰ってくるまでの時間」
「ごめんなさい・・・」
「AK-12さんと別れたのは十分前だったよね?なんで?」
「うっ・・・」
まさか、泣いていたなんて言えない。本当に今日は色々なことが置きすぎて、心の奥底は常にパニック状態だった。そこに占いの結果が入ってきたわけだから一層不安になったし、手元に持っている紙袋の中身を渡すことに少しだけ戸惑ってしまったのだ。
これを渡さなかったところで、今更二人が離れることはないのは分かっている。それが辛いのだ。
俺は・・・同じことを繰り返してしまうから。
「・・・なんてのは終わり。その袋は?」
「プレゼントだけど、その、あの」
サブリナの問いかけに思わず袋を後ろに隠してしまった。
「そんなにどもってどうしたのさ。ってこれはリボン?」
すぐにリンヤオに取り上げられてしまったけど。
「お揃いのリボンかぁ」
「やっぱり姉貴は可愛い系で攻めてく方針?」
「ちゃ、ちゃかすな!」
ぐっと柔らかい体でサンドされるのには未だに慣れないけど、お互いの気持ちが分かる分には悪くない。
一際大きな破裂音の方に目をやれば、大目玉の正四尺玉が一輪の花を夜空に浮かべていた。
次回予告
なんで食堂に全員集まってんの?
IOP経由で他所の指揮官から動画が届いているからみんなで見るって・・・タイトルは?
「新型戦〇人形V〇G、ハジメテのAV撮影?」
なん・・・だこれ・・・俺の目があれなのだろうか・・・
脳が理解を拒むんだけど
やめ、やめろ!再生すんじゃねぇっ!少なくとも俺の目から離れたところでやれ!
幕間「他所のVAG-73が気になるよね?(暗黒面)」
感想返し
「妹と義姉(?)の愛が重すぎる件(今更)
これもうヤンデレタグ付けてもいいのでは」
姉妹の愛が重いというよりかは、サムに向けられる感情が重いのがスタンダードなんだよなぁ・・・
さすが主人公。
ヤンデレタグ・・・ヤンデレタグ・・・これはヤンデレなのか・・・(自問自答)
正直な話、僕はちょっとだけ愛が重いヒロインを書くのが好きなんだけど、本業の人たちはもっと丁寧に深い愛情をかけて書いているのでヤンデレタグをつけるのは憚られるんですよね。
感想とかお気に入りとかいつもながらにありがとうござい。
次回、ぶっ飛ばしてくぞ(なお明日の夕方に更新