鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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親子の縁3

 死んでからあまり時間が経っていないからか匂いは酷くない。

 慣れていないマイクは耐えるのが難しそうだが、それでも因縁の相手を探すために強く気を持って見回っていた。

 俺はなるべく気を楽にさせるために言葉をかけ、奥へと先導する。

 制圧を行った人形やグリフィンの兵士達とすれ違う。死体や飛び散って壁に付着した血液はさっさと処理するに限るので、先ほど戦闘が終わったばかりだが最優先で死体を運んでいた。

 処理を行う人間の顔は疲れている。誰だってこんなことしたくないし。

 

「マイク、もう処理されてるかもしれないがいいか?」

「あぁ、あと少しだけ探したい」

 

 震える声で答えたマイクはもう限界に近かった。

 振り返り足を進め直すと足首を掴まれる。

 

「正義を裏切るものは生きる価値はない・・・グっ!」

 

 AK-47かそのコピー品であろうアサルトライフルの傍に居た身なりのいい服装の男が掴んでいた。胴体を射撃が貫通したのか背中には血液が飛んでいる。

 コンバットブーツの足を振り払うと力なくその手は落ちた。

 

「・・・親父?」

 

 マイクがなんとか声にした言葉で俺は空気が変わることを感じる。

 

「ま、マイケルか?」

「お袋も居るのか」

「ケラはもう死んでいる。そこだ。お前が殺したのだ」

 

 自分本位が過ぎるだろ・・・

 思わず頭を押さえた。

 マイクの親父が指をさした先には同じく身なりがよく恰幅のよい中年女が倒れている。手にはナイフとピンを抜く前の手榴弾。拾い上げて処理をしている兵士に手渡した。

 マイクは手を震わせながら父親の体を持ち上げ壁に背をつけさせる。

 

「俺は殺していない」

 

 そうやって繰り返す彼の姿は幼く感じた。

 

「お前が殺したのだ。私もケラも。親殺しだ」

 

 それを言うならてめぇはマイクの大切な人形をぶっ壊したんじゃねぇのか。

 

「俺がやったんじゃない。あんたらが勝手にやって死んだだけだ」

「育ての親をあんた呼びか?」

「俺を育ててくれたのはマリーだ。一度もあんたたちに救ってもらったことなんて、なかった!」

 

 マイクは手を出そうとして逡巡する。

 よくもまぁこんなイラつく状況で親子だという関係だけで自分の気持ちを抑えられるな。普段からバーに入り浸っているしすぐにおちゃらけると思っていたが、根には何か確固たる信念がある。

 その信念を築き上げたのは恐らくマリーという人形だろう。

 

「お前は我が社を継ぐ。だから人形を買い与えたのだ。しかし家を出た。とんだ親不孝者だ」

 

 段々と父親の言葉は掠れていく。死が近いのだ。

 

「あんたたちの後を継ぐなんてまっぴらごめんだね!あの判断は絶対に間違っちゃいねぇ!」

「そんなことだから、お前は・・・正義の人間になれないのだ・・・」

 

 正規軍を辞めてから少し伸びた丸刈りをかいてため息をついた。

 こいつら強硬派は自分たちの語る「正義」という言葉を正当化し、他人に押し付け、お題目にして戦う。

 ソレは一つの視点で語ることは出来ない。他の条件になれば、その人の考えがあって。同じ条件だとしても別の考え方が出来るときもある。

 だから、正義はぶつかる。

 いつの時代だって戦いになるのは自分たちの信じるコトが他のモノゴトや人とかち合った時で。

 どれが正しい話だなんて答えがないというのが答えだ。

 俺たちにも俺たちの正義があるから、結局のところ解にはたどり着けない。

 そうして傷つけあっていく。そこから逃れられないのは人間の運命なんだと思う。

 それでも自分本位なこいつらの主義主張行動には一切の同情や同感が芽生えることはなかった。

 

「俺はあんたたちを許さない。あんたたちが正義を信じるのはいい。俺はマリーに教えてもらった愛情を忘れないために生きる。それが俺の生きる理由だから。それは俺にとって信じるべき正義だから」

 

 マイクはそう言って俺の腰に釣り下がっていたVAGを握り、構える。

 

「だからさ、俺を笑うのはいい。親不孝者だと笑え。正義に反するものだと笑え」

 

 ハンマーが落とされた。

 

「マリーを傷つけたことは許さない」

 

 マイクは拳銃など撃ったことがなかったのに。その時だけは震えていた手がしっかりとした動きでトリガーを引いていた。

 そっとVAGを返してくるマイクの肩を叩き、軽く抱きしめる。

 

「だんなぁ・・・」

「酒にぐらいは付き合ってやるよ」

 

 ポンポンと背中を叩いてやればマイクは途端に大声を上げて泣き出した。

 

 

 

 

「ボスが・・・サムが人形排除派の英雄?なんで?私を助けてくれたヒーローなのに?」

 

 おかしい。そんなことは、ありえない、はず。

 私と契約してくれた。私を家族と言ってくれた。

 もしかして煙たがられていたの?

 

「・・・悪い冗談だよね」

 

 持ち込んできたクッキーはぼろぼろと崩れていく。

 サムは自分の過去だと言っていた。今は違う考えなんだよ!そう、そうだから!

 

「お嬢さん、人形かい?」

 

 一六式の傍に座り込んでいた私に話しかけてきたのはお爺さんだった。

 

「え、うん」

 

 怪しく思ったけど頭が働かなかったから頷いた。

 

「悩んでいるのなら私たちのところに来なさい。あの男の本当の心持を教えてあげよう」

 

 そう言ってお爺さんは紙を渡してくる。

 

「本当の心持、って・・・あれ?いない?」




お気に入り、しおり、感想いつもありがとうございます。


あとハーメルンでドルフロの二次創作を書いてる方達って横のつながりがありますよね。よくコラボしてる気がする。

あっ、コラボはしたいです(白状)ただ、コラボするならシーズンワン終わった後の方が良い感じになりそうなんで、その時によろしくお願いします。

まぁいつでもコラボ自体はお受けするつもりです。



次回予告
姿を消したサブリナ。サムはVAG片手に倉庫街に行く。
第二章第三話「俺にとってお前は特別だ」
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