鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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無力感1

 

 息を飲み、しっかりと前を睨む。

 俺は逃げない。

 背を向ければ、何もできずに死ぬから。

 例え勝ち目のない戦いであってもなんとかするのが俺だ。

 

「だけどここまで無力な戦いなんて初めてだ、ーッ!」

 

 叫ぶたびにすぐそばを弾が通る。すぐに当ててこないのはおちょくりでもしているのだろうか。猛烈にイラつく。

 登っていたアパート屋上の構造物、鉄筋コンクリートの分厚い壁に次々と穴が開いていく。ロケットポッドを撃たれていないのが救いだが、敵がしびれを切らせば俺は一瞬で吹っ飛ばされる。

 

「残弾はゼロ・・・当たっても効かねぇんだよ!」

 

 完全に天井を突き抜けたいら立ちを全力で叫んだ。敵には聞こえていないだろうけど、抵抗の意思が残っているとでも思われたのか、攻撃は少し強くなる。

 無線機は壊れた。コンクリートの破片がぶつかった時に骨の代わりにパワーアシストが折れたし、機械の尻尾は途中でひん曲がってる。

 馬鹿みたいにうるさい音で耳が痛いし、目にはゴミが入ってるし、精神は異常をきたしそうなほどにストレスに追い込まれた。服はボロボロだし、髪は煤けているし、両脚ともボロボロだし、左腕は折れた。頭からも人工血液やらなんやらが噴き出し、着ている服は穴が開いている以外でも使い物にならないような状態だ。

 

「M320は・・・壊れた。VAG-73もマガジンがねぇし、こいつの耐用性じゃこれ以上撃てねぇ!」

 

 40ミリのグレネードはあと一発持ってたけどどっかに転がっていった。VAG-73はマガジン二つを使い切ったが、当たっても目くらましにすらなっていない。

 なにより、開発時の最大のネック、本体の強度が不安になってきた。今までこんなに撃ったことがないのだ。

 半身のマガジンは最大四十八発撃てて、前後三発ほどの余裕をもって使っている。それでも二つもマガジンがあれば八十は撃てた。今までの最大記録はせいぜい一マガジンを一度撃ちきっただけ。

 

「さっすがに、ヘリはぶん殴っても落ちねぇよな・・・」

 

 ELIDにも、パーサにだって届いた拳でも金属と防弾ガラスの塊に効かないことは分かっている。カーボンやプラスチックまでも頑丈な時代。古い技術の集大成とも言うべき相手に効くわけがないのはわかりきっている。

 ヘリのキャノピーに張り付けば動きを緩くすることは出来るだろうが、今の脚の状態じゃあ飛びつけないし、この損傷では張り付くことだってキツイ。

 力も抜けてきたし、色々どうでもよくなってもきそうだ。

 ただ、無力感ばかりに苛まれる。

 俺がもっと注意していれば、俺がクソデブを拘束していれば、先にハインドを見つけていれば、俺がCb人形を抑える一手を思いついていれば、考え直したいことはいくらでも思いつく。作戦に向けての時間が少なかったのは事実だ。しかし、それでも皆が努力して最高のパファーマンスを出しているのも事実だ。

 こんなことなら、押収品のRPGあたりでも引っ掴んでこりゃよかった。

 

「こんなのが、最後かよ」やけに高い空を見上げ、呟く。

 

 本当に自分が嫌になる。

 これが最後にならないかもしれないのが余計に辛い。

 諦めたくはないなんて分かってる。分かってるけど、ぶっ飛ばせばなんとかなるようなことではなかった。

 

「あとは・・・こいつだけか」

 

 手に収まっていたバヨネットを見る。ナイフはどっか行った。本当にこいつが最後の武器だ。

 損傷している右手には、収まっているだけで握ることすらも叶わない。

 

「リボンもほつれてるし、いいことが無さ過ぎる!」

 

 左手首のリボンはボロボロだし、なんなら左腕が千切れる方が早いと思う。

 

「期待を裏切って・・・いっつもそうだ俺は!」

 

 何度だって繰り返す。関わってきた人との約束を破ったことが目立つ。

 サイテーなやつだって言う自覚は子供の頃から芽生えていたし、こんな俺と仲良くしてくれる人たちと話すたび、「俺はいつ彼らの信頼を破るのだろうか」という疑問に苛まれていた。

 それでも俺は、小隊のメンバーであり、マイクとジョージの悪友で、MCVカンパニーの一員。リンヤオの兄貴であり姉貴で、サブリナの事が好きな一人なんだ。

 正規軍時代だって、いつだって誰かが近くにいた。

 それが当たり前だったから、無線が壊れるギリギリに住民の保護だけに集中しろと、俺の事を見捨てろと言った時に思わず自分保身のような気持ちが芽生えてしまった。

 

「ホントにいいやつらにばっか目をかけられて、サムは仲間たちに恵まれることだけはセカイイチだぜ」

 

 五人とも、文句さえ言わずに「命令」に従ってくれた。

 ボロボロと溢れてくる涙は止まらない。なんで泣いてんのか区分けがつかないぐらいに、泣く理由がある。

 俺は命令したことにほんの少しだけ後悔すると同時に、皆が優先すべきことを見失わずに見捨ててくれたことに感謝しきっていた。

 

「いっそ、なんて思ったけど・・・」

 

 俺がこの体になった時にペルシカから忠告された言葉を思い出す。

 もし、俺が完全なロスト状態になれば。夢を見るほどに膨大な記憶データを更新することは不可能で、バックアップは俺を作った時の人間のサムのデータになる。

 小隊皆でバカやったことも。一緒に戦ってきたことも。あのスイーツが美味しかったなんてことも。リンヤオが頑張ったことだって。二人と見た、大きな花火の事さえも失うなんて。

 

「ぜぇったいに!イヤだ!」

 

 そう叫ぶのと同時に、耳をつんざくような音が響いた。




予定ではもっと早く展開が進むつもりだった


感想返し
「IOPは変態の集まりか?!
それにしても戦闘ヘリとか、12.7mmが欲しくなる奴だ。」

IOPの技術職はいつだって変態。それが世の摂理(偏見)
実際、前話でVAG達がぼやくシーンで「キャリバー50があれば!」「それでも足りない!」というセリフが最初の方の案にありました。

「戦闘ヘリだと12.7mmでもきつい
誰かNTW-20呼んできてー
アレをローターに当てる以外でドルフロ火力じゃ墜ちないから最強なんだよなぁ
後はダメ元でワイヤー引っ掻ける位しかない」

VAGが火力バフタイプだったらあり得た(ない)
ダネルの砲弾は(20㎜のモノは)元々対空砲弾なのでまさに適任だよね。
とは言え、この世界にはやつがいます(次回)

感想とか諸々ありがとうござい


ところで、QLU-11とそれの40ミリタイプ、LG5はどちらともドルフロに実装されてませんよね・・・?大丈夫だよね?

すぐの続きより、エピローグ部分と幕間のイメージばかりが思いつくのが最近の悩みです。
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