鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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第二章「乗員たちの苦悩」編、第一話第一パートになります。


第二章「乗員の苦悩」
兄と弟と1


 

「「「社長、復帰おめでとうございまーす!」」」

 

 いつもの事務所、いつものソファのお誕生日席に眼鏡を掛けた以外はあまり変わっていない社長が座っている。

 ソファに従業員全員は座れないので、社長と奥さん、娘さんにサブリナがソファに座り、俺たち野郎どもはデスクからその様子を眺めていた。

 

「ま、これで正式に旦那が次のリーダーだぜ」

「頑張って頂戴ねぇん」

「お前らはよくもまぁそんな気楽な事が言えるぜ・・・」

 

 ニヤニヤと馴れ馴れしく左右から肩を組んでくる、ジョージとマイク。二人とも酒臭いのは今朝まで飲んだくれていたかららしい。いくら仕事が入らず、暇と金を持て余しているとはいえ、寮のリビングで悪酔いしてほしくないんだが、まぁ聞かない。ただでさえ、事務所のあるビルの上層階で狭くて壁が薄いのに、バカみたいに酔えばうるさくて仕方ない。

 部屋数の関係上致し方なく相部屋になっているサブリナはスリープモードでぐっすり出来たようだが、俺は人間でそんな都合のいい機能はない。

 寮の部屋割は二人ずつ。

 一応言っておくが、サブリナとそういうことはしてない。

 雇い主と人形という関係である前に、一六式のチームという家族だ。そういう目で見ることは決してないと誓える。

 デスクワークの事務所では珍しく談笑する声が響いていたが、そこで誰かの端末に連絡が入った。

 

「あら、アタシだわ」

 

 そう言ってジョージが退室すると、他のメンツは顔を見合わせた。

 ジョージの様子は何か急いでいるようで、社長とマイクの顔に暗い光が差し込んだように見えたので、俺はなにがあるのか聞こうとする。

 事務所のドアが再び音をたてて開くと血相を変えたジョージが社長に向かって一言二言言うと足早に事務所から出ていった。

 

「マイク、ちょっと面貸せ」

「なんだよ旦那ぁ」

 

 何か、ある。そう思った俺はマイクを喫煙所に引っ張る。後ろからは社長が着いてきた。

 

「ジョージは何隠してるんだ?」

「さぁなぁ」

 

 マイクはとぼける。何かないわけがないじゃないか。

 

「この前の仕事の時、ジョージは思い詰めた顔をしていた。それと関係あるんだな?」

「さぁなぁ」

 

 同じ言葉だが明らかに動揺していた。

 バックボーンは何か分からないが、それは仕事の時にも考えなければいけない問題ということは大きい。

 

「サム、そこまでにしとけ」

「しかし!」

「そこまでだ。誰にだって知られたくない事実がある。お前もそうだろ?」

 

 後から入ってきたボスは拳銃を下に向けるポーズを取った。それはまさに俺がサブリナに知られたくない話で、これ以上詮索することは出来ない。

 

 

 

 

 夜も遅い時間。寮の共用スペースで一人バーボンを呷る。手元にはつい最近手に入れた拳銃「VAG-73」に関する昔の記事を開いていた。ロシア語はなんとなく文字を読める程度なので辞書が隣にある。

 簡易分解図があるその記事は、現状マニュアルのような役割を果たしていた。

 

「さすがに四十八発もケースレス弾薬をフルオートでぶっ放せねぇよなぁ・・・」

 

 前身のモデルVAG-72だとセーフティだったところがセレクターになるのはいいがマニュアルセーフティのない拳銃を撃つって普段の携帯はどうしてたんだ?

 採用されてなかったんだからその点は全く分からないんだよな。

 爺さんにその部分だけ改造してもらうのがベターか。しかしフルオートで撃てないとロマンがない・・・

 ハンマーがあるから、このままでも困らないと言えば困らない。

 唸りを上げ、そろそろいい時間なので寝ることにする。

 ボトルをキッチンのキャビネットに入れていると階段を上ってくる音が聞こえた。

 

「ただいまぁん」

「おかえり、ジョージ」

 

 昼間に大慌てで出掛けたジョージだ。何があったか知らないが、こんな時間に帰ってくるとは思わなかった。

 いまさら詮索する気も起きないのでさっさと部屋に戻り、そのまま寝た。

 

 

 

 

「お前ら、仕事だ!」

 

 グリフィンの基地の中に間借りしている一六式のガレージ、砲弾の確認や試運転などをしているところに社長が走り込んでくる。

 

「どんな仕事だ?」

「感染者を保護して研究している施設からの連絡が途絶えた。恐らく職員は死んだと思われる」

 

 社長の言葉に乗員たちはそれぞれ諦観の表情をする。

 今更コーラップスに被ばくしたことを解析してどうにかなるはずがない。そりゃ感染者が居なくなったり予防することが出来れば大発見かもしれないが、相手はパニック映画のゾンビみたいなやつらで、こういった「もしも」が起きるのは「お決まり」といったところだ。

 

「場所は?」

「○○地区の研究所。報酬は弾むらしいから燃焼弾を使っていい」

 

 燃焼弾、一六式が本来の使用者のもとで使われていた頃には考えもされていなかった、「対人に大口径砲弾を撃ち制圧力を得る」砲弾の一つだ。

 弾頭に燃料が入っており、榴弾の破片のようにまき散らされ一気に炎上する。非人道的なそれはE.L.I.Dが猛威を振り始めてから普及した。

 ただ、発射の衝撃で燃料が引火しないようにしたり効果的に攻撃するための反応信管と合わせて非常に高価だ。

 

「・・・そこは」

 

 ジョージが何か呟いた。

 俺は詰め寄る。声を荒げて問い詰めた。

 

「そこに何がある!」

「アタシの弟が収容されているの」




感想返し
「戦術人形を買って八割で済む貯金・・・」
十年以上正規軍でバリバリに戦ってたから、多少はね?それにしてもなにかある・・・
その内出てくるかもしれない。

そんなわけで第二章はジョージのストーリーから開幕です。次はマイケル、そしてそこからサブリナとサムの話の三話構成。

いつもながらお気に入り、感想ありがとうございます!


それと次の更新から、二回目の更新を0時から翌日朝7時に変更します。よろしくお願いします。
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