鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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あと・・・あと一話分(パート数は未定)でシーズンスリー終わる・・・終わるんや・・・ガンバリマス。


ぶっ飛ばす2

「尖塔五階から狙撃!」

 

 誰よりも早く、ラストの敵を見つけたのはWA。

 奪われたQLU-11の最大数は4丁という予想は、城壁内で暴れまわってるダミー以外で数の帳尻が合う。

 

「ソーレーとー!VAG-73、いイやサム!ムカエに来てオクレよォ!」

 

 迎えになんて行きたくない。

 マジの殺し合いを求めてくる姫様を助けるなんて御免被りたい。

 あの時の戦いの記憶が手に取るように戻ってきた。

 

「大丈夫ですか?」

 

 収縮激しく動く心臓、薬物でごまかしても馬鹿みたいに痛い筋肉、考えることも出来ないのに感じる恐怖心。そして訪れた、長い長い、暗くて、なにも分からないような、なにも感じられない空間。

 皆を置いてきぼりにして、楔に繋いだという後悔はいつだって消えることはないのだ。

 それでも俺は、こちらの顔を覗いてきたウェルロッドの肩を叩いて体をほぐす。

 

「大丈夫だ。さっさとやるしかない」

 

 だけど、なんもかんも含めて。

 今の俺を認めてくれる人たちがいる。

 仲間として。家族として。VAG-73として。

 

「変にビビったって、現実は変わんねぇんだ」

 

 弱まってきた雨が解けた髪の毛を伝って、服を濡らしてくる。

 ビビってるし、本当はさっさと帰りたい気持ちマックス。だけど、そんなことを出来るような度胸も持ち合わせていない。

 昔からいつだって、本心ではビビっていた。

 

「VAG、行きなさい」

「416、それはこの戦闘で俺無しに勝てると思ってるのか?」

 

 さっきと同じくらいか、それ以上の数しか目に入らない。

 周りの鉄屑共には、見たこともないような改修が加えられているものもある。現地改修ってやつだろう。

 一見しただけでは分は悪いように見える。

 

「違います。作戦目標を完遂するための最善の案。それにこれは命令よ」

 

 命令。俺がもし、この場で簡易的な命令権を行使した場合どうなるのだろうか。

 この場に指揮官は居ない。ROは突然の展開に迷うだろう。

 そんな悪趣味な妄想をしてしまった。

 

「わかった」

 

 一言だけ呟いて、左の手首に結んであるリボンをきつく締めなおす。

 作戦目標はパーサの鹵獲、もしくは破壊とデータ類の確保の二つ。もし、目の前の敵共に時間を食わされている間に逃してしまえば、火を見るよりも明らかな事態が待っている。

 敵の狙いに乗るのは癪だが、最善の案なのは間違いない。

 

「サムだけハ、トオシテやるヨ!アトは!サヨウナっ?!」

 

 スピーカーからがなり立てられていた音が、雑音とハウリング音だけになった。

 叩きつけるような雨音も、やかましくて不快だったパーサの声もなくなって、少し静かな雰囲気が訪れる。

 耳をすませば周りからにじり寄ってくる敵の動作音も聞こえるが、足元は酷いままだ。敵の本拠地で防御戦闘ってのもちょっと笑えた。

 

「うるさいんだよ!がやがやと、兄貴のなにが分かるってんだ」

「ホーワ!持ち場を離れないで!」

 

 この二人はいつもこんなテンションなんだろうか。

 リンヤオの声ががなり立ててすぐ後に、ホーワの頭が叩かれる音が無線に響く。

 妹の緊張感の無さに少し不安になってしまった。それだけ大物ってことなんだろうけど。やっぱりフクザツ・・・

 

「VAG、決めなさい」

 

 緩みかけていた緊張を416の言葉でもう一度引き締める。

 とっくに整理はついていた。それに。

 

「行く。俺が全部ぶっ飛ばせばいいんだろ?」

 

 俺は、サムはいつだってそうだったじゃないか。

 例えビビっていようが怖かろうが。決断をしてしまえば動き出すのが基本。

 最近は躊躇してしまいがちになったが、ここで躊躇する理由はない。

 

「あっちには言わなくていいの?」

 

 416の視線の先には一六式。

 

「ま、大丈夫だろ。俺は信じてる」

 

 家族も。小隊の皆も。一緒に戦っているタスクフォースの仲間たちも。

 さっきはあんな軽口叩いたが、俺が居なくとも目の前のやつらはここにいる全員でどうにかできると思う。

 

「よし。行ける」

 

 ホルスターに戻したVAG-73のマガジンは46発。体のどこにも不調はないし、尻尾も外骨格のバッテリーも余裕がある。

 息を吸って、吐いてを続けている内に頭の中に酸素が行き渡った気分だ。人形だからそういうシステムはないんだけど。

 

「ぜぇったいにどうにかしてくるから」

 

 尖塔に向かって歩き出す一瞬だけ、後ろ髪を引かれるような気持ちも出てきたけど、すぐに霧散した。

 振り返ったら、ダメだと進む。どうやったって心が弱いこと自体は変わらない。

 

 

 

 

「ここまで統制されてるってのもヤベーな」

 

 俺が進むたびに雑魚人形共の包囲陣は、塔に向かう道を開けた。

 パーサの部下だからなのか知らないが、恭しく迎え入れるような動きは気障ったらしく。これでやることが結婚式とかそういうロマンチックなことでもない、ただの殺し合いなんだから何を考えてんのかもわかりたくない。

 

「これを使うっていう選択肢もあったけど」

 

 バッテリーの上に乗っているポーチバッグから出した瓶の中身は毒々しい色をしている。

 目の前には、塔がそびえ立っている。落ち着いた、歴史がありそうな見た目だ。

 敵の部隊よりも先に出てきても、狙撃をしているパーサのダミーさえ俺を見ていない。目の前にあるのは、ラスボスの待ち受けているステージのみ。

 

「ほんっとに悪趣味だぜペルシカさんよ・・・」

 

 飲めば、電脳の処理能力を格段に上げることができるブースト剤。

 普通の人形と違って最適化されていない俺にとっては、ハンデを無くすものだ。

 その代わり。

 最初の試作品というだけあって、使ってしまえば電脳がダメージを受けるのは間違いないらしい。

 

「俺は忘れたくないんだ」

 

 瓶を地面に叩きつけた。




次回
「殴りあい荒野」


追記:リアルが忙しいため、木曜日くらいには更新したいつもりですが土日まで遅れる可能性あります。あと、寄稿するための9000文字程度の文章の最終チェックも始めていますので、時間がね・・・10月中にシーズンスリーとエピローグは完結させるつもりですが、幕間とかは今年中ギリギリになるかもしれません。

申し訳ない。

待っていただけたら嬉しいです。


追記2:3日から次パート書き始めます。お待たせしております。もう少しだけ・・・!
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