鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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幕間「他所のVAG-73が気になるよね?(暗黒)」

「ふぁーあ・・・今日は、あぁ、休暇一日目か」

 

 被っていた毛布を畳みつつ、ベッドの奥の壁に貼り付けてあるカレンダーを見れば、今日は一週間前のお祭りの代休とでも言うべき、基地のほとんどの要員が休暇になる三日間の一日目。それまでの数日間は別の基地の休暇の分を普通に働いていたので、なんとなく調子が狂う。

 今日動いているのは、後方幕僚と食堂のおばちゃんぐらいだ。

 昨日はどうせ明日が休みなのだからとスリープモードからの起動を遅くしたが、同室のサブリナとリンヤオは既に起きているようだった。

 休日なのに元気なこって・・・

 

「あれぇ?今日って休暇じゃなかったりする?」

 

 寝起きのルーティンを済ませようと洗面所まで歩いていくが、宿舎の廊下には人っ子一人いないし、どこにも気配がない。

 俺だけが取り残されているようだ。

 静かな宿舎の廊下にただ一人、まるで自分以外の存在が居なくなってしまったかのような静寂に不安が煽られる。

 冷静を装って洗顔をしてから髪を梳かし、歯磨きを始めて寝起きから意識を切り替えていく。

 第一にあり得ること、そもそも今日は休暇などではない。次にありえること、緊急の任務が入った。

 どちらも、俺を置いていく必要はあるのか?

 

「分からん、分からんけど、一人ってこんなに寂しいんだな・・・」

 

 俺は、誰かと一緒に居ることがほとんどで、こんなに寂しい気持ちになったことがない。

 だけど、妹はあのアパートに住んでいた十数年のほとんどを俺が原因で一人で過ごしていた。そんな状況に陥るなんて考えるだけで不安になるし、続けられる自信がない。

 長い間妹を蝕んでいた気持ちのベクトルが分かって、兄であるサムに依存する気持ちを理解してしまった。今更、どうこう言うのも難しいけれど。

 出来るだけ、今から傍に居ることしか俺には出来ない。彼女が他の相手に揺れ動くまで、出来ることはそれだけしかないのだ。

 

「はぁ・・・とりあえず、飯食うか」

 

 ため息が数秒おきぐらいに出てきそうになる。セーブ率九割でも、一分に一回ため息が出るものだから、幸せはどっかに飛んでいっていた。

 ため息をつくと幸せが逃げるっていうが、幸せじゃないからため息をつくのに、更に逃げられたら泣きっ面にハチじゃないか?

 ため息は他人からすると鬱屈なものだから、周りの人の幸せな気分が逃げるという意味も含まれているかもしれない。

 

「あれ?」

 

 食堂の前まで行くと中から声が聞こえてくるし、なんなら基地にあるべき気配と喧騒が大集結したみたいな状況。

 

「姉さん」

「ラジャー」

「なんで!?」

 

 扉を開けた瞬間に待機していたであろうサブリナとリンヤオが俺の両腕をロック。そのまま、薄暗くなっている食堂の奥、基地のほとんどの者が座っている先のスクリーン幕の前にドナドナされていく。

 少し動揺して何が起きているのかを問い詰めるのが遅れている間に、416が少しだけ微笑みつつ場を取り仕切り始めた。

 

「それでは、予定通り。まずはIOPから取り寄せた極秘映像の鑑賞会を始めます」

「・・・鑑賞会?」

 

 なんか嫌な予感。IOP、映像、俺はスキン関連で何度このワードを恨んだか覚えていない。

 

「皆様の目的であろう、一本目。タイトルは「新型戦術〇形V〇GハジメテのAV撮影」。アイズオンリーです」

「はぁー?!ちょっと待て!」

 

 一瞬意識が飛んだ。現在進行形で卒倒しそうになっている。タイトルからしてアウトじゃないか。そもそも、そもそもだ、なんでそんなにアブナイ感じのタイトルの映像がIOPから送られてくるんだ!誰が送ってきたんだ!今すぐそいつをぶっ飛ばさないといけない気がする!

