鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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今回難産かつ、詰め込み過ぎました。申し訳ねぇ・・・!


無力感4

 

「新装備、ねぇ」

 

 バーッとカタログに目を通した俺はアイスコーヒーを飲んでから天井に息をついた。

 なんだか邪推してしまう。

 前回のハインドなんて例外そのものだが、あれが切欠だというお題目なのは分かる。それでもその先に何かあるんじゃないか、と思ってしまった。

 娯楽室にリンヤオが入ってきて俺の姿を確かめるなり目を輝かせる。そう言えば今日はお互いに休みの日だ。

 

「あねきー続き見ようぜー」

「あぁ、ちょっと待ってろ、お菓子持ってくる」

 

 別に今すぐ必要というわけじゃない。

 ただ人形を追加するのが難しい上、重機関銃や対物ライフルがあれば爆発物処理なんかが部隊内で完結できるからだったり、特殊な状況において火力が欲しい、といった備えあれば憂いなしな考えが予算の余裕によって武器の購入という話になっているだけだ。

 だから、なにかがあるわけもないはず。と自分に言い聞かせる。

 銃器のカタログを定位置のブックスタンドに戻して、コーヒーのお代わりとスナック菓子を取って来れば、リンヤオはビデオを再生する準備を終えて待っていた。ホントに変わんないんだよなぁ。

 

 

 

 

 データの入ったUSBを繋ぐ端子に電源コード、モニターと最低限のボタンだけがついているビデオレコーダーに食いついている妹の隣から立ち、休憩に来たWAにコーヒーを淹れる。自分の分のついでだ。

 

「なんか意外だわ。アンタがヒーローものを見てるなんて」

「男の子はいつだってヒーローにあこがれるもんなのさ」

 

 WAは少し変な顔をする。俺は窓の傍に腰を掛け、気取るように言ったがあんま決まってなかったらしい。

 娯楽室の窓から見える外は強く雨が降っている。降りしきる雷雨は、昔を思い出して好きじゃないんだ。

 

「アンタも?」

「あぁ。なれるなんて思わないし、なろうとするのがどれだけ無理なのかも分かってる。だけど、憧れはした」

 

 ヒーローは、どれだけ苦しんでも最後には立ち上がって皆を守る。

 個人的に彼らの魅力は、強い力でもなく、かっこいい容姿でもなく、諦めないというその意思だと思う。意思に付随したのが立ち上がって行使できる力なんだ。

 彼らには大抵素晴らしい仲間たちが居て、守るべきものが何かも分かっていって、敵すらも理解しようとすらする。

 

「うん・・・憧れてたんだ」

 

 グラスの中の砂糖の混ざった液体にぼんやりと俺の影が映った。

 俺は、彼らと程遠いんだ・・・

 俺にも素晴らしい仲間たちが居て、守るべきものがある。敵を理解することはできないけれど。

 大きく違うところがあるんだ。

 俺は、大切な相手を。守るべき相手を守ることができない。

 ヒーローのように全てをぶっ飛ばすことが出来ないんだ。

 だから、ずっと憧れている。だけ。

 少し首を横に振ってナイーブな気持ちを飛ばし、変な空気を誤魔化すように話をスライドさせた。

 

「子供の頃から二人そろって見てたんだよ。アパートに住むようになってからの娯楽はテレビだけだったし」

「今時はそんなものね」

 

 世界がぐっちゃぐちゃになる前はインターネットがとても発達していて、子供はあまりテレビを見なかった、と聞いたことがある。

 テレビだって、昔は世界各地のニュースがやっていて、様々なジャンルの最新の番組が毎日のように放送されてもいたそうだ。

 今は地方のニュースか、データの残っているアニメやドラマをCMをつけて流すぐらい。ライブな情報なんて、数時間おきのニュース以外は画面の端に常に警報やら注意事項が垂れ流されていただけだ。

 

「俺たちにとっては普通なんだけど、昔はもっとすごかったんだよな・・・」

 

 番組のほとんどが再放送でもなくて、放送局がいっぱいあって、世界中の情報が知れる。そんな時代があったなんて現実味がない。

 俺たちにとってはインターネットは高価なものだ。世界中を繋ぐケーブルの維持は難しい上に、三次大戦では色々吹っ飛んでそれを復興するのだって大変。グリフィンの地区間ネットワークのようなものだって幼かったころの妹に見せられるような娯楽は少ない。

 昔の人は多分、今の俺たちの娯楽の方が現実味がないんだろうな。

 

「それで、なんか話があるんだろ?」

「えぇ。貴方たちの因縁のカルトの話」

 

 リンヤオが凄い勢いで俺たちに振り返ってくる。それもそうだ。彼女は未だに追われる可能性があった。

 WAは一枚のメモを取り出し、いくつかの要点を纏めて話し始める。

 

「あなたたち兄妹に対するリスクは限りなく低くなったわ。カルトの幹部が完全に入れ替わっている」

「「幹部?」」

 

 妹と顔を見合わせる。

 

「アンタたちって教主に担ぎあげられそうになったのよね?」

「あぁ、祖父が教祖だったと思う」

「そう言えば僕達って周りにいた奴らは知ってるけど、団体自体についてはよく分かってないや」

 

 幹部に当たるであろうヤツラと顔を合わせたことはあるが、カルトがどんなことを主張しているのかとかどういう活動をしているのかなんてことは、調べたこともなかったな・・・

 

「アンタたちが逃げた後は、幹部同士の抗争で弱体化。人形を据えたのはいいけど、今度は下級幹部が反乱。そのうちに正規軍が介入して。今はそもそも教主すら持たない全く別の状態になって着々と勢力を増やしてる」

 

 俺たちの存在すら、今のヤツラには残っていないようだ。

 なんか拍子抜けしてしまう。俺たちは結構前から狙われていなかったのに、ずっと警戒していたんだ。

 ずっと続いていたことが終わりになって、胸のとっかかりが無くなったような気がする。




やりたかったこと
・新装備入れる前振り
・サムの憧れたもの
・この時代の娯楽
・サムとリンヤオちゃんの因縁に関する話(連載しないシーズンフォーへの前振り的な感じ)

詰め込み過ぎた。あと一話か二話延ばしてもよかったっすね。

シーズンフォーもイメージ自体はあるんだけど、話をかけるかと言われると無理なの・・・。


次回「討伐作戦開始」
あと十ぐらいのパートの二話でメインストーリーは終わります。外暑すぎて帰ってくると疲れ切ってしまうけれど、頑張りマッスル。
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