鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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前回の分に収まらなかった話なんですが、本来の予定まで達しませんでした。


古城に響く音4

 いまだ止む気配もなく強くなる一方の雨で、地面はぬかるみすぎて敵味方構わずのスリップ上等状態。

 目の前のデカブツも、それは変わらないようで。むしろ、重量のせいで気軽に動けない状況に睨みあいを続けてくれた。

 手榴弾は使い切った。VAG-73はマガジンチェンジしている暇がない。間合いは、あちらが有利な位置だ。

 

「ちぃっと、油断した」

 

 次は、ならない。心にそう言い聞かせて、イージスの腕を軸にして飛び上がる。

 呟きが雨にかき消された。雨は、好きじゃないし得意じゃない。気分は落ち込むし、あの日の事も思い出すし、無性に人肌が恋しくなるから。

 しかし、それが体が変わってサイズ任せに戦えなくなった自分にとって、有利な状況を作り出してもくれる。

 相手は、気軽に体を動かせない!

 

「てめぇの弱点は!」

 

 機械の尻尾は反動を使ってバランスを取るもので、使いようによっては予想だにしない方向に振り回される。

 

「首元か!」

 

 だけど、いい加減に癖も分かってきた。決して上手とも言えない跳躍すらも、戦術人形のフィジカルのアドバンテージで人間を越えられる。

 相手の頭を掴んでから振り回され始めても、引き剥がされる事はなかった。

 

「硬すぎんだよ!」

 

 首元の関節部分という、一番弱い部分すらもなかなかに堅い。装甲の薄くて、動きに直結する箇所を単純に切り詰めた形だから弱点が小さいし、弱点をカバーするような周囲の補強もある。

 対物ライフルで撃破できれば楽だなんて考えてしまうけど、あっちにだって装甲持ちはまだまだいるのだと頭を振った。

 こうしている内は、まだ負けない。

 ウェルロッドは問題なく殲滅できるような感じに見え、こっちの元気なのはこのイージスだけ。

 

「いい加減にっ、し!?」

 

 衝撃が来たのに遅れて、何かの音。それと同時に俺に抱き着かれていた鉄屑が崩れ落ちる。

 こちらを狙っていたのに、直感すらも機能しなかった・・・?

 

「ひゅぅ」

 

 ウチの小隊とは反対の城壁をウチから突き破って出てきた、かなり大きな砲を手持ちした影を見て思わず口笛を吹く。

 派手に吹き飛ばすあまりに注目を欲しいままだ。

 

「・・・っ!」

「ちょっと鈍ったんじゃねぇのか?」

「なんで居るんですか!」

 

 正規軍仕様とはまた少し違うタイプの機甲人形の隣には、この距離でも分かるガタイの元上司。

 残念ながら、作戦前のミーティングでは正規軍が出てくるなんて全く聞いていない。

 

「俺たちは義勇兵、正規軍とは関係ナッシング」

 

 笑いながら、ずたずたと歩いてくる隊長とは裏腹に、随伴している十人ほどの兵士のテンションは少し低い。全員覚えがないから、ここ三年ほどの間に入ってきた奴らなんだろう。

 先輩としてはただただ同情するしかない。

 隊長はいつもそうだったんだ。いきなり隊員を戦場に連れていく。それは普段の訓練にはない経験を積ませるためだったり、どんな状況でも慌てることなく処理することを学ばせるためだ。

 けれどそうやって連れていかれても、明らかな修羅場にも関わらず全員が生き残る。生き残れるようになっている。

 

「最強格の人形を二体も引き連れてやることっすかねぇ」

 

 すぐそばまでやってきた隊長に髪をかき乱されつつ、周りの隊員達を委縮させている人形達の様子を盗み見た。

 それに、ロボットを動かしていただけだからこそなんの予兆も分からなかったことが怖くなる。直感に頼り切るのもダメなんだという事実に殴られた。

 AK-12の様子は、ハッキングできる開眼モード。機甲人形も、この要塞をカバーするように飛び回っているドローンも動かして全てを視ているんだろう。あれで、普通の戦闘も強いんだから・・・少し羨ましい。

 奥に居る金髪の方、AN-94の方はマジで何を考えているのかも分からなかった。それにこっちの方が戦闘力は上らしい。

 

「んで、何かいうことがあるんじゃないか」

「ありがとうございます?」

「もっと心を込めて!」

「心を込めろなんて言われても・・・」

 

 隊長の勢いの根源は察するしかない。

 あんだけ妹を可愛がってくれたこの人は、大の世話焼きなんだよ・・・俺は三十路のおっさんだけど見た目は少女だし。

 さっきからずっと撫でられているせいで、戦闘の終わった小隊の皆にも見られている。

 しかも、他の基地の人形達もそれなりに面識のあるやつばかり。こんな作戦に戦力を割いてくれるのが、指揮官同士の面識があって貸し借りがあるような基地ばかりに偏るのは当然だった。

 

「ようやく、お出ましですね」

 

 土砂降りの古城の中に、大きすぎるほどのノイズが走る。決して天然ものではない、スピーカーのハウリング音まで続いた。

 416の言葉を聞くまでもなく、臨戦態勢。あちこちの戦力をかき集めた、このタスクフォースには、ちょっかいをかけようとする敵がそうそう現れないと思うぐらいの豪華メンバーが集まっている。

 

「アはハハっ!」

 

 パーサには、関係ないようだけど!

 高らかで、この不利な状況を楽しむような笑い声と共に、緊張感が跳ね上がった。




次回は話の名前変わるけど、タイトルは変わらず思いついてないです!!!!!!


それとお気に入りとか諸々ありがとうございます。

次回で、ようやっと新しいパーサとの対面でございます。


次パート更新:落ちました
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