鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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俺は人形が4

 頭の中がぐちゃぐちゃになる。聞こえてくる声は、ずっとずっと近くで聞きたかった。

 前が見えないぐらいに溢れだす涙も押し寄せてくる気持ちの発露だ。

 決してさっきまでの状況で泣き出したとか、顔面に感じる風の勢いが怖いからってのは含まれていない。

 サブリナは俺とパーサを両腕で抱えながらQLU-11も背負って、斜面を駆け下る。

 

「みんなはどうしたんだよぉ・・・」

「車長はリンヤオちゃんに任せてきたよ!」

「だからってひとりでくんなよ!」

 

 思考が回らない。何を考えたらいいのかも、なんて返せばいいのかも分からないせいで、口から出たのは短くて怒鳴った声でしかなかった。

 いくら元地のパワーやパファーマンスがそのままだとは言え、サブリナは銃を持てないただの人形。戦術人形じゃない。

 持っているPx4は威嚇以外に効果的な役割もないのだ。

 俺だけのために来る必要はない。

 拒絶はしたくないのに、迎えに来たことに心の中で不満が溢れだした。俺のせいで・・・なんて考えだしたらどうしようもなくなってしまう。

 

「一人じゃない!」

「だけど、俺は作り直せる!」

「それでいいの?!」

 

 よくはない。よくはないけど。

 

「ちゃんと考えてきたの!」

 

 斜面の下が見えてきた。スピードは落ちることなく暴走特急状態、ヤバイぐらいに怖い。顔面に当たる風で涙も吹き飛んでいった。

 マジで速度落ちてないけど大丈夫?

 え、前にある段差飛ぶの?下見てるような気がしないレベルで減速してないので、猛烈に不安が出てくる。

 マジ?

 

「安心してお姉ちゃんに任せなっ゛・・・舌かんだ・・・」

「まっかせられねぇよ?!」

 

 即落ち二コマどころか、一コマぐらいのセリフで吹っ飛んだ。ちなみに俺たちも数メートルぐらい飛んだ。

 

「あと一キロ走るからね!」

「・・・なぁ、ポインターの後ろにいるやつらどうするつもり?」

 

 俺たちを追いかけるように駆けてきたポインターの後ろには、新たな長についてくる野犬の群れ。

 

「ノープロブレム!」

 

 サブリナの声と共に、銃声が響き渡った。

 

 

 

 

 ヘリが飛び立つ。

 震えそうになっていた手足は先の方から痺れて、今になって血が巡ってきたような錯覚を覚えた。

 皆のおかげで帰ってこれた。

 

「これで貸し、一つよ」

「あぁ。助かったよ45」

「ま、あとはゆっくりしてなさい。ここからはこっちの仕事だから」

 

 ヘリはオスプレイ系だろうか。ランプドアの方に昼振りに会ったUMP姉妹が消えていって、9に抱えられていたポインターは一瞬のタイムロスもなく飛びつけてきた。

 

「ふぅ・・・」

 

 窓の外は下を見れば明かりもない暗闇で、空からは月明かりが差している。

 安堵感や達成感やらと疲れが凝縮されるあまりに息がこぼれて、目を閉じた。

 パーサの身柄は引き渡したので俺たちの任務は終わったことになる。

 上やIOPはプランBとして45達を送り込んでいた。俺たちが襲撃する前から敵の動きが鈍っていたのも、45達のおかげかもしれない。

 俺たちだけでは作戦目標の完遂は出来なかっただろう。なにしろ、地下ダンジョンでの一件から俺とパーサの回収まで手配してくれたのだから。

 

「サム、ご飯食べる?」

 

 そんな思考に身を委ねた俺は眠ろうとしているようにも見えたらしい。

 目を開ける前から美味しそうな匂いが漂ってくる。それだけで気分も落ち着いていく。サブリナがバスケットと飲み物を手に隣のジャンプシートに座った。

 

「食べるよ。タルトレットじゃん!」

「コーラちゃんが作ったんだって」

 

 疲れ切った体に、塩っぽいぐらいの味付けがちょうどいい。バスケットにぎっしりと入っていたベーコンとチーズのタルトレットは、俺とサブリナの二人であっという間になくなってしまった。

 

「やっぱりSAAはママなんだよな・・・」

 

 他の人たち用に同じサイズのバスケットが一つ用意しているんだから、ウチのSAAは用意周到というか・・・俺たちの事よく分かってるというか。流石にヘリにコーラは持たせなかったみたいだし。

 戦場に居なかったとしても、一緒に戦っている。

 ここまでこれたのも、サブリナと一緒に居られるのにも、たくさんの仲間たちや友人たちに救われてきたおかげだ。

 そこに、人間も人形の区別もない。

 

「・・・ごめんね。サム」

「こっちこそ、ごめん。あんだけデカい口を叩いておいて俺が待たせすぎちまった」

 

 昔一度だけ、一時の怒りに任せて人形が嫌いになったことがある。

 それから色々なやつらと会ってきて。ジョージやマイクの実の家族たちとの別れも見た。守るためだという建前はあるが、俺がやったとも言える。

 サブリナが居なくなった時も、自分だけが勇んだのにUMP姉妹も、ボスたちも駆けつけてきた。あの時のことが、正しいとかどうかはいい。少なくともあの時の俺はそうするべきだと動いただけだから。

 最初にパーサを倒すまでも。人形になってからだって。

 大切な仲間として、人形たちが居た。

 俺は、人形が。人形という存在が分からなくなってきている。

 俺にとってサブリナは家族で、小隊のメンバーやタスクフォースに参加してくれた仲間たちも。仕事の時にやり取りをする警備人形といった友人たちも大切なんだ。

 人形と人間の区別はつけられなくなってきた。

 

「ありがとうな、サブリナねぇちゃん」

 

 満面の笑みを向けられてしまえば、変わったことなんてどうでもよくなってしまいそうにもなる。

 

「っ!!!!サム!い、いま!」

「ねる」

「もう一回!もう一回言って!」

「ねる!」




数か月も一緒に寝てなかったからこの後ヤバそう。


さて。


終わった!第三部(シーズンスリー)、完!!!!



もうちっとだけ続くんじゃ(エピローグと番外編集の準備をしながら)


素晴らしい原作に感謝。
ここまで着いて来てくれた皆さまにも感謝。

改めて他の作者さんたちがすごいなと思いましたね。
うん・・・
しっかりとした後書きに関してはエピローグ出した後に活動報告に投げる予定。

想像以上に〆るの遅くなりましたね・・・(元の予定八月末完結)


へへへ・・・エピローグのCパートも波乱ですよ。ただのエピローグじゃありません。新たなスタートです。
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