鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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第一章「乗員は家族」編最終パートになります。


資産八割、一括払い2

 

「買うってことは売り物ってことか・・・?」

「当然だ。あくまでIOPが販売したという形を取る」

 

 そうして提示された金額は気を失ってしまいそうになる大きさだ。今回の報酬の二倍以上、会社が払ってしまえば貯金が消え去るのは間違いない。というか倒産の危機に陥るだろう。MCVカンパニーが経営くそくらえな零細個人企業であるのは置いといても、普通に高いと感じる。

 

「高いグレードの人形ってこんな値段するのか」

「これでも、割引はした。そもそもここまでのグレードの人形は裕福層以外持っていないのが普通だ」

 

 それはそうだ。

 俺なんて正規軍に入るまで人らしい形の自律人形を見たことがなかった。それほどまでにこのクラスの人形は高い。

 そりゃ、あのお偉いさんも情が沸くわな・・・使うモノというよりは一緒に暮らすモノといった具合だ。普段の応答も人間と変わらないとくれば、ヒトと同じ扱いをしていたって不思議ではない。

 一度助け、戦場を乗り越えたSPASにだって情が沸いてしまっているのだから、一緒に暮らしてしまえばすぐに陥落してしまう気がする。

 

「検討させてくれ。ウチの経営状態は知ってるだろ?持ち帰って・・・」

「ダメだ。この話し合いが終わるまでに決めろ」

 

 ヘリアントスは口調を強めて、価格が書かれた契約書類を横に置いた。

 

「他にも話すことがあるのか」

「次の依頼だ。これも関連しているから、早く回答が欲しい」

 

 そう言って出されたのは薄いレポートと写真。写真には不鮮明だったが、奴が写っていた。俺たちが撮ったものではない。恐らく45か、その仲間が撮ったやつ。

 

「その鉄血は今回初めて確認された、「解析器(パーサ)」の名を冠するハイエンド人形だ。名前の通り、システムの解析を目的にしており、捕獲したSPAS12のコアの解析を行っていると思われる」

「・・・こいつは二回頭をぶち抜いたけどな」

「肝心のコアが見つかっていない。だから、依頼だ」

 

 人形はダミーを動かせるので、俺が戦ったパーサはダミーだったかもしれない。そうなるとオリジナルを倒さなければコアを取り返せないわけで、一体どれだけ居るのかも分からない偽物を一つ一つ破壊するのは骨が折れそうだ。

 

「IOPとグリフィンは、このパーサからコアとその解析データを取り返す。もちろん、MCVカンパニーにも依頼する。他の下請けや末端指揮官には情報を見せられないが、貴社には今回の発端や状況などが漏れているからな」

「使い捨ての下請けを大量に出すみたいなことが出来ない、と」

「ここまで話したのは、契約を結ぶための情報でしかない。詳細な情報は契約時にだ」

 

 大きく息を吐いて、目頭を揉む。

 いつもの依頼以上に前情報が多い。そもそも俺たちが断るつもりがないと思っているのか、それとも何か企んでいるのか。

 

「断ったら吸収するとか・・・」

「それは当然考えている。我々はグリフィンである前に、一企業だ」

 

 選択肢がないじゃないか。元より断らせるつもりはなかったんだ。情報を聞く前に、ワンクッションを置くべきだった。軽率に過酷な依頼を受けることになってしまった。ボスや仲間たちに白い目で見られることが確定した気がする。

 

「ボスに話してみる。一応、前向きな答えを持ち帰ってくるつもりだ」

「我々は良きビジネスパートナーだからな」

 

 白々しい・・・雇い主(おおて)メイド(したうけ)じゃないか。どうやったって逆らえなくて、確かに給料(ほうしゅう)は高いが仕事は多いし辛い。

 

「以上だ。依頼に関しては今週の内に返答を。そして前回の契約、秘密保持義務を順守してもらいたい。特に人形に関してはな」

「45を?」

 

 聞き返せば、「それ以上言えば・・・」みたいな顔で睨まれた。

 

「さて、どうする?」

「SPASを買うかどうか、か」

 

 気が滅入ってしまう。ただでさえ不利なビジネスを掴まされたのに、その上設備投資も要求する。時代が時代であれば法律に訴えられてしまいそうだが、この時代にすがるものはない。

 会社の金は使えない。だけど即決を求められる以上、アレを切り崩すしかないのか。

 

「決められないのなら、後押ししてやろう。入ってこい」

 

 応接室のスライドドアが開き、暗い廊下に向かって差し込む室内の明かりで姿がくっきりと浮かぶ。

 

「久しぶり、サム」

「SPAS・・・」

 

 SPASは俯き、視線は合わない。

 解体の可能性が大きいんだから、そういう表情になるのも当然だ。

 

「その、無理に買って欲しいとは言わない・・・私は高いから」

「買う」

「え?!」

 

 SPASがビクンと跳ねてこちらを見る。表情は面白いぐらいにびっくりしていた。

 

「装填手が居なかったんだ。確かに支払いはキツイが、それでも一緒に戦った家族を見捨てるのは納得いかない」

「どうやって支払うんだ?」

 

 水を差すようにヘリアントスが聞いてくる。

 

「俺のポケットマネーだよ。流石に会社の金横領するわけにもいかないし、幸い貯金はある」

 

 八割なくなるけどな。

 

「一括でいいんだよな」

 

 今の時代にローンなんて聞かないけど。

 というか一括ですら八割も消えるのに、ローンにしたら日々の生活が苦しくなる。

 貯金が八割消えて困窮する未来は将来の俺がどうにかしてくれるだろう。

 

 

 そうして俺は、全財産の八割で元「SPAS12」と契約した。

 もう一度言うが、俺の財産の八割は吹っ飛んだのだ。

 

 

 

 

「サム・・・いいや、ボス。買ってくれてありがとう。最高のショーを見せてあげるよ」

「期待してるぜ、えぇっと・・・名前ってあるか?」

「名前?」

「SPASじゃない名前」

 

 帰り道、燃え尽きたようなテンションで夕陽をバックにSPASと歩く。

 茜色の空、茜色の太陽を見ると目が潤んだ。

 それでも気落ちしなかったのは、悪い契約じゃなかったからだろうか。

 

「サブリナ。サブリナ・フランキ。よろしくね、ボス!」

 

 数歩前に進んでからこちらに振り返るサブリナの表情を見れば自然と笑みがこぼれた。

 




第一章「乗員は家族」終わりました。

第二章「仲間の苦悩」は乗員それぞれにフォーカスを当て、人権派やE.L.I.D関連とか人形云々とかの3エピソードほどを入れたいと思ってます。

プロローグは第一章の後ですね。三章までがシーズンワンの予定です。ただ、三章があまり沢山にはならない予定なので結構早く終わるかな?

次回の更新は幕間になります。


次回予告
正式に一六式の装填手となったサブリナ。しかし、ファッションリーダージョージの一言で騒動が巻き起こる。
幕間「サブリナァ!スパッツ買うぞ!!!」

タイトルが)キマッテンナぁオイ・・・
マジでタイトル通りなので。あとタグ編集とあらすじを最新のものに変えるのでよろしくお願いします

いつもながらお気に入りとか色々ありがとうございます!
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