鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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7.8パートに行きそうかしら


突入二班リポート5

 

 ダメだ・・・普段は切り替えられているハズなのに、スイッチが少しだけ緩んできっかりと切り替わらない。

 早く、早く自分の気持ちを伝えて、任務に出発しないといけないのに。皆に用意してもらった五分の時間は半分無くなっている。

 理由は聞いた。原因を許せない気持ちでいっぱいだが、それはそれに分けて考えられる。

 心が揺らいでいる原因は、あんな扱いをされたサブリナにどうやって話しかけるかということだ。

 珍しく誰も非番でないから、宿舎に他の気配はない。静寂に包まれた廊下は節電のために消灯されている。日陰の明るさが今だけは陰鬱なものに感じられて、心臓がきゅっと縮む錯覚を覚えた。

 この数分、いや数秒間、一瞬すらも話しかけようかと何度も何度も逡巡している。

 塞ぎ込み。引きこもってしまったサブリナの気持ちも分かってしまっていた。

 あれだけ俺とリンヤオに好き好き光線を放っている彼女が、あんなことを、知りもしないクソ野郎にやられたのだ。

 俺が何かを言えば、もっと傷つけてしまうかもしれない。

 答えが分からないし、計算式も公式も何もかも分からない。他の手段も思いつかない。そもそも、問題文すら正確に読み解けていないかもしれない!

 

「あー、もう・・・」

 

 頭をガシガシと撫でつけた。

 自分の性格が嫌になる!

 ずっと一緒に居たい。本当に心の底から、大好きで、彼女のために自分を犠牲にすることだって戸惑うことはなかった。それほどまでの相手に、何も言えないのだ。

 自分に嫌悪感が沸き立ち、視界がおぼつかなくなってくる。涙は、もっと苦しんでいるサブリナの事を考えれば収まった。

 

「・・・来ないで!」

 

 閉じ切られた扉の奥から、拒絶するような叫びが板越しに射抜いてくる。

 怯えきり、ヒステリーの域に突っ込んでいるそれが、元気一杯がチャーミングポイントなサブリナの悲痛さがひしひしと伝えてきた。

 時間を見る。あと一分で済ませないと、間に合わないだろう。なにより、俺が切り替えられなければ、任務から外すというのが約束だ。ROならば今から作戦を伝えられたとしてもなんとかできるだろうし、なんなら小隊長の416が出れば文字通り「完璧」に作戦を遂行する。

 俺は期待されている。信頼されている。それを崩すのは、ぜぇったいに嫌だ。

 

「っ。・・・っ」

 

 声を出そうとする。中から聞こえた嗚咽に声は消えた。

 ダメだ。どうやって言えばいいのかも分からない。

 サブリナにとってあんなことをされたのは、人間のサムとの思い出と恋幕の全てを邪魔されるものだし、それだけで体ごと引き裂かれそうなぐらいに心を痛めている。

 それを、サムのまがい物と言われても仕方がない俺が励ましても意味がないのだ。こんな状況では、サムにだって励ますことが出来ない。

 そんなことをしやがった野郎は許せない。許せないが、俺は裁く立場にないのだから。

 

「来ないで・・・来ないで・・・」

 

 近くの宿舎の掲示板に重ねられていた古い伝達事項に一言だけ書きなぐる。

 待ってろ。

 そっと、扉の下の隙間にねじ込んだ。

 

 

 

 

「すまん、遅れた」

「いえ、ギリギリセーフです。行けるわね?」

 

 スカーフとベレーの位置を416に整えられる。最後には搔き乱してしまった髪を撫でつけられた。

 

「416を不安にさせるような状態じゃないさ。MCVカンパニーに出されている報酬分は、しっかりと働くつもりだ」

 

 俺はサブリナの事を信じている。信じているからこそ、ただ待っていて欲しいだけなんだ。

 

「そう。これを持っておきなさい」

「グレネードランチャー?」

 

 手渡されたのはHK416のオプションとして416が要望して購入したM320だ。擲弾も数発渡される。

 

「火力不足で悩んでいたでしょ」

「恩に着る。ありがとう、全員無事に戻ってこれるようにする」

 

 M320と擲弾が入っていたバッグをバッテリーの上、バックパックが接続されていないために開いている空間に背負う。班員と支援班から貸し出されたFALにFGの合計六名の顔を確かめ、Z-20ヘリに向けて踏み出した。

 のを、指揮官にがっつりと止められる。顔はしかめ面だが壊滅的に似合っていなかった。

 

「VAG、いいかい。その全員には君も含めるんだ」

「分かってるさ。努力はする」

 

 手首につけている髪と同じ色のリボンを撫でつつ、はっきりと伝える。

 

「努力じゃ、ダメだ」

「確約しろと?」

「もちろん」

 

 本当にしかめ面が似合わない。性格が優しすぎるせいか、温厚な表情以外が珍しいし、凄みもない。それを笑うわけじゃないが、自分で分かっていることを嘘でかき消すのは無理だ。

 

「出来ない。やる時はやるさ・・・無責任だけど」

 

 長編コミックの最終決戦前でもないのに、雰囲気はそんなレベル。

 そりゃあ、俺はバックアップを作る難易度とかかる時間がすごすぎるから毎回がクライマックスなんだけど。一応、サムのデータは残っているので再構成さえすれば復活するにはするはずだ。

 

「ま、なるようになるのさ」

 

 手をひらひらと振る。

 別にフラグを立てたわけじゃない。いつもピンチを知らせてくれる脇腹の痛みもない。

 それなのに、心の奥底には僅かに不安の波紋が立った。




感想返し
「VAGが落ち込む。
そして、何やら波乱の予感。」

正直この話書いてて辛かった。
作者「どうじで・・・どうじで・・・」って感じ。
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