鉄騎兵と戦術人形   作:ケジメ次郎

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俺にとってお前は特別だ1

 

「サブリナが・・・居ない」

 

 ガレージにも。寮の部屋にも。事務所にも影も形もない。

 どこかに出かけたのかと思って聞いてみたが、朝普通に出掛けていったらしい。

 もしかして何かトラブルに巻き込まれたか?

 そう言えば昨日何だか不安そうな顔をしていたが、俺が何かしてしまったか。

 一人、事務所のソファに背中を預け大きく深呼吸した。

 落ち着けサム。落ち着いて何が起きたかを正確に把握しろ。

 

「どうしたんだ旦那」

「サブリナを見なかったか?」

「うーん・・・昨日解散した時に会っただけだから、多分旦那の方が後まで会ってるぜ」

 

 そうだった。マイクとは一緒にいつものバーに行って夜遅くまで飲んでいた。その後部屋に帰って寝ようとした時に一度サブリナを見ているから、マイクには頼れない。

 

「欠勤するような理由に思い当たることはないか?」

「旦那が怒らせたんじゃないの?」

「かもしれん」

「似合わねぇー」

「うるせぇな」

 

 サブリナの気に障るようなことしたかなぁ。すぐに思い当たる節が無いのは俺が悪い男だからだろうけど、真面目に何がトリガーになって彼女が失踪したのか分からない。

 二人して唸り頭を抱えているとマイクが思い立ったように声を上げた。

 

「そう言えばサブリナちゃん、なんか手紙持ってたような」

「手紙?」

「うん。一六式から降りた時に手紙を落としてたんだけど、乗る時に持ってなかったような気が」

 

 手紙、仕事中に増えた、つまり俺たちと居なかった時に何者かがサブリナに接触した。

 あの時傍に居る可能性があるのは人形排除派だ。

 そうなるとサブリナは何か甘い言葉を掛けられて、その手紙に書かれた場所に行ったということか。

 それも俺たちには話せないという事情を持って。

 

「・・・俺のせいだ」

「え?」

「俺は気づかなかった。乗員の変化を感じ取って守るのは俺の仕事なのに、サブリナの傍に居てやれなかった・・・!」

 

 何か、何か手掛かりはないのかと考えて手当たり次第に頭に浮かぶ場所を探す。

 ごみ箱、事務所のデスク、手紙の捨ててありそうなところを探し回るが見当たらない。場所を探すためにも手紙は持って行ったのだろう。

 諦めかけていると事務所の郵便受けに投函された音がした。脇腹が痛んで、何か不安になる。もしかしたらこれが最後の手掛かりになるのかもしれない。

 何の根拠もない。

 けれどこの直感は今まで外れたことはなかった。

 

「そーいうことね。面白いじゃないか」

 

 ポストに入っていた一枚の便せんを読むと俺は準備を始める。

 売られた喧嘩を買わないんじゃ男が廃る。

 イライラを表面に出さないよう冷静に努めている顔を鏡で見ると口角がヒクヒクと震えていた。

 ワイシャツと普通のズボンにプレートアーマーとニーパッドを付けて、スカーフとハンチング帽を被った。アイウェアを掛け、鏡で服装の決まりを確かめる。

 Px4は震えてもてないから、代わりのVAGを右足のホルスターに差す。

 長めのナイフを入れた革製の鞘を左足に引っ掛けた。

 

「やってやろうじゃねぇか」

 

 さて、行こう。サブリナを探しに。

 

 

 

 

「そんな恰好をしてどこに行くの?」

「うぉっ、誰だ?」

「ナイン!」

 

 果たし状に書かれている倉庫街の方向へと歩いていたら、人形に話しかけられた。45みたいに目に傷跡があるが、反対の右目だ。髪色は暖かい感じの色で元気のいい話し方と相まって全く悪い印象がない。

 でも、常に笑っている感じで感情は読み取れなかった。

 服が45とそっくりだから姉妹機だろうか。

 

「ナイーン、いきなり走り出してってあら」

「45?」

「ひっさしぶりー」

 

 頭が痛くなってきた。45とは仕事が終わって以来一切顔を合わせていなかったのに、なんでよりによってこのタイミングで会うんだ。勘弁してほしい。

 

「何の用だ。俺忙しいんだけど」

 

 さっさと会話を切り上げようとすると9っていう人形が俺の体に抱き着いてくる。

 45よりも大きいアレの感触が少し嬉しい。そう思った瞬間に45の目つきが鋭くなったのは勘違いじゃなさそうだ。

 

「そんな裸同然の武装でなにしにいくのー?」

「仕事だ、しーごーと」

「ふーん。家族は何処に居るの?」

「単独なんだよ。ウチの社員で生身で戦闘するやつなんて俺しかいないし」

 

 45の問いかけ中に9の目つきが変わった。なんなんだ。

 俺の答えに45はふーんとだけ反応し、やがて鼻で笑った。

 

「ダウト」

「なにがだよ」

「困ってるんでしょ。私なら手伝えるから、借りを返させて」

 

 見通された衝撃で数歩下がる。そして開いた空間へと45が近寄ってきた。

 

「家族が困ってるんなら助け合わなくちゃね!」

「・・・家族?」

家族(よんごーねぇ)の家族は私とも家族(かぞく)だよ!」

 

 今度は抱き着いていた9が屈託のない笑顔で豪語した。

 言葉の意味はあまり理解できなかったが。

 

「はい、じゃ契約しましょ」

「契約ぅ?」

「私たち姉妹は今から人形を助けるまでの間、貴方に従う。報酬は・・・これぐらい?」

 

 そう言ってササっと書いたメモを手渡してくる。こんな紙切れで契約云々なんて効力を持たなさそうだが、これ以外の手段はない。

 

「金取るのかよ」

「ちゃあんと割引してるわよ」

 

 IOPの割引って言葉ほど実感の持てない言葉はねぇな・・・

 ついこの間までの貯金の二割。つまり俺の現在の貯金ほぼ全額。

 

「頼んだぜ」

「はぁーい」

 

 背に腹は代えられない。




お気に入り、感想、評価いつもありがとうございます。

9のキャラがね・・・

ところでこの作品ドルフロ要素足りてないんじゃないかと不安になってくる。

シーズンツーは人形との絡みが多くなるから・・・そしたら今度はSPASちゃんの影が薄くなるじゃねぇか!!!
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