鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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エピローグ[ずっと一緒に]

 思わず頬が緩みそうになる。いや、基地のやつらが見たら全員分かるぐらいには俺の顔は緩んでいた。

 手元にはいくつかの手紙に、一週間前に撮った写真。

 考えてみれば人形になってから長い時間が過ぎた。

 人間の頃とは比べ物にならないほどの交友関係によって増加しただけでなく、何故か増えていく子供たちからの手紙。

 どうしようもなくあたたかくなる気持ちになって、どうやって返事を書こうかワクワクする。

 少なくとも、数年前には味わうことのなかった量の感情の波だ。

 

「もうすぐあの基地ともお別れかぁ」

 

 ヘリと車両、基地全員の記念写真の中には一六式も、MCVカンパニーのメンバーも入っている。

 やっぱり一六式はでかい主砲の方が似合っている。長い道のりだった。

 それ以外にも、小隊の集合写真、MCVカンパニーの集合写真。沢山撮った写真を見返すたびに、これまでの日々が脳裏に浮かぶ。

 

「よし。パオズ完成、っと」

 

 蒸籠の身の中では、もやしの具が入ったマントウが出来上がっている。我ながら上出来だ。

 食堂の喧騒もいい加減コントロールできなくなりつつあった。

 お祭りに合わせて預かった子供たちに囲まれているマイクと36はさながら歌のおにいさんとおねえさん。

 ジョージとFAL、FGも居るのに見向きもされない辺りで脳裏に浮かぶのは対象年齢という言葉。

 残念ながら俺はサブリナと一緒に囲まれたけど。俺が精神年齢相応には見られていなかったことにはもう突っ込まない。言ったところで意味がない。

 ただし野次馬していただけのジョージ達はあとで一回デコピンの刑だ。

 

「ちびっこども、おやつの時間だぞ!」

 

 

 

 

 今日はお祭りの日。

 人混みは前回の同じ時間帯よりも多い。

 

「やっぱすげぇよ・・・」

 

 メインステージの方角に歩くときには人波に圧されて中々近づけなかった。

 異常な集客率になったのは前回のライブ関連が有名になったから。

 「リン」という少女の単独ステージ、支社の広報までもが便乗したせいでこの騒ぎ。

 

「姉貴!」

 

 ステージの裏手までやってくれば、松葉杖を置いてパイプ椅子に座っているリンヤオが手を挙げた。

 

「ばっか大声出すなって・・・」

「別に大丈夫だよ。誰も気づかないさ」

 

 ステージに居たのはホーワM1500のボディ。けれど中身はリンヤオ。

 

「最後しか聞けなかったけど、サイッコウによかったぜ。お疲れ様」

 

 あまりにも細い手を取って車いすに移す。

 さっきまでは自由に歌って、ステップを踏んでいた。目の前のリンヤオの体は次第に衰えている。

 今の俺はいつまでも傍に居れるけれど。

 だからこそ、いつか訪れることがただひたすらに怖い。

 この瞬間に考えるべきことじゃないのに、どうしても脳裏をよぎることに不安を覚える。

 それを誤魔化してため息をつこうとしたら、手を引っ張られた。

 

「ボクはこんな足だけどさ。今は夢を叶えられて最高の気分だよ」

「まだまだ楽しいことがあるさ」

 

 天然パーマのかかった黒髪を撫でられてクシャリとはにかむ妹の姿。俺はいつまでリンヤオと一緒に居られるのか。

 それまでに楽しいことをもっと、もっとやりたい。

 

「あ」

 

 息を漏らすようなリンヤオの声。瞬間に痛む右わき腹。

 

「どうしっ「パッパー!」グフッ・・・」

 

 振り向いた俺は力強く低いタックルをこらえた。

 俺と同じ髪色で。背丈は一回りと少しは小さいのに、膂力はどっこい以上。

 

「QLU!パパって言うんじゃない!」

「・・・お父さん?」

「そういう問題じゃない!」

 

 何故か俺の事を父と呼ぶのは、新しい戦術人形「QLU-11」

 いや、何故かとは言い切れない。縁自体はある。ペルシカの悪趣味によって邪険に扱うことも難しい。

 だからといってQLUの生まれのアレそれを考えると素直に接するのも難しくて、接し方を自然にできない相手だ。

 

「もう、QLU。サムに突進しちゃ、メ、でしょ!」

「えー」

「えーじゃないの!」

「ママのケチー」

 

 そんなQLUの面倒を見ているのはもっぱらサブリナだ。由縁は知っているはずなのに、ごくごく自然と一緒に居る。

 

「姉貴・・・大丈夫?」

「あの小ささからこのパワーはやべぇよ・・・」

「おばさんかわいかったよー」

「おばさんって言うな!」

「・・・パパの妹じゃないの?」

「そ!う!だ!け!ど!」

 

 あとなんやかんやリンヤオも普通に仲がいいと思う。いっつも同じようなやり取りをしている気がするけど、妹もアラサーなので仕方がない。

 当たり前になった日常、今でもどこかしっくりこない時もあるけれど、ただひたすらに楽しい。

 二人と一緒に居れて。小隊の皆も居る。友人たちにも恵まれて。挙句の果てには家族を自称する人形が増えてしまった。

 俺がこんなに幸せな気持ちになっていいのか、なんてことは考えだしたらキリがない。

 どうせ、なるようにしかならないのだ。

 

「サム、手出して?」

「・・・あっ」

 

 手首のリボンを見て感情のオーバーフローで停止した俺をサブリナは抱きしめた。

 無性に落ち着く。一緒に居るだけで、言葉には言い表せない感情が押し寄せる。

 一緒に居たいと本能が叫ぶのだ。

 

「前のリボンはボロボロになったから、新しいのを探しに行ってたの」

 

 だから、今だけは。

 みんなと一緒に、いつまでも、どこまでも行けるのだとすら考えてしまいたい。

 

 

▽完

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これは復讐なのか。

 それは違う。

 彼らもまた、被害者だった。

 何故こんなことをするのか。

 よく分からない。一つ分かっていることは全てを忘れたいだけ。

 

「あの看板を落とせば」

 

 兄の方はすでに死んでいる。

 残るは、足が不自由な妹のみ。

 直接狙えなくとも、逃げることは出来ない。

 

「これでなくなる。すべてがなくなる」

 

 もうなにも残らないはずだ。

 銃声が「二つ」響き渡った。




全連載分終了です。
ここまでのお付き合いありがとうございました。
お気に入り、評価、感想、しおり等々、力になりました。

本当に最高な原作だと思います。

とりあえず本格的な後書きは活動報告なりに書きます(書きました)。コラボとかもやりたいですねぇ。


え?Cパートに触れろ?
やだなぁ。シーズンフォーの開幕分じゃないですかぁ。
書かないけどね。
単パートとかでは触れるかもしれないですね。

番外編とか、色々考えてはいるんですけどそこらへんは後書きで。


さて。
みんな。
SPASちゃん可愛いよね。
戦術人形のみんな可愛いよね。

僕も書いたんだからさ。(悪魔の囁き)
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