鉄騎兵と戦術人形 作:ケジメ次郎
今回、主人公が人形に対し過激な事を言いますが、あくまでそういう話作りのためのセリフです。
前回のアンケートにて「ARが候補に入ってないやん!」というご指摘がありました。
忘れてました・・・すみません。RF書いたから安心しきっていた。そして、候補の数的に全分類を入れるのは難しいので、アンケート自体を削除しました。ご指摘ありがとうございました。
俺は人形が嫌いだ1
扉を隔てた先の空間から二人の女性の悲鳴。これは人質で間違いない。
その声に怒り、何かを蹴る音に続いて聞こえてきた野太い声。立てこもり犯だ。
「狙撃班、犯人の様子は?」
「人質に対し怒鳴っています。銃のセーフティはかかったまま。もう一人は突入一班の突入口の前で立っています」
「よし。十秒後に陽動。更に一秒後一班と二班は突入だ。準備は?」
指揮官の声に呼応して俺の周りに居た一班のメンツは後ろから肩を叩き準備完了を知らせる。俺は一番前、いわゆる突一ってやつだ。一番に突っ込んで、敵を制圧する。
ポリマーフレームの拳銃を握り、そっと安全装置を外した。トリガーには指をかけない。
「五秒前」
ドアをぶち破るための丸太のような道具を持つ隊員が振りかぶった。
「あっ、安全装置を外した!」
その声が聞こえたのは陽動とほぼ同時で、突入のタイミングは一歩遅いぐらいか。
狙撃班が相手の持っている拳銃を弾いてくれるか、二班が制圧するか。そのどちらかとしても、俺たち一班は事前の作戦通りもう一人を制圧することを考えなければいけない。
扉が叩き破られ、文字通り鉄砲玉のように飛び出した俺は犯人の持っている拳銃のトリガーを指で止め、拳銃ごと腕を引っ張る。勢いのままに壁に押し付け、もう片方を上に上げた。
「確保!」
二班はしくじらずに確保したか?そう確認しようとした時だった。
やけに近い距離で聞こえる破裂音。それも連続する。
制圧済みの犯人を離すわけにもいかないので、顔だけ振り向けた。
続いて、一発の発射音。聞き逃すことはない。
この状況で導き出せることはただ一つ。
「人質に対し犯人発砲。人質は怪我をしている!処置を急げ!」
犯人がやけっぱちになり、拳銃を乱射。それを制圧するために二班が射撃した。
「犯人は一名確保、もう一名は制圧射撃により胸部銃創」
指揮官の声が耳に残る。
二班の誰かが壁を叩き暴言を吐いた。
「・・・ふざけんなよ」
今度は一班の方から小声が聞こえてきた。バラクラバに顔を包んでいてもはっきり聞こえる。
「突撃班、被弾したものは居ないか?人質にはすぐ処置を行わせる。サム、応急処置のトリアージは任せたぞ」
「了解・・・」
名前を呼ばれ、努めて平静に犯人を引き渡した。
拳銃の安全装置をかけ、ホルダーに戻す。
リビングに入れば、そこは血の海だった。
呆然と立ち尽くしている二班の隊員を邪魔だと突き飛ばし、添いあうように倒れている二人の女性の脈を確かめた。
結構な弾数が撃ちこまれている夫人は既に絶命している。顔が潰れているように見えて、吐き気が浮かんだ。
もう一人、若い女性のようだがこちらは呼吸をしているようだった。被弾は足や手といった部分。ふと匂いを嗅いだ。
「・・・これは人工血液の匂い?」
明らかに人間の血液とは違うそれは、自律人形の中でもハイエンドな人間に近づけたモデルに充填される液体の匂いだった。
途端に頭が煮えあがっていく。
「人質は二人じゃなかったのかよ」
事前のブリーフィングにもたらされた、この家の主人の言葉では二人とも人間であると説明されていた。もし撃たれたとしても人形であれば見捨てることが出来る。所詮人の形を模しているだけだ。それならば、二班のプランはもっとスムーズに組めた。二班は、こちらの若い女性という人質の存在で第二突入口を選択したのだから。
「サム、どうした?」
「報告する。夫人は顔面等に被弾し即死。若い女性は、人形だ」
「人形・・・?はぁーっ・・・分かった。医療班に引き渡せ」
隊長の顔が歪む様子がありありと浮かんだ。
この突入では失うものが多すぎた。人質の死亡、犯人の制圧のための射撃、余りにも悪い歯車が噛み合ってしまっている。
「・・・助けて、助けて」
息の漏れる音と共に、人形が何かを呟いている。それを聞いた瞬間に俺の脳内は噴火した。
ふざけるな、ふざけるな、主人に奉仕するための人形が自我を持つ余りに主人が死んだとしても自分の命が惜しいのか。
こういったほぼ人間と区別がつかない人形のオーナーたちの中には、人形を家族のように大切にするそう者もいるそうだ。サービスを行う安くて機械の部分が多い人形しか普段目にしない、俺たちのような庶民からすれば想像もつかない。そして、その情によって本来成功するはずだった突入を危険に晒したのだ。夫人が撃たれる可能性も減ったし、二班だってもっと楽に制圧できた。
徐にホルスターから拳銃を引き抜く。初弾は装填してある。安全装置を外し、ゆっくりとトリガーに指をかけた。
「サム!馬鹿、やめろ!」
「ふざけんな!この人形のせいで家族が危険に晒されて!夫人を助けられなかった!」
「気持ちは分かるけど撃っちゃダメだろ!」
他の隊員達が必死に俺を抑える。拳銃も取り上げられた。俺は一番槍だ、こいつらが束になってかかってきたって平等に戦える自信はある。それでも我を通せなかったのは、結局俺の意思が一時的な怒りに身を任せたものだったからだろう。
唇を噛みしめ、力を抜いた。
俺は人形が嫌いだ。
ちょっと過激すぎるんじゃない?
補足しておくと、主人公サムは他の隊員たちの事を家族と呼んで大切にしています。Bプランに変更せざるを得なかった二班の隊員達は危険に晒されることを承知でこの作戦を行ったので、彼は彼らと人形を比べ、必要以上に尖っただけなのです。
プロローグの次にいきなり過去話をしているのでちょっとわかりづらいんですが、プロローグはプロローグであって、第一章の後の時間軸に当たるんですね。第一章はメンバー成立までを書いていきます。展開はもう決まっているのでよろしくお願いします。
次パートに続く。次回の更新は25日中のつもりです