鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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目指せ風雲パーサ城5

 シートで籔林を仕切るように作られた野営地は人数を考えるとかなりギリギリ。二台の車両は外で偽装しているし、全員が同時に休むわけでもない。

 

「お月様が真ん丸だね」

 

 人形同士の通信プロトコルで聞こえてき言葉につられ、思わず気を抜いて空を見上げてしまった。

 

「あぁ」

 

 確かに綺麗なお月様だ。俺たちの知っている月よりも真ん丸で一割ぐらい大きく見えるぐらい。

 暗視モードを使って警戒しているロクヨンはすぐ隣。

 休んでいるところから五分ぐらい歩いたところで、入ってきた荒れ道を見張っている。

 野営地のちょっと近くの木の上には36が一人警戒して、416は仮眠を取った後に交代。FALは俺たち二人との交代制。

 グローザは諸々の雑用と、MCVカンパニーの四人の護衛をするという名目で慣れないはずの大型車両運転という役割のために優先的に休ませている。

 後方でもウチの小隊が必要で、自ずとアサルトライフル系の人形ばかりに絞られているのに、俺だけがハンドガンなのでちょっと落ち着かない。

 気軽にM72を持って動ける戦力としては大事なんだろうけど、だだっ広いところでの銃撃戦になって出来ることといえば、持ってきているバレットかMAVに搭載されているM2ブローニングでの射撃ぐらいか。

 活躍できるのか少し不安になった。この体になってから、元の体に染み込んでいた射撃技能は次第に薄れてきて、腕前はかなりひどくなっている。

 

「流石に昼間のあのセリフはどうなの」

「仕方ねぇだろ・・・いざ話そうとすると頭ん中ぐっちゃぐっちゃになるんだ」

 

 ズバリと言われたのは、昼間の俺のヘタレ方。せっかく久しぶりに話せるチャンスだったのに、思いっきり失敗したそれは出来ることなら思い出したくない。

 一言だけ返し、単眼鏡で少し遠くまで見たところで、本音を吐露した。

 近距離の人形通信をこれまでになく、無駄遣いした無言のやり取り。

 人形同士の通信に関しては言葉に出すという動作のラグを解消するため、近距離においては声に出すことなく通信できるプロトコルがある。五十メートルも飛ばないので、基本は無線機だけど、歩哨や警備なんかでのバディにおいては使い勝手がいい。

 

「思春期?」

「れっきとしたおじさんなんだが」

 

 そんな風に言われる気もしてたけど、いざ言われるとちょっと刺さった。言葉に出さない分直接的なロクヨンの指摘は全く悪気もないのに。

 自分でも、これは少しどうなんだとも思っていた。

 クラスのマドンナに片思いをしているチェリーボーイと挙動不審具合は大して変わらないし、恥ずかしいこと思い出してダメージ受けるのもそんな感じ。

 少し気まずくなった後には特に話をするわけでもなく。休憩を終えたFALが来たので交代した。

 

 

 

 

 シートの上に座り込み、口にくわえたライトで照らされた同じシートの上に広げている半身を組みなおしていく。

 別に休憩だろうが、夜番だろうが俺たちは人形だからたかが一晩で何か変わるわけでもない。

 少しだけ息をついた。白い息は出ていないけれど、夜は少し肌寒い。

 しかし416は「完璧を期す」ために全員が均等に休むように命じていたし、グローザすらも進んで休ませたのだからウチの小隊長様のパワーというのは凄まじかった。

 

「VAG、ピザとカレー、どちらが?」

「どっちもMREだろ?36が好きな方選べって」

 

 いつも通り平坦な口調、眼力の強い視線もこれまたいつも通り。少し変わったところといえば、前髪に小さなローズマリーの花があしらわれたヘアピンをつけたぐらいか。

 確か祭りの後からつけているから、マイクがそれでプレゼントしたんだろう。

 小隊の中で話題になって、皆に問い詰められた36が「記憶・思い出」という花言葉で認識していたので、その時は流れたんだ。ローズマリー自体、記憶を表す花らしいし。

 電気式のランタンは極度に光量が下げられた状態で、俺たちの間に置かれている段ボールの空き箱を照らす。

 

「それじゃあ、ピザを」

「ありがと、やっぱり温かい飯はいいよなぁ」

 

 グローブを外して36からMREを受け取る。ピザ自体は温めたものではないが、漂ってくるカレーの匂いは本当に温かみがある。

 MRE、と呼んでいるこれは加熱式だったりする糧食。戦闘部隊の行動中の食事は状況に合わせていくつか種類があって、行動中で用意が出来ないような時には人形用レーションと似たようなエナジーバーとガムが一つに入っているやつを食べる。MREなんかより余裕ある時にどうするかはよく知らない。

 正規軍時代も、新兵の頃は普通に作られた温かい飯食って出発して、エナジーバーすらも喉を通らないような状態で気づけば数日経ってるのが当たり前だったし、部隊に居た頃は時間のかかる行動自体がほとんどなかった。

 どちらにせよあのぱさついたレーションは士気が落ちるし、MAVに積めて、野営では余裕があるからこそ、MREを出している。それなりに種類もあるし、温かい食事が良い効果を与えるのはごくごく当たり前の話だ。

 

「あの、少しだけ話したいことが」

「マイクのこと?」

 

 なんだなんだ、そういう話されると気になっちゃうだろ。

 

「その・・・マリーさんのこととご家族のことを、聞きました」

 

 だから、このヘアピンのことで邪推してしまって・・・と繋いだ36の顔を見ると、口の中に砂糖を突っ込んだ気持ち。

 他の人形と重ね合わせたとかそういう怒りではなく、本当のことを話してくれたという感じらしい。

 その上で、ローズマリーの花言葉に引っかかっているそうだ。

 色々と意味深すぎるもんな・・・そのチョイス。俺も話題になった時に少し調べて疑問になったもん。

 予想だにしない方面で二人ががっつり進展していたことに気づいた深夜だった。




糧食の話題とか、36とマイク(とマリー)(マリーについてはシーズンワン2章「親子の縁」とかG36とマイクの初めて会った時の辺り)
この二人、予定ではもっと進展しているはずだったけど、未だに手をつなぐことすらままならないので初心すぎる。

行動中の食事といえば、PLAの行軍の食事ががっつりしてて流石やな・・・となりましたね。
あとMREのピザは米軍のやーつがモデル。
カレーは言わずもがな。
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