鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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塔の上の3

 耳をつんざくような音に目が眩むフラッシュが塔の中の暗闇を塗りつぶす。それを起こして、対策しているはずの自分でさえもビビってしまうレベルだ。

 

「これを使う場面に持ってくるまで・・・」

 

 雨漏りの中に倒れ込んでいるパーサには近づけない。

 なにしろ、ついさっきまで周りでテーザーがビビっとなっていた。

 最初にこれをやった時は、スカートを捲るのと同時にただフラッシュライトで目潰しをしただけ。それをフィードバックしてフラッシュを仕込んだりと発展していってしまったが、ここまで来ると盛り込み過ぎだ。

 

「苦労したぜ・・・」

 

 まずもって、有効打を与えるチャンスは少ないのに大きく隙が生まれてしまうのがこの技だ。使う場面は慎重を期さなければならない。

 目の前の敵相手では間合いが短い状態でなければ効かないし、ここまでぶん殴りあって消耗させないと隙もなかった。

 フラッシュバンとテーザー。いくら小型化されているとはいえ、これだけ付けてしまえば重いし邪魔だし、バレやすい。

 足を掴まれて投げられた時にも怪しまれないようにするのは当然だが、太ももを地面に当てて暴発しないように気を遣わなきゃいけなかった。

 それだけの苦労をして、ようやくパーサの動きを止められた。

 スカートを自分で捲るって言うヴィジュアルは・・・俺は別に気にしてないし。

 

「っカハッ、アァァ・・・イタイ、イタァイ・・・」

 

 こっちがどうやってパーサを生け捕りにしようかと迷っている内に、ゴスロリ銀髪は想像以上の早さで立ち直っている。

 

「や・・・っぱ、頑丈だよな」

 

 見た感じも、戦う意思がある。

 距離感を掴みがたい。一方的にのすほどのパワーバランスの余裕は無さそうだ。

 制御系に異常を起こしたのか曲がったり伸びたりと変な動きをしていた手足も、ピンピンと動いていた。

 これよりもボロボロだった状態から出てきた反撃が脳裏をめぐり、息が乱れそうになる。パーサの膂力は俺どころか、おそらくだがサブリナよりも上。男時代の俺なんて、当たり前のようにパワー負けした。

 あの時と今は違う。そう言い聞かせて、迫りくるタックルを避ける。

 

「マエトハ!前とはゼンゼン違う!サム!キミは!」

 

 動きは見切れた。

 スピードもキレも決して見劣りするわけでもなく、むしろ洗練されてきている。たったこれだけの戦闘で、俺の技術を目と体で盗んで習得している。俺という相手で経験を積んでいる。

 言うなれば、AI同士をぶつけあって様々な状況をディープラーニングさせているようなものだ。

 進化のスピードが恐ろしく速い。

 

「マダ強くナル!天井シラズだ!」

 

 少なくとも、こいつと二度目の戦いとなれば勝つ自信は出てこない。

 今見切れているのだって、慣れてきたからというだけ。

 強くなるスピードは、パーサの方が、人形の方が早いのはもう知っている!

 ならば、今ここでぶっ倒すしかない。そうしてから、例え時間がかかろうとも強くなればいい話だ。皆を守れるように。

 

「モット!モット見せてオクレヨ!」

 

 パーサの機嫌は上がっている。考えたくもないが、こいつの言う愛し合いという名のぶん殴りあいは最高に楽しいものなのだろう。ピンチすらも快感になっているんじゃないか。

 それこそ、キマっているようなテンションだが、俺はこういう奴を知っている。

 正規軍に居たころに見たことがあるし、不本意だけど俺もそういうネジの外れた戦闘狂ってカテゴライズされていた。

 人間って、周りと違うことを嫌うから。他人と比べて、才能がありすぎたり。反対だったりすると、距離を取られる。

 俺の場合は、隊長に引き上げられてからはそうやって蔑まれることはなくなった。

 そして、今。小隊の皆も、タスクフォースの皆も、一六式の皆も、家族や仲間、友人たちは俺を認めてくれている。

 

「パーサ。俺は勝つぞ」

「ソンナ手は!効かナイ!」

 

 バヨネットを抜いて切り上げたが、弾かれて、俺の小さなリーチを伸ばしてくれるそれは空を舞う。

 目で追いかけている暇はない。あり得ないぐらいに高く飛んでいったそれが戻ってくるまで、物理的な速度で普通に考えれば長い時間はない。けれど、その時間の間に俺たちは互いの隙を狙っている。

 例え一瞬の隙が生まれようとも、勝ち筋は見えた。

 

「・・・ッがァ?!」

 

 振り上げたブーツの底で落ちてきたバヨネットを蹴れば、ゴスロリと銀色の髪から出てくるイメージを盛大にぶっ壊す声を上げてパーサは仰け反った。

 俺の足だけなら避けられたはずだ。いや、避けるつもりだったんだろう。

 だからこそ、やり遂げた爽快感はたまらない。

 バヨネットは左肩の付け根に、突き刺さっている。

 何も迷う必要はない。俺は踏み出した。

 

「これで!」

 

 行ける。左腕の動きが鈍れば右腕に集中できる。

 相手の動きは完全に鈍った。頑丈だから。どれほど効くかも分からないが、それならばオーバーキルをするだけ。

 懐に踏み込んで、腕を掴んで、体を捻って、思いきりよくぶん投げた。飛んでいったのは、俺がぶん投げられた場所とほぼ同じだ。

 

「俺はお前とは違う」

 

 俺にはあって、パーサにはないものがある。

 俺は一人で戦っているつもりじゃない。それは、昔から変わらない。

 塔を根元から倒したんじゃないかと勘違いしてしまうほどの轟音と舞う埃。塞ぎこんだ尖塔に馬鹿でかい風穴が開く。




(最後の)次回予告。
「ヒーローは遅れてやってくる!、ってね」
「お姉ちゃんに任せなさい!」
「誰が妹じゃ誰が」
シーズンスリー最終パート「俺は人形が・・・」


あと少し。あと少し


次回(今週内を目指して)
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