鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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お気に入りとか諸々ありがとうございます。

あと今更になって番外編やら幕間やらの案がいっぱい出てきてます。


俺は人形が1

 塔の最上階は一つ下の床と天井ごと大きく風穴が開いていて、雨が止んだ雲の隙間から太陽の光が舞い降りている。

 相変わらず馬鹿でかい音だ。

 さっきやったやつとはまた違った味わいの、お腹の底から来るような轟音に、建物をぶっ壊す衝撃。

 それが一瞬にものすごい量で来て、火力を投射するんだ。精々が二メートルほどまでしかない人型からすればたまったものではないし、装甲型だろうとそれは変わらない。

 こんな攻撃を受ける側のダメージは、例え肉体的なものがなくとも、精神的なものですら大きい。

 這う這うの体でこちらにやってきたパーサの背中を蹴飛ばすのは些細なことだった。

 

「ヒーローは遅れてやってくる、ってね。お姉ちゃんに任せなさい!」

 

 人形同士の通信プロトコル。少なくとも、俺が人形になるまでは聞くことのできなかった距離感から、ずっと会いたかった相手の声がする。

 どこか、心に針がツンと当たったみたいな気分にもなるけれど、無性に嬉しさもわいてくる。俺って単純なやつだから。

 いつも通りに突っ込む声に感情が乗ってしまった気がする。

 

「誰が妹じゃ誰が」

 

 ぶっ飛ばされた時に置いたものは、電波の発信機。その電波を頼りに、バカでかい対空機関砲の砲弾が穿った。

 作戦は成功した。俺は一人で戦っていたわけじゃない。それは、これだけの雑魚敵を抱えていたパーサだって同じだけど。決定的に違うことがある。

 

「こちらは終わりました」

 

 拡声器を使って叫んでるのはRO。広場には鉄血人形の屍が積みあがった山の上に、タスクフォースの面々が待っていて、銃口は俺のずっと足元に向いていた。

 

「待たせちまったな、みんな」

 

 最初から一人で決着をつけようなんて、全く思っていなかった。だって、俺の力じゃぶっ飛ばせる確証はないし、時間も足りないし。

 結局のところ、俺の目的は皆が雑魚敵とパーサのダミーを倒すまでの時間稼ぎ。

 

「・・・ナンデ!ナンデだヨ!」

 

 ぬかるんだ地面に落ちたパーサの瞳が、俺だけを睨む。

 あいつにとって、俺たちのタイマンは神聖にすら近いモノ。部下たちも、ダミーすらも引き連れず、同じ条件で俺と戦おうとしていた。

 それを、相手は、俺は否定した。気持ちも分からないわけじゃない。

 

「俺たちは、敵。そうだろ?」

 

 だから恨むな。

 俺たちの関係は敵で、それ以上でもそれ以下でもない。たった今、あれほどの悲しみの感情を向けられて何も思わないわけでもないけれど、敵という前提条件があれば霧散するレベル。

 完全な詰めろ、だ。パーサに向けられている銃口の数を考えれば、いくらあいつが機動性と耐久性に優れているとはいえ、物理的に無理がある。

 斉射によって空間に置くように敷かれた火線を潜り抜けることなど、質量が存在する限りは不可能。

 

「VAG、確保」

「りょう・・・」

 

 416に返答しようとして違和感を感じる。右わき腹も無性に痛い。

 雨は止んですっかり晴れ切っているのに、この地面を鳴らすような音はなんだ?

 段々と揺れているような気もする。いや、大きな違和感が出ているのは俺とパーサが居る方だけ。多分だけど、みんながいる方はまだ何ともないようだ。

 

「地すべりだよ!」

 

 ロクヨンだか誰かが叫んだ言葉の意味を飲み込むのには時間がかかるが、語気から事態の危機感を悟った。

 空中に浮くような感覚と共に、視界が一気に沈み込む。

 

 

 

 

「あー・・・そうだよな・・・切り立っていて高さもありゃ、崩れ落ちるか」

 

 あの雨量なら当然だった。

 崖を見上げれば、土とか岩とか、地下に埋め込んであったであろうブロック状の石の断片が見え隠れする。

 あれだけ強かに体を打ったのに少し痛いだけでピンピンしているし、奇跡的に土砂に巻き込まれてはいない。

 塔のあった先端からパーサの倒れていたあたりまでは完全に崩落しているのを眺めて、頭を乱雑に撫でつけて、息を吐く。リボンを無くさなくてよかった。

 これを無くしていたら、色々と気分が落ち込むに決まっている。この後に待ち受ける行動を乗り切る気力だって多少なりともそがれる。

 

「まずはパーサを探す。一番高いところに居た俺がこれぐらいなんだから、一番遠い部分に居たあいつだって、それなりに無事なはずだ」

 

 いつもよりも多い口数は、混乱と寂しさを紛らわせて冷静なキモチになるため。言葉に出すことで、しっかりと目標を意識するのだ。

 強い風が吹きつけるとともに、日差しも肌を刺してくる。水分を含み切った泥と、色々なものが混ざっている土砂と瓦礫の山を一歩ずつ踏みしめて、目標を探し始めた。

 

「ウチの指揮官だったら、ぜぇったいに迎えにくる」

 

 あのお人好しのことだ。俺が倒れていたのは見える位置だし、タスクフォースの面々の気配がないのは作戦の終了時間を過ぎているだけ。長時間敵地に残り続けるのはリスクが高すぎるし、ヘリ部隊の進出を助けるための陽動の都合もある。

 

「俺がやるのは、パーサを見つけること・・・」

 

 誰も居ない、何も分からない土地に一人残された状況でも。

 二人とお揃いのリボンに手を触れれば勇気が湧いてくる。俺は帰らなくちゃならない。

 帰る場所が認識できている限り、俺は勝ち続けてきた。一度、死んでしまったのはノーカン。

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