鉄騎兵と戦術人形 作:ケジメ次郎
指揮官が相手とやり取りをしている様を訓練も放って俺たちは眺めているが、明らかにデカすぎるそれを見て顔を見合わせざるをえなかった。
相手はお祭りの時のパーティーに人形と居た人だな・・・今は車両整備工場をやっているんだっけか。その工場にはウチの基地の車両も検査に出していた覚えがある。
「はい。確かに受け取りました」
装備とは言うものの、現在調達している新装備やらなんやらを全て合わせてもそれは買えないレベルだし、こんなデカい買い物、何の話もなく出来るとも思えない。
目の前にあるのが八輪の兵員輸送車ということは分かる。だからと言ってなんでウチが受け取ったのかは見当もつかないのだ。
416やSAAはこの場にいないし、ウェルロッドは戦闘と通信のデータ専門だから・・・だーれも関知していないことだった。
「もしやMAV?」
「知っているのか雷電」
「雷電って誰ですか・・・」
ウェルロッドは俺のボケを綺麗にスルーして解説を始めた。
「要は一六式MCVのファミリーAPCですよ」
そう考えると整備性とか考えて未来に投資したってことか・・・?話ぐらいあってもいいだろうに。
ウチにもAPC、装甲兵員輸送車を導入したいという話自体はあって、その理由は戦力の増加。
ウチが長距離を移動する時は基本的に輸送ヘリのZ-20か、ハンヴィーにマイクロバス。マイクロバスは市街地への展開専用で、ハンヴィーは本当に兵員の輸送だけ。
小隊の本部を前進させるような時にはもっぱらZ-20が本部機能と戦力を輸送するわけなんだけど、色々ギリギリだったのだ。Z-20は影響を受けたS-70やUH-60と似通った兵員輸送能力で十一人ほどが限界。
かかるコストを考えるとヘリはそもそも議論にすらならなかった
だけど車両だったとしても、突入班一つと支援班、装備類や補給品なんかを搭載できる容量を一台に纏め、なかおつ整備のことなんかも考えると該当する車両がなかったのでご破算となったんだ。
▽
「タバタ指揮官、ご苦労。VAG-73、久しぶりだな」
「どうも・・・」
眉一つ動かない無表情にいつも物怖じしてしまいそうになる。
きっちりと制服を着こなす女性代行官。実質的な指揮官の直接の上司であるヘリアントス女史は色々と付き合いが長い相手だ。
俺この人得意じゃないんだよな・・・すげぇ美人なのは分かってるし、クールな感じがとても綺麗だとは思うけれど、サブリナの処遇を決めるときにとても怖かった記憶しかない。
「あの、ヘリアンさん・・・なんで416じゃなくてVAGを名指しで?」
「例の件だ。一番知っているのがサムというだけ。なにしろそいつは他のハイエンドと違ってオリジナルとダミーだけしか確認されていない」
パーサの話かぁ。耳を塞ぎたくなる。
Cb人形自体は改造を行うところをぶっ潰したので事案の数自体は激減した。それでも、時折起きるせいでグリフィンとIOPの信用がどんどん下がっているのが現実。
Cb改造が行われていない、普通の人形が破壊されたなんていう話もある。
「そもそも何故、鉄血ハイエンドが悪党とは言え人類側とコンタクトを続けられたのか・・・」
「元々人類側の腫瘍共は繋がりがあった、ないしは作れる環境があったところで、パーサが一つと繋がりを持ったことでネットワークになったんじゃないかと思います」
ヘリアン女史の問いかけに指揮官が即答する。
俺たち即応小隊はここ最近ずっと、この事例を追っていた。時にはブラックな基地の監査に入って人形を保護し、ある時はそこから横流しをされた人形達の報告に対応して捜索も行った。
そうやってしている内に、どことなく繋がりは見えてきた。多くの事項において同じ点があることと各所を制圧した時に得られた情報。
グリフィンはこの流れに本格的に対応して、各地からの情報を一つに集約した。
「正解。そもそも鉄血との直接の繋がりを持っているのは見つからない」
「パーサにとっては一連の戦術を悪党どものネットワークに入れることが戦略だった・・・ってことか」
パーサが作ったのは、サブリナから取ったデータによるIFFの書き換えといくつかのプログラム。それとアンチプログラムへの対抗パッチ。自爆システム自体はパーサが考えたものを流用しただけに過ぎない。
それがここまで猛威を振るったのは、悪党どものネットワークでの拡散が原因だ。
「人形の性的消費は深刻です。そもそも本来の使用者の元にすら届かないこともあるし、戦術人形だって・・・!」
指揮官はいら立ちが隠しきれていない。
俺も同じ気持ちだ。サブリナに変な事やりやがったあのクソデブはCb人形のネットワークに関わっていた上、どこかから横流しされた人形をそういうことに使い潰していた。しかもサブリナに変な事やりやがった。ぜぇったいに許したくない。
「最前線の基地は消耗が激しい上に、広い範囲のせいで監視の目が行き届かなかった。それは我々のミスでしかない」
ヘリアン女史はそこまで言い切るとすっと立ち上がって纏められた書類を机にポンと投げた。
「社内風紀の引き締めは行う。それと同時に、パーサを鹵獲する」