鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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無力感2

 

 

 余りにもご都合主義な展開に思わず笑ってしまう。

 ハインドのローター部分は根元から壊され、道路に叩きつけられていた。更にはウチのZ-20と別基地のヘリも居る。どうやら増援、らしい。

 ここまで派手にやれば拘束する理由はいくらでも作れるだろう。最後に撃たれたロケット弾は一発が壁を貫通して炸裂した以外は撃たれていなかった。数発はローターが壊れたせいで空に放物線を描いていたが、町に被害はなかったと思う。

 

「やっぱ、助けに来たのはあいつらだよなぁ」

 

 的確にウィークポイントだけをぶっ壊す可能性としてあり得るのは、ウチの基地のMD-500にガンポッドを積むか・・・対空機関砲を搭載したまま特に換装していない一六式だけだ。

 近くには輸送ヘリ以外見つからないのだから、この状況からしたらそれ以外思いつかない。

 場合に合わせてその時の最速までかっ飛ばせるマイクならヘリよりずっと先に出れば間に合うだろうし、対空用のFCSがなくてもあれだけ釘付けになっていればジョージなら命中できる。だからサブリナも居るんじゃないかって、思った。

 でも・・・顔は合わせられないんじゃないかという直感もあった。

 

「空って、あんな高いっけ」

 

 状況を整理し終え、掠れている上に乾ききった笑いはあっという間もなく消えていく。まるで最初から発していないんじゃないかってレベルで。

 ボロボロのちぎれそうな布切れ状態の俺は、最後っ屁のせいで起き上がることも出来ずに屋上のコンクリートに寝転がっていた。

 右腕は、動かない。多分ちぎれかけている。左腕も同様。右脚は腿の付け根からぐっちゃぐちゃだ。ロケット弾の威力が恐ろしい。比較的綺麗な状態の左脚さえも完全な付け替えが必要じゃないかというレベル。

 なんの皮肉か、一番被弾面積の大きなボディと顔面だけはかなり無事だった。右の脇腹からはなんか飛び出そうな勢いがあるし、ピンチでもないのに激痛が走っているが。それでも、ギリギリ生き残れたと言ってもいいんじゃないか。

 Z-20によく似たヘリから黒い影が降りてくる。ダウンウォッシュが傷口を刺しているように感じるし、瓦礫からゴミが舞うのでくしゃみが出たが、影はそれを見て少し安心したようにも見えた。

 

「くたばってる?」

「どっちの方がよかったか?」

 

 くぁーっと欠伸をする俺は、輸送ヘリから降りてきた連中によって担架に乗せられた。周りに転がってた部品やらなんやらも回収されていく。

 ボケーっとした様子に、お迎えであるWAは深々とため息をつきやがった。これでも結構メンタルに来てるんだが?

 

「べっつに、アンタは生き返るでしょ」

「どっからくるんだその自信・・・」

 

 機内に入っても、四肢が全て使えない状態なので地上の方は見ることが出来ない。

 ただ分かったことは、貸してもらった無線機で五人が無事なことが分かったこと。残りの制圧作戦に416が他の二班から選抜された人形と五人を率いるなんて話されてしまえば、安堵のあまりに意識がドンドン重くなっていく。

 

「寝てなさい」

「へーへー」

 

 

 

 

 湯船の中から右手を出す。結構な時間動かしてみる。

 

「・・・慣れるのメンドーだぜ」

 

 全くしっくりこない。両脚も、反対の腕も。全部感覚が違う。自分の手足という感覚よりもふわふわとしていて、動きが奇妙になっているんじゃないと思った。

 人形の手足や各部品も、動かしているたびに癖がついてきて慣れてくるってのは聞いたことがある。一番影響が出るのが手足なだけで、俺は特に気にならないが、こまごまとしたところで自己診断プログラムでは検出できない「正常な異常」を感じるそうだ。

 

「はーぁ」

 

 ため息一つ。

 今日は男子風呂の終わった後に特別に入れてもらっているから他に誰も居ない。

 入っても四、五人ほどの湯船がやけに広く感じるし、時間間隔も壊れてしまいそうだ。

 

「・・・ぶくぶくぶく」

 

 サブリナは他の皆とはそれなりに会話しているようだ。特に元々親交のあった五人とかから話は聞いている。人形宿舎とは別の女性宿舎の個室で寝泊まりしていて、食事は非番の人形かマイクと36だったり、ジョージが持って行っているそうだ。

 

「あの時来てくれたのはサブリナなんだろうか」

 

 ピンチから颯爽と助けてくれた、鉄の騎士。兜の中の顔が分からない。一目ぼれした町娘が騎士に夢を見ているかのようなキモチだ。

 きっと、運命の人だ、なんて。

 それを自分にとって大切な人だろう、と思い込んでいるだけ。

 あの時に出ていないとしても不思議な事じゃない。

 サブリナは俺を思いっきり避けるし、部屋に塞ぎこんでいるから聞くに聞けないし、きっと他の皆も教えてくれないだろう。サブリナはそれを望んでいないだろうから。

 

「・・・ぶくぶくぶく」

 

 湯の中の腕を見ると綺麗な肌色をしやがっていて、引きちぎられた腕が戻っているのが余計にしっくりこない。

 

「待ってろ、って約束も守れんのかな」

 

 頭がぼんやりしてきて、体が弛緩していく。

 

「のぼせちまった・・・」




お気に入りとか諸々ありがとうござい。

話としては二話分、パート数は未定だけどそこまで多くならない・・・そんな感じで終わりが見えてきたけど、余裕で10月に入りそうです。

幕間用の話がいくつか思いついているんですが、それも書いた方がいいかしら。
今んところ
・水着回
・お味噌汁
という感じ。お味噌汁回はシーズンスリー序盤から裏で進行していた話で、水着回は連載終了後の時間軸(エピローグの後であり、シーズンフォーの時間帯。とりあえず今考えている状態のエピローグは色々と続きを匂わせるような話になる予定)
サムとリンヤオちゃんの因縁はまだ残っているのです。
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