鉄騎兵と戦術人形 作:ケジメ次郎
「状況終了!」
無線に響く小隊長の透き通った声に、張り詰めていた空気がほんの少しだけ緩くなった。
模擬銃からマガジンを抜いて安全確認する。空砲弾を装填して、レーザーモジュールによって着弾判定を行う機材は基地が変わって増えた予算のおかげだ。
一つだけまともに使われていない倉庫を流用して、攻守に分かれての突入訓練。
トランクケースを目標に定め、倉庫に転がっている不用品を配置したりするそれはかなり本格的で突入する側だけでなく、突入される側・・・つまり俺たちの敵の思考を行うことが出来る。
己を知り敵を知れば百戦危うからず。という言葉があるのだから、自分達を磨き省みるだけではなく、相手の動きを考えることが重要だ。
そうは言っても、ようやく突入班が二つに分けられるようになったおかげで出来るようになったことなので、色々と課題もある。
レーザーモジュールで自身の半身と似たような攻撃にすることも出来るし、違う武器の動きに合わせることが出来るのはいいが、被弾を判定する機材が少し重かったりする。
それに防衛側に逃走とか作戦目標の遂行といった、二次目標がない単純な防衛戦なので、攻撃側が不利だったりもした。
普段の業務にメンバーを割いているせいで訓練の回数が少ないのも、不満だったり。
ただ、アホみたいに制圧任務が入って、訓練と任務以外、最低限生きていくのに必要な食事と睡眠とシャワーだけっていうあの部隊の頃とどっちがマシかと言われたら何も言えない。
それだけやっても、あいつらは本気の戦術人形を圧倒できないんだから。
そりゃあ、グリフィンは戦術人形中心の戦力にするよな。
「ウェルロッド、立てるか?」
格闘する前に放り投げられていたベレーとスカーフを拾い上げ、やや呆けたような表情で座り込んでいるウェルロッドに投げて手を貸す。
彼女がめきめきと頭角を現してから俺はいつも本気で相手しているし、最近は危なっかしすぎてヒヤヒヤするようになった。
なにせ、彼女の攻撃をセンサーから電脳に、それをボディに伝達する全ての処理の段階が遅くなって、まともに認識できなくなってきているのだ。
体に染み込んだ経験から来る天然の反応頼りのそれはいいものではない。やれそうなことから手あたり次第にやるようになった。
支援班の訓練で的役をかって出たり、班員対俺の複数相手も、更に訓練に取り込めそうなものはサブリナやリンヤオ達も見つけてきてくれている。
そこまでやってパッとしないのは結構心に来ているのだ。
「ッ立てます!次こそ勝ちます!」
「今日もいい感じだったからな。楽しみにしてるぜ」
心にチクリと小さな針が当たったように痛む。
暗い気持ちを誤魔化すように同じく放り投げていた識別アイテムを拾い上げた。
ウェルロッドは日に日に強くなってきている。場数を踏み、処理能力を活かしての素早い判断。複数相手こそまだまだ追い付かれていないが、タイマンだけで言えば俺と同等、いやそれ以上。
子供がすくすくと成長していくように、気づいた時には成長している。
なんだかおじさんくさい思考だけど、実際おっさんだからなぁ。
「・・・どうしたんですか?」
「うん?」
「珍しく訓練中に笑っています」
言われてみて自分の口角が少しだけ上がっていることに気づく。
あぁ、そっか。
「だから、隊長は笑ってたんだ・・・」
俺が若かったころ、隊長は残業して俺のために個人訓練をしてくれた。俺自身向上心は人一倍にあったつもりだけど、何度弱気を吐きそうになったか覚えていない。
敵に向かって突っ込むからこそ、誰よりも訓練して強くあれ。たったそれだけの励まし以外は、理論と指摘と、訓練でぼっこぼこにされる日々。何度折れそうになったか覚えていない。
任務が終わって隊長が別の隊員を労った横で、俺は甘かったところを怒鳴られる。かなり古臭いスポ根的なやり方だった。
普段は厳しくも優しい隊長がただの鬼になるのは、俺が叩いて延ばし、磨いて研げば切れるようになる刃物のようなタイプだったのを分かってのことだ。・・・それでも、お上やお目付け役に怒られていたみたいだけど。
明らかに特別視されていることに同僚たちは何も言わなかったのは、先任の突一のおかげか。・・・普段の訓練はあの人につけてもらったなぁ。
偉大な先任が怪我によって警備部署に転属することになった時、先任だけではなく同僚たちのほとんどが俺の事を次の突一に推した。そうじゃないやつらは、同じく突っ込むのが得意で普段から競っている先輩達。
隊長が出した条件は、先輩達五人との組み手を五分間耐え続けることだったっけ。死に物狂いで挑んで、ギリギリのギリギリで耐えきった。
その時、俺は隊長を見て同じようなことを呟いたことが印象的に残っている。
「隊長、というのは?」
「いや、こっちの話さ。気にすんな!よし、休憩だ休憩!」
記憶を思い出し始めるとキリがないし、昔が懐かしくなる。思考を振り払って倉庫から出ていくと後ろから慌ててついてくる音。
頭や感覚で分かっていても人間の体では反応できなかったものが、この体で出来るようになったのはなんやかんやありがたい。
「・・・そんな風にも笑うんですね」
倉庫から出れば昼間の日の明かりはかなり眩しい。目が眩んでいたせいで、ウェルロッドが呟いた言葉は聞き取れなかった。
「なんか言ったか?」
「いいえ、何も」
次回パート予告
おかえり・・・ってあれ?サブリナ、仕事はどうしたんだ?
なんだよジョージ?・・・は?
ぶっ飛ばすか
次回パート3
ようやく・・・ようやく、バトルパートかなぁ。Cb案件も関わってくる、最終章の開幕です。
感想がえーし
「やっぱり急激に力つけたらどんな組織も腐敗するんですね…
(日記を読んで)虹六にそういうモード?があった気ガス
-追記-
調べたらE.L.I.Dっぽいものしか出てきてませんでした」
ちゃうねん・・・人形になって美少女の姿になりたいねん()
グリフィンもIOPとずぶずぶだか・・・あれ?誰か来た。