鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

122 / 157
突入二班リポート3

 

「VAG、飲み物、どうぞ」

「お、ありがとな」

 

 さっきまではMP5とバディを組んでの遊撃役をしていたJS9が班員に飲み物を配っている。

 ぐるりと見回していると、一人だけ様子がおかしい。

 

「・・・グローザ、なにしてんだ?」

「見て分からない?反省点をまと、あう・・・」

 

 メモ帳に無表情で何かを書きなぐっていたのはグローザだ。周りの様子や休憩という状況を受け入れることなく、「仕事」に没頭してしまうのは見慣れた姿。

 すかさず軽いデコピンを打つ。

 

「今は休憩中!反省会はあと!分かったら水分補給ぐらいしろ!」

 

 傍に置かれたままのスポーツドリンクを突き出すとようやく受け入れてくれた。

 彼女たち・・・曰く付きだった五体の中でグローザだけが、未だその頃の影響が分かりやすく残っている。

 元々OTs-14という人形自体が、仕事熱心を拗らせたようなタイプな上に、ブラック基地が相まって仕事中毒とでも言うべき状態になっていた。

 ・・・そりゃあ、朝から晩まで書類仕事を擦り付けられて、夜は深夜に及ぶまで乱暴をされていたなんて普通は壊れてもおかしくない。簡単に壊れることがない人形の精神ってのも色々考えものだ。

 閑話休題。

 グローザは仕事と休憩の分別があいまいで、すーぐに仕事まみれになりたがる。

 仕事こそが自己の存在意義だと思いきってしまっているので、周りが引き留めないと色々危うかったり。

 終業後だったり、夜間待機後だろうが、隙あらば何かしらの仕事を作ってやり始めようとするから、同室のJS9とMP5が必死に止めているのが現状だ。

 

「ふぁーあ・・・と、リンヤオ?」

 

 コーヒー原液を作っているメーカーから出ている原液を薄めたスポーツドリンクを飲み干し、欠伸をかいているとほとんどが地下になっている平屋の基地司令部の方から我が妹が歩いてきている。

 冷静さを装っている表情だが、何か困っているようだ。

 

「あ、姉貴。ちょっと、これ見てよ」

「んだよ?」

 

 手渡された携帯端末を見る。

 

「ヤバいよ・・・ヤバいって・・・」

「謎の歌姫、リン?」

 

 なるほどなぁ。

 完全に動揺している妹と違って俺は冷静だ。

 レトロゲーしかやらないリンヤオは、ネット社会って言うのに疎い。現代のこの辺りのネットワーク事情が色々とアレなものだから知らなくても仕方ないんだろうけど・・・

 

「グリフィンの地区間ネットワークでものすごく拡散されてるんだよ・・・」

 

 グリフィンの支配地域にも普通のネットワークはあるが、地区や企業なんかが優先でかなり高い。それの代替が、多くの地区を支えているグリフィンが企業に委託して敷いたネットワーク網。

 言ってしまえば、共産主義国家風のネットワークというやつだ。普通のネットワーク網と違って、規制があったりする。

 直接管理しているのはグリフィンじゃないし、独占している委託先が九割近く契約料を持って行っているから、どちらも不利益にならない程度に譲歩しているのが現状。

 グリフィンは統制されたネットワーク網を敷ける、企業はグリフィンの勢力圏にある地区でぼろ儲けできる。

 時代が時代なら独占禁止法に触るだろう。

 

「グリフィンの制式人形でもないし、それだけの情報拡散を規制できないんだろうよ」

 

 簡便な掲示板形式のサイトを見れば、あのステージの写真が一杯上がっているし、なによりリンヤオ・・・リンが一人歌っているところに大きな反応が来ている。暇人が俺たちの正体を探ろうとしているが、かろうじて特定されかねない書きこみは消えていた。

 特定されそうになっているのはリナとナナ、つまりグリフィンの人形としての姿が確認されている方だけだ。

 

「そ、そうだけど!こんな事ってあるの?!」

 

 妹はかなり狼狽えている。それもそうだ、いきなり歌姫だなんて言われたら誰だって戸惑う。それが外見は別の体を使っていたとしても、「リン」が評価されているのは歌声だった。

 

「取り合えず指揮官に相談して、基地と出入りする業者から情報が出ないようにしよう」

「姉貴が頼りに見える」

「あぁん?おらぁ、いつも頼りになるだろうが」

 

 呆けた表情のリンヤオにペしりとデコに人差し指を当てる。

 

「姉貴・・・ネットワーク社会って怖いね」

「まぁ、もう廃れてきてるけどな」

 

 アパート暮らしの時にはネット回線を引かずにいたし、連絡が出来る程度の携帯端末だけ契約していたから、リンヤオはアナログなタイプだったりする。

 そんな彼女にとっては未知のものだっただろう。今はプラスの書き込みばかりだが、ちらほらと、ステージに出てきた三人を性的に見るようなものも散見される。

 俺はまだしも、二人が苦しむのはぜぇったいに嫌だ。二人の目につかないところに置き、身の安全も守るのは俺の仕事だが、事態を落ち着かせるのは別の部署の仕事。ひとまず指揮官に相談することに決めた。多分あっちも事態は把握しているだろうし。

 

「って、一六式が帰ってきた?」

「うん、クライアントと契約に関するトラブルがあったって」

「訓練の再開までは・・・まだある。MP5!ちょっと行ってくるわ!」

「了解です!」

 

 少しだけ言いよどむリンヤオの様子を訝しみつつ、ヘリバンカーと同じ区画にある車両バンカーに戻っていく一六式の方に駆け出した。

 

「サブリナ、おかえり!」

「ごめん、ちょっと、後で」

「・・・え?」




今日はいつもより書くのに手こずりました。

ほとんどTwitter眺めてるのが悪い。


虹六買ったり、WTの瀋陽F-5(J-5)の予約したりしてたけど元気です(外の暑さヤバイ)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。