 何がアイズオンリーだ!見られた時点で俺は正気を保てねぇぞ!?

 

「サム、ステイ」

「そ、そ、そういうのは、俺の目のないところでやれぇ?!」

 

 問答無用でビデオは再生されていく。

 画面に映っているのは、ちょっと明るすぎるくらいの照明がある真っ白な部屋と、マットレスの上に座り込んでいる・・・タトゥーが特徴的なVAG-73の戦術人形。つまるところ、俺の量産タイプ。識別として、黒いマントを肩に掛けている。

 

「えぇっと、指揮官?」

「ダイジョウブダイジョウブ!さっ、まずは自己紹介から!」

 

 戸惑うような顔つきの・・・見た目が近いというか、ちょっと前は同じ体だった俺は、彼女の雰囲気と自分の雰囲気のずれに変な気分になってきた。

 しかも、彼女を撮っているカメラの後ろ側には彼女の指揮官と思しきチャラい男の声が入っている。それから始まるインタビューとか、撮影場所の雰囲気と言い、完全にアウトだ!

 必死にそれから目を逸らそうとしても、両脇をロックしている二人の力が緩むことはない。どういう性癖してんだ!?

 無情にもインタビューは終わり、いよいよおっぱじまる雰囲気になった。

 すっかり戦意を削がれ、無気力となった俺はそれを眺めている。

 何も考えられない。

 

「さぁ、入ってきて!」

 

 チャラい指揮官の号令で、あわれ彼女は獣たちに囲まれてしまった。

 体のあちこちをまさぐられ、顔をなめられ、もみくちゃにされる。

 

「わんちゃん!?」

 

 確かに獣だけど、それは子犬だ。十匹は余裕に越えるワンコの集団に囲まれた彼女の反応は可愛らしい。見てるのが俺じゃなかったらな!

 

「サムもイヌのコトをわんちゃんって言うのかなぁ」

「ヤバいよ姉さん、想像しただけで尊すぎて死ぬ」

 

 俺を挟んでそれ言うのやめろ?!

 

「あれれ?サムはどんなのを想像してたの?」

「ただのアニマルビデオじゃん」

 

 もう・・・もう追い打ちはやめてくれ・・・

 自分の邪推でダメージを受けていたのに、映像の中身は俺のベースと同じボディを持つ人形の微笑ましい様子だ。それを基地の多数に見られて羞恥心マッハ。

 

 

 映像が終わった後、完全に灰となっていた俺を救ってくれたのは、この映像が「IOP社製人形の宣伝映像を募ったがあまりにも酷かった没作品をレクリエーションに使う。更に折角だからVAG-73Modに見せて感情モジュールの数値を記録しよう」というIOPの思い付きからここに送られてきただけで拡散はされないということだった。

 

 まぁ、休暇三日間全部拗ねてほとんどを寝て過ごしたけどな。




ア ニ マ ル ビ デ オ。略してAV!

正直前半パート入れずに後半の部分をがっつり書けばよかった、と思ってるけど時間がなかった(フランス語の記事を訳してたり、そこから台湾から亡命したF-86の話とかやってたら更新忘れそうになってた)



予告
シャコ取り作戦において確認された、パーサによって人に危害を加える改造人形は、各地で事件を起こす。そうして・・・
最終章「殴りあい荒野」




感想返し
「更新が遅れるのは仕方がないですよ……その分密度を高めればよし
そして、次回ですが……オイ、バカ止めろ
サムがレイプ目になるぞ」
「愛が山盛りてんこ盛り(w
うらやましい、、、?のか?
そうか、VAGは、、、、(うんうん(爆
更新を全裸待機してますぜ旦那w」

レイプ目にはならなかったけど、がっつり拗ねたよね。ホントに中身おじさん?

幕間も薄味になった(上手く纏められなかった)けど、最終章は頑張る。

いつもながら、お気に入り感想ありがとうござい。
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